66 / 150
第3章 源泉にて密命
第14話―2
我々の方を見て、シヴァ女王陛下とリンダはげんなりしていた。
「……馬鹿弟本人はいたって幸せそうだな。でれでれしているようにしか見えない」
「左様。ああやって甘えたりしたかったのでしょうな。ラフィーネ様が可愛いもの好きなこともあって、いつになくイクシオンにお優しい。そもそも姫様は、あの竜の赤ん坊の正体が誰かを忘れている節もある……」
ボードウィン卿は、明後日の方向を見たまま無言だ。
「リンダ、ボードウィン卿、何か良い方法など知らないだろうか?」
シヴァの問いかけに、ここに来て久しぶりにボードウィン卿が口を開く。
「話を整理したい。弟子は、新月になると発作が起こり、満月になると異様に昂ぶっていたはずだ。これに関しては、新月になると魔力が枯渇し、満月になると魔力が充ちること――いわゆる一般的に言われている魔術理論の見解で説明がつくだろう。新月の発作とやらは、現在幼竜の形態になっていることから、本人の持つ魔力で本性を抑えつけていたが、著しく減少したことにより獣の本性が現れたとも考えられる」
彼の話になんとなく違和感を覚えたため、私は話に加わった。
「その……月の満ち欠けに関係なく、最近のシオンは肌を鱗に覆われていたと話していました。たまたま、彼に私の魔力を吸われた際に、硬い鱗が痣になって消えたことがあって……」
続ける。
「その後、私の魔力をシオンに与えて、ある程度循環させてから魔力を私に戻してもらうようにしたら、鱗は出現しなくなったのです。だから、魔力を循環させれば問題は解決するとばかりに思っていて……だから苦しそうなシオンに魔力を与えたはずなのですが……なぜか目覚めたら、竜の赤ん坊になっていました」
口づけで与えただけではない。
例えば、体液や血液などは魔力が凝集されていると言われているぐらいだ。
気を失う直前の彼は、私の愛液を啜っていたはず。
ふむとボードウィン卿は頷いた。
「だとすれば、話は矛盾する。与えられていたのなら、魔力で本性は抑えられたはずだ。そうなれば、普通の人間とは、やはり体質が異なるのか」
……では、仮説が間違っていたということだろうか……?
ボードウィン卿は続ける。
「それとも、本来の魔力の動きとは違う流れになるように媒介するものが存在するのか……例えば、姫様とイクシオンが耳にしている装飾品のように」
彼の言葉に、はっとなり、私は耳朶に手を添わせる。
赤紫色の宝石のついたイヤリング。
ボードウィン卿が冷静な口調で告げた。
「不思議な波動を感じる」
「このイヤリングは、シオンが行商人から買ったものです。その行商人が『竜の鱗』だと言っていました。しかも、今では珍しい転移魔術の使い手のようで、一瞬で我々の間から消えてしまったのですが……あとは……」
皆の間に緊張が走った。
「……アルパイン山に、イクシオンの体質について知る者がいると話していました」
私の話を聞きながら、シヴァが唸る。
「とはいえ、アルパイン山は広い。その情報だけで闇雲に動いても意味はないだろう」
ボードウィン卿が口を開いた。
「この国の東、ラング王国との国境沿い。アルパイン山の裾野に、かつて竜を癒した源泉があるという」
それにリンダが答えた。
「ああ、魔獣たちも傷を癒したとされる源泉ですか。そういえば、当初、この休暇中にイクシオンがラフィーネ姫様と一緒に旅行に行く予定の場所でしたな」
ボードウィン卿が無表情なまま頷く。
「そうか。闇雲に探しても埒は開かないが、調べてみる価値はあるかもしれない」
あなたにおすすめの小説
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
魚人族のバーに行ってワンナイトラブしたら番いにされて種付けされました
ノルジャン
恋愛
人族のスーシャは人魚のルシュールカを助けたことで仲良くなり、魚人の集うバーへ連れて行ってもらう。そこでルシュールカの幼馴染で鮫魚人のアグーラと出会い、一夜を共にすることになって…。ちょっとオラついたサメ魚人に激しく求められちゃうお話。ムーンライトノベルズにも投稿中。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041