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とらわれ
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光に透けるふわふわの金髪、アーモンド形のぱっちりとした緑の瞳。常ににこにこと微笑む顔は、昔から天使のようだと言われ、二十五にしては童顔。名門デネット侯爵家の嫡男でもある。
わたしの婚約者、ベンジャミンは、そういう男性だ。
「チェルシー、どうしたの?」
きらっきらの笑顔を浮かべて、ベンジャミンがわたしの顔を覗き込む。誰だったか、ふわふわのわんこみたいな男性よね、と言っていたのを思い出して、わたしは少しだけ笑ってしまった。
――みんな、騙されている。
「別に、なんでもないわ」
なるべく冷たく聴こえるように、ツンと顔を逸らして言うと、ベンジャミンは少しだけ悲しそうな顔をした。
だけど、わたしは気が付いている。ベンジャミンがわたしの返答よりも前に、一瞬だけ浮かべた微笑みに。
背筋にぞくりと走る感覚に、わたしは一瞬だけ身を震わせた。それが、恐れからくるものなのか、それともこの後を期待してのものなのか――わたしにはもう、それがわからない。
一つだけわかっているのは、きっと今夜も眠れないだろう。ただ、それだけだ。
「チェルシー、一曲踊ったら帰ろうか」
ふわふわわんこの、きらきら笑顔。周りから見れば、さぞ羨ましかろう。突き刺さる視線の多さがそれを物語っている。
お望みなら、代わってあげてもいい――しかし、その言葉を言った瞬間、わたしは自由を失うだろう。いや、すでに自由など存在していないのかもしれない。
世間から見れば、わたしが彼を捕まえているように見えるのだろうが――実際はその逆なのだから。
チェルシー・アッカー。それがわたしの名前だ。アッカー子爵の二番目の娘で、今年十九歳になる。
侯爵家の嫡男の婚約者としては、少しばかり身分が低い。
それもそのはず。その地位は、父がお金で買ったものだ。
デネット侯爵が投資に失敗して借金を抱えたことをどこからか聞きつけた父が、その借金を肩代わりする条件として、ベンジャミンとわたしの婚約をごり押ししたのだ。
それを聞かされるまでは、おろかにもベンジャミンがわたしに一目ぼれをした、などという荒唐無稽な話を信じていたのだから、相当におめでたい。
父とデネット侯爵の話を立ち聞きしてしまったわたしが、ベンジャミンに事の真偽を確かめた時、彼はうっすらと笑みを浮かべてこう言ったのだ。
「それに、何か問題が?」
――わたしの容姿は、まあ多少ひいき目に見ても十人並みがせいぜい。少しくすんだ金髪も、青緑の瞳も、この国では大して珍しくもない。その辺にごろごろしている。
目は大きいが、まつげは短いし、鼻もすこし低めだ。自慢できるのは、唇の形くらいかもしれない。
そんなわたしに、きらきら笑顔の貴公子が一目ぼれなんて、確かにおかしかったのだ。
涙を浮かべたわたしを、微笑みながら見下ろして――そうしてその場で、彼はわたしの純潔を奪ったのだ。
どうして、と涙ながらに問うたわたしに、彼は微笑んでこう言った。
わたしに逃げられては困るから、と。
「っ、ん、も、や、やだぁ……」
「嫌? 嘘ばっかり。ほら、チェルシー、見てごらん」
ぐちゅぐちゅといやらしい音を立てて、わたしの中に埋め込んでいた指を引き抜くと、ベンジャミンはそれをわたしに見せつける。
二本の指をゆっくりと離すと、ねばついた液体が糸を引いた。わたしは、いやいやと首を振り、目を閉じようとする。
「だめだよ、チェルシー」
耳元にそう囁かれ、胸の先をぎゅっとつねりあげられた。ひっ、と息を飲んで、わたしはなんとか目を開ける。すると、ベンジャミンは見せつけていた指を一本ずつ、丁寧に舐めあげた。
ぶる、と身体が震える。わたしの中から出たものが、彼の口の中へ消えてゆく。そのことに、わたしは確かに興奮していた。
「ん、おいしいよ……チェルシー、きみはいい子だね」
ふふ、と笑う吐息が耳にかかる。それだけで、彼に慣らされた身体はぴくんと反応してしまう。
にんまりと、彼の口元が弧を描いたのが気配で分かった。
「すっかり敏感になったね、チェルシー」
少し冷たい手が、乳房を捏ね始める。人より少しばかり大きいそこは、どうやらベンジャミンのお気に入りらしい。いつも、しつこいほどに触ってくる。
すでに蕩けさせられた身体、その先端は痛いほど勃ちあがっている。そこを触ってくれたら、気持ちがいいのに。さっきみたいに痛くしないで、いつもみたいに……。
おもわずはしたなく強請りそうになって、わたしは唇を噛んだ。これではまるで、わたしがこの行為を望んでいるみたいじゃないか。
「や、あ、あん…っ」
「――触って欲しい?」
抗議しようとしても、口から零れるのは聞くに堪えない、甘ったるい嬌声だけだ。それをあざ笑うかのように、ベンジャミンは笑みを浮かべてそう聞いてくる。
「や、ちが……っ、ん、んんっ……」
なんとか口を開こうとした時、胸の間をべろりと舐められる。途切れた抗議は、喘ぎになって途中で消えた。
舌先が、乳首の周りをくるりと撫で、なだらかな膨らみへと降りてゆく。ひくん、と揺れる身体を愉悦交じりの視線がじっくりと鑑賞している。
もう一度、同じ動作が繰り返される。わたしは思わず、胸の先が舌に触れるように身体を動かそうとしてしまった。それを押さえつけられて、眦に涙が浮かぶ。
「触って欲しいんでしょう? さあ、言ってごらんよ」
「そん、な、い、いや……」
ふうっと息を吹きかけられて、敏感になり切っていたそこから痺れるような快感がわたしを襲った。だけど、それは一瞬だけだ。足りない、全然足りない。
なんども同じことを繰り返されているうちに、わたしの頭はぽーっとして、もうすっかり何も考えられなくなっていた。
「……って……」
「ん?」
「さ、さわって……っ」
堪えきれなくなって、わたしは小さな声で彼にねだった。――ねだってしまった。
けれど、それで言うことを聞いてくれるようなひとではない。熱に浮かされたわたしに、ベンジャミンは冷たく言う。
「どこを?」
「ど、どこって……」
問いかけられて、わたしは一瞬だけ冷静になる。だけど、彼の手がまたくるくると乳首の周りを擽り、ふうっと息を吹きかけられるとだめだった。
「そ、そこを……」
「そこ?」
「ち、ちくび……っ、さわって……ッ!」
もはや、恥も外聞もなかった。焦らされ続けたわたしの身体は、解放を求めて疼いている。それを与えてくれるのは、もうベンジャミンだけなのだ。
「ん、まあ……今日のところは、合格にしてあげる」
尊大な物言いだ。しかし、それに反発する気力などない。痛いほど充血したそこは、ベンジャミンが与えてくれる刺激を今か今かとまっている。
ゆっくりと、彼の顔が近づいてくる。ちょん、と舌の先でつつかれ、もう片方をくりっと摘ままれて――わたしは、たったそれだけで呆気なく達してしまった。
「はは、随分盛大にイったなあ」
僕の身体の下で、チェルシーの身体ががくがくと震えている。よほど気持ち良かったのだろう。もう触っていないのに、震えが止まらない。
「……っ、あ、あ……ッ、は……」
苦し気に喘ぐ彼女の姿に、僕はとても興奮していた。もう既に、がっちがちになった自分自身が、トラウザーズの中で解放を求めている。しかし、僕はもう少しだけ、彼女の痴態を眺めていたかった。
チェルシーと婚約したのは、父の投資の失敗のせい。僕は、彼女の父に金で買われたわけだ。要望に従って、彼女に一目ぼれしただなんて嘘までついたのに、あっけなくそれがバレたときはどうしようかと思った。
でも、その時――チェルシーが、泣いたりするから。
僕は、これまで自分にそんな嗜好が備わっているなんて、考えたこともなかった。一夜のアバンチュールをそれなりに楽しんできたし、それらは至ってノーマルなものばかりだったから。
なのに、彼女の泣き顔を見た時――正直、その泣き顔だけで勃起した。我慢しようだなんて、少しも思わなかった。
だから、泣いている彼女を強引に犯した。
それは、これまでになく素晴らしく気持ちのいいセックスだった。チェルシーは少し触るだけでびくびく跳ねて感じていたし、気持ちよさそうに啼いていた。とろとろになった中に突っ込んで、少し乱暴にしてやったら、初めての癖に中イキまでキメていた。
きっと僕たちは相性がいいんだろう。
そう思ったら、チェルシーを妻に出来るのはものすごく幸運なんじゃないかと思い始めた。幸い、チェルシーは僕のことを好きになっていたみたいだったし、このまま結婚して良い夫婦生活が送れそうだ。
「きみに逃げられたら困る」
こんなに相性のいい女性を妻に出来なかったら、この先この快感は味わえないからね。そう思って、ぼくはにっこり微笑んでそう言った。
きっと彼女も喜ぶだろう。そう思ったのに――チェルシーは、それから僕に冷たく接するようになった。
しばらくは、そんな彼女のことを疎ましく思ったりもした。だけど、気が付いたんだ。
この、少し冷たい態度のチェルシーを、ぐずぐずに蕩かしてするセックスは、やっぱりとてつもなく気持ちいいってことに。
ひくひくと跳ねる身体。まだ絶頂から戻れていない彼女の蜜口に、僕は舌を這わせた。中からは、とめどなく蜜が溢れてくる。
それをぺろりと舐めると、途方もなく甘い味がする。
こんな味がするのは、チェルシーだけだ。ぴちゃぴちゃと音を立てて、舐めて、また溢れる蜜を啜る。中へと舌を差し込みながら、上にある慎ましやかな紅い粒をくにくにと捏ねると、チェルシーはまた甘ったるい声を上げて啼いた。
「ひゃ、あ、ああああッ……! だ、だめ、それ……っ」
嫌がられれば嫌がられるほど、やりたくなる。卑猥な言葉を言わせてみたり、おねだりさせたり。
そうそう、チェルシーのあの形の良い唇に、僕自身を突っ込むのも良かった。あれは、また試したい。
そんなことを思いながら、無心に秘所を舐め啜っていた僕は、チェルシーがすすり泣く声で我に返った。
「あ、だ、め……う、うっ……」
足をがくがくと震わせて泣くチェルシーは、途方もなくかわいい。これが見たくて、いつも少し無理をさせてしまう。先程から痛いほど勃起していた自分自身が、またむくむくと大きくなるのを感じて、僕はふっと息を吐いた。
「ん、チェルシー……すきだよ」
身体を起こし、唇を合わせながら囁く。すると、涙を浮かべた彼女が、一瞬だけ微笑んだように見えた。
「わたし、も……」
無意識なのだろうが、零れた言葉に、心臓がぎゅっとなった。
「チェルシー……!」
トラウザーズも下着も脱ぎ捨てて、ぱんぱんに膨れ上がった自分自身をチェルシーの蜜口に宛がう。もう、何も考えられずに、一息にそれを突き入れた。
「あ、あああっ……!」
ぎゅうぎゅうと、チェルシーの中が僕を締め付ける。挿れただけでイったらしい。宥めるようにキスをして、奥まで入り込むと、こみ上げる射精感をこらえて腰を振る。
「すき、すきなんだ……」
どこか、うわごとのように繰り返しながら、僕はチェルシーの中を蹂躙する。ようやく気付いた――僕は、どうやら彼女のことが好きになっていたのだ。
きっかけは、チェルシーの泣き顔か、身体か――そんなの、どっちだっていい。
僕は彼女が好きだし、彼女も僕が好き。
そう思うと、これまでよりももっと、チェルシーとのセックスが気持ちいい。
「あ、あ、や、こ、こわい、あっ、だめ、やだ、すき、あ、あっ――!」
「ああ、チェルシー、愛してる……!」
その言葉と共に、僕はあっさりとチェルシーの中で爆ぜた。最短記録だ。
でも、そんなことはどうだってよかった。
もう、チェルシーと、チェルシーとのセックスと。それだけあれば、僕はもうなんだって、どうでもいい。
完全に、僕はチェルシーの虜だった。
愛を確かめ合ったというのに、相変わらずチェルシーは僕にちょっと冷たい。だけど、僕は知っている。
こうして冷たいチェルシーを、ぐずぐずに蕩かすのはとても楽しいし、彼女も多分それを望んでいる。
多分それが、僕たちの愛の形なんだろう。
「チェルシー、どうしたんだい?」
にっこりと微笑みながら、今日も僕は問いかける。ぼんやりと宙を見ていた彼女は、その言葉にはっとすると、ツンと顎をそらして答える。
「なんでもないわ」
――ほら、今日も。
「そう、チェルシー……そろそろ帰ろうか?」
「……ええ」
僕たちはお互いに、お互いの虜なのだ。
わたしの婚約者、ベンジャミンは、そういう男性だ。
「チェルシー、どうしたの?」
きらっきらの笑顔を浮かべて、ベンジャミンがわたしの顔を覗き込む。誰だったか、ふわふわのわんこみたいな男性よね、と言っていたのを思い出して、わたしは少しだけ笑ってしまった。
――みんな、騙されている。
「別に、なんでもないわ」
なるべく冷たく聴こえるように、ツンと顔を逸らして言うと、ベンジャミンは少しだけ悲しそうな顔をした。
だけど、わたしは気が付いている。ベンジャミンがわたしの返答よりも前に、一瞬だけ浮かべた微笑みに。
背筋にぞくりと走る感覚に、わたしは一瞬だけ身を震わせた。それが、恐れからくるものなのか、それともこの後を期待してのものなのか――わたしにはもう、それがわからない。
一つだけわかっているのは、きっと今夜も眠れないだろう。ただ、それだけだ。
「チェルシー、一曲踊ったら帰ろうか」
ふわふわわんこの、きらきら笑顔。周りから見れば、さぞ羨ましかろう。突き刺さる視線の多さがそれを物語っている。
お望みなら、代わってあげてもいい――しかし、その言葉を言った瞬間、わたしは自由を失うだろう。いや、すでに自由など存在していないのかもしれない。
世間から見れば、わたしが彼を捕まえているように見えるのだろうが――実際はその逆なのだから。
チェルシー・アッカー。それがわたしの名前だ。アッカー子爵の二番目の娘で、今年十九歳になる。
侯爵家の嫡男の婚約者としては、少しばかり身分が低い。
それもそのはず。その地位は、父がお金で買ったものだ。
デネット侯爵が投資に失敗して借金を抱えたことをどこからか聞きつけた父が、その借金を肩代わりする条件として、ベンジャミンとわたしの婚約をごり押ししたのだ。
それを聞かされるまでは、おろかにもベンジャミンがわたしに一目ぼれをした、などという荒唐無稽な話を信じていたのだから、相当におめでたい。
父とデネット侯爵の話を立ち聞きしてしまったわたしが、ベンジャミンに事の真偽を確かめた時、彼はうっすらと笑みを浮かべてこう言ったのだ。
「それに、何か問題が?」
――わたしの容姿は、まあ多少ひいき目に見ても十人並みがせいぜい。少しくすんだ金髪も、青緑の瞳も、この国では大して珍しくもない。その辺にごろごろしている。
目は大きいが、まつげは短いし、鼻もすこし低めだ。自慢できるのは、唇の形くらいかもしれない。
そんなわたしに、きらきら笑顔の貴公子が一目ぼれなんて、確かにおかしかったのだ。
涙を浮かべたわたしを、微笑みながら見下ろして――そうしてその場で、彼はわたしの純潔を奪ったのだ。
どうして、と涙ながらに問うたわたしに、彼は微笑んでこう言った。
わたしに逃げられては困るから、と。
「っ、ん、も、や、やだぁ……」
「嫌? 嘘ばっかり。ほら、チェルシー、見てごらん」
ぐちゅぐちゅといやらしい音を立てて、わたしの中に埋め込んでいた指を引き抜くと、ベンジャミンはそれをわたしに見せつける。
二本の指をゆっくりと離すと、ねばついた液体が糸を引いた。わたしは、いやいやと首を振り、目を閉じようとする。
「だめだよ、チェルシー」
耳元にそう囁かれ、胸の先をぎゅっとつねりあげられた。ひっ、と息を飲んで、わたしはなんとか目を開ける。すると、ベンジャミンは見せつけていた指を一本ずつ、丁寧に舐めあげた。
ぶる、と身体が震える。わたしの中から出たものが、彼の口の中へ消えてゆく。そのことに、わたしは確かに興奮していた。
「ん、おいしいよ……チェルシー、きみはいい子だね」
ふふ、と笑う吐息が耳にかかる。それだけで、彼に慣らされた身体はぴくんと反応してしまう。
にんまりと、彼の口元が弧を描いたのが気配で分かった。
「すっかり敏感になったね、チェルシー」
少し冷たい手が、乳房を捏ね始める。人より少しばかり大きいそこは、どうやらベンジャミンのお気に入りらしい。いつも、しつこいほどに触ってくる。
すでに蕩けさせられた身体、その先端は痛いほど勃ちあがっている。そこを触ってくれたら、気持ちがいいのに。さっきみたいに痛くしないで、いつもみたいに……。
おもわずはしたなく強請りそうになって、わたしは唇を噛んだ。これではまるで、わたしがこの行為を望んでいるみたいじゃないか。
「や、あ、あん…っ」
「――触って欲しい?」
抗議しようとしても、口から零れるのは聞くに堪えない、甘ったるい嬌声だけだ。それをあざ笑うかのように、ベンジャミンは笑みを浮かべてそう聞いてくる。
「や、ちが……っ、ん、んんっ……」
なんとか口を開こうとした時、胸の間をべろりと舐められる。途切れた抗議は、喘ぎになって途中で消えた。
舌先が、乳首の周りをくるりと撫で、なだらかな膨らみへと降りてゆく。ひくん、と揺れる身体を愉悦交じりの視線がじっくりと鑑賞している。
もう一度、同じ動作が繰り返される。わたしは思わず、胸の先が舌に触れるように身体を動かそうとしてしまった。それを押さえつけられて、眦に涙が浮かぶ。
「触って欲しいんでしょう? さあ、言ってごらんよ」
「そん、な、い、いや……」
ふうっと息を吹きかけられて、敏感になり切っていたそこから痺れるような快感がわたしを襲った。だけど、それは一瞬だけだ。足りない、全然足りない。
なんども同じことを繰り返されているうちに、わたしの頭はぽーっとして、もうすっかり何も考えられなくなっていた。
「……って……」
「ん?」
「さ、さわって……っ」
堪えきれなくなって、わたしは小さな声で彼にねだった。――ねだってしまった。
けれど、それで言うことを聞いてくれるようなひとではない。熱に浮かされたわたしに、ベンジャミンは冷たく言う。
「どこを?」
「ど、どこって……」
問いかけられて、わたしは一瞬だけ冷静になる。だけど、彼の手がまたくるくると乳首の周りを擽り、ふうっと息を吹きかけられるとだめだった。
「そ、そこを……」
「そこ?」
「ち、ちくび……っ、さわって……ッ!」
もはや、恥も外聞もなかった。焦らされ続けたわたしの身体は、解放を求めて疼いている。それを与えてくれるのは、もうベンジャミンだけなのだ。
「ん、まあ……今日のところは、合格にしてあげる」
尊大な物言いだ。しかし、それに反発する気力などない。痛いほど充血したそこは、ベンジャミンが与えてくれる刺激を今か今かとまっている。
ゆっくりと、彼の顔が近づいてくる。ちょん、と舌の先でつつかれ、もう片方をくりっと摘ままれて――わたしは、たったそれだけで呆気なく達してしまった。
「はは、随分盛大にイったなあ」
僕の身体の下で、チェルシーの身体ががくがくと震えている。よほど気持ち良かったのだろう。もう触っていないのに、震えが止まらない。
「……っ、あ、あ……ッ、は……」
苦し気に喘ぐ彼女の姿に、僕はとても興奮していた。もう既に、がっちがちになった自分自身が、トラウザーズの中で解放を求めている。しかし、僕はもう少しだけ、彼女の痴態を眺めていたかった。
チェルシーと婚約したのは、父の投資の失敗のせい。僕は、彼女の父に金で買われたわけだ。要望に従って、彼女に一目ぼれしただなんて嘘までついたのに、あっけなくそれがバレたときはどうしようかと思った。
でも、その時――チェルシーが、泣いたりするから。
僕は、これまで自分にそんな嗜好が備わっているなんて、考えたこともなかった。一夜のアバンチュールをそれなりに楽しんできたし、それらは至ってノーマルなものばかりだったから。
なのに、彼女の泣き顔を見た時――正直、その泣き顔だけで勃起した。我慢しようだなんて、少しも思わなかった。
だから、泣いている彼女を強引に犯した。
それは、これまでになく素晴らしく気持ちのいいセックスだった。チェルシーは少し触るだけでびくびく跳ねて感じていたし、気持ちよさそうに啼いていた。とろとろになった中に突っ込んで、少し乱暴にしてやったら、初めての癖に中イキまでキメていた。
きっと僕たちは相性がいいんだろう。
そう思ったら、チェルシーを妻に出来るのはものすごく幸運なんじゃないかと思い始めた。幸い、チェルシーは僕のことを好きになっていたみたいだったし、このまま結婚して良い夫婦生活が送れそうだ。
「きみに逃げられたら困る」
こんなに相性のいい女性を妻に出来なかったら、この先この快感は味わえないからね。そう思って、ぼくはにっこり微笑んでそう言った。
きっと彼女も喜ぶだろう。そう思ったのに――チェルシーは、それから僕に冷たく接するようになった。
しばらくは、そんな彼女のことを疎ましく思ったりもした。だけど、気が付いたんだ。
この、少し冷たい態度のチェルシーを、ぐずぐずに蕩かしてするセックスは、やっぱりとてつもなく気持ちいいってことに。
ひくひくと跳ねる身体。まだ絶頂から戻れていない彼女の蜜口に、僕は舌を這わせた。中からは、とめどなく蜜が溢れてくる。
それをぺろりと舐めると、途方もなく甘い味がする。
こんな味がするのは、チェルシーだけだ。ぴちゃぴちゃと音を立てて、舐めて、また溢れる蜜を啜る。中へと舌を差し込みながら、上にある慎ましやかな紅い粒をくにくにと捏ねると、チェルシーはまた甘ったるい声を上げて啼いた。
「ひゃ、あ、ああああッ……! だ、だめ、それ……っ」
嫌がられれば嫌がられるほど、やりたくなる。卑猥な言葉を言わせてみたり、おねだりさせたり。
そうそう、チェルシーのあの形の良い唇に、僕自身を突っ込むのも良かった。あれは、また試したい。
そんなことを思いながら、無心に秘所を舐め啜っていた僕は、チェルシーがすすり泣く声で我に返った。
「あ、だ、め……う、うっ……」
足をがくがくと震わせて泣くチェルシーは、途方もなくかわいい。これが見たくて、いつも少し無理をさせてしまう。先程から痛いほど勃起していた自分自身が、またむくむくと大きくなるのを感じて、僕はふっと息を吐いた。
「ん、チェルシー……すきだよ」
身体を起こし、唇を合わせながら囁く。すると、涙を浮かべた彼女が、一瞬だけ微笑んだように見えた。
「わたし、も……」
無意識なのだろうが、零れた言葉に、心臓がぎゅっとなった。
「チェルシー……!」
トラウザーズも下着も脱ぎ捨てて、ぱんぱんに膨れ上がった自分自身をチェルシーの蜜口に宛がう。もう、何も考えられずに、一息にそれを突き入れた。
「あ、あああっ……!」
ぎゅうぎゅうと、チェルシーの中が僕を締め付ける。挿れただけでイったらしい。宥めるようにキスをして、奥まで入り込むと、こみ上げる射精感をこらえて腰を振る。
「すき、すきなんだ……」
どこか、うわごとのように繰り返しながら、僕はチェルシーの中を蹂躙する。ようやく気付いた――僕は、どうやら彼女のことが好きになっていたのだ。
きっかけは、チェルシーの泣き顔か、身体か――そんなの、どっちだっていい。
僕は彼女が好きだし、彼女も僕が好き。
そう思うと、これまでよりももっと、チェルシーとのセックスが気持ちいい。
「あ、あ、や、こ、こわい、あっ、だめ、やだ、すき、あ、あっ――!」
「ああ、チェルシー、愛してる……!」
その言葉と共に、僕はあっさりとチェルシーの中で爆ぜた。最短記録だ。
でも、そんなことはどうだってよかった。
もう、チェルシーと、チェルシーとのセックスと。それだけあれば、僕はもうなんだって、どうでもいい。
完全に、僕はチェルシーの虜だった。
愛を確かめ合ったというのに、相変わらずチェルシーは僕にちょっと冷たい。だけど、僕は知っている。
こうして冷たいチェルシーを、ぐずぐずに蕩かすのはとても楽しいし、彼女も多分それを望んでいる。
多分それが、僕たちの愛の形なんだろう。
「チェルシー、どうしたんだい?」
にっこりと微笑みながら、今日も僕は問いかける。ぼんやりと宙を見ていた彼女は、その言葉にはっとすると、ツンと顎をそらして答える。
「なんでもないわ」
――ほら、今日も。
「そう、チェルシー……そろそろ帰ろうか?」
「……ええ」
僕たちはお互いに、お互いの虜なのだ。
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お読みいただきありがとうございます。
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私の中では、チェルシーはまだベンジャミンをあんまり信じてないな……という気がしていますので、その辺んも含めて想像すると結構楽しそうかなと思っています。
何か思いついたら書いたりするかもしれません。その際にはぜひお付き合いいただければと思います。