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番外編
後から思えばー発情期の片鱗ー <終わらない長いキス翌日>
しおりを挟む肩に残った小さな傷跡にアルヴィスが顔を顰める。
「痛い」
「ごめん。
だってアルヴィスが声出させようとするから」
自分は悪くないと主張しておく。
なんかいつもよりちょっと意地悪な抱き方だった。
「それはお前が……」
「私が、何?」
言いかけて止めるアルヴィス。
何か変だな。
さらりと髪を梳かれ耳にかけられる。
「何かあったか?」
討伐に行ってる時に何かあったとか、そう聞かれるけど特に心当たりはない。
鬱陶しいのがいたり長く会えなかったのが少し寂しいとかはあったけど、何かと言うほどのこともない。
「そうか……?」
疑わしそうに見るアルヴィスに首を傾げる。
何がそんなに気になるんだろう。
頬に当てられた手のひら、動いた指先が傷のあった箇所を撫でる。
怪我したことを言ってる?
でもアルヴィスに傷のことは言ってないし、他から聞いたとしても見てもいない治った傷に何か言うほどアルヴィスも過保護じゃない。
「いや、俺の気にしすぎだろう」
なんでもないと言ってシャツを羽織ろうとするので止める。
「着替える前に手当て」
若干渋られた。
指に取った薬を自分がつけてしまった跡へ塗りつける。
早く治るといいな。
傷へ満遍なく薬を付けていたら「もういい」とストップが入った。
沁みるのか顔を顰めている。そんなに沁みる薬ではないんだけど。
とりあえず塗り終えはしたので肩から手を離して、布で指に付いた薬を拭った。
∴∵∴∵∴∵
食事を終えてエイルと別れた後、一度戻った自室で着替え直す。
エイルが残した跡を見て昨夜から感じていた違和感が蘇る。
薄く唇を開いて舌を招き入れる仕草。
唇が離れるのを咎めるように柔く舌を食む動き。
肌のどこに触れても鋭敏な反応を返し息を乱す姿。
普段のエイルを知っているとどれも違和感がある。
基本的に色事を好まないエイルはアルヴィスに触れられることを許すけれど、自ら積極的に触れ合いを求めることはない。
たまに戯れのようにアルヴィスの行為をやり返してくることはあるが、それは悪戯心からであって興奮の証でないことを知っている。
久々の行為だったからだろうか。
それにしては……。
薬の馴染んだ肩に触れる。
咬み跡に薬を塗っていた手付きがやけに官能的だった。
いつものエイルならぴっと塗って終わりだろ、絶対。
ぬり、ぬり、ぬり、と繰り返される動きを止めさせエイルの顔を見たが、よくわかっていない顔をしていた。
煽るような意図があるなら大歓迎だが、エイルに限ってそれもないだろうし。
何だったんだ、まったく。
今更ながら熱くなる顔に髪をかき上げる。
始業まで時間があってよかった。
平静を装えるまでに少し時間がかかりそうだった。
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