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第1章 敵国への旅路
第5話―2
きゅっと唇を引き結んだ後、話しかけようとしたら……ちょうど、彼の赤紫色の瞳が朝陽に輝いていた。なんだかキラキラとした宝石のように見えると、子どもの頃はよく手をかざしていたことを思い出す。
そっと、彼の頬に手をやる。
「……相変わらず、朝は紅玉のように見えて、不思議な瞳ですね」
だが、反応がない。
見ると……イクシオンは硬直していた。
「あ、ごめんなさい、私ったら、昔のくせで……」
「ラフィーネ姫!」
……イクシオンが突然、がばりと抱き着いてきた。
「きゃあっ……! あまりこういう性急なのは嫌いだと、先日伝えたはずで……」
自分から触れておきながら、反論してしまう。
彼の体温がやけに熱くて、頭の芯がくらくらしてきた。
抱きしめられても、だいぶ振りほどけなくなっている自分がいる。
(……まだ再会して二日だというのに……しっかりなきゃ)
「ラフィーネ姫」
「は、はい」
切望するような声音が耳に届く。
「俺も……俺は……ラフィーネ姫のことをキレ…………」
私の心臓がドキンと跳ねる。
「キレ……?」
……綺麗だ……そう言いたいのだろうか?
「……キレ……」
「キレ……?」
ドキドキしながら待つと……
「……切れ味の鋭い刃のような女性だな……と」
……一気に心が冷えていく。
「まだ山頂までは遠いのでしょう? 準備をしたいので離れていただけますか?」
想像以上に、切れ味が鋭い低い声音が出て来た。
彼の身体が戦慄いているような気がしたが……気のせいだと思って、そっと力ない腕から逃げ出したのだった。
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