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嫌がらせ
夜になると、帰ってきた家族の気配で真雪は居心地が悪くなる。家なのだから、家族がいて当たり前なわけで、そんなことに苛立つ自分のことも、真雪は嫌だった。
ひきこもりなんだから、文句を言う資格なんてないのに、と自分にいらいらしてくる。
真雪の部屋は静かだった。ふと、部屋の壁に開いている穴をのぞいてみる。机に向かっている夏尋の姿が見えた。勉強中だから静かだったのだ。たまに、夏尋が友達と電話なんかしていると、真雪はほんとうに頭にくる。
夏尋は、小さい頃は引っ込み思案で真雪にずっとくっついていたものだが、高校生の頃くらいから、明るく派手になった。大学は、真雪の行った学部よりも偏差値の高いところに行っている。夏尋が大学受験に合格したとき、真雪は地獄の就活生活を送っていた。
夏尋の人生は順風満帆に思えた。真雪も大学時代は楽しく過ごしていたが、夏尋は真雪よりも充実した生活を送っているように見える。
真雪は、昼間の夏尋の笑顔を思い出した。真雪を嘲笑うあの顔。兄らしくなく家でこそこそしている真雪を、夏尋は笑っていた。
真雪だって、好きでこうなったわけではない。日々つらいのだ。逃れたくても、逃れられない毎日を送っている。真雪は、無性に腹立たしくなってきた。
パソコンデスクの前に座って、パソコンを立ち上げた。イヤホンとパソコンの接続を解いて、パソコンの音量を上げる。
真雪がアクセスしたのは、アダルトサイトだ。購入した動画一覧を開いて、適当な動画をクリックする。
アダルトビデオが再生される。大音量で。
この音量なら、隣の夏尋にも聞こえているだろう。
動画を少し飛ばす。女優が男優の性器を挿入されている箇所を出した。女優は正常位で揺さぶられるたび、大きな喘ぎ声を漏らす。たん、たんと肌のぶつかる音が響いた。
ひきこもりの男一人の部屋で、男女の交合の音がしている。真雪は自分の陰茎を服の中から出し、手で握った。
もう何回も見ている動画だった。普段は家族のいない時間帯に見るが、今回は夏尋への嫌がらせが目的だ。真雪は、いらいらしながら興奮していた。
画面では、裸の女優の丸い胸が揺れている。男優が少し前屈みになった。抽挿はより激しくなる。
女優の顔がどんどん追い詰められていく。真雪の陰茎は固くなっていた。
「あっ、あ——」
女優が震える。絶頂に達したらしく、肩で荒く息をしている。男優は女優を起こして、膝立ちにさせた。
今度は向い合いながら性器を出し入れしている。性器どうしが触れる、ぬちぬちとした音が聞こえた。
「はあ……」
真雪は熱い息を吐いた。右手で自分の昂りを擦っている。左手は胸をなでていた。
画面でも、女優が男優の乳首を指でいじっていた。それに合わせて、真雪も自分の胸の突起に触れる。
「ふ、ん……」
真雪も絶頂に近づいていく。女優の喘ぎが激しくなるにつれて、真雪は手の動きを速めた。
先走りが垂れて、昂りはぐちゅぐちゅと音を立てる。
真雪は親指で先端をぐりぐりと刺激した。
「っ、う——」
真雪は手の中に射精した。手を開くと、べとべとした白濁で塗れている。ティッシュで拭いて、ゴミ箱に捨てた。
ゴミ箱は中のゴミがあふれそうになっていた。部屋には自分以外立ち入らないので、自分が片付けないとそのままだ。面倒だが、明日あたりゴミを出そうと思った。キッチンの蓋付きのゴミ箱に押し込めれば、家族がゴミの収集に出してくれる。
開放感のあとに、虚脱感がくる。気持ちよかったのは一瞬で、そのあとは虚無だ。
真雪は部屋の穴をのぞいた。すると夏尋がベッドに座ってなにかしている。真雪はカメラをズームするみたいに目を凝らした。
夏尋は自慰をしている。
真雪はほくそ笑んだ。
勉強している夏尋の邪魔ができた。
明るく楽しい大学生活を送って、成績も順調だろう弟の時間を邪魔してやった。若い男だから、アダルトビデオ程度で、真面目に勉強しようという気持ちも簡単に揺らぐ。
真雪は動画を閉じた。隣の部屋にも響いていた性行為の音が消える。気分が盛り上がっていたところで突然動画を切られて、夏尋は歯痒い思いをしているだろうか。
真雪は声を出さずに笑った。腹の奥が震える。
真雪は愉快になったあと、次第に真顔になった。なにをしているんだろうという気持ちになったのだ。仕事もせず、勉強もせず、ずっと家にいてやることがこれか?
真雪は余計みじめになった。ベッドに転がって、腕で顔を覆う。自分が生きている意味なんてあるのか。
その問いは考えるだけ無駄だった。結論は、生きている意味がないということになるからだ。
真雪は、死ねないから、ただ生きている。外からは、なにもせず、ぐうたらしているように見えるのだろうが、真雪の胸中はいつも嵐のように荒れていた。
自分はだめだ。
どうしたらいい。
どうしてこんなことになったのか。
「うう……」
真雪は泣いた。弟にくだらない嫌がらせをした馬鹿なのに、泣いた。つらくてしょうがなかった。
真雪はそのまま、ベッドで目を腕で覆って、じっとしていた。なにもする気が起きなかった。やがて家族が寝静まり、真雪の時間が来ても、そのまま動かなかった。
ひきこもりなんだから、文句を言う資格なんてないのに、と自分にいらいらしてくる。
真雪の部屋は静かだった。ふと、部屋の壁に開いている穴をのぞいてみる。机に向かっている夏尋の姿が見えた。勉強中だから静かだったのだ。たまに、夏尋が友達と電話なんかしていると、真雪はほんとうに頭にくる。
夏尋は、小さい頃は引っ込み思案で真雪にずっとくっついていたものだが、高校生の頃くらいから、明るく派手になった。大学は、真雪の行った学部よりも偏差値の高いところに行っている。夏尋が大学受験に合格したとき、真雪は地獄の就活生活を送っていた。
夏尋の人生は順風満帆に思えた。真雪も大学時代は楽しく過ごしていたが、夏尋は真雪よりも充実した生活を送っているように見える。
真雪は、昼間の夏尋の笑顔を思い出した。真雪を嘲笑うあの顔。兄らしくなく家でこそこそしている真雪を、夏尋は笑っていた。
真雪だって、好きでこうなったわけではない。日々つらいのだ。逃れたくても、逃れられない毎日を送っている。真雪は、無性に腹立たしくなってきた。
パソコンデスクの前に座って、パソコンを立ち上げた。イヤホンとパソコンの接続を解いて、パソコンの音量を上げる。
真雪がアクセスしたのは、アダルトサイトだ。購入した動画一覧を開いて、適当な動画をクリックする。
アダルトビデオが再生される。大音量で。
この音量なら、隣の夏尋にも聞こえているだろう。
動画を少し飛ばす。女優が男優の性器を挿入されている箇所を出した。女優は正常位で揺さぶられるたび、大きな喘ぎ声を漏らす。たん、たんと肌のぶつかる音が響いた。
ひきこもりの男一人の部屋で、男女の交合の音がしている。真雪は自分の陰茎を服の中から出し、手で握った。
もう何回も見ている動画だった。普段は家族のいない時間帯に見るが、今回は夏尋への嫌がらせが目的だ。真雪は、いらいらしながら興奮していた。
画面では、裸の女優の丸い胸が揺れている。男優が少し前屈みになった。抽挿はより激しくなる。
女優の顔がどんどん追い詰められていく。真雪の陰茎は固くなっていた。
「あっ、あ——」
女優が震える。絶頂に達したらしく、肩で荒く息をしている。男優は女優を起こして、膝立ちにさせた。
今度は向い合いながら性器を出し入れしている。性器どうしが触れる、ぬちぬちとした音が聞こえた。
「はあ……」
真雪は熱い息を吐いた。右手で自分の昂りを擦っている。左手は胸をなでていた。
画面でも、女優が男優の乳首を指でいじっていた。それに合わせて、真雪も自分の胸の突起に触れる。
「ふ、ん……」
真雪も絶頂に近づいていく。女優の喘ぎが激しくなるにつれて、真雪は手の動きを速めた。
先走りが垂れて、昂りはぐちゅぐちゅと音を立てる。
真雪は親指で先端をぐりぐりと刺激した。
「っ、う——」
真雪は手の中に射精した。手を開くと、べとべとした白濁で塗れている。ティッシュで拭いて、ゴミ箱に捨てた。
ゴミ箱は中のゴミがあふれそうになっていた。部屋には自分以外立ち入らないので、自分が片付けないとそのままだ。面倒だが、明日あたりゴミを出そうと思った。キッチンの蓋付きのゴミ箱に押し込めれば、家族がゴミの収集に出してくれる。
開放感のあとに、虚脱感がくる。気持ちよかったのは一瞬で、そのあとは虚無だ。
真雪は部屋の穴をのぞいた。すると夏尋がベッドに座ってなにかしている。真雪はカメラをズームするみたいに目を凝らした。
夏尋は自慰をしている。
真雪はほくそ笑んだ。
勉強している夏尋の邪魔ができた。
明るく楽しい大学生活を送って、成績も順調だろう弟の時間を邪魔してやった。若い男だから、アダルトビデオ程度で、真面目に勉強しようという気持ちも簡単に揺らぐ。
真雪は動画を閉じた。隣の部屋にも響いていた性行為の音が消える。気分が盛り上がっていたところで突然動画を切られて、夏尋は歯痒い思いをしているだろうか。
真雪は声を出さずに笑った。腹の奥が震える。
真雪は愉快になったあと、次第に真顔になった。なにをしているんだろうという気持ちになったのだ。仕事もせず、勉強もせず、ずっと家にいてやることがこれか?
真雪は余計みじめになった。ベッドに転がって、腕で顔を覆う。自分が生きている意味なんてあるのか。
その問いは考えるだけ無駄だった。結論は、生きている意味がないということになるからだ。
真雪は、死ねないから、ただ生きている。外からは、なにもせず、ぐうたらしているように見えるのだろうが、真雪の胸中はいつも嵐のように荒れていた。
自分はだめだ。
どうしたらいい。
どうしてこんなことになったのか。
「うう……」
真雪は泣いた。弟にくだらない嫌がらせをした馬鹿なのに、泣いた。つらくてしょうがなかった。
真雪はそのまま、ベッドで目を腕で覆って、じっとしていた。なにもする気が起きなかった。やがて家族が寝静まり、真雪の時間が来ても、そのまま動かなかった。
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