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しおりを挟む居酒屋に着くと、すでにみんな揃っていた。
隼人が気を遣って、私たちが一緒に座れるように席を取っておいてくれた。
座った後も陸はずっと私の手を握っていた。
「陸、手…」
「あ…ごめん。」
陸はそう言って手を離した。
それから30分もすると、座敷だったからみんな好きなように移動して、好きなように話していた。
陸がトイレに立つと、すかさず太一が隣に座ってきた。
陸…きっと嫌がるな…
そうわかっていても、あからさまに避けるようなことはできなかった。
「元気か。」
「うん。元気だよ。太一は?仕事上手くいってる?」
「ああ。親父に厳しく仕込まれてるよ。」
「そっか。頑張ってるんだね。」
「まぁな。ちょっとこれ見て。」
そう言うと太一は動画を見せてきた。
「これ、俺が加工してるところ。
「わぁ。すごい…こんなふうにして形を作るんだね。」
「そう。それでできたのがこれ。」
今度は写真を見せてきた。
「すごいすごいっ。すごく綺麗っ」
「ははっ。でもこれでも、まだまだなんだ。」
「へぇ、そうなの?私には十分綺麗に見えるのに。」
なんだか太一とこう言うふうに話すのは久しぶりな気がした。
陸と付き合ってからはいつも気に食わなそうにしてたから。
「あとこれも見て。」
「あははっ。なにこれかわいい。」
「だろ?これはまた別の職人が作ったやつでーーー」
「太一…席変わって…。」
「お、わりぃな。」
陸が戻ってきた。
太一は後ろに下がると、私に話の続きをしてきた。
それが話終わると、太一は自分の席に戻って行った。
「太一と…何話してたの…。」
「太一の仕事のこと。」
「それだけ?」
「そうだよ?心配しないで?」
「…うん…。」
「アツシんとこ行こ?もうしばらく会えないだろうから。」
「そうだね。」
それからアツシと話したり、みんなで写真を撮ったりと楽しんだ。
二次会はいつも通りカラオケ。
移動中、陸はまた私の手を握ってきた。
「…太一と…話してる時の梨紗…可愛い顔で笑ってた…」
「…え?」
「可愛い顔で…太一に笑ってた…」
やきもち…?
でも…そんなこと言われても…
「…俺のこと…好き?」
「好きだよ。」
「…うん。ごめんね?…困らせるようなこと言って…」
「大丈夫だよ。」
なんか…帰りたくなってきた…。
陸をいっぱいぎゅうっと抱きしめたくなった。
でも、今日はアツシのお見送り会。
もうしばらく会えないだろうから…。
1人ずつ減って行く集まりを、前まではあんなに寂しく思っていたのに…
今は、陸のおかげで大丈夫になってきていた。
私は陸の手をぎゅっと握った。
陸がそばにいてくれたら、私はそれで十分だ。
みんなのことも好きだけど…。
「陸…私…」
「…なに…?」
「陸がそばにいてくれるだけで…それだけで…。」
「…うん…それだけで…?」
だめだ…熱いものが胸を込み上げてきた。
なんだろう…
「うん…幸せ…ずっと一緒にいたい…」
「…俺も…」
抱きしめたい…。
すると陸が抱きしめてくれた。
私は陸が同じ気持ちだったことが嬉しくて、抱きしめ返した。
「おーい、陸と雨宮がイチャつきだしたぞー。」
誰かがそう揶揄うように言っていた。
でもそれも気にならなかった。
陸…
陸…
大好き…。
それからカラオケに着き、みんなで楽しんだ。
陸はずっと私のそばにいた。
私はトイレに行くために席を立った。
トイレから出ると陸がいた。
陸は手を差し出し「戻ろうか」と、そう言った。
私はその光景を見て、1年ぶりに飲み会をした時のことを思い出した。
あの時も陸は、そう言って手を差し出してくれた。
きゅんとした。
3次会もあったけど、私と陸は参加せずに帰ることにした。
家に着くとすぐにどちらともなくキスをして抱きしめ合った。
ベッドに向かうとすぐに服を脱ぎ、陸は私に覆い被さると、首筋を舌でなぞりキスをして、胸の先に吸い付き舌で転がした。
私はもう自分が濡れていることがわかっていたいたので、すぐに入れて欲しいとお願いした。
陸はいつものようにではなく、余裕がなさそうに激しく私を抱いていた。
私もそうされたかった。
2人とも、たぶん同じ気持ちだった。
次の日は私の方が早く起きた。
隣にいる陸を見る…。
昨日の夜を思い出して、少しだけ恥ずかしくなった。
私は陸のほっぺにちゅっとキスをするとシャワーを浴びに行った。
出てくると、冷蔵庫を確認して朝ごはんになりそうな食材があるかを確認した。
その後陸の様子を見に行くと、まだぐっすりと眠っていた。
私はご飯だけ先に炊くと、飲み物を用意しソファーに移動してテレビを見る。
私はボーっと考えていた。
もしも…陸にフラれるようなことがあったら、私は立ち直ることができるのだろうか…。
また人を好きになることはあるのだろうか…。
今の陸を見ていて、そんな心配はないことはわかってるけど…
今が幸せで少し怖くなる…。
今までこんなに人を好きになったことはなかった。
ずっと陸と一緒にいたい。
今までも何度もそう思ったけど、この願いが本当に叶うといいな。
そんなことを考えていると、陸が起きてきた。
「…起こしてくれてもよかったのに…」
「おはよ。気持ちよさそうに寝てたから。」
「…おはよ。シャワー浴びてくる。」
その間に私は朝食…というよりブランチを作りはじめた。
ただハムと卵を焼くだけだけど…。
シャワーから出てきた陸と一緒に食べる。
「今日は一日中雨だね。
どこか行きたい?それともゆっくりしたい?
雨の日なら空いてる所もあるよ?」
「…梨紗は…?」
どうしようかな。
明日は晴れの予報だから、出掛けるなら明日の方がいいかな。
でも車を出せば、雨でもそんな億劫じゃないし…。
「…ゆっくりでもいい…?」
私が色々と考えていると、陸がそう提案した。
「いいよ。ゆっくりしよっか。」
「…うん…。」
陸は優しい顔をしていた。
「…体…大丈夫…?」
「ん?元気だよ?」
「…昨日…俺夢中で…」
「…。」
「…激しくしちゃったから…」
私はまた思い出して恥ずかしくなった。
「…梨紗…?」
「大丈夫だよ。」
「本当?」
「本当。」
「…かわいい…」
なんで急に…
「赤くなってるよ。」
「…っ。」
その日は、結局また一日中陸とイチャイチャしながら、過ごした。
次の日はドライブデートをして、また美味しいお店を見つけた。
それから私たちはスパに行ったり、またドライブに行ったりとデートを重ねた。
気づけば街中はクリスマスソングが流れ、イルミネーションが煌びやかに賑わっていた。
「今度仕事帰りにイルミネーション見に行こうよ。もう飾り付けがされてるみたい。」
「…行く…。」
「いつ行けそう?」
私は陸にこう提案していた。
陸はそれに乗ってくれた。
それから私たちは予定をすり合わせていた。
日程が決まると私はワクワクした。
曜日は金曜日に決まった。ちょうどいい…
イルミネーションを見た後は、この前ネットで見つけたあのお店でご飯を食べようかな。
私は早速予約をした。
それから…チェックアウトがお昼のホテルをその近くで見つけたからそこも予約しておいた。
私は陸の誕生日を祝おうと色々考えていた。
陸がしてくれた程ではないけど、こんな予定を立てていた。
「イルミネーション見た後はご飯食べて、そのままホテルに泊まるからね?」
「…ホテル?」
「そう。前倒しになっちゃうけど、陸の誕生日デート。陸の真似してホテル予約しちゃった。」
陸は嬉しそうにしていた。
「陸の誕生日も平日で仕事だからさ。それでもいい?」
「…うん…嬉しい…。」
「よかった。プレゼントは誕生日当日に渡すね?」
「…ありがとう…」
少し笑顔の陸を見て、私は嬉しくなった。
「陸、欲しいものある?」
「…ない…。」
どうしよう…色々と考えたけど、プレゼントはまだ決まっていなかった。
私が考え込んでいると、陸が口を開いた。
「…梨紗に…してもらいたいことがある…。」
「なに?」
「…ホテルに着いたら言う…」
「今教えて?」
「…言わない。」
「なんで?」
「…だから、物はいらない。梨紗からもらうから。」
何して欲しいんだろう…。
でも、陸がそう言うなら、陸の願いを叶えてあげたい。
「わかった。」
「約束だよ。」
「うん。約束。」
私はやっぱり物もあげたかった。
また仕事関係のものになっちゃうけど、名刺入れにしようかな。
この前チラッと見た時に、今のが結構くたびれていたから。
そんなことを考えていると、陸が私を抱き寄せた。
私たちはソファーに座っていた。
「…梨紗…色々考えてくれてありがとう…」
「楽しもうね。」
「…うん…。」
すると陸は私をソファーに押し倒してキスをしてきた。
一気に私の熱が上がる。
陸は口を離すと私を見ていた。
「…かわいい…」
何回言われても慣れない。
恥ずかしくなってしまう。
「…かわいい…」
「そんなに言わなくていいよ…。」
「…かわいい…」
「…もう…」
陸はまたキスをした。
今度は舌を絡めてきた。
口を離すと私の顎を掴んで顔を覗き込んできた。
「俺のこと好き?」
「…好き…」
「…もっと言って。」
「好き…大好き…」
「もっと。」
「大好きだよ、陸…。」
「…愛してる?」
「愛してる…」
「俺も愛してるよ。」
陸はそう言い終わると、優しい顔をして少しだけ口角を上げた。
仕事が終わると待ち合わせ場所へと急いだ。
陸はすでに待っていた。
「ごめん…少し遅れた?」
「大丈夫だよ。」
陸は優しく笑っていた。
…かっこいい…
「じゃあ行こうか。」
陸はそう言って手を差し出した。
…かっこいい…
私は陸と手を繋ぎ、目的地へと向かった。
「わぁ、キレイだね…。」
「…うん…。」
「なんかクリスマスってワクワクするよね。」
「…そうだね…。」
「この前まではハロウィン一色だったのに、終わるとすぐ街はクリスマスになるよね。」
「…うん…。」
「クリスマスは何しようか?」
「んー…平日だっけ?」
「そう。お家でクリスマスする?」
「うん。」
「じゃあそうしよっか。ケーキとチキン買って。」
「…楽しいね…。」
「そうだね。考えるだけで楽しいね。」
私たちはそんな会話をしながら、イルミネーションの通りを歩いていた。
楽しいな…。
私は握っている手をぎゅっとした。
陸はそれに返事をするように、ぎゅっと握り返してくれた。
時間を確認すると、もう予約時間が近づいていた。
お店に向かおうと陸の手を引くと、陸は立ち止まった。
私を抱き寄せると、キスをしてくれた。
そうした後で、お店に向かった。
ネットの評判通り、美味しいお店だった。
「…美味しいね…ありがとう…」
陸は優しい顔でそう言っていた。
「お酒はどうする?少し飲む?」
私はメニューを開いた。
「…今日は…いいかな。」
「わかった。」
私たちは食べ終わると、次にホテルへと向かった。
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