僕には推しが2人いる

優月ジュン(ゆづき じゅん)

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ある日の昼休み。
僕は大親友にも言えない秘密を抱えてしまった。

まずは自己紹介。名前は光(ひかる)、普通の高校1年生。
と、言いたいところだが、人見知りで友達は少ない。見た目もいたって普通だ。
そして漫画やアニメ、ゲームが好きなオタクだ。

僕には公孝(きみたか)という幼馴染、かつ大親友がいる。
こいつとは幼稚園の頃からの仲で、もちろん家も近い。何でも言い合える仲で、高校生になった今でも変わらず仲良くしてっもらってる。
公孝(以下キミ君)は僕とは違い、所謂陽キャで友達も多い。
スポーツも大好きだが、ゲームも好きで、昔からよく僕とゲームをして暇を潰していた。

身長も平均を超えていて、黙っていればかっこいと思う。でも男子校生らしく、バカをやっては友達同士で笑い合うような、どちらかといえば男にモテるようなタイプだ。

だからクラスの女子からは熱い視線を受けるわけでもなく、気軽に話せる男友達というような印象を持たれているようだ。

こんなキミ君には彼女がいる。同じ中学校出身の香奈(かな)だ。 

中学の卒業式にキミ君から告白をし、見事OKをもらったのだ。

3人とも地元の高校に無事入学をし、同じクラスになった。
と言っても、地元だから同じ中学出身の奴らも多く、クラスにはこの2人の他にも顔見知りが2、3人ほどいた。

香奈(以下カナちゃん)はキレイというよりは可愛い系だ。友達は多くもなく少なくもない。クラスにはカナちゃんよりも可愛いコがいる。男女共両方に好かれるようなタイプ。

そんなコがいるにも関わらず、僕はカナちゃんのことをつい目で追ってしまう。正直に言うとしよう。僕はカナちゃんが好きだ。
でもキミ君のことももちろん大好きだ。

そんな僕が抱えてしまった秘密。それを今から話していこうと思う。

あれは確か、入学をしてから2ヶ月程経った時の事だった。

その時の僕は…まぁ今もだけど、ハマっているスマホゲームがあって毎日遊んでいた。そのゲームが今日のお昼12時から期間限定のガチャが解禁されることになっていた。
僕は静かにガチャを楽しみたかったので、教室でお昼を済ませた後、秘密の場所へと向かった。

そこは1ヶ月前いに見つけた空き教室。
今は生徒の人数が以前よりも減り、使われなくなったのだそうだ。
そこには古くなった教材や何かが入ったダンボールなどが乱雑に置かれていた。

そこの教室に面している廊下は人通りも少なく静かで、1人になるには最適な場所だった。
僕はその積み上がったダンボールを移動させ、一畳もない程度の空間を作り上げた。
狭い入り口を作れば、ぱっと見人がいるようには見えない。

1ヶ月経った今でも、その秘密の空間は崩されていなので、本当に滅多に教員なんかも入って来ないのだろう。

僕は教室に入り、ダンボールを積み上げて作った狭い入り口へと、四つ這いの状態で入って行った。
1人でガチャを楽しんでいると、教室のドアがガラリと開く音がした。
誰か入って来たのか?それとも自分が閉め忘れて誰かが閉めたのか?と思いながらも予想外の事に心臓が一気に跳ね上がった。先生だったらどうしよう。見つかったら怒られるかな?そんな事を考えながら静かに息を殺していた。

すると、足音と共に小声で話す女の子の声が聞こえて来た。
「どうしたの?」だとか、「なんかあった?」とか、「この場所なんなの?」とか。
心配と不安を隠せないその声には聞き覚えがあった。

それはカナちゃんの声だった。

もう1人の声は聞こえない。カナちゃんは一体誰と一緒にいるのだろうか?

「ねぇ、本当にどうしたの?」と言いきる前に、「んっ」という、鼻から抜けるような甘い声が響いた。次第に「ん」なのか「あ」なのかわからない、文字では表現ができないような、声になりきれない声が続き、僕はここで初めてカナちゃんが唇を塞がれていることに気がついた。

その瞬間、一気に体が熱くなりガチャどころではなくなった。息を殺しつつ聞き耳をたてる。
すると…

「やだ、こんなところじゃやだよ」

という、なんとも弱々しく、それでいてどこか艶めかしい声が聞こえてきた。

「何か怒ってるの?」とカナちゃんの質問に、ようやく相手は口を開いた。

「カナちゃんには怒ってないよ」
キミ君の声だった。

予想はしていたけど、もし相手がキミ君じゃなかったらと少しドキドキしていたので、ここでようやく安心する事ができた。

「どういうこと?」
またカナちゃんが質問をしたようだが、どうやらそれに答える気のないキミ君は、またカナちゃんの唇を塞いだようだった。

しばらくしてようやく解放された唇からは、声を押し殺しきれずに漏れた吐息や、時折り「んっ」とか、困ったように制する「いやっ、待って」という声が発せられていた。

キミ君は一体、カナちゃんに何をしているのだろうか。
卑猥な事に妄想を膨らませていると突然カナちゃんの声が静かながらに響いた。

「ダメだって、待って」

その言葉とほぼ同時に聞こえてきたクチュクチュとした音。

経験のない僕でも知ってる。

AVで見たことがある。きっとキミ君の指がカナちゃんの中に入ってるんだ。
本当にこんな音がするのかと感心をしていたが、僕のモノが反応してズボンの中で悲鳴を上げていた。
バレないようにそっと自分のを解放して握りしめる。しっかりと聞き耳を立てて、2人の様子を伺う。

ダンボール箱の向こうで行われる情事。
乱れたカナちゃんの呼吸。さっきよりも増えた吐息混じりの艶めかしい声。
そんな声を聞いただけで、僕の先からはぬらぬらとしたものが溢れでてくる。

次にガサゴソと布が擦れる音がした。

ーーーとその瞬間、

「あっ…ん…」

とカナちゃんの切迫詰まったような声が響き、肌と肌がぶつかり合う音が響き出した。

その音に合わせて呼吸と声がまじっている。
必死に声を我慢しているようだが、甘い吐息は隠しきれていない。

時折り出てしまった声に僕のモノは反応して、握る手に力がこもる。

今、キミ君はカナちゃんの中にいるんだ。

そう想像すると、僕の手の動きもだんだんと早くなっていった。

暫くすると、
「ダメっ…私もうっ…」
という余裕のないカナちゃんの声が聞こえた。「イッていいよ」というキミ君。僕はそこで果てた。

キミ君も限界だったようで、数秒後には果てたようだった。

2人は制服を整えながら話しだした。

「どうして怒ってたの?」
カナちゃんの優しい声が聞こえた。
「ちょっと前に気づいたんだけど、カナちゃんのことを見てるやつが何人かいるんだよ」
とバツが悪そうに口を開くキミ君。続けて
「俺たちが付き合ってるのは、みんな知ってるじゃん?でも、だからってみんなの前でイチャつくようなバカップルにはなりたくないんだ。本当はずっとカナちゃんの隣にいたいし、手だって繋ぎたい。でもバカにはなりたくない。でも他の男にカナちゃんを見て欲しくない。それでモヤモヤして、香奈は俺のもんだって気持ちが抑えきれなくなった。ごめん…」

どうやらキミ君が勝手にやきもちを焼いているようだった。

「そんなに想ってくれて嬉しい。ありがとうね。でも私が大好きなのはキミくんだけだから、そんな気持ちにならなくて大丈夫だよ。」

会話はそこで終わり、2人の足音はドアの方へと向かって行った。

僕はというとベトベトになった手を見て、呆然としていた。夢中になって両手で自分を慰めていたらしい。ティッシュなど持っていない。仕方がないので、シャツの裾で右手の親指と人差し指だけをさっと拭った。スマホをその指で掴みポッケにしまい、そそくさとトイレへと向かった。

教室へ戻ると2人はそれぞれの席で友達と談笑をしていた。さっきの出来事などまるでなかったかのように…。

僕も席に着きぼーっとしていると、カナちゃんが声をかけて来た。思わずドキッとして声が裏返ってしまった。
だがカナちゃんはそれを気にせず笑い飛ばし、「これ、ありがとねっ」と先日僕が貸した漫画を返しに来た。ただそれだけだった。聞き耳を立てていたことがバレていなくてよかった…。

カナちゃんの顔を見た瞬間、さっきまでの情事が…カナちゃんの艶めかしい声が鮮明に甦ってきた。

また僕の………熱くなってきた。

一体カナちゃんはどんな顔をしていたのだろうか。どんな顔であんな声をだしていたのだろうか。どこをどうすると、あんな声が出るのだろうか…色々と妄想が止まらなかった。

それに僕の知らなかったキミ君の一面を見られたことも嬉しかった。
案外やきもち焼きなんだな、と。
いつも余裕そうに見えていたけど、カナちゃんのことが本当に好きなんだなということがわかった。

2人には悪いけど、暫くは今日の昼休みの事をおかずに、僕は僕を慰めます。本来ならば友人の情事なんかに遭遇したくない、勘弁してくれよって思うかもしれないが、僕はとてつもない興奮を覚えてしまった。

これがキミ君に言えない僕の秘密。

僕がカナちゃんのあんな声を知っていると、もしやきもち焼きのキミ君にバレてしまったら…きっと恐ろしいことになるからね。

僕はカナちゃんが大好きだ。でもキミ君のことを大好きなカナちゃんが好きなんだ。そしてキミ君のことも大好きだ。2人が仲良くしているのを見ると、僕はなんだか嬉しくなるんだ。


僕には推しが2人いる。

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