異世界大魔王、現代日本に避難中です

九龍クロン

文字の大きさ
61 / 78

61話

しおりを挟む
61話

 「ここであってるかのう。こんにちはじゃー、誰ぞおらぬかー」

 メンバー限定配信の翌日、予定が無かったのでさっそく件のリスナーの家に来た。思っていたより大きな家だ。一人暮らしの女性らしいが、社長とかだろうか。
 庭先まで入り、ドアベルを鳴らした。

 「はいー!…………ヤミチャンダ」

 「やみちゃんじゃよー」

 「いまむかいます!」

 「ゆっくりでよいぞー」

 裏返って首を絞められたハムスターみたいな声でびっくりされたが、しばらくしてドアがあけられる。
 目の前には茶髪セミロング、仕事が出来そうなスーツの女性。
 その後ろに、大きめのTシャツとジーンズ、赤くて長い髪を後ろでひとつに纏めた、背が高くて強そうな女性が立っている。
 彼女が、例の、庭に落ちていた人間だろう。

 「あっあっ、ヤミチャン」

 「あー、その、なんじゃ、落ち着くのじゃ、ゆっくりの」

 「アッアッ」

 「……上がってよいか?」

 「アッハイ!!」

 ……まぁ、推しが自分の家に来たらこんなもんである。多分。

 リビングのソファに案内され、座る。ふかふかだ。
 目の前にはガラス製の高そうなテーブル、向かいにもソファ、そこに2人が座る。……大魔王様の横には何故か犬が2匹座っている。かわいい。でかい。

 「さて、まずはお邪魔させてもらってすまんの。これ、手土産じゃ。あとで食うといい」

 「アッアッ」

 「……もう俺が話そうか?」

 「そうじゃなぁ……アギト、久しぶりじゃな?」

 彼女の名はアギト。
 赤鬼族の末裔、鬼人族の将軍。
 亜人族の中でも、力と統率に長けた種族の、その中でもトップ中のトップ、最強の女だ。

 「大魔王様も、ご健勝でなにより。アンタが居なくなってから、アンタの庭番がウチに来たよ?ヤンチャされて大変だったんだぜ?」

 「ユイかのう……すまんのう、彼奴はちょっと、まあ、なんじゃ……」
 
 「ああいいよいいよ、ウチの半端モンらにもいい刺激になったさ。……俺が居なくても、まあ大丈夫だろうよ」

 「アギト、貴様は何故こっちに来たのか、わかるかのう?」

 3匹目のでかい犬が、赤髪赤目の、アギトと呼ばれた女の元に向かう。
 それを大きな手で撫でながら、アギトは語る。

 「勇者だよ」

 遠い目をして、思い出すように。

 「アンタの庭番よりイカれたやつが、ウチをめちゃくちゃにしやがったのさ。俺がなんとか押しとどめて、全員上手く逃がせた……はずだが。俺は逃げることもできなかったさ。たしかにアイツに、切られた。……気がついたら、ここさ」

 「ふーむ……アギトは魔力持ちではないじゃろ?世界を飛び越えるほどの理由がわからん」

 「俺としちゃ、アンタが居るのもビックリだがな」

 「レインもおるぞ」

 ガタッと、アギトがソファの上で跳ねる。犬は面白がって擦り寄っている。

 「はァ?レインってあのレインだろ?閃脚万雷の……ハイエルフの名誉将軍が、なんでそんな」

 「彼奴は魔法の暴発と言っておった。ワシも似たようなもんじゃ。……最近になって、コッチに来るアッチのモノが増えててのう。厄介事になりそうでな、こうやって情報収集をしておるのじゃ」

 「それはなんというか……もともとあっちの勇者っつーのが、こっちの世界の人間なんだろ?もしかしたら、今までの分を返す、みたいな感じか?」

 「もちろんその線も考えておる。あとはまあ、その例の勇者と邪神関連かのう……ま、考えてもわからんもんはわからんし、アギトもなんかあったら協力しておくれ。……すまほはあるかの?」

 「スマホは……まだないな。おい、アヤ、アンタのスマホでひとまず連絡先交換しておいてくれないか?大魔王様もいいだろ?」

 「よいぞー。アギトがスマホを買うまでは、そっちで連絡しよう」

 「アッアッハイ!ダイジョブデス」

 「……大丈夫かのう」

 ひとまず、アヤと呼ばれた女性と連絡先交換をして、アギトには認識阻害の指輪と魔力探知の指輪を預けた。魔力探知は、魔力のある物質が近くにあると色が変わるというものだ。生物には反応しないので、物品を探すのに役に立つ。認識阻害の指輪も魔力があるので、1m以内の魔力には反応しないようにつくってある。異常調査のための品だ。積極的に探す必要はあんまりないが、何かあったら連絡してもらう。

 「じゃ、まあ、大丈夫そうな人物じゃったから一安心じゃ。帰るかのう」

 「おう、なんかあったら連絡するわ。ご苦労さん。……ああ、ちょっといいか?」

 アギトが、帰ろうとした大魔王様を引き止めた。
 チラッとアヤの方を見て、また大魔王様をみる。

 「写真、撮ってやってくれないか?なんだっけか……チェキ?みたいな感じの」

 「あー、なるほどのう、いいぞよ」

 「俺が撮るよ、アヤ、スマホ貸せ」

 「アッアッエッナニッ」

 「仕事中の顔してじっとしてたらいいからな、ほら」

 アギトに言われて、キリッとデキル人間の顔で固まったアヤ。
 その横に、大魔王様が座り、顔を近づける。

 「こんなもんかの?」

 「お、いい感じだ。撮るぞー……よし、別のポーズも頼む……よし撮った。ありがとな」

 「これくらい良いのじゃ。じゃ、お暇するのじゃよ。……このまま置いていってもよいかの?」

 固まったまま微動だにしないアヤをみる。
……ほんとうに動かない。石化したかのようだ。

 「あとは俺がなんとかするわ。遠くからわざわざありがとな」

 「んむ、達者での。じゃあのー」

 その後、アヤのスマホで撮られたツーショットは、クラウドサーバーとPCに厳重に保存された上で、スマホの待ち受けにされた。
 会社での仕事中にもたまに見てはニマニマしているのは、秘書だけが知っている。
 彼女は大きな企業の社長。鉄壁の女社長。ニマニマ顔は、他の部下には見せられないのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。 ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。 しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。 奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。 そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。

異世界と地球がダンジョンで繋がった ー異世界転移者の私ー

白木夏
ファンタジー
2040年の初春、突如として地球上の主要都市に謎のダンジョンが出現した。 その特異性は明らかで、人口密集地を中心に出現し、未開の地には一切現れないという法則性を帯びていた。 人々は恐怖に震えつつも、未知なる存在に対する好奇心を抑えきれなかった。 異世界転移した最強の主人公のほのぼのライフ

最初から最強ぼっちの俺は英雄になります

総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...