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第515話 隠れた功績
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「私達はまだ、あなたを完全に信用した訳じゃないわ。この情報を何処で知ったの?」
リリーを庇うかのように、男との間に割って入るネスト。
現状、男の発言に矛盾は見当たらないが、海賊が王宮の内情を熟知しているとも思えない。
仮に情報が漏洩しているのだとしたら、それはそれで問題だが、今はその真偽の方が重要だ。
「その疑問はもっともだ。だが、情報の出元は教えられない。まぁ、言ったところで信じるとは思えんが……」
「そんな曖昧な回答で逃げるつもり?」
「別に逃げちゃいないさ。無理に信じろとも言わねぇ。俺達はお前達をハーヴェストに送ることができればそれでいいんだ。その間、別々の船室で拘束されながら到着を待つか、俺とのおしゃべりに興じるのかは、お前等の好きにしな」
「……護衛艦の乗組員はどうなったの? 私達の為の犠牲……とは言わないわよね?」
「もちろんだ。護衛艦にはナイフを1本置いて来た。……まぁ、置いて来たと言うより隠したんだが、それを探し出せれば晴れて自由の身って訳だ。こっちの船長だったヤツに、俺達が見えなくなったら探し始めていいと言ってある。だから安心しな。まぁどんなに頑張っても、追い付けはしないだろうがな」
全ては計画の内。そこには一点の不備もなく、故に言い淀むこともない。
それが適当に考えた言い訳であったのなら、大した役者である……そう感じてしまうほど、男の顔には自信が満ち溢れていた。
お互いの顔を見合わせる3人。リリーが無言で頷くと、ネストは溜息をつきながらも観念したかのような顔を見せる。
「ひとまず信用するわ。どちらにせよ王都には帰らなきゃだし、抵抗したところでどちらも無傷とはいかないだろうし……。それで、幾つか質問をしたいんだけど、いいかしら?」
「おいおい、今更かよ。さっきから答えてやってるじゃねぇか。それとも貴族様は耳が腐ってんのか?」
ネストの目尻がピクピクと痙攣するも、深呼吸して心を落ち着かせる。
「あなたと九条との関係は?」
「大雑把に言えば恩人だな。まぁ詳しくは言えねぇんだが、色々あって俺達も九条の力になりたい。だが、俺達がどうこう言ったところで、お前達は海賊の言う事なんざ聞く耳持たねぇだろ? 白旗上げたって近づけば攻撃されるのは目に見えてる。こういう形を取る以外に方法がなかったのさ」
「恩人って、まさか犯罪行為に加担させたわけじゃ……」
ネストはそこまで言いかけ、ハッとした。
貴族に殺された海賊の娘。その仇にこの船を狙ったのだと思っていたが、九条ならその娘との交流も可能ではないかと思案したのだ。
それが彼等の助けになった。その礼として、サザンゲイアまでの足を手に入れたと考えれば、辻褄は合う。
ネストが長考する様子を見せると、半裸の男の隣にいたサハギンが、痺れを切らし口を開いた。
「九条ハ、海ノ怒リを鎮メタ……。偉大ナル我等ガ王ハ、恩人ヲ見捨テタリハシナイ。九条ニモシモの事ガアレバ、海ハ再ビ人類ヘト牙ヲ剥クダロウ」
「おい! 勝手にしゃべんな!」
「ちょ……ちょっと待って! どういう事? 九条がサハギンたちを追い払ったんじゃないの!?」
「いや、まぁそうなんだが、力づくではなくてだな……。なんつーか……その……。クソッ……こうなるから、人語がわかる奴を連れてきたくなかったんだよ……」
バツが悪そうに、ポリポリと頭を掻く半裸の男に対し、ネストは最早パニックだ。
サハギンが、人の言葉を解することなど気にしている場合ではない。
そもそも、九条を助けたいと言う海賊と、九条に追い払われたサハギンが一緒にいるのもおかしな話。
ただ一つだけ言えることがあるとするなら、どうにかして九条の処刑を止めさせなければ、サハギンたちがまた船を襲うようなことになるかもしれないという事だ。
しかも、今回はその責任の所在が明確。ヴィルザール教に従い、海を敵に回すのか……。それともその逆か……。どちらにせよ批判の矛先は決まっている。
ある意味、国家の明暗を分ける選択と言っても過言ではない。
「ナゼ隠ス必要ガアル? 今コソ知ラシメルベキデハナイノカ? アブソリュート・クィーンヲ滅シタノハ九条ダ。人類ニトッテモ、喜バシイコトダロウ。アレガ生キテイレバ、今頃地上モタダデハ済マナカッタハズ」
「ああもう、全部言っちまいやがって……。プラチナの冒険者が海賊の手助けをしたなんて広まったら、九条がやべぇんだよ。白い悪魔だって、元はと言えばお前等の所為じゃねーか。九条は俺達やお前達の事を想って黙っていてくれたんだ。それくれぇ察しろよ……」
「ナラ、尚更隠ス必要ハナイ。九条ガ殺サレテシマウノハ、生カスダケノ価値ガナイト判断サレタカラダロウ? 我々ガ矢面ニ立チ九条ガ助カルト言ウノナラ、喜ンデ真実ヲ話ソウ」
「そうじゃねぇっつってんだろ……。人間はお前等みたいに、一枚岩じゃねぇんだよ……。お前等の王様は1人かもしれんが、人間には複数いる。それぞれ価値観が違うんだ。九条の行いを良しとする奴もいれば、そうじゃない奴もいるってことだ。わかるだろ?」
「……ワカラン……」
「だめだこりゃ……」
ピシャリと自分の額を叩き天を仰ぐ男と、首を傾げるサハギン。
そんなやりとりを黙って聞いている事しか出来なかった3人は、必死に頭の中を整理していた。
「情報量が多すぎるッ! 悪いようにはしねぇから、1からちゃんと説明してくれ!」
思わず叫んでしまったバイス。それも、考えるより聞いた方が早いという結論に達したからなのだが、それにはリリーとネストも同意見。
とは言え、全てがわからなかった訳じゃない。
恐らく、九条が何かとんでもない事をやらかしていた――という事実だけは、確実に伝わっていた。
リリーを庇うかのように、男との間に割って入るネスト。
現状、男の発言に矛盾は見当たらないが、海賊が王宮の内情を熟知しているとも思えない。
仮に情報が漏洩しているのだとしたら、それはそれで問題だが、今はその真偽の方が重要だ。
「その疑問はもっともだ。だが、情報の出元は教えられない。まぁ、言ったところで信じるとは思えんが……」
「そんな曖昧な回答で逃げるつもり?」
「別に逃げちゃいないさ。無理に信じろとも言わねぇ。俺達はお前達をハーヴェストに送ることができればそれでいいんだ。その間、別々の船室で拘束されながら到着を待つか、俺とのおしゃべりに興じるのかは、お前等の好きにしな」
「……護衛艦の乗組員はどうなったの? 私達の為の犠牲……とは言わないわよね?」
「もちろんだ。護衛艦にはナイフを1本置いて来た。……まぁ、置いて来たと言うより隠したんだが、それを探し出せれば晴れて自由の身って訳だ。こっちの船長だったヤツに、俺達が見えなくなったら探し始めていいと言ってある。だから安心しな。まぁどんなに頑張っても、追い付けはしないだろうがな」
全ては計画の内。そこには一点の不備もなく、故に言い淀むこともない。
それが適当に考えた言い訳であったのなら、大した役者である……そう感じてしまうほど、男の顔には自信が満ち溢れていた。
お互いの顔を見合わせる3人。リリーが無言で頷くと、ネストは溜息をつきながらも観念したかのような顔を見せる。
「ひとまず信用するわ。どちらにせよ王都には帰らなきゃだし、抵抗したところでどちらも無傷とはいかないだろうし……。それで、幾つか質問をしたいんだけど、いいかしら?」
「おいおい、今更かよ。さっきから答えてやってるじゃねぇか。それとも貴族様は耳が腐ってんのか?」
ネストの目尻がピクピクと痙攣するも、深呼吸して心を落ち着かせる。
「あなたと九条との関係は?」
「大雑把に言えば恩人だな。まぁ詳しくは言えねぇんだが、色々あって俺達も九条の力になりたい。だが、俺達がどうこう言ったところで、お前達は海賊の言う事なんざ聞く耳持たねぇだろ? 白旗上げたって近づけば攻撃されるのは目に見えてる。こういう形を取る以外に方法がなかったのさ」
「恩人って、まさか犯罪行為に加担させたわけじゃ……」
ネストはそこまで言いかけ、ハッとした。
貴族に殺された海賊の娘。その仇にこの船を狙ったのだと思っていたが、九条ならその娘との交流も可能ではないかと思案したのだ。
それが彼等の助けになった。その礼として、サザンゲイアまでの足を手に入れたと考えれば、辻褄は合う。
ネストが長考する様子を見せると、半裸の男の隣にいたサハギンが、痺れを切らし口を開いた。
「九条ハ、海ノ怒リを鎮メタ……。偉大ナル我等ガ王ハ、恩人ヲ見捨テタリハシナイ。九条ニモシモの事ガアレバ、海ハ再ビ人類ヘト牙ヲ剥クダロウ」
「おい! 勝手にしゃべんな!」
「ちょ……ちょっと待って! どういう事? 九条がサハギンたちを追い払ったんじゃないの!?」
「いや、まぁそうなんだが、力づくではなくてだな……。なんつーか……その……。クソッ……こうなるから、人語がわかる奴を連れてきたくなかったんだよ……」
バツが悪そうに、ポリポリと頭を掻く半裸の男に対し、ネストは最早パニックだ。
サハギンが、人の言葉を解することなど気にしている場合ではない。
そもそも、九条を助けたいと言う海賊と、九条に追い払われたサハギンが一緒にいるのもおかしな話。
ただ一つだけ言えることがあるとするなら、どうにかして九条の処刑を止めさせなければ、サハギンたちがまた船を襲うようなことになるかもしれないという事だ。
しかも、今回はその責任の所在が明確。ヴィルザール教に従い、海を敵に回すのか……。それともその逆か……。どちらにせよ批判の矛先は決まっている。
ある意味、国家の明暗を分ける選択と言っても過言ではない。
「ナゼ隠ス必要ガアル? 今コソ知ラシメルベキデハナイノカ? アブソリュート・クィーンヲ滅シタノハ九条ダ。人類ニトッテモ、喜バシイコトダロウ。アレガ生キテイレバ、今頃地上モタダデハ済マナカッタハズ」
「ああもう、全部言っちまいやがって……。プラチナの冒険者が海賊の手助けをしたなんて広まったら、九条がやべぇんだよ。白い悪魔だって、元はと言えばお前等の所為じゃねーか。九条は俺達やお前達の事を想って黙っていてくれたんだ。それくれぇ察しろよ……」
「ナラ、尚更隠ス必要ハナイ。九条ガ殺サレテシマウノハ、生カスダケノ価値ガナイト判断サレタカラダロウ? 我々ガ矢面ニ立チ九条ガ助カルト言ウノナラ、喜ンデ真実ヲ話ソウ」
「そうじゃねぇっつってんだろ……。人間はお前等みたいに、一枚岩じゃねぇんだよ……。お前等の王様は1人かもしれんが、人間には複数いる。それぞれ価値観が違うんだ。九条の行いを良しとする奴もいれば、そうじゃない奴もいるってことだ。わかるだろ?」
「……ワカラン……」
「だめだこりゃ……」
ピシャリと自分の額を叩き天を仰ぐ男と、首を傾げるサハギン。
そんなやりとりを黙って聞いている事しか出来なかった3人は、必死に頭の中を整理していた。
「情報量が多すぎるッ! 悪いようにはしねぇから、1からちゃんと説明してくれ!」
思わず叫んでしまったバイス。それも、考えるより聞いた方が早いという結論に達したからなのだが、それにはリリーとネストも同意見。
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恐らく、九条が何かとんでもない事をやらかしていた――という事実だけは、確実に伝わっていた。
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