【R18】嫌いになりたい、だけなのに

おうぎまちこ(あきたこまち)

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「はあ、あ……」

 しばらく熱に浮かされたかのようなオデッセイだったが、次第に落ち着きを取り戻しつつあった。

(一瞬、全身から熱が迸ったのかと思いましたわ……)

 高位魔術を解放した後のように、肩で呼吸をしていたのだが、徐々に肺が空気を取り込みやすくなってきている。
 徐々に周囲のことを認識できるようになってきた。
 どうやらケンダルに抱きしめられているようだ。
 自分だけが裸のままだったことを思いだし、全身が羞恥で再び熱を帯びる。
 そっと、彼の顔を振り仰いだ。

「ケン……ダル……?」

 愛しいケンダルの碧い瞳と出会う。
 ……オデッセイは、ハッとなった。
 
(どうして……?)

 愛しい。
 確かにそう思った。
 『逆惚れ薬』を間違いなく吸入したはずなのに……
 吸えば、ケンダルのことを嫌いになれるはずだったのに……

(吸い方がおかしかったの……?)

 だが、先ほど感じた異常な熱を思い出すに、ちゃんと効果はあったはずだ。

 それに、どうしてだか……今までにない前向きな発想が……実はケンダルに愛されているのではないか?
そんな発想が頭の中に浮かんでくる。

「ケンダル、貴方、私のことが好きだから、令嬢たちにちょっかいをかけてたみたいね……そんなことで、私の気が引けると思ったの?」

 ……浮かんだだけではなく、うっかり口にしてしまった。
 しかも、ものすごく強気な態度で……!!!!
 ついでに、クスリと微笑を浮かべてしまった。

(私ったら、なんて発言を……!)

 普段の自分もケンダルの前ではツンツンしてしまうが、ここまで好かれている発言は出来ない……!
 鏡を見ずとも分かる。
 自分がかなり挑発的な表情を浮かべていることが……!
 ケンダルには、かなり傲慢な女性として映っているだろう。
 だがしかし、口にすればするほど、なんだか本来の自分ではないようで、どんどん気持ちが昂っていく。

「今だって、私と結ばれる最高の好機だったはずなのに……私を満足させられる自信がないようね……女性たちと遊び慣れているだなんて……所詮、アーサーに負けたくなくて吐いた嘘なのかしら?」

「はあ……? オデッセイ、お前に急に態度が……」

 訝し気な表情を浮かべていたケンダルだったが、突然何か閃いた様子だった。

「……逆惚れ薬って……おいおい、まさか、そういうことかよ……アーサーとリーリアちゃんも悪いやつらだな……日頃の行いが良いからか、俺にとってかなり都合の良い展開になったがな……」

 そうして、彼はニヤリと口の端を吊り上げたのだった。

 気づいた時には、オデッセイは自らケンダルに口づけていた。
 相手の唇を強引に奪った後、相手の瞳をまっすぐに見つめる。

「黙りなさい、ケンダル……ほら、ちゃんと口をお開けになって……」

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