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第567話 ブレないエルザ
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「つきましては、エルザ様に謝罪を……」
「謝罪?」
何故リリーが、エルザに頭を下げる必要があるのか……。
建国案はそのままに、リリーが王として君臨するだけ……。
基本方針は何も変わっていないのだが、当のエルザは心当たりがあるようで、しみじみと頷いていた。
「王女様が決意なされたのなら、それでよい」
「何の話だ? 俺は聞いてないんだが?」
「私と九条様の婚姻の話です。新たな国を興すなら、それ相応の格は必要であろうと。私も一度はそれに同意した身……」
「ん? そこで、なんで俺が?」
血筋なら、リリーだけでも問題はないはずだ。
それが格の話であれば猶更。俺なんかと一緒になれば、逆に下がると思うのだが……。
世間では、一応魔王で通っている訳だし……。
「え? だって勇者様との結婚ですよ? 当然、一目置かれるだろう国になる事は間違いないかと……」
「……おい、ババァ……」
エルザに向かい、冷たい視線を送る。
リリーが俺に対して、何故こんなにも畏まるのか……。ようやく謎が解けた。
何と言えばいいやら……。呆れて物も言えないというのが正直なところだ。
「九条が異世界出身じゃとは言った。じゃが、勇者だとは一言もいっておらん。王女が勝手に勘違いをしただけじゃろ?」
「そんな言い訳通用するか! お前、わざと黙ってたな?」
「……はぁ?」
目を逸らしながらも耳に手を当て、耳が遠いフリとは、ボケ老人ムーブも大概である。
異世界人イコール勇者なのがこの世界の通説だ。俺と王女を結婚させるため、ワザと黙っていたに違いない。
確かに王家と勇者が結ばれれば、安泰だろう。遥か昔には国家間で勇者を取り合い、争ったくらいだ。
とはいえ、エルザも国家を裏から牛耳ろうとは思っていないはずである。
ネクロガルドの悪い所が出てしまったと言うべきか、その狙いは言わずもがな……。
「気の長い話だが、どうせ子供を取り上げようとしたんだろ?」
エルザはそれに観念したかのような深い溜息をつき、リリーだけが目を見張る。
「何故、九条様がそれをッ!? もしや、心が読めるのですか!?」
リリーは、勇者をなんだと思っているのか……。
俺にそんな力があれば、もう少し上手くこちらの世界に溶け込んでいる……。
「いやいや、エルザとの付き合いが少々長いだけですよ……」
溜息をつきたいのはこっちだ。
結婚すれば、いずれは子を作るとでも考えたのだろう。未来を見据え過ぎである。
忙しい王女に変わって、子供の面倒を見てやるとでも言っていたに違いない。
まったく油断も隙もない……。
「リリー様。確かに俺は異世界の出身ですが、勇者としてこの地に降り立った訳ではありませんので……。どちらかと言えば、何の使命も帯びていない放浪者って感じなんですよ……」
「えぇ!? でも、その強さは……」
「まぁ、なんとなくこの世界の常識からは多少ズレている感覚はありますが、それだけです。精々死霊術の適性がずば抜けていて、従魔達と話せる程度のただの人間ですから」
「そう……なのですね……。私はてっきり……」
勘違いは仕方ない。ネクロガルドだって、俺が勇者かそうでないかの判断に相当な時間を掛けたのだ。
エルザの所為で、リリーには余計な期待を抱かせてしまった。その罪は重い。
「サザンゲイアとの交渉は任せるからな? リリー様を騙した罪滅ぼしも兼ねて、一肌脱いでやってくれ」
「わかっておるわ。最初からそのつもりじゃったからの……。グランスロードの方はどうする?」
「それは私にお任せください。エドワード兄様ならきっと協力して下さいます」
「俺も同行しよう」
「いえ、私一人でも大丈夫です。九条様は村の防衛に尽力なさらなければ……」
「村は心配いりません。幸いにも仲間達が有能ですから」
200人もの侵略者を追い返した実績のある魔族のフードル。免停中ではあるが、ゴールドプレートの実力を誇る2人の冒険者に加え、従魔達までをも戦力に入れれば、滅多なことがない限り村が危機に陥ることはないだろう。
「もしもの為に、ダンジョンも避難場所として開放していますし……。それに、これからは女王となるのですから、今まで以上に護衛は必要でしょう?」
当たり前の事を言ったつもりだった。建国前の大事な時期だ。リリーにこそ、もしもの事があったら大変である。
……なのだが、返事は一向に返ってこず、リリーは俺をボケーっと見上げながらも言葉を詰まらせていた。
何か間違った事を言ったのかと不安になり助けを求めるも、ミアとエルザは呆れにも似た視線を俺に向けるだけ。
「私も行くからね! リリー様と二人っきりなんて、許しません!」
「別に、そんなつもりで言ったわけじゃ……」
誤解である。そもそもミアを仲間外れになどする気もないし、最初から連れて行くつもりだった。
そもそもリリーを一人旅立たせたとして、グランスロードまで一体どれだけの時間がかかると思っているのか。
王都を迂回せねばならない事を考えれば、恐らく2か月以上はかかる道程だ。
その往復を待っている時間などない。
「まぁ、そう急ぐでない。旅立つにしても、まだ決める事が残っておるじゃろ?」
「何を?」
「名前じゃよ。新たな国のな」
言われてみれば、そうである。
建国するから認めてくれと言うだけ言って、その実何も決まっていないではお話にならない。
「リリー様が決めていいんじゃないですか?」
「いえ、確かに王には私が就任しますが、コット村の住民達は九条をリーダーとして見ているはず……。ならば、ここは九条が決めるべきかと……」
「そう言われましても……」
俺にネーミングセンスがない事は知っているだろう。
自分のパーティに『やくたたズ』などという名前を付けようとしたくらいだぞ?
「悩むようなら、幾つかの案から住民投票でもしてみてはどうじゃ? お飾りの村長でも、話しは通しておかねばならんじゃろう?」
お飾りは余計である。だが、国を興すと言うのなら、皆には知らせておかなければならないのも事実だ。
しかし、その提案には一抹の不安を覚える。
「はいはーい。私もそれがいいと思いまーす!」
凄まじい勢いで手を上げたのはミア。その姿に、過去の記憶がよみがえる。
『プラチナプレート冒険者の住む村! コット村へようこそ!』の看板を、どうにかしたくて出した苦肉の策。
村おこしの為、その内容は『もふもふアニマルヴィレッジ』へと姿を変えたが、今の状況はまさにあの時と瓜二つ。
特に目をキラキラと輝かせているミアには、懐疑的な視線を送らずにはいられなかった。
「謝罪?」
何故リリーが、エルザに頭を下げる必要があるのか……。
建国案はそのままに、リリーが王として君臨するだけ……。
基本方針は何も変わっていないのだが、当のエルザは心当たりがあるようで、しみじみと頷いていた。
「王女様が決意なされたのなら、それでよい」
「何の話だ? 俺は聞いてないんだが?」
「私と九条様の婚姻の話です。新たな国を興すなら、それ相応の格は必要であろうと。私も一度はそれに同意した身……」
「ん? そこで、なんで俺が?」
血筋なら、リリーだけでも問題はないはずだ。
それが格の話であれば猶更。俺なんかと一緒になれば、逆に下がると思うのだが……。
世間では、一応魔王で通っている訳だし……。
「え? だって勇者様との結婚ですよ? 当然、一目置かれるだろう国になる事は間違いないかと……」
「……おい、ババァ……」
エルザに向かい、冷たい視線を送る。
リリーが俺に対して、何故こんなにも畏まるのか……。ようやく謎が解けた。
何と言えばいいやら……。呆れて物も言えないというのが正直なところだ。
「九条が異世界出身じゃとは言った。じゃが、勇者だとは一言もいっておらん。王女が勝手に勘違いをしただけじゃろ?」
「そんな言い訳通用するか! お前、わざと黙ってたな?」
「……はぁ?」
目を逸らしながらも耳に手を当て、耳が遠いフリとは、ボケ老人ムーブも大概である。
異世界人イコール勇者なのがこの世界の通説だ。俺と王女を結婚させるため、ワザと黙っていたに違いない。
確かに王家と勇者が結ばれれば、安泰だろう。遥か昔には国家間で勇者を取り合い、争ったくらいだ。
とはいえ、エルザも国家を裏から牛耳ろうとは思っていないはずである。
ネクロガルドの悪い所が出てしまったと言うべきか、その狙いは言わずもがな……。
「気の長い話だが、どうせ子供を取り上げようとしたんだろ?」
エルザはそれに観念したかのような深い溜息をつき、リリーだけが目を見張る。
「何故、九条様がそれをッ!? もしや、心が読めるのですか!?」
リリーは、勇者をなんだと思っているのか……。
俺にそんな力があれば、もう少し上手くこちらの世界に溶け込んでいる……。
「いやいや、エルザとの付き合いが少々長いだけですよ……」
溜息をつきたいのはこっちだ。
結婚すれば、いずれは子を作るとでも考えたのだろう。未来を見据え過ぎである。
忙しい王女に変わって、子供の面倒を見てやるとでも言っていたに違いない。
まったく油断も隙もない……。
「リリー様。確かに俺は異世界の出身ですが、勇者としてこの地に降り立った訳ではありませんので……。どちらかと言えば、何の使命も帯びていない放浪者って感じなんですよ……」
「えぇ!? でも、その強さは……」
「まぁ、なんとなくこの世界の常識からは多少ズレている感覚はありますが、それだけです。精々死霊術の適性がずば抜けていて、従魔達と話せる程度のただの人間ですから」
「そう……なのですね……。私はてっきり……」
勘違いは仕方ない。ネクロガルドだって、俺が勇者かそうでないかの判断に相当な時間を掛けたのだ。
エルザの所為で、リリーには余計な期待を抱かせてしまった。その罪は重い。
「サザンゲイアとの交渉は任せるからな? リリー様を騙した罪滅ぼしも兼ねて、一肌脱いでやってくれ」
「わかっておるわ。最初からそのつもりじゃったからの……。グランスロードの方はどうする?」
「それは私にお任せください。エドワード兄様ならきっと協力して下さいます」
「俺も同行しよう」
「いえ、私一人でも大丈夫です。九条様は村の防衛に尽力なさらなければ……」
「村は心配いりません。幸いにも仲間達が有能ですから」
200人もの侵略者を追い返した実績のある魔族のフードル。免停中ではあるが、ゴールドプレートの実力を誇る2人の冒険者に加え、従魔達までをも戦力に入れれば、滅多なことがない限り村が危機に陥ることはないだろう。
「もしもの為に、ダンジョンも避難場所として開放していますし……。それに、これからは女王となるのですから、今まで以上に護衛は必要でしょう?」
当たり前の事を言ったつもりだった。建国前の大事な時期だ。リリーにこそ、もしもの事があったら大変である。
……なのだが、返事は一向に返ってこず、リリーは俺をボケーっと見上げながらも言葉を詰まらせていた。
何か間違った事を言ったのかと不安になり助けを求めるも、ミアとエルザは呆れにも似た視線を俺に向けるだけ。
「私も行くからね! リリー様と二人っきりなんて、許しません!」
「別に、そんなつもりで言ったわけじゃ……」
誤解である。そもそもミアを仲間外れになどする気もないし、最初から連れて行くつもりだった。
そもそもリリーを一人旅立たせたとして、グランスロードまで一体どれだけの時間がかかると思っているのか。
王都を迂回せねばならない事を考えれば、恐らく2か月以上はかかる道程だ。
その往復を待っている時間などない。
「まぁ、そう急ぐでない。旅立つにしても、まだ決める事が残っておるじゃろ?」
「何を?」
「名前じゃよ。新たな国のな」
言われてみれば、そうである。
建国するから認めてくれと言うだけ言って、その実何も決まっていないではお話にならない。
「リリー様が決めていいんじゃないですか?」
「いえ、確かに王には私が就任しますが、コット村の住民達は九条をリーダーとして見ているはず……。ならば、ここは九条が決めるべきかと……」
「そう言われましても……」
俺にネーミングセンスがない事は知っているだろう。
自分のパーティに『やくたたズ』などという名前を付けようとしたくらいだぞ?
「悩むようなら、幾つかの案から住民投票でもしてみてはどうじゃ? お飾りの村長でも、話しは通しておかねばならんじゃろう?」
お飾りは余計である。だが、国を興すと言うのなら、皆には知らせておかなければならないのも事実だ。
しかし、その提案には一抹の不安を覚える。
「はいはーい。私もそれがいいと思いまーす!」
凄まじい勢いで手を上げたのはミア。その姿に、過去の記憶がよみがえる。
『プラチナプレート冒険者の住む村! コット村へようこそ!』の看板を、どうにかしたくて出した苦肉の策。
村おこしの為、その内容は『もふもふアニマルヴィレッジ』へと姿を変えたが、今の状況はまさにあの時と瓜二つ。
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