偽りから真へ

優月ジュン(ゆづき じゅん)

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11 かわいいやきもち。

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「久しぶり。どうした?」

休みの日に女友達の“ヤマグチ”から電話が掛かってきて、俺はそれに出た。

葵は今シャワーを浴びている。

久々の連絡にお互い近況報告などをしていた。
どうやらヤマグチは子どもを授かったらしく、結婚をする報告がしたかったようだ。
だから結婚式に参列して欲しいと。
結婚したら旦那の方の地元に行くことになっていて、そうなるともう簡単に会えなくなるからと、
そんなことを言っていた。
今までもしょっちゅう会っていたわけではないが、たまにみんなで集まったりしていた。

それからまたお互いに“誰々は元気だよ”だとか、“あいつは今何々をしているらしい”などの話をしていた。

葵がシャワーから出てくると、俺が電話をしていることに気づき、飲み物を2つ持って俺の隣に座った。それをテーブルに置き葵は俺を見た。
俺は電話中だった為、飲み物を持ってきてくれたお礼をジェスチャーで伝えた。

すると葵は俺に抱きついてきた。

かわいい。
俺に甘えてる。

しばらくすると葵はまた俺の顔を見た。

その葵の顔は不満そうにしていた。

そんな葵のことが気になって俺は話のまとめに入ると電話を切った。

「葵?」
「…。」
「どうした?」
「…女の人の声だった…。」

どうやら電話相手の声が漏れていたようだった。

…やきもち…。

胸がきゅっとした。
少しだけいじめたくなった。

「うん。高校の時に仲が良かったヤマグチって子。」
「…今は?」
「今も仲良いよ。」

葵は俺をぎゅっとした。

「2人で会うこともあるの?」
「まぁ…友達だしね。誘われたらそうなることもあるかもしれない。」

俺は全然そんな気はなかったが、目の前の葵が可愛すぎてそう言った。

「…ばか…。」

葵は静かにそう言うと拗ねたような顔になり、俺から離れようとしていた。

俺はそんな葵を捕まえぎゅっと抱きしめる。

「嘘だよ。仲がいいのは本当だけど2人で会ったりはしない。子どもができたから結婚するんだって。それで結婚式に出席して欲しいって、その連絡だった。」
「…本当?」
「本当だよ。」
「…よかった。」

葵もぎゅっと抱きしめ返してくれた。

「こっち向いて。」
「やだ。」
「なんで?」
「いじわるされたから。」

葵は俺にずっとくっついていた。

「ごめん。葵がかわいくてつい。」

「葵…ごめん。」

俺は葵の頭を撫でながらもう一度謝った。

「…もう不安になること言ったらダメだからね。」
「わかった。」
「…。」
「キスしたい。こっち向いて。」

葵はやっと向いてくれた。
俺は葵にキスをした。

「俺もシャワー浴びてくる。」
「うん…。」

葵は少しとろけた顔でそう返事をした。

シャワーをしながら考える。

結婚か…

俺もいつか葵と結婚…
そうなれればいいな…。

このまま葵と順調にいけたら…。

そうなるといいな…。

俺は強くそう思った。





「琉佳くん琉佳くん。」
「ん?」
「買い物行きたい。」
「いいよ?なんの?」
「服が欲しい。もうすぐ秋だから。」
「わかった。今週の土曜日でいい?」
「うんっ。」

葵はかわいい顔で笑っていた。

買い物当日、葵の買い物に付き合い色々な洋服屋を見て回った。

「ねぇ、こっちとこっち…どっちがいいかな?」

…正直どっちも似合っていた。
でも、こんな時なんていうのが正解なんだろう…。
女性はこう聞きながらも実はもう答えは決まっているという話を聞いたことがある。
難しい…。
なんて答えよう…。

「琉佳くん?」

どっちも似合ってるけど…俺の好みはこっちだ。
俺は試しにそのままの自分の気持ちを言ってみた。

「そっか。琉佳くんはこっちのが好みなんだね。じゃあこっちにしようかな。」

葵は嬉しそうにその服を選んでいた。
そんな素直な葵がかわいく思えた。

それからも何着か葵は選んで買い物をし、俺の服も葵に選んでもらった。

なんか…すごく楽しい。

その後も、雑貨屋へ行くと葵が一目惚れしたマグカップを色違いで買い、小さい観葉植物なんかも買ったりした。

「今日はいっぱい買い物したね。楽しかったぁ。」

葵はまたかわいい顔をしてそう言っていた。
「俺も楽しかったよ」と、そう伝えた。

帰りは家の近くの居酒屋へ行き、軽く飲むことにした。

「今日は私の買い物に付き合ってくれてありがとね。」
「俺のも買えたし、楽しかったよ。」
「本当?よかった。琉佳くんに選んでもらったワンピース、早く着たいな。」
「来週あたり涼しくなるから、どこかに行こうか。今日買ったワンピースを着て。」
「嬉しい。じゃあ来週もデートだね。楽しみだなぁ。」

楽しいな。
幸せだな…。
ずっと…葵と一緒にいたいな。

まだ付き合ってそんなに経ってないから浮かれてそう思うのか…
それともこの気持ちは本物なのか…。

でも…
ずっと葵と一緒にいたい。
葵といると心地いい。
葵の笑顔をずっと見ていたい。
葵の笑い声をずっと聞いていたい。

葵の優しい声が…耳に心地いい…。


店を出る頃には葵は鼻歌を歌うほどに上機嫌になっていた。
2人で手を繋いで帰り道を歩く。

「今日は楽しかったね。」

葵が可愛い笑顔を向けながら俺にそう言った。

「そうだな。」

俺も葵に笑顔を向ける。
俺は我慢ができずに葵を抱き寄せキスをする。

…俺も…少し酔ったな…。

口を離し葵を見る。
葵は少しとろけた顔をしていた。

かわいい。

俺はまた抱きしめた。

「琉佳くん…」
「ん?」
「…早く帰ろ?」

葵がかわいい。

俺は葵の手を引くと、急いで家に帰った。

玄関のドアが閉まる前に葵を抱き寄せキスをする。葵もそのキスに応えてくれた。
すかさず舌を滑り込ませると、葵の舌を捕らえて絡ませる。葵もそれに応える。
キスをしてから葵を持ち上げると、そのままベッドへと2人で倒れ込む。

「琉佳くん好き…。」
葵がそう言ってくれた。
「俺も好きだよ。」
俺もそう伝える。
「同じだね。」

葵は可愛く笑いながらそう言った。
それからお互い裸になり、俺は葵の体を可愛がる。葵からかわいい声が漏れる。

…今日はもう我慢ができない…。

「もう…入れてもいい?」
「…うん…。」

俺は葵の脚を広げるとゆっくりと入っていく。

「琉佳くん…くっついて…ぎゅってしたい…。」

葵はそう言いながら両腕を広げた。
俺は葵の言う通りにした。
すると葵は俺の体に腕を回してぎゅっと抱きしめてくれた。

葵の腕がしっかりと俺を…
それがすごく心地よかった。
葵が…俺を捕まえてる…。

嬉しい…。

俺はそのままゆっくりと動いた。
葵はこうやってゆっくりとするのが好きみたいだった。葵の中がきゅっと締まって、葵自身もすごく気持ちよさそうにしていた。
俺のが奥に届くたび、葵は小さく震えていた。

好きだよ…葵…

俺は心の中でそう言いながらゆっくりと動き続けた。






「ねぇねぇ。君たち順調そうだね。」

社内で白石と会うなりにこにことしながらそう言われた。

「順調だよ。」
「羨ましいな…。」
「…。」
「別れる予定は?」
「そんなのはない。」
「残念だな…。」
「…まだ…葵のこと諦めてないのか?」
「…佐倉さん、どんどんキレイになっていくね。」

話を逸らされた。
俺はそれを許さなかった。

「諦めてないのか。」
「…僕は…佐倉さんのことが好きだよ。」
「もう俺の葵だ。」
「…まだ…わからないじゃないか。」

白石は少し不貞腐れたような表情になった。

「おれの、あおいだ。」

俺は強調してもう一度そう言った。

「まだ付き合って半年程度ってところだよね?そんなんじゃ先のことはまだわからないよ?今が1番楽しい時期だよね。せいぜい楽しんでね。」

白石はまたにこにこしながらそう言うとその場を立ち去った。

なんなんだあいつは…。
まだ何かするつもりなのか…?




俺は帰ってからすぐに葵を抱いた。

昨日のようにゆっくりと。

「るかくん…もう…」

葵がイキそうになっていた。
俺は葵がイクように動いた。
葵は俺の体にしがみつきながら体をビクンと震わせた。

そのあとシャワーを一緒に浴びると、デリバリーを頼みそれを2人で食べていた。

「白石から話しかけられたりしてる?」
「ううん。最近はなにもないよ?」
「でも顔を合わせることもあるでしょ?」
「うん。むこうはにこにこしてるけど、私は目が合ってもすぐ逸らしてる。」
「そっか。また何か言われたらちゃんと俺に言うんだぞ。」
「うん。わかった。ありがとね。」

葵は可愛く笑ってそう言っていた。

2人で寝る準備をして一緒に布団へと入る。
葵がくっついて俺に甘えてきた。
俺も葵に腕を回す。

あいつのことが少し気になるけど、葵は今こうやって俺の腕の中にいる。
心が温かい…

「琉佳くん…」
「ん?」
「…。」
「どうした?」
「…。」
「葵?」
「…もう1回…」
「したいの?」
「…。」

葵が俺の服をぎゅっと握り込みながら頷いた。
そんなのお安いご用だ。

俺はまたゆっくりと葵を抱いた。






休憩時間になり、葵と一緒にお弁当を広げる。

「この唐揚げ、昨日の夕飯の唐揚げだよね?」
「ごめん。嫌だった?」
「違う。これ…冷めてても美味しい…。」
「本当?」
「うん。すごいな。美味いよ。」
「よかった。お弁当用に少し取っておいたの。」
「美味い。俺もいつかこんなの作れるようになるかな?」
「簡単だよ。」

葵は笑いながらそう言った。
俺にはハードルが高すぎる。
簡単なことじゃないことくらいはわかる。
俺はまだ、焼きそばを1人で作ることさえできない。野菜を切るだけひと苦労だ。

改めて葵が作った弁当を見る。
唐揚げ、きんぴら、ブロッコリーとツナをマヨネーズで和えたもの、玉子焼き、カニカマが複雑に花の形になっているもの…

それを見るだけで胸がいっぱいになった。

「美味しいよ。いつもありがとう。もっと手を抜いてもいいよ?」
「やっぱり男の人は茶色いお弁当の方がいい?」

葵は笑ってそう聞いてきた。

「ううん。そうじゃなくて、葵に負担かけたくないから。」
「大丈夫だよ?手抜きの時もあるし。今日だって、昨日のおかず入れてるし。」
「でも…十分すぎるよ。」
「…寝坊して作れてない日もいっぱいあるよ?」
「俺が葵の限界まで抱いちゃうからな。」

葵は目をぱちくりとさせ何か言いたげだった。

「そんな恥ずかしいこと言わないで…。」
か細い声でそう言う葵がすごく可愛かった。

「今日も…抱くから…。」
「……うん…。」

恥ずかしそうに葵はそう返事をしながら俺の手をぎゅっと握ってきた。




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