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第15話 瀬戸先輩の過去 side百合

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 ――シュパッ。

 ボールがリングに入った。

 もちろんシュートを決めたのは、私なんかではなく……。

「ほら、加賀美百合……! 俺に抜かれてばっかりじゃないか……?」

 手元に返ってきたボールでドリブルしている瀬戸先輩が、意地悪な笑みを浮かべている。

「ぐぬぬ……」

 実力試し。
 どんな手段でも良いから、俺からボールを取れと言われて、私は挑んでいるんだけど……。
 
「これ以上は点をとらせません! ディフェンスです!」
 
 ドリブルを続ける彼に、飛びかかるようにして挑んだけれど……。
 瀬戸先輩はすぐにボールを後ろにドリブルして、さっと私の隣を駆けていった。
 ――プルバックだ!
 そうして、得意のダンク――!
 もう一度、自分でボールを取ると、彼が私に笑いかけてくる。

「加賀美百合は体力がないな」

「……うう……」

 残念ながらその通りだ。
 推しのセト君を追いかけていたので、無駄にバスケ用語に詳しいだけの、にわかである……。

「じゃあ、ほら……負けてばっかりも楽しくないから……初心者のお前でも楽しめそうな、シュート練習な」

 そうして、私たちはリング下へと向かう。
 
「やってみろ」

「はい! えいッ……!」

 そうしてボールを投げるが、なかなか入らない。
 こんなに近い気がするのに……。

「普段ボール使わないやつからしたら、距離感掴むだけでも苦労するんだな……」

 感心したように彼が呟いた。

「こう……飛び方を変えたら、どうにかなるものですか……?」

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