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後編
しおりを挟むおっと。可愛い声でわたしを呼びながら足にぶつかって来たのは、愛おしいちいさな息子。
「あらあらユウくん、ちゃんとひとりでしーできた? パパはどこ? おにいちゃんは?」
「しーした! ぱぱうんちー!」
「ボクはここ」
すぐそばにちいさな影がもうひとつ。頼もしいおにいちゃんが。ちゃんとトイレ済ませたかな?
「あははは、それでしーしたユウくんはおにいちゃんとママのとこに来ちゃったの? パパも待ってあげてよ。パパいまごろユウくん探して泣いてるかもよ?」
愛おしい存在を抱っこする。わたしのたいせつな宝物。
「ぱぱもなくの?」
「勝手に行くなって言ったんだけどさ」
幼稚園児の次男と比べれば、小学四年生になる長男は生意気な口をきくようになったなぁ。感心するわ。
「レンくんありがとう。レンくんがいるからパパもゆっくりうんちできるんだよ」
長男の頭を撫でながら褒めると、まんざらでもないような顔でわたしを見るから可愛くて仕方ない。
そんな長男はわたしに抱っこされている次男の頭をやさしく撫でながら話しかける。
「ユウが急にいなくなったら、パパも泣いちゃうよ。たぶんね」
うんうん。弟の面倒をよくみるいい子なんだよねぇ。父親に似たのか、いい男に育ってるぞ。
「こ、ども?」
元ダンナがなんか言ってるー。
抱き上げたユウがゾンビの存在に気がついた。
「このおじさん、だれー?」
ううーん。無垢な瞳に映していい人間じゃあないんだけどなぁ。
長男は怪訝そうな顔している。
「通りすがりの知らないおじさん。いまね、道を聞かれてたの。でもママもよくわからないからごめんなさいって言ってたの」
わたしは呆然とする元ダンナを見る。いやね、そんなびっくりした目でうちの子たち見ないでよ。
そんなに信じられないのかな。わたしが子どもを生んだのが。そういえばお義母さんに言われたっけ。“石女”って。ひっどい侮辱だよねー。
抱っこして顔を近づければ否が応でも分かるよね? わたしそっくりなんだよね、次男は。
私には第一子だけどさ。
「お役に立てずにすみません。ほかの人に聞いてください。連れが来ましたのでこれで……」
よそいきの笑顔と声で軽く会釈してその場を離れる。
長男がわたしの腕をちょいちょいと突いて内緒話風に顔を近寄らせる。
「ママ! 注意しなよ! 道をきくなんて典型的なナンパの手口だよ!」
レンくん、レンくん。
声を潜めてもこの距離だとあっちには聞こえてますよ?
しかしすごいなー、小学四年生は。ほんと、言うことがしっかりしてるぅ。
やっぱあれかな。長男はシングルファーザー状態が長かったから自立してるのかな。
弟のことも、ついでに継母のことも守ろうとしてくれてるもんね。
継母にもやさしいなんて、ほんといい子だわ。もー大好き。
「ぱーぱー!」
トイレから出て慌てたようすでキョロキョロしている愛しい人に、ユウが手を振りながら声をかける。
背の高い愛しい人がわたしたちに気がつくと笑顔になった。
ふふ。笑っちゃうくらいレンくんそっくりだなぁ。
ほんと、すっごく大好き。
あの弁護士先生に紹介されて転職した職場で出会った愛しい人。
バツイチ同士でいろいろあったけど、あったからこそ今が幸せだと言える。
この十年、紆余曲折はあったけどね。
穏やかにお互いを思い合ってる生活って心が豊かになるってものよ。
大満足よ。お肌も潤うってものよね。
もうわたしは他人だから振り返ることすらしないけど、元ダンナはもしかしたら、この子たちふたりともわたしが産んだ子かって誤解してるかもしれない。
ってゆーかむしろ誤解してくれてる方がザマーミロって感じだよね。
離婚協議中だっていう三番目の奥さんにも子どもいないみたいだし。
お義母さんがわたしに言ったあの酷い侮辱のことばは、元ダンナへの特大ブーメランになったって感じかな。石男って書いてタネナシって読むみたいな。
そう思うとちょっとだけ溜飲が下がったわたしは性格悪い女だね。
そうね。元ダンナのためにお祈りくらいはしてあげようかな。
毛根、がんばれー(棒読み)
【どっとはらい】
※「最大の復讐は幸せになること」※
※どーでもいい補足※
なんでアウトレットモールに行ったかというと、子ども服を買うため。
長男用の服をブランド品で買ってあげたい!でも安い方がいいよね、男の子だしワゴンセールでもいいよね、でもブランドだよっ! と言いながら買いに行った。
長男は「ママがいうならそれで」というスタンス。特に服にこだわりはない。
次男はアウトレットにある観覧車に大喜びだった。
んで、トイレ! と喚いた次男を連れた男性陣に対し、主人公は買った物を車へ積みに行くわと言って別行動。
集合場所をこのトイレ前ねー、としたところ、うっかり元ダンナ(こっちも母親と姪のトイレ待ち)と遭遇した次第。
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今連載中の作品から、リンクを辿って参りました。
いや〜スッキリしました。元夫はさぞかし間抜け面してたてしょうね。
でも、失礼なヤツですね。昔から思い込みの強いおバカだったのだとしても、相手を独身だろうと決めつけ、今でも自分のモノみたいに思っていて 言う事を聞くだろうと、「介護要員にしてやる」と、恩着せがましく言ってきたワケですよね。
お前の事なんか、欠片も覚えてないわ…的な返しが出来て、今、元夫より遥かにイイ男と幸せになっている処を見せつけて、オマケに 子供が出来なかったのは、元夫のせいだったと突きつけたのは完全勝利でしたね。
ブラボー!
芹香さま
ようこそお立ち寄りくださいました!
嬉しゅうございます(*´▽`*)
遅レス、申し訳ありません。
>失礼なヤツですね
ですです!
なんかいるんですよ、過去の女はみんな自分を想い続けているっていう勘違い系の男が(苦笑
そして謎の上から目線。よーーーーーーーっぽどタイミングよくないと復縁なんて無理無理無理。
>完全勝利でしたね
ですです!
しかも現旦那さまは髪の毛フサフサです! ブラボー!w
感想ありがとうございました。
<(_ _)>
現実世界でも!真実の愛は滅びの呪文だった!(σ≧▽≦)σ
そんな元ダンナには
爆ぜろ!でなく禿げろ!につきますな。
_| ̄|◯✨ぺかー
了さとりさま
>滅びの呪文だった!(σ≧▽≦)σ
(σ≧▽≦)σ『バルス!』
はっ(゚д゚)!
この呪文のせいで毛根が……(笑)
>爆ぜろ!でなく禿げろ!
あぁ! さらに呪文の効果が倍増にっ!(笑)
感想ありがとうございました。
<(_ _)>
なろうのザマァ系は異世界物が多いせいか、現代版のザマァを読むと、なんか実話でありそうな展開で良い意味で新鮮でした!
本当、実際問題相手に対するザマァって幸せになることですよね!
主人公が自分の性格が悪いって独白してるけど「全然性格悪くなってないぞ!」ってなりました。だってなーんにも言い返ししてないよね??むしろ賢者レベルだとおもう(笑)
可南さま
新鮮!(=゚ω゚)ノ イキガイイヨ!
>実際問題相手に対するザマァって
ですよね。下手すると過剰防衛で犯罪になる可能性がありますしね(;・∀・)
あとは本当に忘れちゃうことかなぁ、なんて思います。
>「全然性格悪くなってないぞ!」
(((o(*゚▽゚*)o)))ワーイ 賢者だってー!
ひと前だしこどもの前だしね。取り繕いますわ。おほほほ。
ってゆーか現状が幸せなんでね。ゾンビになんて構ってらんないってのが正直なとこらしいっすよ。
感想ありがとうございました。
<(_ _)>