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第5章 祖国への帰還
第27話―5
(シオン……)
ラフィーネの瞳に涙が込み上げてくる。
魔獣リンダも歓喜の声を上げた。
「イクシオン! 良かった! 姫様のことを思い出したのだな!」
だがしかし、ぎょろぎょろと赤紫色の瞳を彷徨わせる竜は、彼女の姿を見るやいなや、急降下してきた。
ものすごい風が吹きすさび、その場から吹き飛ばされないよう、足の裏に力を入れて耐える。
頭上に黒い影が差す。バサリバサリと翼を羽ばたかせる音が鼓膜を突き破ってくるかのように痛い。
目の前にぎょろぎょろと赤紫色の瞳が現れる。
顔だけでラフィーネぐらいの大きさがある。
恐ろしいほど巨大な異形の姿だが、どこか恐怖は感じなかった。
「シオン、良かった……」
ラフィーネがそっと紫竜イクシオンの硬い鱗に覆われた肌へと手を伸ばそうとした、その時。
「……きゃあっ……!」
鋭い爪を持つ手が私の華奢な身体を掴んでくる。
幸い尖った爪が肌に食い込んでくることはなかったが……
「シオン……? うっ……」
ぎりぎりと骨が軋む音がする。
ラフィーネの身体を締め付ける力がどんどん強くなっていく。
「苦しい、シオン……」
けれども、私の声は届かない。
胴体を掴まれているが、両腕の自由は利くため、必死に抵抗するが難しい。
リンダが張り裂けんばかりの大声で叫ぶ。
「記憶が混濁したまま、竜になっているのか!? 正気に戻れ、イクシオン! 姫様を助けに来たお前が、姫様に仇なしてどうするのだ!!」
だが、紫竜はぐるぐると唸るだけだ。
あんぐりと大きな口を開くと、巨大な赤い舌がチロチロと動いた。
彼の瞳は完全に正気を失った獣そのものだ。
今置かれている状況が分からずに、私が敵なのか味方なのか区別がつかずに混乱しているようにも見える。
「シオン……」
紫竜はラフィーネを大きく開いた口へと近づける。
熱い炎のような吐息が熱くて、肌が炙られてるかのようだ。
(ああ、シオンはアモル王国のことが嫌いだったから……)
私は自由の効く両腕を震わせながら、彼の顎に添わせた。
こんな時だというのに紫色の鱗は硬くてツヤツヤしてひんやりして気持ちが良かった。
私は肺が潰れて死んでしまいそうだったけれど、なんとか口を開く。
「アモルのこと、嫌いなのに……来てくれて……ありがとうございます」
力を振り絞って続ける。
「シオン、臆病で逃げてばかりでごめんなさい……本当に迎えを……待ってばかりね、私は……誰かに、頼ってばかり……」
イクシオンの力がより一層強くなったため、私は思わず呻き声を上げた。
「イクシオン! 正気に戻れ! 何のためにお前は記憶を犠牲にしたのだ!」
遠くでリンダさんの叫びが聴こえる。
ラフィーネの瞳に涙が込み上げてくる。
魔獣リンダも歓喜の声を上げた。
「イクシオン! 良かった! 姫様のことを思い出したのだな!」
だがしかし、ぎょろぎょろと赤紫色の瞳を彷徨わせる竜は、彼女の姿を見るやいなや、急降下してきた。
ものすごい風が吹きすさび、その場から吹き飛ばされないよう、足の裏に力を入れて耐える。
頭上に黒い影が差す。バサリバサリと翼を羽ばたかせる音が鼓膜を突き破ってくるかのように痛い。
目の前にぎょろぎょろと赤紫色の瞳が現れる。
顔だけでラフィーネぐらいの大きさがある。
恐ろしいほど巨大な異形の姿だが、どこか恐怖は感じなかった。
「シオン、良かった……」
ラフィーネがそっと紫竜イクシオンの硬い鱗に覆われた肌へと手を伸ばそうとした、その時。
「……きゃあっ……!」
鋭い爪を持つ手が私の華奢な身体を掴んでくる。
幸い尖った爪が肌に食い込んでくることはなかったが……
「シオン……? うっ……」
ぎりぎりと骨が軋む音がする。
ラフィーネの身体を締め付ける力がどんどん強くなっていく。
「苦しい、シオン……」
けれども、私の声は届かない。
胴体を掴まれているが、両腕の自由は利くため、必死に抵抗するが難しい。
リンダが張り裂けんばかりの大声で叫ぶ。
「記憶が混濁したまま、竜になっているのか!? 正気に戻れ、イクシオン! 姫様を助けに来たお前が、姫様に仇なしてどうするのだ!!」
だが、紫竜はぐるぐると唸るだけだ。
あんぐりと大きな口を開くと、巨大な赤い舌がチロチロと動いた。
彼の瞳は完全に正気を失った獣そのものだ。
今置かれている状況が分からずに、私が敵なのか味方なのか区別がつかずに混乱しているようにも見える。
「シオン……」
紫竜はラフィーネを大きく開いた口へと近づける。
熱い炎のような吐息が熱くて、肌が炙られてるかのようだ。
(ああ、シオンはアモル王国のことが嫌いだったから……)
私は自由の効く両腕を震わせながら、彼の顎に添わせた。
こんな時だというのに紫色の鱗は硬くてツヤツヤしてひんやりして気持ちが良かった。
私は肺が潰れて死んでしまいそうだったけれど、なんとか口を開く。
「アモルのこと、嫌いなのに……来てくれて……ありがとうございます」
力を振り絞って続ける。
「シオン、臆病で逃げてばかりでごめんなさい……本当に迎えを……待ってばかりね、私は……誰かに、頼ってばかり……」
イクシオンの力がより一層強くなったため、私は思わず呻き声を上げた。
「イクシオン! 正気に戻れ! 何のためにお前は記憶を犠牲にしたのだ!」
遠くでリンダさんの叫びが聴こえる。
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