異世界領地経営記

ITSUKI

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第1話 俺より弱い角ウサギ、角ウサギより弱い召喚獣(ゴブリン)

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ゲーム用に使っていたタブレットを操作して、今できることをチェックする。

どうやら、手持ちの端末がそのまま俺のダンジョンを操作するデバイスになっているようだ。

授業で時たま使うノートパソコンは、いろいろ開いていたらダンジョン内のマップが出てきたのでそのまま放置している。

侵入者が現れるとアラートが鳴るように設定できたので当面はこのまま。
というか、もともと使い慣れていないせいか下手に弄れない。

スマホとタブレットはアプリを取得、操作することで様々な機能を持つようだ。
今の所、取得できるアプリは『購入』『売却』『召喚』『拡張』の4つ。

SP(Seed Point)を消費して『購入』『召喚』『拡張』が可能に、不要物を『売却』でSPを増やせるようだ。
これ、分ける必要がある?ん?

画面のアプリがぐにゃりと動いて『購入』と『売却』が混じり『ショップ』に変わった。

初期値でSPが10万ポイント。角付きウサギが6000SPで売却できたので幸先いいと思いきや、『購入』アプリではネットショップがあって1SP=1円で使える模様。
2万円分以下のお買い物だと送料が別途1200円……っておいっ!

このシステム作ったヤツ、絶対楽○のショップサイト参考にしてるだろ!

横にスライドでこの世界の物も買えるみたいだ。
この世界の物は送料は取られないが、銅貨1枚で100SP。
安物のナイフが3万SP。

しかも品揃えが良くないのか、SOLD  OUTの文字が大半を占めている。

装備の強化は後回しだな。
よし、次!


『召喚』アプリを開く。

選べるのは今の所スライム(1000SP)とゴブリン(5000SP)のみ。その先にもずらりとシルエットが続くが、現段階では表示されないらしい。
角付きウサギ改め、ホーンラビット(売却時にタブレットに表示された)の売却益で賄えるので試しにポチってみる。

ノートパソコンに通知が鳴る。
どうやら、部屋ではなく洞窟に召喚されたらしい。

「……ふぅむ」

「…………?」

「――――ギッ?」

顎に手を当て、新たに生まれた我が精鋭たちを見下ろす。

スライム……直径30㎝程のブルーハワイっぽいゼリー

ゴブリン……俺のへそ下くらいの身長。みどりの皮膚に少しとがった耳。子供っぽい顔つき。手持ちの武器は薪になりそうな太い枝。

行けんのか?これで行けんのか?オイ。

この近辺のホーンラビットなら木刀装備の俺でも余裕で倒せる……いやいや、もしかしたらホーンラビットを超える秘めたる力がこいつらにも……

「ゴブリーーーーーーン!」

試しに原生林に出てみたら角付きウサギに腹を突かれて倒れるゴブリン。

「くそっ、ゴブの仇だ!」

動けなくなったホーンラビットを木刀で滅多打ちにする。

残されたのは、薪(ゴブリン「私の武器です」)と魔石(ゴブリン「私が出しました」)とホーンラビットの死骸。

原生林のモンスターは血を流すが、生み出したモンスターは血の代わりに粒子が飛び散るらしい。
おかげで人型のゴブがやられてもショックで動けなくならずに済んだ。

ちな、薪の売却価格200SP、ゴブリンの魔石の価格300SP。

オッケー、『召喚』についても後回しだ。


最後の希望、『拡張』をタップする。

表示されたのはダンジョン内のマップと右上にF1の文字。
マップに表示されているのは四角い俺の部屋と、原生林に続く短い洞窟だけ。

SPを消費して新たに階層を生み出したり、洞窟を広げたりできるらしい。

試しに1SPだけ洞窟を広げてみたところ、縦1m×横1mほどの横穴が10㎝ばかり出来ていた。

うん、微妙。

使えるんだけど使えない。
この機能が必要なのは今じゃない。

真っ黒な操作メニューがその下にも続いているが、今の所使える機能はこの2つみたいだ。

仕方ないのでスペース0で地下1階層を設置、核を移動させる。(地下層作成(B1):25000SP)

押し入れの奥に階段が出来、突き当りに水晶が安置されることになった。

使わないものを押し込んでバリケード代わりにしておけば、知らない間に破壊されるなんてことはそうそうないだろう。

不意に腹が鳴る。
そういえばこの世界にやってきてから何一つ口にしていな勝ったな。

一息ついた俺は、スマホを操作して、当面の食糧と武器を見繕うことにした。
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