雪に白鷺、罪に罰〜ひきこもりの僕が陽キャ弟の弱みを握った結果

Umika

文字の大きさ
3 / 22

嫌がらせ

 夜になると、帰ってきた家族の気配で真雪まゆき居心地いごこちが悪くなる。家なのだから、家族がいて当たり前なわけで、そんなことに苛立いらだつ自分のことも、真雪は嫌だった。

 ひきこもりなんだから、文句を言う資格なんてないのに、と自分にいらいらしてくる。

 真雪の部屋は静かだった。ふと、部屋の壁に開いている穴をのぞいてみる。机に向かっている夏尋なつひろの姿が見えた。勉強中だから静かだったのだ。たまに、夏尋が友達と電話なんかしていると、真雪はほんとうに頭にくる。

 夏尋は、小さい頃は引っ込み思案で真雪にずっとくっついていたものだが、高校生の頃くらいから、明るく派手になった。大学は、真雪の行った学部よりも偏差値の高いところに行っている。夏尋が大学受験に合格したとき、真雪は地獄の就活生活を送っていた。
 夏尋の人生は順風満帆に思えた。真雪も大学時代は楽しく過ごしていたが、夏尋は真雪よりも充実した生活を送っているように見える。

 真雪は、昼間の夏尋の笑顔を思い出した。真雪を嘲笑あざわらうあの顔。兄らしくなく家でこそこそしている真雪を、夏尋は笑っていた。
 真雪だって、好きでこうなったわけではない。日々つらいのだ。逃れたくても、逃れられない毎日を送っている。真雪は、無性に腹立たしくなってきた。
 パソコンデスクの前に座って、パソコンを立ち上げた。イヤホンとパソコンの接続を解いて、パソコンの音量を上げる。
 真雪がアクセスしたのは、アダルトサイトだ。購入した動画一覧を開いて、適当な動画をクリックする。
 アダルトビデオが再生される。大音量で。
 この音量なら、隣の夏尋にも聞こえているだろう。
 動画を少し飛ばす。女優が男優の性器を挿入されている箇所かしょを出した。女優は正常位で揺さぶられるたび、大きな喘ぎ声をらす。たん、たんと肌のぶつかる音が響いた。
 ひきこもりの男一人の部屋で、男女の交合の音がしている。真雪は自分の陰茎を服の中から出し、手で握った。
 もう何回も見ている動画だった。普段は家族のいない時間帯に見るが、今回は夏尋への嫌がらせが目的だ。真雪は、いらいらしながら興奮していた。
 画面では、裸の女優の丸い胸が揺れている。男優が少し前屈みになった。抽挿はより激しくなる。
 女優の顔がどんどん追い詰められていく。真雪の陰茎は固くなっていた。

「あっ、あ——」

 女優が震える。絶頂に達したらしく、肩で荒く息をしている。男優は女優を起こして、膝立ちにさせた。
 今度は向い合いながら性器を出し入れしている。性器どうしが触れる、ぬちぬちとした音が聞こえた。

「はあ……」

 真雪は熱い息を吐いた。右手で自分のたかぶりを擦っている。左手は胸をなでていた。
 画面でも、女優が男優の乳首を指でいじっていた。それに合わせて、真雪も自分の胸の突起に触れる。

「ふ、ん……」

 真雪も絶頂に近づいていく。女優の喘ぎが激しくなるにつれて、真雪は手の動きを速めた。
 先走りが垂れて、昂りはぐちゅぐちゅと音を立てる。
 真雪は親指で先端をぐりぐりと刺激した。

「っ、う——」

 真雪は手の中に射精した。手を開くと、べとべとした白濁でまみれている。ティッシュで拭いて、ゴミ箱に捨てた。
 ゴミ箱は中のゴミがあふれそうになっていた。部屋には自分以外立ち入らないので、自分が片付けないとそのままだ。面倒だが、明日あたりゴミを出そうと思った。キッチンの蓋付きのゴミ箱に押し込めれば、家族がゴミの収集に出してくれる。

 開放感のあとに、虚脱感がくる。気持ちよかったのは一瞬で、そのあとは虚無だ。
 真雪は部屋の穴をのぞいた。すると夏尋がベッドに座ってなにかしている。真雪はカメラをズームするみたいに目をらした。
 夏尋は自慰をしている。
 真雪はほくそ笑んだ。
 勉強している夏尋の邪魔ができた。
 明るく楽しい大学生活を送って、成績も順調だろう弟の時間を邪魔してやった。若い男だから、アダルトビデオ程度で、真面目に勉強しようという気持ちも簡単に揺らぐ。
 真雪は動画を閉じた。隣の部屋にも響いていた性行為の音が消える。気分が盛り上がっていたところで突然動画を切られて、夏尋は歯痒はがゆい思いをしているだろうか。

 真雪は声を出さずに笑った。腹の奥が震える。
 真雪は愉快になったあと、次第に真顔になった。なにをしているんだろうという気持ちになったのだ。仕事もせず、勉強もせず、ずっと家にいてやることがこれか?
 真雪は余計みじめになった。ベッドに転がって、腕で顔を覆う。自分が生きている意味なんてあるのか。
 その問いは考えるだけ無駄だった。結論は、生きている意味がないということになるからだ。
 真雪は、死ねないから、ただ生きている。外からは、なにもせず、ぐうたらしているように見えるのだろうが、真雪の胸中はいつも嵐のように荒れていた。
 自分はだめだ。
 どうしたらいい。
 どうしてこんなことになったのか。

「うう……」

 真雪は泣いた。弟にくだらない嫌がらせをした馬鹿なのに、泣いた。つらくてしょうがなかった。
 真雪はそのまま、ベッドで目を腕で覆って、じっとしていた。なにもする気が起きなかった。やがて家族が寝静まり、真雪の時間が来ても、そのまま動かなかった。
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪い兄は弟の命令通りに身をくねらせる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

執着男に勤務先を特定された上に、なんなら後輩として入社して来られちゃった

パイ生地製作委員会
BL
【登場人物】 陰原 月夜(カゲハラ ツキヤ):受け 社会人として気丈に頑張っているが、恋愛面に関しては後ろ暗い過去を持つ。晴陽とは過去に高校で出会い、恋に落ちて付き合っていた。しかし、晴陽からの度重なる縛り付けが苦しくなり、大学入学を機に逃げ、遠距離を理由に自然消滅で晴陽と別れた。 太陽 晴陽(タイヨウ ハルヒ):攻め 明るく元気な性格で、周囲からの人気が高い。しかしその実、月夜との関係を大切にするあまり、執着してしまう面もある。大学卒業後、月夜と同じ会社に入社した。 【あらすじ】  晴陽と月夜は、高校時代に出会い、互いに深い愛情を育んだ。しかし、海が大学進学のため遠くに引っ越すことになり、二人の間には別れが訪れた。遠距離恋愛は困難を伴い、やがて二人は別れることを決断した。  それから数年後、月夜は大学を卒業し、有名企業に就職した。ある日、偶然の再会があった。晴陽が新入社員として月夜の勤務先を訪れ、再び二人の心は交わる。時間が経ち、お互いが成長し変わったことを認識しながらも、彼らの愛は再燃する。しかし、遠距離恋愛の過去の痛みが未だに彼らの心に影を落としていた。 更新報告用のX(Twitter)をフォローすると作品更新に早く気づけて便利です X(旧Twitter): https://twitter.com/piedough_bl 制作秘話ブログ: https://piedough.fanbox.cc/ メッセージもらえると泣いて喜びます:https://marshmallow-qa.com/8wk9xo87onpix02?t=dlOeZc&utm_medium=url_text&utm_source=promotion

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

上司と俺のSM関係

雫@23日更新予定
BL
タイトルの通りです。読む前に注意!誤字脱字あり。受けが外面は一人称私ですが、砕けると僕になります。

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

イケメン幼馴染に執着されるSub

ひな
BL
normalだと思ってた俺がまさかの… 支配されたくない 俺がSubなんかじゃない 逃げたい 愛されたくない  こんなの俺じゃない。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。