竜族の女騎士は自身の発情期に翻弄される

紗綺

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見解の相違 ☆

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「いや、あれはむしろ喜ばしいことだったが」

強引に迫ったことを申し訳ないと謝っていたはずなのに、アルヴィスの返事が信じられなくて硬直する。

「え?」

冗談かと思ったら真顔だ。本音で言っているという。
あんな行為が喜ばしかった?

「押さえこまれたときは多少ショックだったが乱暴ではなかったし、それよりもお前の口や舌で愛撫されたことの方が衝撃だった」

目元を赤らめながら話すアルヴィスの表情がだんだん緩んでいく。

「普段されるがままのお前が積極的に俺の情欲を煽ろうとする姿に興奮しないわけないだろう。
しかも触れてくるのがお前が好んで愛撫を許すところだろう? 何も言わないけどいつもそこがすごく感じてる場所なんだなと思ったらうれしくなってな」

うれしそうに緩んだ口元がエイルの醜態を洗いざらい晒していく。

「やめて! 聞きたくない!」

アルヴィスの良いところを攻めてたつもりが自分がされてて良いところを晒していたなんて知りたくなかった!

「ちゃんと気持ち良かったから安心しろ」

「なに安心って」

もう聞きたくないと耳を塞ぎたくなるエイルに構わずアルヴィスは続ける。その声が徐々に恍惚さを帯びてくる。

「おまけに初めてあそこに触られたし、軽く擦られただけで達しそうだった。
とどめが自分から上に乗って動きだしただろ? 都合のいい夢でも見てるのかと思った」

ずっと受け身でしか行為を受け入れなかったエイルが自ら誘ってきただけでなくアルヴィス自身に触れ、快楽を自分で追う姿に欲求不満が見せた夢だと思ったという。
いっそエイルも夢であってほしかったと思う。
人から聞く自分の痴態がこんなにダメージを与えるものだと思わなかった。

「快楽に溺れてた俺をお前の声が正気に戻したんだ。
あんな声で名前を呼ばれて、悦楽に沸いてた頭が一気に覚めた」

エイルが平静じゃなかったのは部屋に入る前からわかっていたのに、与えられる興奮と快感に思考を放棄していたと述懐する。

「そうさせたのは私だよ。
あんな、最低のやり方で身体を奪おうとするなんて自分自身が信じられない」

「お前にとっては最低でも俺にとっては最高……、ではなくてもすごい刺激的な体験でうれしかったけどな」

じろりと睨んだエイルに言い直したアルヴィスが真面目な顔に戻って言う。

「お前はあんまりそういう行為が好きじゃないからそう思うかもしれないけどな。
健全な若い男だったら恋人が積極的に誘ってくれたらうれしいものだぞ」

「――!」

ちょっと衝撃的なことを言われた。

「アルヴィスは、私がそういうことを好きじゃないと思っていたの?」

嫌々付き合ってたわけじゃないのに、ショックだ。
確かにそんな気分じゃないときはやんわり断ってたけど。

「いや、お前その気になれないときはやんわりだけど絶対に譲らないだろ。
俺も自分の欲を満たすために無理強いはしたくないからそれは良いんだけどな」

くちづけをしたり服に手をかけても嫌がらないときは付き合ってもいいという合図で、やんわり手を外されたら今日は付き合えないという返事だと判断していたと。
そこまで聞いてエイルは頭を抱えた。
そんなにわかりやすく拒否してたなんて。
全然自覚無かった!!
本当に!? そうなの!??

「ウォルドに聞いて納得した。 竜族は発情期以外はそもそもそんなにしないものなんだってな?」

個人差はあっても多くはそうだ。他種族のパートナーを持った者はまた違うかもしれないが、竜族同士なら発情期以外は全く身体を合わせないことも珍しくない。
竜族が同族で固まるのもそういう理由かもしれない。生活の不一致で別れるというのは人族でも獣族でもある話だし他種族ともなればどうしても合わないこともあるのだろう。

「それ聞いて俺はうれしかったよ。
俺に合わせてくれたことも。
嫌々受け入れるんじゃなくて、心地よく受け入れてくれたことがさ」

伸ばした手がエイルの頬に触れる。

「知ってるか?
そういうことをしても良いって思ってるとき、自分がどういう顔をしてるのか」

知らないと首を振る。


「いつもと同じような顔をして笑っているのに、すごく色っぽい」

弧を描く口元がとても楽しそうで、何をされるのか心待ちにしているように見えるとアルヴィスが妖しく笑う。
その顔の方がよっぽど色っぽいと思う。

「そう、かも」

襟を緩められて、頬を撫でていた手が首筋に下りていく。
エイルの反応を見て動かされる手にぞくぞくとする。
なによりもその、エイルを見つめるアルヴィスの、情欲に濡れた瞳がエイルを高ぶらせていく。

「アルヴィスが、何をしようと考えてるのか、私がどんな反応するか観察してるその目見てるとドキドキする」

エイルの好きな青い瞳が、じっと見つめている。
エイルの反応を見逃すまいとするその目。

「んっ」

反応を見せた時にうれしそうに細められるその目が好きだ。

「アルヴィスが気持ち良さそうにしてるのも好き」

エイルの身体に触れ、高ぶった己を擦りつけてくるとき。
堪えるようにエイルの中を指で解しとろかし待ちわびたように腰を進めるとき。
苦しそうな息を吐いてエイルを見る潤んだ瞳がたまらない。

「だからっ」

あの夜もたまらなく興奮した。

「酷いことをしてると思ったけど、あの夜のアルヴィスも色っぽくてぞくぞくした」

「俺も、いつもより発情してるお前に興奮した」

普段使わない直接的な言葉にふるりと震える。珍しい。こんなにお互いのことを話ながら行為をするのは初めてだ。

「発情期はほぼ終わったんだろう?」

ゆっくりと焦らすように服をはだけさせていく。

「まだわからない、っん!
瞳の色は落ち着いてきたけど、他はどうなのか」

目に見える影響は瞳だけだったのでよくわからない。
でも……。

「でもっ、あっ!」

臍まで開けられた制服から零れた胸に口づけられて声を漏らす。

「でも?」

赤く付いた痕を舌でなぞりながら聞いてくる声がとても楽しそう。
答えを待つ青い瞳を見つめながらエイルも手を伸ばす。
指の先でアルヴィスの耳から顎までをなぞる。かすかに息を詰めたアルヴィスの反応に口角がつり上がる。

「もっと、アルヴィスに触りたい。
気持ち良くさせたい、だから……。
何をしたら気持ち良いか教えて?」

エイルが言い終わらないうちに手を掴まれて深く口づけられていた。


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