【中長編BL┊︎完結】銀色に輝く漆黒のセレナータ

三葉秋

文字の大きさ
15 / 15
番外編

SS┊︎スパルタピアノ講師の甘いおしおき(後編)

「2週間ぶりですね。自分でいじったりしてました?」
 風呂から上がり、することといえば一つしかない。健全な大学生の男たちだ。それがメインと言っても過言ではない。けれど…。
 いきなり尻を撫でられながら板垣から発せられた言葉に、岩倉は恥ずかしさを堪えきれない。
「そんなことっ! 俺に出来るわけないだろがっ」
「えぇー、最近は後ろでも気持ちよくなってそうだなって思ってたんですけど、違いますぅ? 前だけだと物足りなくないですかぁ?」
 確かに板垣の言う通り、最近では後ろも気持ちいいと思えてきたと言えばそうである、がしかし……。
 実のところ、試したことがない訳では無い。
 それはほんの数日前の出来事だ。
 岩倉は風呂に入っている最中に右手の小指をそっと後孔に当て、少しずつ中へ押し進めてみたことがある。
 でも第1関節くらいまで飲み込んだあたりでビビってしまい、指を全て抜いてしまったのだ。
 全然気持ちよくもないし、なんなら変な汗まで出てくる始末。こんなの自分じゃどうにもできないよ。
 岩倉はそう結論付けたのだった。
「お前のが、いい…」
 脳内で考えていただけのはずだったのに、いつの間にか声に出してしまった。恐る恐る後方を確認し、板垣の様子を伺う。
 板垣は特に変わった様子もなく、俺の言葉に対して「承知しました」と真顔で応えた。
「えっ……、あっと……」
「しょうがないですね。僕が気持ちよくしてあげますよ。じゃあはい、楽さんパンツ脱いで」
「お、おう」
 なんの躊躇いもなく、岩倉は纏っていたパンツを脱ぐ。
「楽さん右手出して」
 言われるがまま、右手を差し出した岩倉の掌にヒヤッとしたジェルが落とされた。
「にぎにぎして、あっためて」
 岩倉の手を外側から包み込み、手の中でジェルが空気と混ざり合い卑猥な音を奏でている。
 そのまま岩倉に手首を掴まれ、板垣の尻の間まで誘導された。
「はい。んじゃ、触ってみて」
「え……あっ、自分じゃ……できねって……」
「大丈夫。僕が手伝ってあげますから。ほら、中指」
 促されるまま、岩倉は中指を後孔に押し当てた。
 中指の腹から徐々に進入してくる自分の指先に怯みそうになる岩倉は、すでに根を上げそうだ。
 どう頑張っても、自分の指じゃ異物感は拭えない。
 岩倉は怖さと不快さで、どうしようもなくなってきた。
「千弥……。やっぱ、むぅんっ……」
 無理だと言おうとしたら、唇を奪われた。ちゅっと、わざと音を立てながら唇を舐められる。
「手、止まってる。続けて、絶対気持ちよくなるからさ」
 歯列を割って入ってくる千弥の舌と自分の舌が絡み合う。
 板垣は岩倉の後孔に這わせた右手にそっと触れ、挿入している中指をもっと奥へ奥へと促してくる。
 一人じゃ全然奥まで入っていかなかったのに、いつの間にか第二関節までもゆうに飲み込んだ頃。
「動かしてみよっか」
 ゆっくり抜き差しする自分の指はまだ快感とはほど遠いけれど、言われた通り動かす岩倉だったが、
「ひゃっ……」
 不意に触れられた胸の尖りに思わず声を上げてしまった。
「乳首、立ってる。……楽さん、可愛い」
 指の腹で撫でられた岩倉の乳首は敏感で、硬くなり芯を持ち始めた尖りは紅くぷっくりと膨らんでいる。
 千弥は触っていない方の尖りを一気に口に含み吸い上げた。
「あ゛っ! あぁ……んぅ」
 乳首を刺激された感覚と一緒に、後孔に飲み込んでいた自分の指を思い切り締め付けてしまった。
 締め付けられた衝撃で、中の指が敏感な部分をかすめる。
「ひぁ……ぇっ、あっ!」
「楽さん、僕が舐めるのと同時に指、動かして…」
 言われた通りに千弥の舌の動きに合わせて指を動かした。さっきまでは感じなかった後孔が吸い付くように強くうねっている。
「…じょうっ、……ずっ…」
「はぁっ、あっ……んっ」
 喋りながら突起部分を舐められると、異様にくすぐったい。自然と声が溢れてしまう。
「気持ち、いい? もっと……、気持ちよく、なろう」
 両胸の突起の愛撫はそのままに、板垣は空いている手で岩倉の昂りを掴んだ。硬く芯を持った岩倉の昂りの先端からは蜜が滴り、岩倉の腹の上を徐々に濡らしていく。
 いつの間にこんなに萌していたのか、自分でも分からない。
「濡れてるね」
 板垣が岩倉の陰茎を扱きながら言う。
「……せん、やっ…んぅっ」
「なに?!」
「もう……だめ、かも……」
 そういった俺の言葉が合図とでも言うように、陰茎を握る板垣の力が強まった。敏感な部分をクリクリと弄られ、あっという間に頂点まで上り詰めていく。
「楽さんっ! …指、止めないで、動かして」
 千弥に触れられている竿も、自分で触っている孔も全てが気持ちよくて、気づいた時には達していた。
 はあ、はあと息絶え絶えに、岩倉は息を整える。
 そして、我慢できずに閉じてしまった目をゆっくりと開けた。
 ーーー目がチカチカする。
 目の前に千弥のにっこりと笑った顔が見えた。
「楽さん、可愛い。よくできました」
 頭をわしゃわしゃとかき混ぜてくる千弥を前に、つい本音が出た。
「もう……やだぁ。あぁもう、……わけわかんねぇよ……」
 自分の晒したあられも無い痴態に、一気に恥ずかしさが押し寄せてきた。
 気持ち良すぎてわけがわからない。
 どこが気持ちよかったのかと問われると……、千弥が触ってくれるところはもちろんだが、自分で触っていた後孔までもが気持ちよかったのだ。
 今でもじんじんと火照る後孔が、気持ちよかったことを物語っている。
「気持ちよくなかった?」
「き…もち、……よかっ……た」
「なぁに、聞こえないよ。楽さん」
 わざと聞こえないくらいの声で答えたんだ。察しろよ……。
「………せんやの………ばかっ」
 岩倉は板垣のTシャツを掴み、軽く引き寄せ唇を押し当てた。
 自分からキスをするのはいまだに恥ずかしさが残る。だから、そのまま板垣の首に腕を回し抱き寄せた…。
「おっと、楽さ… …」
「早く、ちょう……だい」
 耳元で囁いた岩倉の声に、板垣の体が泡立つ。
「楽さんそれ、反則ですからね。……どうなっても、知らないから」
 板垣は仰向けだった岩倉の体を反転させ、腰を高く突き上げた。
「わぁ……っ! せん、や……ひゃっ」
 体の向きを変えられたと思ったら、背中に板垣の舌が這わされていく。
 舐められたところから温められ冷やされる。肩甲骨から脇腹へ、だんだんと下に降りてくる板垣の舌は、終着地でもあろうある一点で止まった。
「舐めるからね」
「あっ……い、や……あ゛っ……」
 俺がそこ弱いの、知ってるくせに。
 舐められた孔はさっきの行為ですでに痺れていた。その痺れがいつもよりさらに岩倉を敏感にさせている。
 どんどんと押し込まれる板垣の舌先に、さっき吐き出したばかりの岩倉の竿もまた芯を持ち始めていた。
「せん……やっ、……ねぇ……んぁっ!」
 孔と竿を一気に攻められて、岩倉の感度も最高潮に上り詰めていく。
 岩倉の孔に這わされていた舌先が離れた。
 代わりに押し当てられた滑りある質量の物体は板垣の剛直である。なんの躊躇もなく押し進めていく板垣。
「簡単に飲みこんじゃうね。楽さん、ずっと、欲しかった……の?!」
「んぅ……う、……ん」
「楽さんの、えっち」
「こっち向いて」
 顎をクイっと、顔だけ板垣の方に向く。
 岩倉は少し涙目に、潤みながら板垣の方を見つめている。
 そんな表情を見せられた板垣は、一溜りもない。先程より一層腰の動きが早くなる。
「あ゛……っ!…楽さん。……イ、クっ」
「俺も……せん、や……あっ、… …」
 行く瞬間にあわさった唇は互いに食むように重なった。
 動いていても決して、離すことがないように。きつく結ばれている。

 今更かとは思うが、岩倉は一つ確認してしておきたかったことがあった。
「なぁ、千弥」
「なんですか」
 二人して上半身裸の上、板垣に腕枕をされているこのタイミングで聞くことではないかも知れないが、気になるものは気になってしまう岩倉であった。
「千弥はさ……俺に、満足してないの、かな……とか、思ったりして……」
 板垣から思いっきしドスの効いた「はぁ!!!」が返ってきたことは言うまでもない。
「あぁいや、ごめん。聞き方が悪かった、かも……」
「なにを思ってそう言う考えに至ったのか。一応、聞きます」
 腕枕をされている状態で、今にも首を絞められそうな岩倉。一歩間違えば、すぐにでも首締めの刑に処されるだろうな。
「千弥は、アブノーマルが好きなのかと思って……」
 それを聞いた板垣は今にも吹き出しそうな状態で、笑いを堪えている。でもそんなもの数秒も持たなかった。
「ぷはっ! ははは! 楽さんらしいね。ちょっと、ウケる」
「おいっ! こっちは結構真剣なんだぞ」
「そうですって言ったら、どうするんですか」
「そりゃ……千弥のためなら。少しくらいは譲歩しても……いいかな、っとか思ったりしなくもないような……」
「楽さん、寛大ですね。まあ、安心してください。僕はアブノーマルでもなんでもないですから。でも……、恥ずかしがってる楽さんは、ちょっと好物かも」
「えっ、あっ。俺だっていつまでも、初々しいわけじゃっ……」
 ニヤニヤと口角を上げながら、板垣の胸にぎゅっと抱きしめられた。
「いつでも僕のそばにいて、ずっと見ていてくれたら嬉しいです」
 しばらくの間抱き合い、互いの熱を確かめ合った。久々の行為だったし、岩倉自身も今日はいつもより気持ちが昂っていた。
 腕を解かれ、板垣が少し体をかがめて岩倉を見つめる。
「楽さん、大好きです」
 頬に添えられた掌は熱くてさっきまでの行為の余韻が残っているようだった。
「俺も、大好きだ!」
 笑みが溢れる板垣の顔を見ると岩倉の顔にも自然と笑顔が綻ぶ。
 触れ合う唇も、抱きしめ合う体も、千弥の体温を感じることができる。
 俺って何て幸せ者なんだと、岩倉は心から思うのであった。
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

【完結】エデンの住処

社菘
BL
親の再婚で義兄弟になった弟と、ある日二人で過ちを犯した。 それ以来逃げるように実家を出た椿由利は実家や弟との接触を避けて8年が経ち、モデルとして自立した道を進んでいた。 ある雑誌の専属モデルに抜擢された由利は今をときめく若手の売れっ子カメラマン・YURIと出会い、最悪な過去が蘇る。 『彼』と出会ったことで由利の楽園は脅かされ、地獄へと変わると思ったのだが……。 「兄さん、僕のオメガになって」 由利とYURI、義兄と義弟。 重すぎる義弟の愛に振り回される由利の運命の行く末は―― 執着系義弟α×不憫系義兄α 義弟の愛は、楽園にも似た俺の住処になるのだろうか? ◎表紙は装丁cafe様より︎︎𓂃⟡.·

ひとりも、ふたりも

鈴川真白
BL
ひとりで落ち着く時間も、ふたりでいる楽しい時間も両方ほしい 1人を謳歌するマイペース × 1人になりたいエセ陽キャ

【R18+BL】空に月が輝く時

hosimure
BL
仕事が終わり、アパートへ戻ると、部屋の扉の前に誰かがいた。 そこにいたのは8年前、俺を最悪な形でフッた兄貴の親友だった。 告白した俺に、「大キライだ」と言っておいて、今更何の用なんだか…。 ★BL小説&R18です。

エスポワールに行かないで

茉莉花 香乃
BL
あの人が好きだった。でも、俺は自分を守るためにあの人から離れた。でも、会いたい。 そんな俺に好意を寄せてくれる人が現れた。 「エスポワールで会いましょう」のスピンオフです。和希のお話になります。 ハッピーエンド 他サイトにも公開しています

【完結】言えない言葉

未希かずは(Miki)
BL
 双子の弟・水瀬碧依は、明るい兄・翼と比べられ、自信がない引っ込み思案な大学生。  同じゼミの気さくで眩しい如月大和に密かに恋するが、話しかける勇気はない。  ある日、碧依は兄になりすまし、本屋のバイトで大和に近づく大胆な計画を立てる。  兄の笑顔で大和と心を通わせる碧依だが、嘘の自分に葛藤し……。  すれ違いを経て本当の想いを伝える、切なく甘い青春BLストーリー。 第1回青春BLカップ参加作品です。 1章 「出会い」が長くなってしまったので、前後編に分けました。 2章、3章も長くなってしまって、分けました。碧依の恋心を丁寧に書き直しました。(2025/9/2 18:40)

経理部の美人チーフは、イケメン新人営業に口説かれています――「凛さん、俺だけに甘くないですか?」年下の猛攻にツンデレ先輩が陥落寸前!

中岡 始
BL
社内一の“整いすぎた男”、阿波座凛(あわざりん)は経理部のチーフ。 無表情・無駄のない所作・隙のない資料―― 完璧主義で知られる凛に、誰もが一歩距離を置いている。 けれど、新卒営業の谷町光だけは違った。 イケメン・人懐こい・書類はギリギリ不備、でも笑顔は無敵。 毎日のように経費精算の修正を理由に現れる彼は、 凛にだけ距離感がおかしい――そしてやたら甘い。 「また会えて嬉しいです。…書類ミスった甲斐ありました」 戸惑う凛をよそに、光の“攻略”は着実に進行中。 けれど凛は、自分だけに見せる光の視線に、 どこか“計算”を感じ始めていて……? 狙って懐くイケメン新人営業×こじらせツンデレ美人経理チーフ 業務上のやりとりから始まる、じわじわ甘くてときどき切ない“再計算不能”なオフィスラブ!