DEAR ROIに帰ろう

紫野楓

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 僕らは口を閉じて、桜並木の一本道を歩いていた。翔は、僕の答えを待っているようだった。ノエルは僕らに合わせて、口を閉じているようだった。

 僕といったら、翔の顔もノエルの顔も見ることができない。

「あのね、さくらがさいたら、かあさん、ノエルのおむかえにくるっていってた」

「お前の母ちゃんはどこでなにしてんだよ」

「たび!」

 たび? と翔がノエルにたずねる。ノエルは笑っているだけだ。繋がっている手はあったかくて、ノエルの手は僕の手をしっかり握っている。信頼感と安心感の伝わってくる感じだった。それなのに僕は、大学が近付くにつれて、この手を離したくなって仕方なくなってきてしまった。さっきから、なんとなく通行人の目が気になった。

 僕らは周りから、どんな風に思われているのか。気になってしまう。

「母ちゃんに会えなくて寂しい?」

「ううん! さびしくないよ」

「あと何日そう言ってられるかな」

 ノエルが僕に寄りかかってくる。僕らは立ち止まった。翔はノエルと目線を合わせるように屈んで、見守っているようだった。

「ぜんぜん! さびしくない!」

 僕は曖昧に笑うことしかできない。周りのどこを見たって、僕らみたいな3人はいない。親子連れでもなければ、家族連れでもない。友達同士でもなければ……恋人同士でもない。一体なんの集まりなのか、って、そう言う目で見られてるんじゃないか、って。思ったら……胸が苦しい。

 でも、ノエルの体温も、信頼感も、僕は裏切りたくない。むしろ、受け止めたいと思う。だけど体が動かない。

 ノエルはそんな僕の迷いを見透かすかのように、僕の顔を、その宇宙を詰め込んだような無限の瞳で覗き込む。僕の深淵に光をあてるかのように、彼の瞳がきらりと光って細まった。

「おにいちゃん、またへんなかおしてる」

「え?」

「きのうもしてた、へんなかお」

 僕の心臓はばくばくと早鐘を打っていた。別に、彼らに対してやましいことなどなにもしていないはずなのに、僕の心は罪悪感が粉雪みたいに降り積もっていくんだった。

「してないよ」

「うそついてる、おかおだよ」

「……ついてないよ」

 ノエルは僕の言葉をそれ以上言及しようとはしなかった。でも痛いくらい真っ直ぐに見つめてくる彼の瞳が、僕のことを責め立てているようで……僕はノエルの瞳に見つめられていることがとても怖くて、耐えられなくなってしまった。





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