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第2章 王都での蜜月
第10話―4
金髪女性を警吏に引き渡した後、イクシオンと私は、リンダさんと向き合っていた。
そう、ポムウルフの成獣である彼女こそが、イクシオンの話すリンダで間違いはない。
ちなみに、リンダは幼獣ポムウルフのシオン君をごろごろと甘やかしている。
どうやらリンダとシオンは母子のようだった。
「幼獣時代に徳を積み過ぎたリンダは、喋る魔獣になったんだ」
「徳を積み過ぎたら、喋るのですか……?」
「左様だ」
どうにも信じ難い話だったが、目の前に実際に存在するのだから、事実なのだろう。
御者は新入りだったので、リンダのことを知らなかったそうだ。
そもそも人々が驚くから、普段は道路には出てこないらしい。
イクシオンがさりげなく私に解説してくれた。
「戦場で助けられて以来、リンダとは仲が良いんですよ」
「なるほど?」
疑問符が語尾についた。
リンダがハアっと溜息を吐く。
「月光姫のその反応、本当に何も話していないのですね、イクシオン。どうせ、そなたのことだから、姫を迎えに行ったことで浮かれて、たいして自身の身体のことにについても説明さえしていないと見受けられる」
イクシオンはバツが悪そうにしている。
「再会して急に色々伝えても、姫様も驚くだろうと思って……」
やれやれと言った様子で、魔獣はぼやいた。
「それにも驚いたが、妾が陛下から聞かされて愕然としたのは、そなたが姫を愛妾にしたことだよ。まさか、そこまで愚かだとは思ってもみなかった。お前のことは普通の人間とは違うと評価していたが、どうやら思い込みだったようだ」
リンダの辛辣な言葉に、イクシオンが視線をそらした。
「それはさておきイクシオンよ、自身の体質に関してはしっかり説明せねば、姫様にも関わる可能性が高いのだ。そなたは新月になると発作が起こり、満月になると異様に昂ぶる。だが、月の満ち欠けに関係なく、最近では身体が鱗に覆われはじめている」
――新月と満月。
――最近、鱗に覆われはじめた。
イクシオンが唇を尖らせる。
「ちゃんと自分から言うつもりだよ」
「なら良い。しっかり自分の口で色々なことを伝えるのだよ、イクシオン。体質だけではない、愛妾の件についても。お前が成長するためにも必要なことだ」
すると、魔獣はくるりと踵を返す。
「シオンのことを預かってもらって助かった。時間は有限だ。後悔はしないようにな。では」
そうして、ポムウルフのシオン君を連れたリンダは、近くの木に向かって駆けると、樹々を乗り移りながら姿を消したのだった。
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