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五月雨のメルティ
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作戦を立てた俺は以前リンに聞いた記憶をもとに北の山へと向かっていく。
途中の景色はのどかそのもの、動物も空を飛ぶ小鳥や、草むらの間をかけるリスの姿が見えるくらいで、凶悪なモンスターなんて本当にこの世界にいるんだろうかと思ってしまうほどだ。
「まあ、油断はせずに行こう。……あの岩だな、目指して上っていきますか」
リンから聞いた話では、山の麓からも見える黒い四角い角のとがった岩の裏に裂け目ができているということだった。
実際に今山の麓まで来たが、その岩が木々の合間から見えている。
なんでも昔はそこにダンジョンはなかったのだが、最近土砂崩れが起きてその入り口があらわになったということで、いまだほとんど知られていないダンジョンということだった。
知っている人も、中にヘルウルフェンという強力なモンスターがいるので、すぐに引き返し攻略はしていないという。
未知だから危険。しかし裏を返せばそこにある薬草も手つかずってことだ。
俺は北の山に分け入り、斜面を登っていった。
黒い四角岩を目指してのぼっていく。
そして間近まで無事に登ったのだが、
「近くで見ると想像よりだいぶでかいな」
四角岩はかなり巨大だった。10メートルはあるだろうか?
リンの情報通りならこの裏に洞窟の入り口があるはずだ。
裏にまわって確かめてみる。
「このでかい岩の裏に――いっ!」
「痛ぃっ!?」
回り込んだ瞬間、ガンと頭に衝撃がした。
おでこを押さえながら衝撃の元に目をやると、そこには俺と同じようにおでこを押さえた女性がいた。
「あいたたた……お? おお?」
向こうも俺を見て驚いているようだ。
「人ですか?」
「どう見ても猫には見えないと思う」
「ははっ、それはその通りですな。いやー失敬失敬、わたくしはメルティと申す者。今日はこの辺りのダンジョンをやっつけてやろうと思っていたのだが、そちら様もひょっとして同業者ですかな?」
「そうみたいだ。俺はクロト。この岩の裏の洞窟に来た」
メルティは鉢巻きをして額を出しているのがまず目を引く。
そこからきれいな黒髪を伸ばした女性で、腰には太刀を佩いている。
「ほほーう! 気が合いますなあ。ひょっとして冒険者だったりしますかな?」
「いや、登録はしてないけど何回か素材を売るのに利用はしたかな。メルティは冒険者ギルドに登録してたり?」
「左様。ただこれは依頼を受けたわけではなく、趣味ですな」
趣味でダンジョンに行くのか……。
いや、むしろそれが冒険者らしいか?
「未踏のダンジョンがあると噂を聞いてやってきたのですぞ。クロト殿もここが目的……ですな?」
メルティが体を半身にすると、その奥に地面の裂け目が見えた。
もしやあれが――。
「そう、新たなるダンジョンの入り口ですぞ。さ、一緒に行こ?」
メルティはそのままダンジョンの入り口へと向かっていく。
「一緒に? ダンジョン攻略を?」
「そ」
「でも、報酬の分け前とか」
「普通に山分けでよきでは?」
山分けでいいなら、俺に断る理由はない。
ダンジョンなんて初めてだし、経験者がアシストしてくれるなら願ったり叶ったりだ。
「それでいいなら、是非ご一緒させてもらおうかな。……あ、でも、中に結構手強いモンスターがいるって知ってる? 冒険者ギルドの冒険者たちも、皆怖がって一緒に行く人いなかったんだけど……」
俺の言葉を聞くと、メルティは口を大きく弓なりにして笑い、剣を素早く抜いて素晴らしく速く華麗な太刀筋の素振りを見せた。
「おお……びゅーてぃふぉー」
「ふふっ、もちろん知ってますぞ、その情報。でもだいじょぶ、わたくしの五月雨の剣技があればねっ」
途中の景色はのどかそのもの、動物も空を飛ぶ小鳥や、草むらの間をかけるリスの姿が見えるくらいで、凶悪なモンスターなんて本当にこの世界にいるんだろうかと思ってしまうほどだ。
「まあ、油断はせずに行こう。……あの岩だな、目指して上っていきますか」
リンから聞いた話では、山の麓からも見える黒い四角い角のとがった岩の裏に裂け目ができているということだった。
実際に今山の麓まで来たが、その岩が木々の合間から見えている。
なんでも昔はそこにダンジョンはなかったのだが、最近土砂崩れが起きてその入り口があらわになったということで、いまだほとんど知られていないダンジョンということだった。
知っている人も、中にヘルウルフェンという強力なモンスターがいるので、すぐに引き返し攻略はしていないという。
未知だから危険。しかし裏を返せばそこにある薬草も手つかずってことだ。
俺は北の山に分け入り、斜面を登っていった。
黒い四角岩を目指してのぼっていく。
そして間近まで無事に登ったのだが、
「近くで見ると想像よりだいぶでかいな」
四角岩はかなり巨大だった。10メートルはあるだろうか?
リンの情報通りならこの裏に洞窟の入り口があるはずだ。
裏にまわって確かめてみる。
「このでかい岩の裏に――いっ!」
「痛ぃっ!?」
回り込んだ瞬間、ガンと頭に衝撃がした。
おでこを押さえながら衝撃の元に目をやると、そこには俺と同じようにおでこを押さえた女性がいた。
「あいたたた……お? おお?」
向こうも俺を見て驚いているようだ。
「人ですか?」
「どう見ても猫には見えないと思う」
「ははっ、それはその通りですな。いやー失敬失敬、わたくしはメルティと申す者。今日はこの辺りのダンジョンをやっつけてやろうと思っていたのだが、そちら様もひょっとして同業者ですかな?」
「そうみたいだ。俺はクロト。この岩の裏の洞窟に来た」
メルティは鉢巻きをして額を出しているのがまず目を引く。
そこからきれいな黒髪を伸ばした女性で、腰には太刀を佩いている。
「ほほーう! 気が合いますなあ。ひょっとして冒険者だったりしますかな?」
「いや、登録はしてないけど何回か素材を売るのに利用はしたかな。メルティは冒険者ギルドに登録してたり?」
「左様。ただこれは依頼を受けたわけではなく、趣味ですな」
趣味でダンジョンに行くのか……。
いや、むしろそれが冒険者らしいか?
「未踏のダンジョンがあると噂を聞いてやってきたのですぞ。クロト殿もここが目的……ですな?」
メルティが体を半身にすると、その奥に地面の裂け目が見えた。
もしやあれが――。
「そう、新たなるダンジョンの入り口ですぞ。さ、一緒に行こ?」
メルティはそのままダンジョンの入り口へと向かっていく。
「一緒に? ダンジョン攻略を?」
「そ」
「でも、報酬の分け前とか」
「普通に山分けでよきでは?」
山分けでいいなら、俺に断る理由はない。
ダンジョンなんて初めてだし、経験者がアシストしてくれるなら願ったり叶ったりだ。
「それでいいなら、是非ご一緒させてもらおうかな。……あ、でも、中に結構手強いモンスターがいるって知ってる? 冒険者ギルドの冒険者たちも、皆怖がって一緒に行く人いなかったんだけど……」
俺の言葉を聞くと、メルティは口を大きく弓なりにして笑い、剣を素早く抜いて素晴らしく速く華麗な太刀筋の素振りを見せた。
「おお……びゅーてぃふぉー」
「ふふっ、もちろん知ってますぞ、その情報。でもだいじょぶ、わたくしの五月雨の剣技があればねっ」
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