【R18】敵国将軍の、愛妾になったはずですが!?

おうぎまちこ(あきたこまち)

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第3章 源泉にて密命

第14話―2


 我々の方を見て、シヴァ女王陛下とリンダはげんなりしていた。

「……馬鹿弟本人はいたって幸せそうだな。でれでれしているようにしか見えない」

「左様。ああやって甘えたりしたかったのでしょうな。ラフィーネ様が可愛いもの好きなこともあって、いつになくイクシオンにお優しい。そもそも姫様は、あの竜の赤ん坊の正体が誰かを忘れている節もある……」

 ボードウィン卿は、明後日の方向を見たまま無言だ。

「リンダ、ボードウィン卿、何か良い方法など知らないだろうか?」

 シヴァの問いかけに、ここに来て久しぶりにボードウィン卿が口を開く。

「話を整理したい。弟子は、新月になると発作が起こり、満月になると異様に昂ぶっていたはずだ。これに関しては、新月になると魔力が枯渇し、満月になると魔力が充ちること――いわゆる一般的に言われている魔術理論の見解で説明がつくだろう。新月の発作とやらは、現在幼竜の形態になっていることから、本人の持つ魔力で本性を抑えつけていたが、著しく減少したことにより獣の本性が現れたとも考えられる」

 彼の話になんとなく違和感を覚えたため、私は話に加わった。

「その……月の満ち欠けに関係なく、最近のシオンは肌を鱗に覆われていたと話していました。たまたま、彼に私の魔力を吸われた際に、硬い鱗が痣になって消えたことがあって……」

 続ける。

「その後、私の魔力をシオンに与えて、ある程度循環させてから魔力を私に戻してもらうようにしたら、鱗は出現しなくなったのです。だから、魔力を循環させれば問題は解決するとばかりに思っていて……だから苦しそうなシオンに魔力を与えたはずなのですが……なぜか目覚めたら、竜の赤ん坊になっていました」

 口づけで与えただけではない。
 例えば、体液や血液などは魔力が凝集されていると言われているぐらいだ。
 気を失う直前の彼は、私の愛液を啜っていたはず。
 ふむとボードウィン卿は頷いた。

「だとすれば、話は矛盾する。与えられていたのなら、魔力で本性は抑えられたはずだ。そうなれば、普通の人間とは、やはり体質が異なるのか」

 ……では、仮説が間違っていたということだろうか……?
 ボードウィン卿は続ける。

「それとも、本来の魔力の動きとは違う流れになるように媒介するものが存在するのか……例えば、姫様とイクシオンが耳にしている装飾品のように」

 彼の言葉に、はっとなり、私は耳朶に手を添わせる。
 赤紫色の宝石のついたイヤリング。
 ボードウィン卿が冷静な口調で告げた。

「不思議な波動を感じる」

「このイヤリングは、シオンが行商人から買ったものです。その行商人が『竜の鱗』だと言っていました。しかも、今では珍しい転移魔術の使い手のようで、一瞬で我々の間から消えてしまったのですが……あとは……」

 皆の間に緊張が走った。

「……アルパイン山に、イクシオンの体質について知る者がいると話していました」

 私の話を聞きながら、シヴァが唸る。

「とはいえ、アルパイン山は広い。その情報だけで闇雲に動いても意味はないだろう」

 ボードウィン卿が口を開いた。

「この国の東、ラング王国との国境沿い。アルパイン山の裾野に、かつて竜を癒した源泉があるという」

 それにリンダが答えた。

「ああ、魔獣たちも傷を癒したとされる源泉ですか。そういえば、当初、この休暇中にイクシオンがラフィーネ姫様と一緒に旅行に行く予定の場所でしたな」

 ボードウィン卿が無表情なまま頷く。

「そうか。闇雲に探しても埒は開かないが、調べてみる価値はあるかもしれない」



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