5 / 8
現実と逃避
しおりを挟む
知らせはハルナさんからあった。
スマホから聞えるハルナさんの泣き声を訊いても全く現実味を感じなかった。
しかし、否応なしにそれが事実であると知る事になった。
テレビで一斉に報道されたからだ。
どこから手に入れたのか、俺と踊っている映像も流れた。
吐き気がした。
おまえらマサミを語るな。
そんな気持ち悪い声で、マサミの名前を呼ぶな!
二階の部屋から液晶テレビをゴミ捨て場に向けて投げ捨てた。
鈍い音を立て砕けながらワンバンして転がった。
そして、俺はスマホでマサミを呼んだ。
何度やっても繋がらない。
出てくれよ!
頼むから出てくれよ!
でも全然繋がらず、マサミ以外の奴からの電話に飛びついては失望を繰り返すうちに、キレてスマホもゴミ捨て場に投げ捨てた。
俺は自分の部屋から出なくなった。
もうキレる元気も無くなり、ただ、部屋の角で座り込み、あたりを眺めながらマサミとの思い出をなぞった。
初めて見た時の衝撃、まだ何となくぎこちなかった二人っきりの初練習、付合おうと言った時の表情、コンテストの出番を前にして握ったあいつの手のぬくもり、不遜とも言える表情で客席を挑発するダンスシーン……。
そういえば、今度温泉行こうと約束してたな。
次のクリスマスは絶対バイトを入れずに二人で何処かに行こうって約束していたな。
そんな事まで思い出していた。
いろんな奴が、俺の部屋のドアを叩く。
ハルナさんもやってきたみたいだった。
でも、何を言っているのか俺にはよく分からなかった。
引きこもって三日たった。
俺は相変わらず部屋の隅にもたれながら、ボーッと部屋を眺めていた。
厚手のカーテンの脇から漏れる光が、だんだん力を失いかけている。
テーブルの上には買いだめしていたカップラーメンが数個、空っぽの姿をさらして並んでいた。
もう、買い置きはなくなった。
もうそろそろ死ぬのかな?
何となく思った。
俺はマサミの死について、ようやく考えるようになっていた。
マサミが刺された日に戻り、マサミを強引に引留める妄想をした。
または、密かにマサミの後を付け、ヤダガミがナイフを出した瞬間、飛び出て奴を叩き伏せるものもあった。
マサミを救いハッピーエンドになる自分を妄想する。
虚しい白昼夢だってことは自覚していた。
しかし、俺は頭の中でそれらをつなぎ合わせながらエンドレスで流し続けた。
スマホから聞えるハルナさんの泣き声を訊いても全く現実味を感じなかった。
しかし、否応なしにそれが事実であると知る事になった。
テレビで一斉に報道されたからだ。
どこから手に入れたのか、俺と踊っている映像も流れた。
吐き気がした。
おまえらマサミを語るな。
そんな気持ち悪い声で、マサミの名前を呼ぶな!
二階の部屋から液晶テレビをゴミ捨て場に向けて投げ捨てた。
鈍い音を立て砕けながらワンバンして転がった。
そして、俺はスマホでマサミを呼んだ。
何度やっても繋がらない。
出てくれよ!
頼むから出てくれよ!
でも全然繋がらず、マサミ以外の奴からの電話に飛びついては失望を繰り返すうちに、キレてスマホもゴミ捨て場に投げ捨てた。
俺は自分の部屋から出なくなった。
もうキレる元気も無くなり、ただ、部屋の角で座り込み、あたりを眺めながらマサミとの思い出をなぞった。
初めて見た時の衝撃、まだ何となくぎこちなかった二人っきりの初練習、付合おうと言った時の表情、コンテストの出番を前にして握ったあいつの手のぬくもり、不遜とも言える表情で客席を挑発するダンスシーン……。
そういえば、今度温泉行こうと約束してたな。
次のクリスマスは絶対バイトを入れずに二人で何処かに行こうって約束していたな。
そんな事まで思い出していた。
いろんな奴が、俺の部屋のドアを叩く。
ハルナさんもやってきたみたいだった。
でも、何を言っているのか俺にはよく分からなかった。
引きこもって三日たった。
俺は相変わらず部屋の隅にもたれながら、ボーッと部屋を眺めていた。
厚手のカーテンの脇から漏れる光が、だんだん力を失いかけている。
テーブルの上には買いだめしていたカップラーメンが数個、空っぽの姿をさらして並んでいた。
もう、買い置きはなくなった。
もうそろそろ死ぬのかな?
何となく思った。
俺はマサミの死について、ようやく考えるようになっていた。
マサミが刺された日に戻り、マサミを強引に引留める妄想をした。
または、密かにマサミの後を付け、ヤダガミがナイフを出した瞬間、飛び出て奴を叩き伏せるものもあった。
マサミを救いハッピーエンドになる自分を妄想する。
虚しい白昼夢だってことは自覚していた。
しかし、俺は頭の中でそれらをつなぎ合わせながらエンドレスで流し続けた。
0
あなたにおすすめの小説
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
元婚約者からの嫌がらせでわたくしと結婚させられた彼が、ざまぁしたら優しくなりました。ですが新婚時代に受けた扱いを忘れてはおりませんよ?
3333(トリささみ)
恋愛
貴族令嬢だが自他ともに認める醜女のマルフィナは、あるとき王命により結婚することになった。
相手は王女エンジェに婚約破棄をされたことで有名な、若き公爵テオバルト。
あまりにも不釣り合いなその結婚は、エンジェによるテオバルトへの嫌がらせだった。
それを知ったマルフィナはテオバルトに同情し、少しでも彼が報われるよう努力する。
だがテオバルトはそんなマルフィナを、徹底的に冷たくあしらった。
その後あるキッカケで美しくなったマルフィナによりエンジェは自滅。
その日からテオバルトは手のひらを返したように優しくなる。
だがマルフィナが新婚時代に受けた仕打ちを、忘れることはなかった。
最後に一つだけ。あなたの未来を壊す方法を教えてあげる
椿谷あずる
恋愛
婚約者カインの口から、一方的に別れを告げられたルーミア。
その隣では、彼が庇う女、アメリが怯える素振りを見せながら、こっそりと勝者の微笑みを浮かべていた。
──ああ、なるほど。私は、最初から負ける役だったのね。
全てを悟ったルーミアは、静かに微笑み、淡々と婚約破棄を受け入れる。
だが、その背中を向ける間際、彼女はふと立ち止まり、振り返った。
「……ねえ、最後に一つだけ。教えてあげるわ」
その一言が、すべての運命を覆すとも知らずに。
裏切られた彼女は、微笑みながらすべてを奪い返す──これは、華麗なる逆転劇の始まり。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜
丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。
与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。
専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、
失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。
そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、
セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。
「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」
彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、
彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。
嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、
広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、
独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。
栄養と愛情を取り戻したセレナは、
誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、
社交界で注目される存在となる。
一方、セレナを失った伯爵家は、
彼女の能力なしでは立ち行かず、
ゆっくりと没落していくのだった――。
虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる