魔王の最終奥義で全員転生したが、なんで魔王までハーレムメンバーなんだよ!

東岡忠良

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【3-2】突然、現れた高身長の美女。彼女は自らをイカリと名乗った。

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【3-2】突然、現れた高身長の美女。彼女は自らをイカリと名乗った。

──【3-2】──

「おう。久しぶりだな、二人共」
 と微笑むのは、身長一八〇センチはある美少女だった。

 白兎颯と津香沙真帆を見つめるポニーテールの黒髪の美女は、動きやすい純白のTシャツに黒のタイトスカート姿である。 

 白兎颯こと僧侶ハクトと、津香沙真帆こと魔法使いツカーサは一瞬、何者か分からなかったが、広い肩幅に筋肉隆々りゅうりゅうだった男のイカリの面影を残すように、女となったその姿は、大きな胸と丸みを帯びたはちきれんばかりの腰と、太めの太腿ふとももに長く白い足を見て思わず叫んだ。

 戦士イカリ!

「はは。やっと分かったか!」
 とニヤリと笑うと、

「どっちがツカーサだ? 可愛らしいこっちか? それとも美人のこっちか?」
 と二人を指差す。

「可愛らしいとは、わしの事かのう?」
 と嬉しそうな白兎颯。
「ちょっと、イカリ。それは失礼なんじゃない?」
 とフォリオス時代と髪の色以外の外見が比較的似ているツカーサは、腰に手を当てて不機嫌そうな顔をする。

「これはすまない。というかツカーサ、手を貸して欲しい!」
 と高身長の美女イカリは言う。

「もちろんよ! 早く勇者様を助けないと消化されてしまうわ」
 とツカーサはジャイアントフロッグに対峙たいじした。

「いいか。オレがジャイアントフロッグの腹を思いっ切り蹴る。そこから出た白いもやに手を触れさせるんだ。そうすれば魔法を少しはまともに使えるようになる」

「イカリも靄に触れるつもりかのう?」
 と若く神秘的な美少女になった僧侶ハクトが言う。

「ああ。取り敢えずはやってみる。魔力がどこまで使えるのかが問題だがな」
 と高身長美女イカリが言うと、ツカーサとハクトの背後から多くの声が聞こえた。

 お嬢様! 危険です!  
 三人共、お戻り下さい!
 みんな、そこを離れなさい!
 警察を呼んだわ! だから化け物から離れて!
 
 老執事や複数のメイドらから声が上がった。
 しかし、止めようとる人達に、軽く右手を上げて応えた美女となったイカリは、助走をつけるために少し後ろに下がった。

「よし! いくぞ!」
 とツカーサに目で合図をすると、全力で走り出した。

 いかん! 危険だ! やめなさい!
 と老執事が叫んだ。

 ジャイアントフロッグは、逃げて行ったツインテールの小柄な少女にまだ執着しているようで、鉄の門に迫った。

 耳の奥まで響き渡る交通事故でしか聞けないような音がした。
 ジャイアントフロッグが鉄の門に体当たりをしたのだ。

 するとあの丈夫な鉄の門が、ジャイアントフロッグの体当たりでUの字にへこんだ。

「強化魔法!」
 とイカリが言うと、全身が一瞬、黄金に光ったが!

「一瞬だけしか光らないのじゃな。じゃと魔法の効き目は弱そうじゃ」
 とハクトが言った。

「蹴りっ!」
 と美女イカリは、ジャイアントフロッグの腹を思いっ切り、美脚で飛び蹴りをした。

 ジャイアントフロッグは痛みを感じたのか低く一声鳴いた。
 白い靄がジャイアントフロッグの皮膚から漏れるように現れた。

「今だ!」
 とイカリとツカーサは白色の靄に触れると、二人は力がみなぎるように、触れた右手が金色に輝いた。

 ファイヤーボール!
 と二人の声が合った。

 イカリからは直径三十センチの、ツカーサからは八十センチの炎の塊が、それそれの右手から発射され、ジャイアントフロッグの顔面に命中した。

 ジャイアントフロッグは魔法攻撃には弱い。苦しみながら両前足を暴れさせ、無造作に動かした。
 すると、

「危ない!」
 とツカーサをかばったイカリに当たってしまった。

「うぐっ!」
 と吹き飛ぶ美女のイカリ。

 口から血を流し、白い肌は傷だらけになり、Tシャツとスカートが破れて、泥だらけになってしまった。

「くっ……。クソッ……」
 とイカリは立てない様子だった。
 ジャイアントフロッグが迫る。 

「世話が焼けるよう!」
 と美少女ハクトが右手を上げると、イカリの怪我がみるみる治った。

 だが衣服の破れや汚れまでは直せない。
 イカリは素早く立ち上がり、ジャイアントフロッグから距離を取ると、

「身体の傷が治っている。婆さん、さすがだな」
 とイカリはフォリオス時代と同じ言い方をしたが、

「こりゃ! 誰が婆さんじゃ!」
 と若い白兎颯の姿で怒った。

「悪いが衣服までは直せんからのう。そこまでの魔力がないのじゃ」
 と白兎颯が言うと、

「服なんてどうでもいいさ。白い靄に触れていないのに、ここまで回復出来るとはさすがだな」
 と美女イカリは微笑んだ。

 その時、ジャイアントフロッグが突然、苦しみ始めた。

「む? どうしたのじゃ?」
 と白兎颯。
「これって、私達の攻撃が利いているのかしら?」
 と津香沙真帆。
「いや。何だか様子が変だ」
 と美女イカリ。

 ジャイアントフロッグは頭を大きく振って、息が荒くなり暴れ出した。

 すると口から白いもやと共に、黄金の光が漏れ出した。

「一体、何がどうした?」
 とイカリがその様子を見つめていると、ジャイアントフロッグの腹が縦に裂けた。
 裂けた腹からは緑色の胃液が漏れ出した。

 そこから、剣の切っ先が現れる。
「これは! 聖剣ペール・ギュント!」

 とイカリが声を出すと、靄と緑の粘液にまみれた人間が姿を現した。

「勇者様!」
 とツカーサは思わず声が出たが、
「待て。様子がおかしい。それに身体が溶けているのではないか?」
 とイカリは言った。

 確かに高校生男子の身体になってしまった勇者ナツキの身体は、ズボンの下に履いていた下着のトランクス以外は、ジャイアントフロッグの胃液で溶かされていた。

「こっ……。これは……」
 とハクトこと白兎颯は余りのむごい姿のために、眉間へ深いしわを寄せていた。

 ツカーサこと津香沙真帆は顔を背けて、一度嗚咽おえつをする。

「これはヤバいかも……。二人共、もっと離れるんだ」
 と言いながら、美人になったイカリが、二人の前に立って後ろに下がるように指示する。

「しかし、このままでは! せめて回復魔法をかけさせてくれ!」
 とハクトが懇願こんがんするように言ったが、

「勇者様の身体が溶けているんだぞ! こんな危険なことはない……」
 とイカリは暗い顔を二人にむけると、

「勇者様を見捨てるのですか!」
 とツカーサは叫んだ。
「見捨てるのではない……。様子を見るだけだ……」

 と言いながらも、美しくなったイカリは、悲しそうな横顔を二人に向けた。
 その時である。

 ジャイアントフロッグの身体が崩れると同時に、白い靄と緑の靄が混じり始め、黄金の細かい粉が光り輝くように、溶けていた勇者の身体を包んだ。

 まず大きな変化をしたのは聖剣ペール・ギュントだった。

 元々、人間の貴族の娘だったのが、呪いによって剣の姿に変えられていた。
 年齢で言えば、八歳くらいの人間の女の子の姿に戻っていた。

 異世界フォリオス時代では気分次第で剣になったり、娘になったりしていたのだが、今は青の多くのレースのついた貴族令嬢の子供用ドレスをまとっている。

「私、人の姿に戻ってますの! 嬉しいですの!」
 と自分の白くて小さな手を見つめた。

「勇者様!」
 と人に戻ったペール・ギュントは後ろを振り返ると、男子高校生の夏木勇の身体が溶けていた。

「ああ⋯⋯。勇者様が溶けている⋯⋯」
 と少女になったペール・ギュントが悲しそうな表情をした時だった。

「えっ? 私の身体が溶けているのか? 痛くもかゆくもないのだが?」
 と言っている間に、男子高校生の夏木勇の身体が、みるみる変化していった。
 
2025年8月29日
2025年11月29日 修正

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