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第10話 教えるのが上手 side百合

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 そうして、瀬戸先輩が続けた。

「ボール持って色々したりなんてのは個人で出来るが、バスケってのはチームでやる競技だ。誰か一人でもかけたら成り立たない。いない方が良い選手なんて一人もいないんだ……それを……忘れるな」

 ハジメ君の瞳が揺れ動いた。

「お前ぐらいの時期なら、色んな能力が伸びる時期だから、負荷かけるよりも、色んな技を真似して挑戦してみろよ! じゃあ、俺に教えられるのはここまでだ。ほら、お前の友達らが心配して待ってるぞ」

 バスケットコートの向こうには、ハジメ君と同年代の男の子たちが立っていた。
 それを見てハジメ君がはっとなる。

「瀬戸のお兄ちゃん! それと、彼女の百合お姉ちゃん」

 突然、話を振られて、びっくりしてしまった。

「か、彼女!?」

「いや、こいつは別に彼女じゃなくて……」

 そうして、ハジメ君がビックリすることを言いはじめた。

「僕達がバスケしているのを、黙って見守ってくれてた百合お姉ちゃんのことを、大事にしてあげてね。瀬戸のお兄ちゃん! それじゃあ、ありがとう!」
 
 それだけ言い残すと、ハジメ少年は走り去っていった。

 そうして、瀬戸先輩が私の方を振り向いた。

「ほら、加賀美百合。長い間付き合わせて悪かったな」

「いいえ」

「ありがとうな。ああ、もうちょっとだけ待ってもらえるか?」

「は、はい……!」

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