2 / 24
故郷
しおりを挟む
地元に帰るのは何年ぶりだろう
明日香は新幹線に二時間乗ると
今にも廃線になりそうな小さな私鉄電車に乗り換え
よれよれの紙の切符を持ってぼんやりとしていた
山の中をどんどん進む電車
田舎過ぎて自動改札などない無人駅が明日香の育った街だ
地元の進学高校を卒業後
明日香は都会の大学に入った
そしてまあまあ大手のIT企業に就職
仕事に終われた日々であっという間に六年の時がたっていた
見覚えのある景色が迫る
ああ、肩が張る
何故か緊張した
電車が駅につくとゆっくりホームに降りた
懐かしいにおい
田舎の青いにおい
明日香は子供の頃に戻ったように
切符入れの箱に無造作に切符を投げ入れた
「まずはお墓参りに行こう」
明日香はそう呟いた
明日香の両親は早いうちに亡くなっていて
大学時代は少しだけ苦労した
とはいっても実の両親のお墓だ
また今度何時来れるかわからない
幸いにも墓は駅からそう遠くない場所にあった
「お花やさん…無いよなぁ」
そんな事は当然解っていた事だかとりあえず駅前を
キョロキョロしながら歩く
都会だったらすぐ見つかるのに
これだから田舎は…と少し思いながら前に進んだ
「あ、明日香?明日香じゃない!」
前から子供と手を繋ぎながら見覚えのある顔が歩いて来る
「…なっちゃん?」
「そう!菜摘よ!やだ!どうしたのーっ!」
「こっちこそ驚いたわよ!」
明日香は目を丸くしてわざとらしく声をあげた
菜摘に子供が出来ていた事は風の噂には聞いていた
キャラクターのTシャツにキャラクターのサンダル
を履いている菜摘
いかにも田舎のお母さんだ
「明日香、都会に出てからちっとも連絡くれないからビックリしたよー!」
「あは、そ、そうだね。何だかんだ忙しくてあまり連絡とってなくて…」
嘘
別に忙しくなんかなかった
ただ誰かと連絡するなんて思ったこともなかった
「これから晴美の家に行くんところなんだけど、明日香も行く?きっと驚くよ!」
「い、いや、実はこれからお墓参りに行くところなの」
「あ、ご両親の…?そっかぁ…」
菜摘は少し気まずい顔をした
「いくつ?」
「え?」
「なっちゃんの子よ、何歳?」
明日香は空気を変えようと
さっきから不思議そうに顔を見ている
子供の事を問いかけた
「6歳よ、恥ずかしがり屋で…」
「可愛いね、小さい時のなっちゃんに似てるよ」
「やめてよ、恥ずかしい。あ、晴美ん家にも子供がいるのよ!うちの子供よりは大きいけど…ちょっとわけありで…」
え、晴美にも子供がいるんだ?
それは初耳だわ
明日香はチラッと時計に目をやる
「でも数日は実家にいるから、時間があったら連絡するよ!」
明日香は夕方になる前にお墓参りに行きたかったので
菜摘にそう伝えた
「あ、そうなの?じゃ明日か明後日、ご飯でも食べようよみんなで!」
みんなで
いかにも田舎らしい
「いいよ!じゃあまた」
明日香は連絡するよなどと言いながら
晴美の連絡先も聞かず
足早にその場を去った
※※※
相変わらず花屋など無く
明日香はしかたなしに小さな商店で
枯れかかっている菊の花束を買い
墓へ出向いた
ひっそりとたたずむ両親の墓
しかし回りには雑草などはなくお寺の檀家さんが
良く手入れをしているのだなと明日香は感謝した
「あれ、新しいお墓じゃない?珍しい」
明日香の両親の隣にまだ新しい綺麗なお墓が建っているのに
気がついた
田舎は代々伝わる墓ばかり
きれいに輝く真新しい墓石は
ひときは目立っていた
「新谷家」
聞いたことない名字に
建てた人名を見る
「新谷晴美」
晴美ってあの晴美?
先ほどなっちゃんが「わけあり」と言っていたことを思い出す
旦那さん亡くなっているのかな?
明日香は塔婆を覗こうとしたが
ハッと思いとどまり辞めた
そんなことしたってなにもならない
知らなきゃ知らないままでいい
田舎に帰ってきて
つい野次馬根性が出てしまうところだった
やはりこの地で育った明日香
郷に居ては郷に従え?
冗談じゃない私は都会に出て自分を変えたんだ
明日香はもう一度両親の墓前に手を合わし
深く頭を下げた
明日香は新幹線に二時間乗ると
今にも廃線になりそうな小さな私鉄電車に乗り換え
よれよれの紙の切符を持ってぼんやりとしていた
山の中をどんどん進む電車
田舎過ぎて自動改札などない無人駅が明日香の育った街だ
地元の進学高校を卒業後
明日香は都会の大学に入った
そしてまあまあ大手のIT企業に就職
仕事に終われた日々であっという間に六年の時がたっていた
見覚えのある景色が迫る
ああ、肩が張る
何故か緊張した
電車が駅につくとゆっくりホームに降りた
懐かしいにおい
田舎の青いにおい
明日香は子供の頃に戻ったように
切符入れの箱に無造作に切符を投げ入れた
「まずはお墓参りに行こう」
明日香はそう呟いた
明日香の両親は早いうちに亡くなっていて
大学時代は少しだけ苦労した
とはいっても実の両親のお墓だ
また今度何時来れるかわからない
幸いにも墓は駅からそう遠くない場所にあった
「お花やさん…無いよなぁ」
そんな事は当然解っていた事だかとりあえず駅前を
キョロキョロしながら歩く
都会だったらすぐ見つかるのに
これだから田舎は…と少し思いながら前に進んだ
「あ、明日香?明日香じゃない!」
前から子供と手を繋ぎながら見覚えのある顔が歩いて来る
「…なっちゃん?」
「そう!菜摘よ!やだ!どうしたのーっ!」
「こっちこそ驚いたわよ!」
明日香は目を丸くしてわざとらしく声をあげた
菜摘に子供が出来ていた事は風の噂には聞いていた
キャラクターのTシャツにキャラクターのサンダル
を履いている菜摘
いかにも田舎のお母さんだ
「明日香、都会に出てからちっとも連絡くれないからビックリしたよー!」
「あは、そ、そうだね。何だかんだ忙しくてあまり連絡とってなくて…」
嘘
別に忙しくなんかなかった
ただ誰かと連絡するなんて思ったこともなかった
「これから晴美の家に行くんところなんだけど、明日香も行く?きっと驚くよ!」
「い、いや、実はこれからお墓参りに行くところなの」
「あ、ご両親の…?そっかぁ…」
菜摘は少し気まずい顔をした
「いくつ?」
「え?」
「なっちゃんの子よ、何歳?」
明日香は空気を変えようと
さっきから不思議そうに顔を見ている
子供の事を問いかけた
「6歳よ、恥ずかしがり屋で…」
「可愛いね、小さい時のなっちゃんに似てるよ」
「やめてよ、恥ずかしい。あ、晴美ん家にも子供がいるのよ!うちの子供よりは大きいけど…ちょっとわけありで…」
え、晴美にも子供がいるんだ?
それは初耳だわ
明日香はチラッと時計に目をやる
「でも数日は実家にいるから、時間があったら連絡するよ!」
明日香は夕方になる前にお墓参りに行きたかったので
菜摘にそう伝えた
「あ、そうなの?じゃ明日か明後日、ご飯でも食べようよみんなで!」
みんなで
いかにも田舎らしい
「いいよ!じゃあまた」
明日香は連絡するよなどと言いながら
晴美の連絡先も聞かず
足早にその場を去った
※※※
相変わらず花屋など無く
明日香はしかたなしに小さな商店で
枯れかかっている菊の花束を買い
墓へ出向いた
ひっそりとたたずむ両親の墓
しかし回りには雑草などはなくお寺の檀家さんが
良く手入れをしているのだなと明日香は感謝した
「あれ、新しいお墓じゃない?珍しい」
明日香の両親の隣にまだ新しい綺麗なお墓が建っているのに
気がついた
田舎は代々伝わる墓ばかり
きれいに輝く真新しい墓石は
ひときは目立っていた
「新谷家」
聞いたことない名字に
建てた人名を見る
「新谷晴美」
晴美ってあの晴美?
先ほどなっちゃんが「わけあり」と言っていたことを思い出す
旦那さん亡くなっているのかな?
明日香は塔婆を覗こうとしたが
ハッと思いとどまり辞めた
そんなことしたってなにもならない
知らなきゃ知らないままでいい
田舎に帰ってきて
つい野次馬根性が出てしまうところだった
やはりこの地で育った明日香
郷に居ては郷に従え?
冗談じゃない私は都会に出て自分を変えたんだ
明日香はもう一度両親の墓前に手を合わし
深く頭を下げた
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
【最新版】 日月神示
蔵屋
歴史・時代
最近日月神示の予言本に不安を抱いている方もあると思うがまったく心配いらない。
何故なら日月神示では「取り越し苦労や過ぎ越し苦労はするな!」
「今に生きよ!」
「善一筋で生きよ!」
「身魂磨きをせよ!」
「人間の正しい生き方」
「人間の正しい食生活」
「人間の正しい夫婦のあり方」
「身も心も神さまからお借りしているのじゃから夜になって寝る前に神さまに一旦お返しするのじゃ。そうしたら身と心をどのようにしたらよいか、分かるじゃろ!」
たったのこれだけを守れば良いということだ。
根拠のない書籍や情報源等に惑わされてはダメだ。
日月神示も出口王仁三郎もそのようなことは一切言っていない。
これらの書籍や情報源は「日月神示」が警告する「臣民を惑わすものが出てくるから気をつけよ!」
という言葉に注目して欲しい。
今回、私は読者の皆さんに間違った解釈をされている日月神示を分かりやすく解説していくことにしました。
どうか、最後までお読み下さい。
日月神示の予言については、私が執筆中の「神典日月神示の真実」をお読み下さい。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる