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【1-4】西園寺・フェラ・梅。あなた、勇気があって口が堅いわね。気に入ったわ。
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──【1-4】──
この後は山田伊織に取って怒涛の数時間だった。
数台のパトカーと救急車三台がやってきた。
救急隊員が倒れている犯人二人を素早く連れて行った。
西園寺・フェラ・梅が撃たれたとの多数の情報があったのだろう。
警察官と救急隊員が西園寺を囲んで救急車に乗せようとしたが、
「私、何ともありませんけど?」
と何事もなかったかのように、入り口付近を掃除していた。
「君。撃たれたって聞いたけど大丈夫なのかい?」
と警官。
「撃たれた? ああ。あれはわざと撃たれたふりをしたんです。そうすれば犯人もどこかに行ってしまうと思ったので」
と小学校高学年少女にしか見えない笑顔を向けた。
「しかしだね。血が出ていたらしいじゃないか?」
と突っ込んで訊くと、
「あれはケチャップです。その方が撃たれた感じがするでしょう」
といたずらっ子っぽく舌を出した。
「まあ、何事もないなら、よかったよ」
と救急車一台は空で帰って行った。
気流風子と稲妻雷も警察から話を聞かれた。
雷は店先で事情聴取され、風子はパトカー内で訊かれた。
だが二人共、気が動転してしまっていてよく覚えていないと答えた。
犯人らは西園寺さんを撃ってから、外に飛び出して行った。西園寺さんが撃たれたので何とかしようと、取り敢えず夢中で二人組を追いかけたら、犯人らは倒れていた。
と説明した。
後日談だが、警察がきた。
防犯カメラと野次馬が録画した動画もチェックしたらしいのたが、
「犯人の一人は突然、身体が動かなくなった。もう一人の犯人は飛び上がって頭から落ちた」
と続ける。
「それで犯人二人は、二人共頸椎損傷による四肢麻痺と診断された。どうしてそうなったのかさっぱり分からないんだ。何か知らないかい?」
と聞かれたが、風子も雷も黙っていると、
「犯人の仲間割れじゃないですかね。それとも天罰かしら。人によっては倒れただけでも四肢麻痺になる人もいないとは限りませんからね」
と西園寺は答えた。
警官らは、
「犯人二人は余程、運が悪かったのだろう。そうとしか考えられんなあ」
と言って警察として、この事件はひとまず幕を下ろした。
そして病院では長髪の犯人が、
「女の指から電気が出て、その後身体が動かなくなった」
と語り、
スキンヘッドの犯人は、
「女が風を起こして、空中に飛ばされた」
と言っていることも、警官は話した。
「連中は精神科にも通っているそうだ」
と気の毒そうに話してくれた。
そして事件当日だが、もちろん山田伊織もすぐに事情を訊かれたが、
「そのう……。気が動転してしまって、よく覚えていません……」
と答えた。
結局、伊織は警察には何も話さなかった。
「まあ、目の前で人が撃たれて殺されたと思い込めば、気が動転するのも分かるがね」
と取り調べた警察官はそう言って、伊織を返してくれた。
だが!
答えられるはずがない!
西園寺・フェラ・梅は確かに銃で撃たれて、腹部から大量の血を流した。
その際お客全員が、犯人二人と西園寺から離れ、テーブルの下に隠れた客らは全員頭を押さえて俯いた。
その犯人も風子の「風」と発した後に、店内から道路に吹き飛ばされた。
つまり西園寺の傷が治るまで側にいたのは伊織だけだった。
伊織は見てしまったのだ。
その大量の血が、まるでアメーバのように西園寺の身体に戻って行き、傷口からピストルの弾が、ポロリと出るところまでを。
そして西園寺は伊織の耳元で言った。
「今見たことは言わないでね。さもないと大変なことになるわよ……」
と脅された。
稲妻雷が「サンダー」と言ってから指先が一瞬輝き、銃を持った長髪の犯人がぐったりしたこと。
気流風子が「風」と言ってからスキンヘッドの男が、飛び上がったくらいでは到達出来ない高さまで上がって、頭から落ちたこと。
この三人は何者なのか?
妖怪? アンドロイド? 超能力者? 宇宙人?
もし見たままを、そのまま警察に話したところで、誰が信じてくれるだろう……。
後日に聞いた犯人と同じ、精神科に通うことになっていただろう。
伊織も病院に連れていかれるだけである。
いや、それよりも!
警察が来る前に西園寺が伊織に言った言葉をまた思い出す。
「今見たことは言わないでね。さもないと大変なことになるわよ……」
そんな化け物三人から狙われたら、命がいくつあっても足りはしない。
生きたければ、見たことは誰にも一切、口外しないことである。
そんな伊織が警察から開放された時に、風子が、
「しまった! 午後の学校にイケなかったよう」
と嘆いていると、雷が、
「まったくよ。いい迷惑だわ」
と言うのが聞こえたところで、山田伊織は疲れと緊張からの開放でいつの間にか倒れるように寝てしまった。
伊織が目覚めると、そこは無造作に段ボールが積まれた畳の部屋だった。
「ここはどこだ?」
と見渡す。
エアコンが動いていて快適な温度である。
自分はふっくらとした布団に寝ていたが、少し足先が飛び出していた。
見ると部屋には、大きな冷蔵庫が置いてあり、その横には段ボールが積んであった。
一瞬ここがどこだか分からなかったが、ロッカーからエプロンを出した時に見えていた、カレー店の控え室の畳部屋だと思い出した。
「起きた?」
と声をかけてきたのは西園寺だった。
伊織は思わず布団から飛び出し、冷蔵庫に背中を張り付かせた。
「そんなに怖がらないの。と言っても無理かぁ~。見ちゃったものねぇ~」
とニヤリと笑うと、伊織は「ひっ!」と声を出して震え出した。
「あ。起きた。お兄さん」
と西園寺の後ろから、人懐っこい笑顔を見せてくれたのは、背が一八〇センチの伊織と同じくらいの大柄な女子高生で、胸もお尻も大きい風子だった。
「よかったらカレー、食べない。今日はたくさん余っているから遠慮はいらないわ」
と微笑みながら現れたのは、身長一六〇センチよりは高く、透き通るような美しい顔に、細身だが胸と腰には大きなの丸みを持った、まさに美女と言っていい雷だった。
「伊織君、でいいよね。今日は散々な一日だったけど、みんなが無事で何よりだったわ」
と控え室から出るように、西園寺は手招きした。手元を震わせながら、並べられた自分の靴を伊織は履いた。
「ここに座って」
と西園寺に言われて、また奥のカウンターの端に座った。
廚房に入った西園寺は、手慣れた手つきでカレーをよそった。
「あのう……。僕は……。どうなるんですか?」
と言う伊織に、
「取り敢えず、カレーを食べてくれるかな? あんな事があって余っちゃったのよ。昼と夕方連続で悪いんだけど」
と微笑む。
「え? あ。はい。それは大丈夫です。このカレー、凄く美味しいので。ただ、その……」
とカレーを見つめていると、
「ほら~。フィラさんが脅し過ぎたから、お兄さん、緊張しちゃって食事が喉を通らないんじゃない」
と風子が言った。
「確かにそうかもね。お兄さん、フィラさんの血が傷口に戻っていくところを、見たんでしょう?」
と雷。
伊織は絶句して、
「見、見てません! 僕は何も見てません!」
と身体を震わせている。
「まあ、びっくりするよね~。私も初めて見た時は、びっくりしたもの」
「私もよ」
と風子と雷は顔を見合わせ微笑んだ。
「伊織君。なかなか用心深いわね。ますます気にいったわ。人間には用心深さは大切よ。そのカレーには何も入っていないから安心して食べなさい」
と西園寺・フィラ・梅。
「……分かりました。ではご馳走になります」
と手を合わせて、食べ始めた。
「ここのカレーは美味しいですね。人気があるはずです……」
と言った。
「ありがとう。ところでさ」
と西園寺は伊織の前に立った。身長は一四〇センチくらいだろうか? そんな西園寺がカレーを食べる伊織の顔を覗き込んだ。
「あなた、犯人らが私に絡んできた時に、止めに入ってくれたわよね」
と嬉しそうに言った。
「そうそう」
と感心する風子。
「私ね。思ったの。この男の子、勇気あるなあ~ってね」
「私も思った」
と微笑む雷。
「その上、口も堅そうなのもいいわね。よく警察に言わなかったわね。私の血のこととか、風ちゃんや雷ちゃんの能力のことも」
すると、
「言っても信じてもらえないでしょうし。それにお二人のおかげで僕は撃たれずに済んだようなものです。ある意味、命の恩人を困らせるようなことは、絶対にしませんから」
と伊織は言った。
西園寺・フィラ・梅と、気流風子と、稲妻雷は、三人顔を見合わせ笑った。
「ここって女所帯じゃない。そんなところに男性を入れるのにはかなり強い抵抗があったんだけどさ」
と西園寺。
「私達、三人。伊織君の事が気に入っちゃったのよ。どう? もし、よかったら住み込みでここで働かない?」
行くところのない山田伊織は、
「いいんですか……。こちらこそ、お願いします」
と頭を下げた。
「こちらこそ」
と笑顔の西園寺。
笑顔で笑い合う、風子と雷。
「ただ……」
と伊織が続けた。
「ただ、何?」
と西園寺。
「大変なことになるわよ……って言われましたけど。僕は何をされるんですか……?」
と震えながら訊いた。
「もう! フィラさん、脅し過ぎ~!」
と風子。
「伊織さん、震えているじゃない! 大丈夫ですから。何もされませんから」
と雷は伊織の肩に手を置いて、励ました。
西園寺は、
「あなたって勇気があって口が堅い。つまり私達、気に入ったってことよ。そして何もしないわ。これからよろしくね」
と微笑んだ。
2023年12月16日
2025年6月2日 修正
※当サイトの内容、テキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
また、まとめサイト等への引用をする場合は無断ではなく、こちらへお知らせ下さい。許可するかを判断致します。
この後は山田伊織に取って怒涛の数時間だった。
数台のパトカーと救急車三台がやってきた。
救急隊員が倒れている犯人二人を素早く連れて行った。
西園寺・フェラ・梅が撃たれたとの多数の情報があったのだろう。
警察官と救急隊員が西園寺を囲んで救急車に乗せようとしたが、
「私、何ともありませんけど?」
と何事もなかったかのように、入り口付近を掃除していた。
「君。撃たれたって聞いたけど大丈夫なのかい?」
と警官。
「撃たれた? ああ。あれはわざと撃たれたふりをしたんです。そうすれば犯人もどこかに行ってしまうと思ったので」
と小学校高学年少女にしか見えない笑顔を向けた。
「しかしだね。血が出ていたらしいじゃないか?」
と突っ込んで訊くと、
「あれはケチャップです。その方が撃たれた感じがするでしょう」
といたずらっ子っぽく舌を出した。
「まあ、何事もないなら、よかったよ」
と救急車一台は空で帰って行った。
気流風子と稲妻雷も警察から話を聞かれた。
雷は店先で事情聴取され、風子はパトカー内で訊かれた。
だが二人共、気が動転してしまっていてよく覚えていないと答えた。
犯人らは西園寺さんを撃ってから、外に飛び出して行った。西園寺さんが撃たれたので何とかしようと、取り敢えず夢中で二人組を追いかけたら、犯人らは倒れていた。
と説明した。
後日談だが、警察がきた。
防犯カメラと野次馬が録画した動画もチェックしたらしいのたが、
「犯人の一人は突然、身体が動かなくなった。もう一人の犯人は飛び上がって頭から落ちた」
と続ける。
「それで犯人二人は、二人共頸椎損傷による四肢麻痺と診断された。どうしてそうなったのかさっぱり分からないんだ。何か知らないかい?」
と聞かれたが、風子も雷も黙っていると、
「犯人の仲間割れじゃないですかね。それとも天罰かしら。人によっては倒れただけでも四肢麻痺になる人もいないとは限りませんからね」
と西園寺は答えた。
警官らは、
「犯人二人は余程、運が悪かったのだろう。そうとしか考えられんなあ」
と言って警察として、この事件はひとまず幕を下ろした。
そして病院では長髪の犯人が、
「女の指から電気が出て、その後身体が動かなくなった」
と語り、
スキンヘッドの犯人は、
「女が風を起こして、空中に飛ばされた」
と言っていることも、警官は話した。
「連中は精神科にも通っているそうだ」
と気の毒そうに話してくれた。
そして事件当日だが、もちろん山田伊織もすぐに事情を訊かれたが、
「そのう……。気が動転してしまって、よく覚えていません……」
と答えた。
結局、伊織は警察には何も話さなかった。
「まあ、目の前で人が撃たれて殺されたと思い込めば、気が動転するのも分かるがね」
と取り調べた警察官はそう言って、伊織を返してくれた。
だが!
答えられるはずがない!
西園寺・フェラ・梅は確かに銃で撃たれて、腹部から大量の血を流した。
その際お客全員が、犯人二人と西園寺から離れ、テーブルの下に隠れた客らは全員頭を押さえて俯いた。
その犯人も風子の「風」と発した後に、店内から道路に吹き飛ばされた。
つまり西園寺の傷が治るまで側にいたのは伊織だけだった。
伊織は見てしまったのだ。
その大量の血が、まるでアメーバのように西園寺の身体に戻って行き、傷口からピストルの弾が、ポロリと出るところまでを。
そして西園寺は伊織の耳元で言った。
「今見たことは言わないでね。さもないと大変なことになるわよ……」
と脅された。
稲妻雷が「サンダー」と言ってから指先が一瞬輝き、銃を持った長髪の犯人がぐったりしたこと。
気流風子が「風」と言ってからスキンヘッドの男が、飛び上がったくらいでは到達出来ない高さまで上がって、頭から落ちたこと。
この三人は何者なのか?
妖怪? アンドロイド? 超能力者? 宇宙人?
もし見たままを、そのまま警察に話したところで、誰が信じてくれるだろう……。
後日に聞いた犯人と同じ、精神科に通うことになっていただろう。
伊織も病院に連れていかれるだけである。
いや、それよりも!
警察が来る前に西園寺が伊織に言った言葉をまた思い出す。
「今見たことは言わないでね。さもないと大変なことになるわよ……」
そんな化け物三人から狙われたら、命がいくつあっても足りはしない。
生きたければ、見たことは誰にも一切、口外しないことである。
そんな伊織が警察から開放された時に、風子が、
「しまった! 午後の学校にイケなかったよう」
と嘆いていると、雷が、
「まったくよ。いい迷惑だわ」
と言うのが聞こえたところで、山田伊織は疲れと緊張からの開放でいつの間にか倒れるように寝てしまった。
伊織が目覚めると、そこは無造作に段ボールが積まれた畳の部屋だった。
「ここはどこだ?」
と見渡す。
エアコンが動いていて快適な温度である。
自分はふっくらとした布団に寝ていたが、少し足先が飛び出していた。
見ると部屋には、大きな冷蔵庫が置いてあり、その横には段ボールが積んであった。
一瞬ここがどこだか分からなかったが、ロッカーからエプロンを出した時に見えていた、カレー店の控え室の畳部屋だと思い出した。
「起きた?」
と声をかけてきたのは西園寺だった。
伊織は思わず布団から飛び出し、冷蔵庫に背中を張り付かせた。
「そんなに怖がらないの。と言っても無理かぁ~。見ちゃったものねぇ~」
とニヤリと笑うと、伊織は「ひっ!」と声を出して震え出した。
「あ。起きた。お兄さん」
と西園寺の後ろから、人懐っこい笑顔を見せてくれたのは、背が一八〇センチの伊織と同じくらいの大柄な女子高生で、胸もお尻も大きい風子だった。
「よかったらカレー、食べない。今日はたくさん余っているから遠慮はいらないわ」
と微笑みながら現れたのは、身長一六〇センチよりは高く、透き通るような美しい顔に、細身だが胸と腰には大きなの丸みを持った、まさに美女と言っていい雷だった。
「伊織君、でいいよね。今日は散々な一日だったけど、みんなが無事で何よりだったわ」
と控え室から出るように、西園寺は手招きした。手元を震わせながら、並べられた自分の靴を伊織は履いた。
「ここに座って」
と西園寺に言われて、また奥のカウンターの端に座った。
廚房に入った西園寺は、手慣れた手つきでカレーをよそった。
「あのう……。僕は……。どうなるんですか?」
と言う伊織に、
「取り敢えず、カレーを食べてくれるかな? あんな事があって余っちゃったのよ。昼と夕方連続で悪いんだけど」
と微笑む。
「え? あ。はい。それは大丈夫です。このカレー、凄く美味しいので。ただ、その……」
とカレーを見つめていると、
「ほら~。フィラさんが脅し過ぎたから、お兄さん、緊張しちゃって食事が喉を通らないんじゃない」
と風子が言った。
「確かにそうかもね。お兄さん、フィラさんの血が傷口に戻っていくところを、見たんでしょう?」
と雷。
伊織は絶句して、
「見、見てません! 僕は何も見てません!」
と身体を震わせている。
「まあ、びっくりするよね~。私も初めて見た時は、びっくりしたもの」
「私もよ」
と風子と雷は顔を見合わせ微笑んだ。
「伊織君。なかなか用心深いわね。ますます気にいったわ。人間には用心深さは大切よ。そのカレーには何も入っていないから安心して食べなさい」
と西園寺・フィラ・梅。
「……分かりました。ではご馳走になります」
と手を合わせて、食べ始めた。
「ここのカレーは美味しいですね。人気があるはずです……」
と言った。
「ありがとう。ところでさ」
と西園寺は伊織の前に立った。身長は一四〇センチくらいだろうか? そんな西園寺がカレーを食べる伊織の顔を覗き込んだ。
「あなた、犯人らが私に絡んできた時に、止めに入ってくれたわよね」
と嬉しそうに言った。
「そうそう」
と感心する風子。
「私ね。思ったの。この男の子、勇気あるなあ~ってね」
「私も思った」
と微笑む雷。
「その上、口も堅そうなのもいいわね。よく警察に言わなかったわね。私の血のこととか、風ちゃんや雷ちゃんの能力のことも」
すると、
「言っても信じてもらえないでしょうし。それにお二人のおかげで僕は撃たれずに済んだようなものです。ある意味、命の恩人を困らせるようなことは、絶対にしませんから」
と伊織は言った。
西園寺・フィラ・梅と、気流風子と、稲妻雷は、三人顔を見合わせ笑った。
「ここって女所帯じゃない。そんなところに男性を入れるのにはかなり強い抵抗があったんだけどさ」
と西園寺。
「私達、三人。伊織君の事が気に入っちゃったのよ。どう? もし、よかったら住み込みでここで働かない?」
行くところのない山田伊織は、
「いいんですか……。こちらこそ、お願いします」
と頭を下げた。
「こちらこそ」
と笑顔の西園寺。
笑顔で笑い合う、風子と雷。
「ただ……」
と伊織が続けた。
「ただ、何?」
と西園寺。
「大変なことになるわよ……って言われましたけど。僕は何をされるんですか……?」
と震えながら訊いた。
「もう! フィラさん、脅し過ぎ~!」
と風子。
「伊織さん、震えているじゃない! 大丈夫ですから。何もされませんから」
と雷は伊織の肩に手を置いて、励ました。
西園寺は、
「あなたって勇気があって口が堅い。つまり私達、気に入ったってことよ。そして何もしないわ。これからよろしくね」
と微笑んだ。
2023年12月16日
2025年6月2日 修正
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