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特別編3-2 おにいちゃんには こうかが ない みたいだ……※
「俺が悪かった! お前を見ていたら意識が飛んだんだ!!!」
――気づけば、お兄ちゃんは床に土下座していた……。
(意識が飛んだ……?)
そんな風には欠片も見えなかった。
心を防衛しているのか、以前からシルヴァお兄ちゃんには、こういう言い訳がましいところがある。
(普段の不愛想で寡黙なところはどこへやら、ものすごい勢いで謝ってくるから、怒るに怒れないのよね……)
それに――。
(この隙に、私も畳みかけるしかない――!)
そう心に決めた私は、彼に向かって問いかけた。
「お兄ちゃん、その、朝もどうして逆方向に向かっているのか教えてもらえる……?」
「それは……」
だけど、シルヴァは言葉に詰まって、それ以上は何も教えてくれない。
「どうしても言えないことなの……?」
「……」
やっぱりシルヴァは答えてはくれなかった。
ちらりと彼を見やる。
――作戦を変更するしかない。
そう思って、問いの種類を変えることにした。
「……教えてくれたら、シルヴァお兄ちゃんの願い事を一つだけ叶えようと思うんだけど……」
ちらちらと彼の表情をうかがう。
周りから見たら無表情(以下略)、シルヴァはかなり迷っているようだった。
「リモーネっ……願いというのは……なんでも良いのか?」
「ええ、なんでも大丈夫よ」
すると、シルヴァが例えを上げてくる。
「その……例えば、休日の膝枕とか……」
「ええ」
「毎朝出発のキスに加えて、『シルヴァ、大好き』と付け加えてくれるとか……?」
「え、ええ……」
(なんでもは言い過ぎたかしら……?)
「毎晩、その……」
(その……?)
そこには、寡黙な青年の姿はなく、煩悩にまみれた饒舌な男の姿があった。
無表情なシルヴァは、次の言葉をためらっている。
だが、しかし――。
――ガンっ。
激しい音が聴こえたかと思うと、シルヴァが床に頭を打ち付けているところだった。
「お、お兄ちゃん! 怪我しちゃうわ!」
「すまないリモーネ……いかに愛するお前の願いであろうとも、俺には、彼らを裏切ることなど――どうしても、今は――」
苦し気に呻くシルヴァを見て、私はふうっと息を吐いた。
決してシルヴァを追い詰めたいわけではない。
(浮気ではやっぱりなさそうだし……)
「分かったわ、お兄ちゃん。その代わり、教えることが出来るようになったら、教えてもらえる?」
「もちろんだ、リモーネ……!」
「きゃっ……!」
がばっと立ち上がった彼は、私に抱き着いてくる。
(あ……!)
お腹のところに、彼の猛りがぶつかってきているのが分かって、途端に恥ずかしくなる。
「リモーネ……」
彼の言わんとすることは分かるのだが――。
「でも仕事の時間で……」
しかし、シルヴァはめげずに告げてくる。
「このままだと仕事に差し障りが出る……良かったら……」
(お兄ちゃんの言い方は、いつもずるいわ……)
「あっ……」
――結局、彼の執務室で、情事は再開されたのだった。
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