指先

M子

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明日香は早足で道を下ると
息を切らしながら
汗だくになって実家に戻った

着ていたパーカーを投げ捨て
頭をモシャモシャと掻いた

余程
暑かったのか
それとも緊張したのかわからない

洗面所に駆けつけ鏡を覗くと
真っ赤になっていた

蛇口を全開にすると
顔を激しく洗った

「はあ…はあ…何してるんだろ…私…」

確かに卓也の事は気にはかけていたが
実際会ってしまった自分に腹が立った

しかも
会話まで…

菜摘の夫、卓也

お互い大学生だった時に

付き合っていたのだ

※※※

明日香大学1年
卓也大学3年



偶然街中で行き会った
右も左もわからない明日香には
何でも知ってた卓也が大人に見えた

その時卓也は大学の野球部でそれなりに
活躍していてた

明日香は
新しい生活に馴染もうと
一生懸命取り組んでいて一生懸命な卓也に
自然と引かれていった

大学こそは別だったが
気がつけば月に数回、いや、週に数回
アパートを行き来する仲になっていた

唯一
肩の力を抜ける時間だったし
懐かしい香りもした

そして何度も抱き合った

しかし付き合って数カ月
卓也はいきなり

「田舎に帰る」


言い出した

明日香は確かに部活の事で悩んでいたし
就活もうまくいかないのかな…
とそれくらいの気持ちだった

「田舎にって…卓也、仕事の宛があるの?」

「いや、実は…菜摘に俺の子が出来たんだ…」

明日香は
目の前が真っ白になった

そして

まただ

菜摘か…と

「そう…田舎に逃げるには結婚は丁度いいんじゃない?」

明日香はそう強気に卓也に伝えると
卓也は

「そうかもな…俺…責任とって田舎に帰るよ…」

「…」

それ以上明日香は言葉をかけなかった
いや言葉が出なかった

卓也は本当、逃げてばかりね


余程言ってやりたかったが
これ以上喋りたくなかった

あれから数年

明日香は海外に出張するという
理由に合わせて卓也はどうなったのか?
という事も帰郷の原因に
なっていたのかもしれない

因みに菜摘は明日香と卓也の関係は
知らない…はずだ

「やはり明日帰ろう…このままここに居ると頭がおかしくなりそう…」

明日香はフラフラと居間まで歩くと
パタンと腰を下ろした

有紀…有紀にだけ伝えておかなきゃ

明日香はスマホを持つと
LINEを開く

「こんばんは、私やっぱり明日帰るね」

そう味気ない短文を送ると
すぐに返信がきた












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