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本編
2
翌日、午前講義がない日ではあったが、二限目の講義終わりの時間に合わせ、岩倉は西棟の一階ロビーへと向かっていた。
この場所はいわば管楽器生徒達のたまり場で、昼食を取ったり、おしゃべりをしたり、昼寝をしたりと、みんな思い思いに過ごしている場所だ。
ちょうど棟の入口を入ったところで「岩倉、こっちこっち」と声をかけられた。
近づくとぐっと肩を引かれ、そのまま肩組みをされた。
「やっと伴奏者見つかったらしいな。しかもあの板垣だなんて、お前一体どんな手使ったんだよ」
噂というのはあっという間に広がるものだと、改めて実感する。
昨夜、たまたま練習室で西田にばったり会い、伴奏者が見つかったことを報告したのだ。あまりにもしつこく誰なんだと聞くもんだから、仕方なく板垣だと教えると、驚きのあまり顔面フリーズしていたな。あの引きつった頬と半分空いた口の滑稽さは思い出すだけで笑えてくるが。あの野郎、誰に話しやがったんだ。
ものの半日足らずでここまで話がまわっているとは、思ってもみなかった。
ちなみに今俺に話しかけてきたのは、トロンボーン科の葛西(かさい)である。金管楽器の奴らとは一緒にイベントを企画したりもすることから、顔見知りも多い。比較的みんな仲が良い。
「誰から聞いたんだよ」
「一限の講義の時には周りの奴ら、大体お前のこと話してたぞ」
別に悪いことをした訳では無いのに、喉につかえた骨みたいな、取れそうで取れない歯がゆさが拭えない。俺の知らないところで、変な噂になっていないことを祈るばかりだ。
「たまたまだよ。ピアノの講師が一緒だったんだ。それだけの事だよ」
葛西の周りにいるやつらも、本当かよとか、そんな偶然があるのかだの、どいつもこいつも勝手なことばかり言いやがって。偶然だって言っているだろうが。仕舞いにはレベルの差なんて言っているやつもいる。それこそ余計なお世話である。
「そういうことだから、んじゃな」
組まれていた肩をスルッと抜き出て、その場を離れた。こいつらに構っている暇は俺には無い。
フロアの一番奥のテーブルで目的の奴らを発見した。吉井たち金管女子の集まりだ。
「吉井、おつかれー」
「お、噂の岩倉登場! おつかれぇー」
ここでもその扱いなのかと少し萎えつつも、喉元まで出かかった言葉をかろうじて飲み込む。実際ここまで来た理由は、板垣絡みのことを吉井に聞こうとしているからだ。
「噂のはやめろ。そんなことより、ちょっと聞きたいことがあってさ」
「なによ、変な事じゃないでしょうね」
「当たり前だ。板垣についてなんだけど」
「これまた、タイムリーな話題ね」
この間の吉井の話は、気持ち半分に聞いてしまっていた。それも含め改めて教えてもらおうと思ったのだ。さすがに今の俺では、板垣について情報が乏しすぎる。
吉井と一緒にその場にいた金管楽器の女子連中は、ありがたいことに板垣について知っていることを事細かに教えてくれた。もちろん、噂話も含めて。
大学入学前からコンクールに出ていて注目されていたこと、出身高校、サークルには所属してない、彼女はいないらしいなどわかる範囲で色々な話が出てきた。
「そういえば、さっきコンクールの話をしたじゃない」
それまで、みんなでキャピキャピと話をしていたのに、吉井が何やら深刻そうな顔で話し始めた。
「一番注目されていたのは高校二年生の時らしいけど、来年はファイナリストも視野だって騒がれていたみたいなの。でも何故か、三年のコンクールに板垣くんの名前がなかったみたいなのよね」
「それって、なにかおかしいことか」
「おかしいって訳じゃないけど、それだけ期待されていて出場しないって何かしらの理由があるのかなって。勝手な想像だけど。でも今この大学に入学している訳だし、あんまり深く考えることでもないのかなとかね」
「なるほどなぁ…」
コンクールに無縁な自分にはそんな返答しか出来なかった。それに、自分の耳で聴いた板垣のピアノは実際に上手かったのだ。
なんだかんだ、30分ほど話していたようだ。みんなに礼を言い、その場を離れた。
吉井たちのおかげで、少しは板垣についての知識がついたと思う。
今日は五限の講義のみなので、それまでの時間は個人練習でもしていようと、そのままこの棟の上の階に上がることにした。
そんなに重くはない楽器ケースを背負い、岩倉は目的の六階練習室の付近までやってきた。今日も練習室からはリストの超絶技巧が聴こえてくる。
どのタイミングでノックをしたらいいのか躊躇しながら部屋の前を右往左往していると、急にドアが開いた。
デジャブかよ…。
「そんなところにいないで、入って来てください」
「あ、悪い…」
こいつ、この前もそうだったけど、背中に目でも付いているのか。なんで俺がいることがわかるんだよ。
「とりあえず一回合わせてみますか。ものは試しということで、僕も初めてなんですよ。伴奏って」
「あの、その前に…」
岩倉は持っていた楽器ケースやカバン類を床に下ろし、板垣の方へ体を向けた。
「この度は伴奏を引き受けてくれてありがとうございます。板垣くんには迷惑かけないように精一杯頑張りますので、どうぞよろしくお願いします」
そう言って、一礼した。
「なんですか、改まって。っていうか、見た目に反して結構真面目な方なんですね」
「見た目って…」
少しクスッと笑われた気がする。そして、少し恥ずかしくなってきた。
そう思わせたのはこの茶髪のせいか。それとも、襟足が伸びている髪型か。はたまた、話し方か…。
「ちなみに、あの時めんどくさかったのは本当ですから。条件も撤回するつもりはないので、そのつもりで」
「はぁ…」
条件という言葉を聞き思い出してしまった。そうだったな、成績でSランクを取らなければ次はないんだっけか。
「ただ、さっきも言いましたが、伴奏するの初めてなんです。引き受けたからには真面目に取り組もうと思っていますので、こちらこそよろしくお願いします」
「あ、よ…よろしくお願いします!」
俺の方が動揺してどうするよ。
「それじゃ、合わせてみますか」
完璧だった。初見だったんだよな…。(初見とは初めて楽譜を見て弾くことの意。)
「岩倉さん、悪くない音してますね。ただ、強弱も速さもめちゃくちゃなんですけど。ちゃんと楽譜見て吹いてますか」
「すまん。気をつけます」
先生にも毎回注意されるところだ。楽譜に忠実にという指摘を、板垣からも受けてしまった。俺の方が先輩なのに本当に情けない。
「特に一楽章中盤の【rit.(リット)】はちゃんとした方が良いと思います。後に出てくる繰り返しのメロディーが生きてこないと思うので、それから…」
板垣に言われるがまま楽譜に鉛筆でメモを取っていく。
こいつの言っていることはもっともで、口の出しようがないし、なにせ全て的確だ。
板垣からは肌に染み付いた音楽的センスが滲み出ていた。どれだけ音楽と共にあったらここまでになるんだろう。そんなことを考えてしまうほどに、間近で感じる板垣の音楽に、一日目にして圧倒されていた。
「あと一回合わせて、今日のところは終わりにしましょう」
「おう、そうだな」
指摘されたところ、今出来ることは極力直す。そうでないところは、次回までの課題にする。
こうして、一回目の板垣との練習はつつがなく終了した。
板垣との練習は週に一回程度、決まって彼がいつも練習している東棟の六階で行った。
前回課題にしていた部分をさらい直し、一、二回通し練習を行う。時間にして一時間程度であるが、回を増すごとに二人の仲も心なしか縮まったように思う。
まもなく夏休みに入る七月のある日の練習後、楽器を片付けながら帰り支度をしていた岩倉が、休み中の練習について板垣に相談をしていた。
「休み明けはすぐ試験だから、実家に帰らないなら休み中に二回くらい合わせしたいなと思ってるんだけど。板垣くんの都合ってどんな感じ?」
前期実技試験は九月中旬頃、夏季休暇後すぐに行われる。学生の間では、[夏休みごろし]と呼ばれていて、浮き足だった夏休みもこのスケジュールのおかげで、まともに遊ぶことができないことで有名だ。
ん…、板垣くん?
なかなか返答がないことを心配し、岩倉はピアノに座る板垣の方に目を向けた。
視線は楽譜の方を見ているのに、いまいち焦点があっていない気がする。
「板垣くん、大丈夫?」
「あ…すみません。ぼーっとしていて、夏休みの練習…でしたね。特に実家に帰る予定もないので、学校開放日であればいつでも平気です」
様子がいつもと違う気がするけど、気のせいだろうか。俺なんかが踏み込んでいい感じではないかな。
「そうか、じゃあ頃合い見てまた連絡するよ。それじゃ」
楽器を背負い、練習室を後にしようとした時、
「僕も、今日はもう帰ろうと思うんで一緒に下ります」
珍しいこともあるもんだ。
いつも閉門ギリギリまで練習室にいる坂垣くんが、この時間に帰ろうとするとは。やはり、何かおかしい気がする。
せっかく一緒に帰るのだし、板垣をご飯に誘ってみてもいいのではと、なぜか不意に思ってしまった。
「なぁ、よかったら飯でも行くか?」
少し考える間はあったものの「行きます」とまさかの返答。断られるだろうと思っていた俺は、少しびっくりした。
「んじゃ、裏手のラーメン屋な。奢るよ」
二人で練習室を後にし、看守に会釈する。目的のラーメン屋は、大学の裏手側の住宅街を抜けた先にある。そこまで遠くはないが、徒歩で十分ほどかかるだろう。
練習以外でまともに板垣と話をしたことがないので、どう話を切り出せばいいか岩倉は迷っていた。
「岩倉さんは実家、帰らないんですか」
そう思っていた矢先、板垣の方から話しかけてくれた。
「俺、実家近いんだよ。帰ろうと思えばいつでも帰れる距離なんだわ。通うのがめんどくて大学の近くにアパート借りてる。まぁ、そういう奴ほど実家にはほとんど帰らねぇわな。坂垣くんは、今年上京してきたばっかりじゃん、帰らなくていいの?」
「いいんです。僕はまだ、……帰れないので…」
これまた、なんか意味深な感じじゃね。突っ込んでいいことなのか。でも、この件で聞かないのも…、ねぇ。
「帰れない理由でもあるのか?」
聞いてしまった。
「理由って程じゃないです。ただ自分に課していることがあって、それをクリアできるまでは…」
そう言って黙ったままの板垣くんを見ていたら、なんだか妙にもっと距離を縮めたいと思ってしまった。
「なぁ、千弥って呼んでいいか。俺のことも楽って呼んでいいからさ」
「なんなんですか、唐突に」
「名前で呼んだら少し、俺らの距離も縮まるかなと、思って」
俺なんかとは、そんなお近付きになりたくはないかな。なんてね…。
「さすがに呼び捨ては無理なので…楽さんって呼びます」
えぇ、そっち!
「楽さんかぁ……ハハっ、その呼び方は初めてかも、なんか新鮮だわ。てか、千弥って背、めっちゃ高いよな」
ラーメン屋までの道のり、料理が出てくるまでの間、そんなに長い時間ではなかったけれど初めて、まともに板垣と話をした。
たったそれだけの時間だったけれど、板垣は何か抱えているものがあるのだろうと感じた。俺なんかじゃ到底、何の役にも立たないだろうけど。一応、一個上の先輩として、なにか示してやれることがあればなと岩倉は思った。ただし、音楽以外でよろしく頼む。
なんてことを思いながら、自宅までの道のりをいつもよりもゆっくりとした足取りで帰った。
***
ひとつ前の試験者が呼ばれ試験会場に入っていった。
トランペット科の前期実技試験。まもなく岩倉の順番がやって来る。僕の左横には、一点を見つめたままトランペットのマウスピース部分から一心不乱に息を吹き込み楽器を温める岩倉が座っている。
しかしながら、こちらにまで緊張が伝わってきそうだ。結論から言わせてもらうと、僕は全く緊張していない。伝わってきそうなだけである。こう言っては、薄情者と言われそうだが所詮、僕の試験ではなく楽さんの試験である。僕はあくまでサポートに徹すれば良いのであるからして、僕が緊張をしていたら、元も子もないだろう。
こういう時どんな言葉をかけたらいいのだろうか。
ずっと個人プレーを主本としてきた板垣にとっては、全くもってわからなかった。
「岩倉楽さん、まもなくです。こちらでお待ちください」
かける言葉が見つからないまま、試験会場の前へ誘導された。程なくして、試験会場の防音扉が開かれ、先に岩倉が会場へ入り、それに僕が続く。
手と足が同時に出そうなほどカチコチ状態の岩倉を背後から眺めていた。
これはまずいのでは…。
このままだと80パーセント、いや、60パーセントの実力すら出せないのではないかと板垣は心中不安に思ってしまった。
明らかに会場の空気に呑まれている。
伴奏を引き受けた時は、次を断るための口実として突きつけた条件だった。Sランクを取るなんて絶対に無理だろうと思っていた。しかし、今の岩倉であれば、取れて当然だと板垣は思っている。だからこそ、120パーセントの力を発揮してもらいたい。
お互いが定位置についた。
岩倉の緊張を取るために何かしなければ、演奏スタートの前に、何かっ…。
板垣が椅子に座り直した時、たまたまギシッという音がなった。
これだ。心の中で、音に反応した楽さんがこっちを向かないかと念を送った。
それが通じたのか、岩倉がこっちを向いた。
すかさず板倉は、
―落ち着け、お前は大丈夫だ!
と岩倉に目で訴えかけた。
それに応えるかのように岩倉は、目一杯の笑顔を板垣に向けていた。
その笑顔なら大丈夫そうだな。
今見た岩倉の笑顔の瞬間、板垣の心の中に胸が苦しくなるような不思議な感情が芽生えた気がした。
準備が整った岩倉はトランペットを構え、板垣の方を向いた。
銀色に輝くベルの曲線が、蛍光灯の光に反射してキラキラと輝いている。岩倉の出す合図とともに、試験が始まった。
始まってしまえばあっという間で、滞りなく試験は終わった。
ただ始まる前に感じたあの胸が苦しくなるような感情は、今も自分の中に燻っている。
これは一体なんだろう。
「千弥お疲れ。本当にありがとう! なんてお礼を言ったらいいかわかんないくらい、すげー興奮してる。とりあえず、飯行こ!」
「楽さんこそ、お疲れ様でした。ちょっとトイレ行ってくるので、その辺で待っていてもらっていいですか」
本当はトイレになんか行きたい訳ではなかった。板垣はこの燻る感情を少しでも落ち着かせたかったのだ。
「「かんぱーーい!」」
乾杯とは言っても僕は未成年なので烏龍茶。楽さんは二十歳を超えているので、ビール片手に「あーうまい」と言って一口で半分ほど飲み干していた。
「気は早いと思うんだけどさ、後期の伴奏もお願いできないか」
板垣自身、こう切り出してくるのではないかと思っていた。
「まだ成績も出ていないし、最初にした約束じゃないことはわかってる。でも、今日演奏して改めて実感した。やっぱり俺、お前の伴奏で次もやりたい!」
あまり考える間もなく、「いいですよ。後期も引き受けます」と板垣は返答をした。
それを聞くや、
「まじか! 嬉しすぎる」
と言って、とろけそうな笑顔で板垣を見てハグしてきた。
ドキっ。
あ、あの胸が苦し…まただ……。
「ちょっと楽さんってば、飲み過ぎたんじゃないですか」
試験も終わったことで緊張の糸が解けてしまったのだろう。いつになく酔っ払ってしまった岩倉は、板垣の肩にもたれ掛かりながら、よたよたと歩いていた。
「そんなに飲んでないぞ。まだイケる!」
「ほら、もう少しで家ですから頑張って歩いてくださいよ」
僕より小柄な楽さん。そうは言っても一七〇センチはあるとは思うが、こういう挙動を見せられると少し可愛く思えてしまう。
岩倉のアパートの一階エントランスへ着いた。岩倉の部屋は二階。階段を上がり部屋の前までたどり着く。
「もう家ですよ。勝手に鍵、開けますからね」
聞いてはいないだろう岩倉に了承を得て、カバンの中から鍵を取り出し部屋の中へ入った。
初めて入った岩倉の部屋は、とても男らしかった。別に汚いというわけではないが、とりあえず物が多かった。
ほとんどが楽器関連のものだと思うが、部屋の随所に色々な物が散らばっている。一番岩倉らしかったのは、楽譜が平積みされているところだ。これじゃ下の楽譜を取り出す時に雪崩を起こすことが目に見えている。
それらをうまく避けながら、ベッドまで岩倉を運んでいき、岩倉を寝かせ声をかけた。
「楽さん。それじゃ僕、帰りますからね」
「千弥!」
「ひっ」
急に名前を呼ばれ、変な声が出た。
「俺は、千弥のピアノが大好きなんだぞ。一目惚れなんだ! だから…だから、一緒に演奏出来て、すっげー嬉しい!…うむ…」
酔っぱらいの戯言か、寝言というにははっきりとした言葉だった。
岩倉から発せられた言葉に、板垣は動揺を隠せなかった。
こんなにもまっすぐ僕のピアノを好きと言ってくれた人、今までにいただろうか。そして、試験の時からずっと燻っているあの感情の正体が、今わかってしまった気がする。
「僕、楽さんのこと……」
自覚し始めたら、楽さんへの感情が頭の中で鮮明に溢れ出てきた。
僕はベッドにそっと腰掛け、楽さんの顔をじっと見つめた。
何分経ったのだろう。
不意に、手の甲で楽さんの頬に触れてみた。お酒を飲んでいる体は、少し火照っていてとても温かい。そのままなぞるように唇へと手を伸ばし、親指でマウスピースの跡が残る唇をなぞった。
やわらかいな……。
「ごめんな、さい……」
その言葉と同時に板垣は岩倉に唇を合わせていた。
この場所はいわば管楽器生徒達のたまり場で、昼食を取ったり、おしゃべりをしたり、昼寝をしたりと、みんな思い思いに過ごしている場所だ。
ちょうど棟の入口を入ったところで「岩倉、こっちこっち」と声をかけられた。
近づくとぐっと肩を引かれ、そのまま肩組みをされた。
「やっと伴奏者見つかったらしいな。しかもあの板垣だなんて、お前一体どんな手使ったんだよ」
噂というのはあっという間に広がるものだと、改めて実感する。
昨夜、たまたま練習室で西田にばったり会い、伴奏者が見つかったことを報告したのだ。あまりにもしつこく誰なんだと聞くもんだから、仕方なく板垣だと教えると、驚きのあまり顔面フリーズしていたな。あの引きつった頬と半分空いた口の滑稽さは思い出すだけで笑えてくるが。あの野郎、誰に話しやがったんだ。
ものの半日足らずでここまで話がまわっているとは、思ってもみなかった。
ちなみに今俺に話しかけてきたのは、トロンボーン科の葛西(かさい)である。金管楽器の奴らとは一緒にイベントを企画したりもすることから、顔見知りも多い。比較的みんな仲が良い。
「誰から聞いたんだよ」
「一限の講義の時には周りの奴ら、大体お前のこと話してたぞ」
別に悪いことをした訳では無いのに、喉につかえた骨みたいな、取れそうで取れない歯がゆさが拭えない。俺の知らないところで、変な噂になっていないことを祈るばかりだ。
「たまたまだよ。ピアノの講師が一緒だったんだ。それだけの事だよ」
葛西の周りにいるやつらも、本当かよとか、そんな偶然があるのかだの、どいつもこいつも勝手なことばかり言いやがって。偶然だって言っているだろうが。仕舞いにはレベルの差なんて言っているやつもいる。それこそ余計なお世話である。
「そういうことだから、んじゃな」
組まれていた肩をスルッと抜き出て、その場を離れた。こいつらに構っている暇は俺には無い。
フロアの一番奥のテーブルで目的の奴らを発見した。吉井たち金管女子の集まりだ。
「吉井、おつかれー」
「お、噂の岩倉登場! おつかれぇー」
ここでもその扱いなのかと少し萎えつつも、喉元まで出かかった言葉をかろうじて飲み込む。実際ここまで来た理由は、板垣絡みのことを吉井に聞こうとしているからだ。
「噂のはやめろ。そんなことより、ちょっと聞きたいことがあってさ」
「なによ、変な事じゃないでしょうね」
「当たり前だ。板垣についてなんだけど」
「これまた、タイムリーな話題ね」
この間の吉井の話は、気持ち半分に聞いてしまっていた。それも含め改めて教えてもらおうと思ったのだ。さすがに今の俺では、板垣について情報が乏しすぎる。
吉井と一緒にその場にいた金管楽器の女子連中は、ありがたいことに板垣について知っていることを事細かに教えてくれた。もちろん、噂話も含めて。
大学入学前からコンクールに出ていて注目されていたこと、出身高校、サークルには所属してない、彼女はいないらしいなどわかる範囲で色々な話が出てきた。
「そういえば、さっきコンクールの話をしたじゃない」
それまで、みんなでキャピキャピと話をしていたのに、吉井が何やら深刻そうな顔で話し始めた。
「一番注目されていたのは高校二年生の時らしいけど、来年はファイナリストも視野だって騒がれていたみたいなの。でも何故か、三年のコンクールに板垣くんの名前がなかったみたいなのよね」
「それって、なにかおかしいことか」
「おかしいって訳じゃないけど、それだけ期待されていて出場しないって何かしらの理由があるのかなって。勝手な想像だけど。でも今この大学に入学している訳だし、あんまり深く考えることでもないのかなとかね」
「なるほどなぁ…」
コンクールに無縁な自分にはそんな返答しか出来なかった。それに、自分の耳で聴いた板垣のピアノは実際に上手かったのだ。
なんだかんだ、30分ほど話していたようだ。みんなに礼を言い、その場を離れた。
吉井たちのおかげで、少しは板垣についての知識がついたと思う。
今日は五限の講義のみなので、それまでの時間は個人練習でもしていようと、そのままこの棟の上の階に上がることにした。
そんなに重くはない楽器ケースを背負い、岩倉は目的の六階練習室の付近までやってきた。今日も練習室からはリストの超絶技巧が聴こえてくる。
どのタイミングでノックをしたらいいのか躊躇しながら部屋の前を右往左往していると、急にドアが開いた。
デジャブかよ…。
「そんなところにいないで、入って来てください」
「あ、悪い…」
こいつ、この前もそうだったけど、背中に目でも付いているのか。なんで俺がいることがわかるんだよ。
「とりあえず一回合わせてみますか。ものは試しということで、僕も初めてなんですよ。伴奏って」
「あの、その前に…」
岩倉は持っていた楽器ケースやカバン類を床に下ろし、板垣の方へ体を向けた。
「この度は伴奏を引き受けてくれてありがとうございます。板垣くんには迷惑かけないように精一杯頑張りますので、どうぞよろしくお願いします」
そう言って、一礼した。
「なんですか、改まって。っていうか、見た目に反して結構真面目な方なんですね」
「見た目って…」
少しクスッと笑われた気がする。そして、少し恥ずかしくなってきた。
そう思わせたのはこの茶髪のせいか。それとも、襟足が伸びている髪型か。はたまた、話し方か…。
「ちなみに、あの時めんどくさかったのは本当ですから。条件も撤回するつもりはないので、そのつもりで」
「はぁ…」
条件という言葉を聞き思い出してしまった。そうだったな、成績でSランクを取らなければ次はないんだっけか。
「ただ、さっきも言いましたが、伴奏するの初めてなんです。引き受けたからには真面目に取り組もうと思っていますので、こちらこそよろしくお願いします」
「あ、よ…よろしくお願いします!」
俺の方が動揺してどうするよ。
「それじゃ、合わせてみますか」
完璧だった。初見だったんだよな…。(初見とは初めて楽譜を見て弾くことの意。)
「岩倉さん、悪くない音してますね。ただ、強弱も速さもめちゃくちゃなんですけど。ちゃんと楽譜見て吹いてますか」
「すまん。気をつけます」
先生にも毎回注意されるところだ。楽譜に忠実にという指摘を、板垣からも受けてしまった。俺の方が先輩なのに本当に情けない。
「特に一楽章中盤の【rit.(リット)】はちゃんとした方が良いと思います。後に出てくる繰り返しのメロディーが生きてこないと思うので、それから…」
板垣に言われるがまま楽譜に鉛筆でメモを取っていく。
こいつの言っていることはもっともで、口の出しようがないし、なにせ全て的確だ。
板垣からは肌に染み付いた音楽的センスが滲み出ていた。どれだけ音楽と共にあったらここまでになるんだろう。そんなことを考えてしまうほどに、間近で感じる板垣の音楽に、一日目にして圧倒されていた。
「あと一回合わせて、今日のところは終わりにしましょう」
「おう、そうだな」
指摘されたところ、今出来ることは極力直す。そうでないところは、次回までの課題にする。
こうして、一回目の板垣との練習はつつがなく終了した。
板垣との練習は週に一回程度、決まって彼がいつも練習している東棟の六階で行った。
前回課題にしていた部分をさらい直し、一、二回通し練習を行う。時間にして一時間程度であるが、回を増すごとに二人の仲も心なしか縮まったように思う。
まもなく夏休みに入る七月のある日の練習後、楽器を片付けながら帰り支度をしていた岩倉が、休み中の練習について板垣に相談をしていた。
「休み明けはすぐ試験だから、実家に帰らないなら休み中に二回くらい合わせしたいなと思ってるんだけど。板垣くんの都合ってどんな感じ?」
前期実技試験は九月中旬頃、夏季休暇後すぐに行われる。学生の間では、[夏休みごろし]と呼ばれていて、浮き足だった夏休みもこのスケジュールのおかげで、まともに遊ぶことができないことで有名だ。
ん…、板垣くん?
なかなか返答がないことを心配し、岩倉はピアノに座る板垣の方に目を向けた。
視線は楽譜の方を見ているのに、いまいち焦点があっていない気がする。
「板垣くん、大丈夫?」
「あ…すみません。ぼーっとしていて、夏休みの練習…でしたね。特に実家に帰る予定もないので、学校開放日であればいつでも平気です」
様子がいつもと違う気がするけど、気のせいだろうか。俺なんかが踏み込んでいい感じではないかな。
「そうか、じゃあ頃合い見てまた連絡するよ。それじゃ」
楽器を背負い、練習室を後にしようとした時、
「僕も、今日はもう帰ろうと思うんで一緒に下ります」
珍しいこともあるもんだ。
いつも閉門ギリギリまで練習室にいる坂垣くんが、この時間に帰ろうとするとは。やはり、何かおかしい気がする。
せっかく一緒に帰るのだし、板垣をご飯に誘ってみてもいいのではと、なぜか不意に思ってしまった。
「なぁ、よかったら飯でも行くか?」
少し考える間はあったものの「行きます」とまさかの返答。断られるだろうと思っていた俺は、少しびっくりした。
「んじゃ、裏手のラーメン屋な。奢るよ」
二人で練習室を後にし、看守に会釈する。目的のラーメン屋は、大学の裏手側の住宅街を抜けた先にある。そこまで遠くはないが、徒歩で十分ほどかかるだろう。
練習以外でまともに板垣と話をしたことがないので、どう話を切り出せばいいか岩倉は迷っていた。
「岩倉さんは実家、帰らないんですか」
そう思っていた矢先、板垣の方から話しかけてくれた。
「俺、実家近いんだよ。帰ろうと思えばいつでも帰れる距離なんだわ。通うのがめんどくて大学の近くにアパート借りてる。まぁ、そういう奴ほど実家にはほとんど帰らねぇわな。坂垣くんは、今年上京してきたばっかりじゃん、帰らなくていいの?」
「いいんです。僕はまだ、……帰れないので…」
これまた、なんか意味深な感じじゃね。突っ込んでいいことなのか。でも、この件で聞かないのも…、ねぇ。
「帰れない理由でもあるのか?」
聞いてしまった。
「理由って程じゃないです。ただ自分に課していることがあって、それをクリアできるまでは…」
そう言って黙ったままの板垣くんを見ていたら、なんだか妙にもっと距離を縮めたいと思ってしまった。
「なぁ、千弥って呼んでいいか。俺のことも楽って呼んでいいからさ」
「なんなんですか、唐突に」
「名前で呼んだら少し、俺らの距離も縮まるかなと、思って」
俺なんかとは、そんなお近付きになりたくはないかな。なんてね…。
「さすがに呼び捨ては無理なので…楽さんって呼びます」
えぇ、そっち!
「楽さんかぁ……ハハっ、その呼び方は初めてかも、なんか新鮮だわ。てか、千弥って背、めっちゃ高いよな」
ラーメン屋までの道のり、料理が出てくるまでの間、そんなに長い時間ではなかったけれど初めて、まともに板垣と話をした。
たったそれだけの時間だったけれど、板垣は何か抱えているものがあるのだろうと感じた。俺なんかじゃ到底、何の役にも立たないだろうけど。一応、一個上の先輩として、なにか示してやれることがあればなと岩倉は思った。ただし、音楽以外でよろしく頼む。
なんてことを思いながら、自宅までの道のりをいつもよりもゆっくりとした足取りで帰った。
***
ひとつ前の試験者が呼ばれ試験会場に入っていった。
トランペット科の前期実技試験。まもなく岩倉の順番がやって来る。僕の左横には、一点を見つめたままトランペットのマウスピース部分から一心不乱に息を吹き込み楽器を温める岩倉が座っている。
しかしながら、こちらにまで緊張が伝わってきそうだ。結論から言わせてもらうと、僕は全く緊張していない。伝わってきそうなだけである。こう言っては、薄情者と言われそうだが所詮、僕の試験ではなく楽さんの試験である。僕はあくまでサポートに徹すれば良いのであるからして、僕が緊張をしていたら、元も子もないだろう。
こういう時どんな言葉をかけたらいいのだろうか。
ずっと個人プレーを主本としてきた板垣にとっては、全くもってわからなかった。
「岩倉楽さん、まもなくです。こちらでお待ちください」
かける言葉が見つからないまま、試験会場の前へ誘導された。程なくして、試験会場の防音扉が開かれ、先に岩倉が会場へ入り、それに僕が続く。
手と足が同時に出そうなほどカチコチ状態の岩倉を背後から眺めていた。
これはまずいのでは…。
このままだと80パーセント、いや、60パーセントの実力すら出せないのではないかと板垣は心中不安に思ってしまった。
明らかに会場の空気に呑まれている。
伴奏を引き受けた時は、次を断るための口実として突きつけた条件だった。Sランクを取るなんて絶対に無理だろうと思っていた。しかし、今の岩倉であれば、取れて当然だと板垣は思っている。だからこそ、120パーセントの力を発揮してもらいたい。
お互いが定位置についた。
岩倉の緊張を取るために何かしなければ、演奏スタートの前に、何かっ…。
板垣が椅子に座り直した時、たまたまギシッという音がなった。
これだ。心の中で、音に反応した楽さんがこっちを向かないかと念を送った。
それが通じたのか、岩倉がこっちを向いた。
すかさず板倉は、
―落ち着け、お前は大丈夫だ!
と岩倉に目で訴えかけた。
それに応えるかのように岩倉は、目一杯の笑顔を板垣に向けていた。
その笑顔なら大丈夫そうだな。
今見た岩倉の笑顔の瞬間、板垣の心の中に胸が苦しくなるような不思議な感情が芽生えた気がした。
準備が整った岩倉はトランペットを構え、板垣の方を向いた。
銀色に輝くベルの曲線が、蛍光灯の光に反射してキラキラと輝いている。岩倉の出す合図とともに、試験が始まった。
始まってしまえばあっという間で、滞りなく試験は終わった。
ただ始まる前に感じたあの胸が苦しくなるような感情は、今も自分の中に燻っている。
これは一体なんだろう。
「千弥お疲れ。本当にありがとう! なんてお礼を言ったらいいかわかんないくらい、すげー興奮してる。とりあえず、飯行こ!」
「楽さんこそ、お疲れ様でした。ちょっとトイレ行ってくるので、その辺で待っていてもらっていいですか」
本当はトイレになんか行きたい訳ではなかった。板垣はこの燻る感情を少しでも落ち着かせたかったのだ。
「「かんぱーーい!」」
乾杯とは言っても僕は未成年なので烏龍茶。楽さんは二十歳を超えているので、ビール片手に「あーうまい」と言って一口で半分ほど飲み干していた。
「気は早いと思うんだけどさ、後期の伴奏もお願いできないか」
板垣自身、こう切り出してくるのではないかと思っていた。
「まだ成績も出ていないし、最初にした約束じゃないことはわかってる。でも、今日演奏して改めて実感した。やっぱり俺、お前の伴奏で次もやりたい!」
あまり考える間もなく、「いいですよ。後期も引き受けます」と板垣は返答をした。
それを聞くや、
「まじか! 嬉しすぎる」
と言って、とろけそうな笑顔で板垣を見てハグしてきた。
ドキっ。
あ、あの胸が苦し…まただ……。
「ちょっと楽さんってば、飲み過ぎたんじゃないですか」
試験も終わったことで緊張の糸が解けてしまったのだろう。いつになく酔っ払ってしまった岩倉は、板垣の肩にもたれ掛かりながら、よたよたと歩いていた。
「そんなに飲んでないぞ。まだイケる!」
「ほら、もう少しで家ですから頑張って歩いてくださいよ」
僕より小柄な楽さん。そうは言っても一七〇センチはあるとは思うが、こういう挙動を見せられると少し可愛く思えてしまう。
岩倉のアパートの一階エントランスへ着いた。岩倉の部屋は二階。階段を上がり部屋の前までたどり着く。
「もう家ですよ。勝手に鍵、開けますからね」
聞いてはいないだろう岩倉に了承を得て、カバンの中から鍵を取り出し部屋の中へ入った。
初めて入った岩倉の部屋は、とても男らしかった。別に汚いというわけではないが、とりあえず物が多かった。
ほとんどが楽器関連のものだと思うが、部屋の随所に色々な物が散らばっている。一番岩倉らしかったのは、楽譜が平積みされているところだ。これじゃ下の楽譜を取り出す時に雪崩を起こすことが目に見えている。
それらをうまく避けながら、ベッドまで岩倉を運んでいき、岩倉を寝かせ声をかけた。
「楽さん。それじゃ僕、帰りますからね」
「千弥!」
「ひっ」
急に名前を呼ばれ、変な声が出た。
「俺は、千弥のピアノが大好きなんだぞ。一目惚れなんだ! だから…だから、一緒に演奏出来て、すっげー嬉しい!…うむ…」
酔っぱらいの戯言か、寝言というにははっきりとした言葉だった。
岩倉から発せられた言葉に、板垣は動揺を隠せなかった。
こんなにもまっすぐ僕のピアノを好きと言ってくれた人、今までにいただろうか。そして、試験の時からずっと燻っているあの感情の正体が、今わかってしまった気がする。
「僕、楽さんのこと……」
自覚し始めたら、楽さんへの感情が頭の中で鮮明に溢れ出てきた。
僕はベッドにそっと腰掛け、楽さんの顔をじっと見つめた。
何分経ったのだろう。
不意に、手の甲で楽さんの頬に触れてみた。お酒を飲んでいる体は、少し火照っていてとても温かい。そのままなぞるように唇へと手を伸ばし、親指でマウスピースの跡が残る唇をなぞった。
やわらかいな……。
「ごめんな、さい……」
その言葉と同時に板垣は岩倉に唇を合わせていた。
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