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第4章 初夜での攻防
第18話―1 人前で将軍、禁止ですってば!
竜の傷を癒す源泉から戻ってきて、はや数日が経とうとしていた。
気づけば、次の満月も近い。
だが、アルパイン山から持ってきたという古文書の解読はまだ進んでいない状態だった。魔術考古学の権威にそちらの対応は任せ、今は待ちの時期だ。
結局、魔力の交換に関する仮説が正しいのか間違っているのか分からなかったが、一時しのぎにはなるからと、イクシオンとの毎朝の口づけの習慣は継続されていた。
そうして、現在。
屋敷の寝室の扉の前で、私は城に出仕前のイクシオンと向きなおる。
「はい、シオン」
イクシオンは温泉でのお触り禁止令を律儀に守っている。
そのため、私がキスするのを黙って待ってくれていた。
私はそっと彼の頬に両手を添えると、背伸びをして、ゆっくりと口づけた。
何度キスをしても慣れずに気恥ずかしくて仕方がない。
唇が離れると、彼の綺麗な顔立ちが目に入ってきて、私はドキドキしてしまった。
「姫様、ありがとうございました」
イクシオンから微笑まれると、私はまた落ち着かなくなってしまう。
「いいえ、私にやれることは限られておりますから」
すると、彼が私の髪を撫でた後にちゅっと額に口づけてくる。
「そんなことはありません。そばにいてくださるだけで、俺としては満足――というか、幸せなので。姫様は、今日は魔術師達の研究の手伝いをされた後に、城でのお茶会に誘われていたのでしたかね?」
「ええ、そうなのです」
最近の私はアモル王国時代に学んだ知識と経験をもとに、魔術師たちの研究支援に勤しんでいた。
最初は私がどこかに行ってしまうのではないかと不安そうだったイクシオンだったが、離れないと分かったからか、私が自由に何かをするのを応援してくれていた。
イクシオンが太陽のような明るい笑顔を見せてくる。
「ぜひ楽しんでこられてくださいね、ラフィー!」
「シオンもお仕事頑張られてくださいませ。城の中で会えたら嬉しく思います」
笑いかけると、なぜかイクシオンが赤面するので、こちらも恥ずかしくなってきた。
「……会えたら俺も嬉しいです。それでは行ってまいります」
彼は騎士団のコートを羽織ると、寝室から仕事に出発した。
(なんだか愛妾というよりも新婚のような……は! 私ったら何を考えているの……)
まだ彼から気持ちを聞かされてはいない。
だけど、なんとなく悪いことにはならない期待のようなものが胸にある。
(とはいえ、それよりも……)
以前よりも魔力の交換の効果が薄いのか、鱗がじわじわと腕に生えてきている状態だ。
(シオンの体質をどうにかしないといけないのに、古文書の解読がまだなのがもどかしい)
とはいえ、焦っても仕方がない。
今はやれることをやるしかないし、シオンの気持ちを聞くのだって、その後からでもきっと大丈夫なはずだ。
この頃は――そう思っていたのだった。
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