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本編
8
吐く息は白く、遠くに見える高い山々にはうっすらと雪が積もっている。
十二月初旬。ここから冬本番という季節。
自宅の最寄り駅から普通列車と特急を乗り継いで約二時間。板垣と岩倉は板垣の実家近くの駅までやって来た。
板垣の実家は駅から少し離れたところにあるらしく、母親が車で迎えに来てくれているという。改札を出ると見知った女性がこちらを発見し、手をあげて声をかけて来た。
「千弥、こっちよ」
俺たち二人を見つけ声をかけた女性は、千弥のコンクールの時にお会いした方だ。
「お帰りなさい」
「ただいま……」
久々に実家に帰ってくると言っていた板垣は、どことなく恥ずかしそうである。
「こちら岩倉楽さん。僕が伴奏をしている人だよ」
「初めまして、千弥の母です。今日は来てくださってありがとうございます」
「こちらこそ、岩倉楽です。いつも千弥くんにはお世話になっています」
初めまして、…そうだよな。千弥には母親と会ったことについては俺から話をしていない。千弥の母親も中々連絡を取らないと言っていたし、きっと話はしていないのだろう。
「さあさあ、車へ行きましょう。すぐそこの駐車場に停めているから」
足早にスタスタと歩き出す板垣に少し遅れて、千弥の母親と岩倉も駅の駐車場へ向かおうとしたその時、母親と不意に目があった。軽い目配せをし、ニコッと笑う千弥の母親。俺もそれにつられ軽く会釈をする。
なんだか千弥に隠し事をしているようで居た堪れない気持ちになるが、あのことがあったから今がある。何事もポジティブに。自分の心を納得させた。
「ソファーにでも座っていて、コーヒーでいいかしら。すぐに準備するわね」
「楽さんは甘いほうが好きだから、砂糖とミルクも一緒に出して欲しい」
「わかったわ」
家に着くなり、お茶の支度をするため千弥の母親はキッチンへと消えて行った。
「気を使わせてしまって、すみません」
「そんな、気にしないで」
キッチンの入口にかかる暖簾(のれん)のせいで千弥の母親の姿は見えず、声だけが聞こえて来た。
板垣に案内されたのはキッキンの横に位置するリビング。部屋の中央から少し窓際に寄せたところに、ソファーがL字型に配置されていた。板垣と岩倉はそのうちの三人がけの大きいソファーに腰掛けた。
「今日はなんて言って時間作ってもらったんだ」
「母には大事な人を紹介したいって言いましたけど」
平然とした顔で言ってのける板垣。
何か間違えたこと言いましたか⁉︎とでもいいだけのドヤ顔でこっちを見ている。こういう時の千弥は、いつだって大物だと思うよ。
「だって、本当のことなので。楽さんのこと紹介のついでに、父さんのことは聞ければいいかなくらいに思っていますから」
俺のことなんかどうでもいいんだよ。と口に出してしまいそうだったが、思いとどまる。そんなことを言えば千弥が悲しむだろうと思ったから。その言葉を発したら好きになってくれた千弥に失礼だ。
「そう言ってくれるのはすごい嬉しいけど、俺は千弥のことすげえ大事だから。お父さんのこと、ずっと気になってたことだろ。ついでになんて言うな。聞きづらかったら俺から……」
と言いかけたところで、
「それ以上は…、十分に楽さんの気持ちは伝わっています。……大丈夫です。今日ここに一緒に着いてきてくれただけで、……嬉しいですから」
ソファに置いた岩倉の手に、そっと板垣の手が被せられた。
―――ドキっ。
一瞬にして鼓動が跳ねた。
岩倉の顔はみるみる内に熟れた苺のように真っ赤になった。
ここは俺の家でもなく、千弥の家でもない。千弥の実家だ。キッチンにはお茶の用意をしている千弥の母親もいる。
壁を隔てたキッチンからは見えてないだろう。もちろん、会話も聞こえないはずだ…。ただ、この空間に千弥以外の人間がいると思うと変に意識してしまう。
「俺、すぐ顔に出るから…。ここにいる間はこういうことはなしで、頼む…」
「あっ、すいません。つい」
「いや…、わるい」
「確かに、その顔は僕以外に見てほしくないかも…」
「んっ⁉︎」
「いえ、こっちのはなしです。では、家に帰るまでは、何もしませんから。安心してください」
逃げるつもりではないが、念の為岩倉は確認する。
「お前、今日は実家に泊まっていかなくていいのか?」
実家の距離がある程度近いことはわかった。でも、久々に帰ってきたというのに日帰りで帰ってしまうなんてもったいないだろう。
俺は一人で帰ってもいいわけだし…。
「いいんです。今日は、……帰ります」
そう言った板垣の表情を見るに、板垣の心中、複雑な感情があちらこちらでひしめき合っているのだろうと思った。
テーブルにはコーヒーと手作りのクッキーが並べられ、二人がけのソファー側に千弥の母親が腰を下ろした。
「さっきは名前だけの紹介になったけど、岩倉さんが僕の大事な人」
少しぶっきらぼうな口調だけれど、芯の強さから心に響く板垣の声は、とても説得力があった。
「……千弥を、よろしくお願いしますね」
「は、はい。音楽でも私生活でも至らない点が多いですが、千弥くんへの思いは誰にも負けませんので、……あっあの、よ、よろしくお願いします!」
俺は一体なにを言っているんだ。恥ずかしいにも程があるぞ。母親に向かって告げる言葉ではなかったと反省する。
「まっすぐな方で、……ふふっ、千弥は幸せね」
少し控えめな笑い方。岩倉の言葉に少しほっとした表情を見せる千弥の母親だが、時折顔に影が落ち、不安の種が見え隠れする時がある。
それは、千弥のコンクールの時に話をした時にも思ったことだった。
「あのさ、父さんのことでちょっと聞きたいことがあるんだけど…。いいかな…」
「ええ、なんでも聞いてちょうだい」
「父さんはさ……、好きな人ができて……家を出て行ったの?」
少しの沈黙でもあったら話が途絶えてしまうと思ったのだろう。板垣は聞きたいと思っていたことを率直に母親に聞いた。
「そうね。翔吾さんとも、そろそろ千弥とちゃんと話をしないとって言っていたのよ」
千弥の母親はコーヒーで口を潤す程度一口飲み、話を続けた。
「私たちはお見合いで結婚をしたの。お母さんの家はそこまでではなかったのだけど、翔吾さんの家はかなり厳しい家庭でね。決まった縁談を望む家だったわ」
話をする千弥の母親の顔をじっと見つめながら、真剣に話を聞く板垣は真顔そのものだった。頷くわけでも、相槌を打つわけでもなく、ただまっすぐに聞く姿勢をとっている。
「お見合いだったからね、結婚前に何度か食事に行ったりしたわ。その時に翔吾さんから打ち明けられたことがあるの。『僕はきっと、君を愛することができないかもしれません。それは君が嫌いとかではなく、恋愛対象が男の人だからです。だから、この縁談は僕の方から断らせていただきます。本当にすみません』それを聞いた時は本当にびっくりしたわ。翔吾さんはこの事をご両親には隠しているとも言っていたし。でも、私はその姿に惚れちゃったのね。それでもいいです。私と結婚してくださいって、私からプロポーズしちゃったのよ。そのまま私の押しに負けてね、結婚したの」
聞かされている情報量が多過ぎて、二人してキョトンとした顔になってしまった。
「でもね……結婚して十五年目の時、不意に思ったの。翔吾さんの幸せを私が潰してしまっているんじゃないかって。二人でたくさん話し合ったわ。千弥がいるから、翔吾さんは離婚することには反対だって言っていたけれど、翔吾さんのご両親も五年前に他界されていたし、翔吾さんのしがらみはもうないと思ったの。私は翔吾さんからたくさん幸せをもらった。千弥もいるし、こうして岩倉さんにも出会えてね。だから翔吾さんにも幸せになってもらいたいと思った。でも結果的に、あなたには辛い思いをさせてしまったわね。本当にごめんなさい」
「あ、いや……僕の方こそ、……なんか、ごめん」
「思春期だったあなたに、どう説明したらいいかわからなくて、私も翔吾さんも戸惑ってしまった部分があったわ。結果として、あなたを不安な気持ちにさせてしまった。今日、あなたがうちに来ることは翔吾さんにも伝えたの。なんとなく、千弥はこのことを聞いてくるんじゃないかと思ってね。だから今日のことは翔吾さんも伝えているわ」
俺でも今聞いた真実に動揺している。千弥は、……千弥は大丈夫なのだろうか。隣を向くと何かを堪える千弥の顔があった。
それは涙なのか、言葉なのか、わからないけれど、岩倉はそっと板垣の背中をさすった。
時間にしたらそこまでではなかったはずだが、今ここに流れる沈黙が至極長く感じた。
しばらくして、板垣が話し始めた。
「正直、……頭が追いついてない。うまく言葉にできない。けど、…父さんが嫌いになったわけじゃなくて、よかった。…かな」
「落ち着いたらでいいわ。今度、翔吾さんとご飯にでも行きましょう。岩倉さんもぜひ……ね。きっと喜ぶわ」
岩倉は小さく「はい」と返事をした。
「せっかくだから、家のピアノ弾いていっていいかな?」
「もちろんよ」
「隣の部屋です。楽さんも……」
板垣は立ち上がり、部屋を出た。岩倉もそれに着いて行く。
千弥はあの部屋にいるのが少し辛かったのかもしれない。
ちょうど今いた部屋の真向かいがピアノの置かれた部屋だった。
扉を開けると、西洋調の素敵な洋室が現れた。ペイズリー柄の壁紙に、小ぶりであるが立派なシャンデリアが天井に輝いていている。そして部屋の中央には重厚な絨毯の上に漆黒のグランドピアノが置かれていた。
「このピアノは祖母から受け継いだものです。祖母が中学生の時、両親が買ってくれたと言っていました。当時を考えるととても高価なものだったと思います」
ピアノの蓋を開け、立ったまま指を鍵盤へ滑らせる。
部屋に滑らかな音階がこだました。
「調律している。今は誰も使っていないのに…」
大学のピアノに触れる板垣の姿とはまったく表情が違った。ずっとこのピアノを弾いて育ってきたのだ。思い入れも、人一倍深いはずだ。
板垣の背中を眺める岩倉は、板垣の心が心配だった。
「千弥、大丈夫か?」
岩倉の問いかけには応えずに、「とりあえず、こちらへどうぞ」と岩倉の手を取り、部屋の壁に並ぶ椅子へ案内した。
案内された椅子は壁の模様に合わせた、蔦とペイズリー柄を織り交ぜた明らかに高価なものだ。
「聞いてください」
いつの間にかピアノに戻っていた板垣の合図とともに、しっとりとしたメロディーが始まった。
ピアノ曲に疎い岩倉には、板垣が弾いている曲が全くわからなかった。それでも、心に入り込んでくるようなメロディーに、心臓がドクドクと脈打っている。
演奏している時間は五分もなかったと思う。最後の和音が奏でられた。
ペダルを離す音がして音が止んだ。
「シューベルトのセレナーデ。セレナーデは夜に歌う愛の囁きという意味です。イタリア語ではセレナータですね。まだ夕方ですけど…」
板垣は窓の方を見ながら話し始めた。
岩倉は演奏の余韻が消えず、まだ胸の鼓動がおさまらない。へぇ、そうなのかと相槌を打つので精一杯だった。
「僕は結構独占欲が強い方だと思うんですよ。愛のうたを彼氏の前で弾くくらいには。なので、これからも覚悟してください」
板垣はピアノ椅子から立ち上がり、岩倉の座る椅子の前までやって来た。
両手で岩倉の頬を包み込み、少しだけ上を向かせた。
「返事は?」
上から見下ろされる視線に、さらに鼓動が高鳴った。
「は…い…」
軽く触れるだけのキスが降ってきた。
「顔に出るから、これくらいでやめときますね。そろそろ帰りましょう。暗くなってきちゃいます」
ピアノを弾いたからだろう。千弥の気持ちは少し落ち着いたようで、演奏が終わると元の千弥に戻っていた。
おかげさまで俺の鼓動は高まる一方。大きく深呼吸をしながら、もと居た部屋までゆっくりと戻るはめになった。
「本当に送っていかなくていいの?」
「大丈夫。まだ、そんなに遅くないし電車もあるから」
玄関に腰掛けながら靴紐を結ぶ板垣は、下を向いたまま返事をした。
「そう、気をつけて帰るのよ。ついたら連絡ちょうだいね。岩倉さんも、またいらしてくださいね」
「はい、ありがとうございます。お邪魔しました」
靴を履き終え、今度は母親を正面から見据え「また来るから」と告げ板垣と岩倉は実家を後にした。
歩き始めてからまもなく、冬の空はあっという間に暗くなっていった。
「今日はありがとうございました」
礼の言葉をかける板垣の顔は、少しスッキリしたように感じる。この数年間のモヤモヤが晴れたのだ。まだ気持ちの整理がつかないこともあるだろうが、一歩前進はできたのかもしれない。
「俺はなにもしてないよ。ただ付いてきただけだ」
千弥は「そんなことないです」と言ってくれるが、実際のところ本当に付いてきただけに過ぎない。
そりゃ、大事な人だと紹介はされはしたけれど…。千弥の母親に向けて放った言葉を一瞬思い出し、また、恥ずかしい気持ちになった。一旦忘れろよ、…自分。
「千弥の力になれるなら、なんでもする。俺にできることならな。まぁ、限られているけどさ」
「僕だって、……楽さんの力になれることなら、なんでもしますよ」
二人とも本心から言っているのだと。
「じゃあさ、一個だけ俺のお願い聞いてくれるか?」
ここ最近ずっと考えていた。年が明けるまでには板垣に伝えたいと思っていたことだ。
食い気味で「一個と言わず、何個でもいいですけど」と板垣はいうけれど、とりあえず一個だけなと板垣の気持ちを鎮め、岩倉が話し始める。
「俺は、ずっとなんとなく音楽してきたんだよ。音大にまで入ってトランペットを続けてるけど夢もなくて、楽しいからとりあえずやってるみたいなところがあってさ。でも、千弥と出会えて、千弥と音楽をして、もっと、……もっと、音楽を心の底から楽しみたいと思った」
「そういってもらえると、めちゃくちゃ嬉しいです。僕も楽さんと音楽するのは楽しいので」
千弥を見上げると笑った顔がそこにあった。俺はこの笑った顔の千弥が大好きだ。その笑みにつられて俺も自然と笑顔になる。
「ハハハっ。俺も楽しいよ! でな、夢って大層なものじゃないけど、やりたいことができた」
「なんですか?」
「教員を目指そうと思ってる」
驚いた表情を見せる千弥は、「教員ですか⁉︎」と俺の言葉を鸚鵡返しした。
まさか岩倉の口から、教員という言葉が出てくるとは思わなかったのだろう。でも、驚いていたのは最初だけで、なぜ教員を目指そうと思ったのか、岩倉の熱弁を聞いているうちに納得したようだ。
「で、……俺のお願いだけどさ。知っていると思うけど、俺はピアノがからっきしダメなんだよ。だから、千弥先生に教わりたいなと思っているんですけど、ピアノ教えてもらえますかね?」
「僕のレッスンはスパルタですけど耐えられますか?」
「そこは、お手柔らかにお願いします」
岩倉は歩いていた足を止め、板垣に向かって軽く頭を下げた。
頭を下げた岩倉の目線の先には、板垣の靴が段々と近づいてくるのが見えた。岩倉の顔のちょうど真下あたりでその足は止まり、そっと頭を包み込むようにして板垣の手がのせられた。
それと同時に、おでこの辺りにふわっと温かなものが触れた気がした。
「楽さんのお願い、承りました」
触れたものは唇。
ただ、ここは公共の場だということ。咄嗟に、「おい! 千弥っ」と声を荒らげてしまった。
そんな俺のことなどお構いなしに、「早く帰りましょう」と急かす千弥は、俺の手をとり走り出す。颯爽と駆け出す板垣に岩倉は必死に着いていく。
いつもこうやって俺のことを引っ張ってくれる存在。
それが千弥だ。
恋にも音楽にも奥手な岩倉。
なかなか声に出して伝えられないけれど、……今伝えなくて、いつ伝えるんだ。
俺専属の伴奏者兼相棒、そして、世界一かっこいい恋人。
「千弥! ちょっとストップ」
岩倉が繋いでいた手を思いっきり引いた。その反動で板垣がこちらに振り返る。
「一瞬だからな」
岩倉は板垣の両肩に手を添え、背伸びをした。板垣と目線が重なる。
岩倉は板垣の右頬にほんの一瞬、触れただけのキスをする。
「大好きだ」
「僕も、大好きです」
板垣からお返しのキスはもちろん、唇に。
十二月初旬。ここから冬本番という季節。
自宅の最寄り駅から普通列車と特急を乗り継いで約二時間。板垣と岩倉は板垣の実家近くの駅までやって来た。
板垣の実家は駅から少し離れたところにあるらしく、母親が車で迎えに来てくれているという。改札を出ると見知った女性がこちらを発見し、手をあげて声をかけて来た。
「千弥、こっちよ」
俺たち二人を見つけ声をかけた女性は、千弥のコンクールの時にお会いした方だ。
「お帰りなさい」
「ただいま……」
久々に実家に帰ってくると言っていた板垣は、どことなく恥ずかしそうである。
「こちら岩倉楽さん。僕が伴奏をしている人だよ」
「初めまして、千弥の母です。今日は来てくださってありがとうございます」
「こちらこそ、岩倉楽です。いつも千弥くんにはお世話になっています」
初めまして、…そうだよな。千弥には母親と会ったことについては俺から話をしていない。千弥の母親も中々連絡を取らないと言っていたし、きっと話はしていないのだろう。
「さあさあ、車へ行きましょう。すぐそこの駐車場に停めているから」
足早にスタスタと歩き出す板垣に少し遅れて、千弥の母親と岩倉も駅の駐車場へ向かおうとしたその時、母親と不意に目があった。軽い目配せをし、ニコッと笑う千弥の母親。俺もそれにつられ軽く会釈をする。
なんだか千弥に隠し事をしているようで居た堪れない気持ちになるが、あのことがあったから今がある。何事もポジティブに。自分の心を納得させた。
「ソファーにでも座っていて、コーヒーでいいかしら。すぐに準備するわね」
「楽さんは甘いほうが好きだから、砂糖とミルクも一緒に出して欲しい」
「わかったわ」
家に着くなり、お茶の支度をするため千弥の母親はキッチンへと消えて行った。
「気を使わせてしまって、すみません」
「そんな、気にしないで」
キッチンの入口にかかる暖簾(のれん)のせいで千弥の母親の姿は見えず、声だけが聞こえて来た。
板垣に案内されたのはキッキンの横に位置するリビング。部屋の中央から少し窓際に寄せたところに、ソファーがL字型に配置されていた。板垣と岩倉はそのうちの三人がけの大きいソファーに腰掛けた。
「今日はなんて言って時間作ってもらったんだ」
「母には大事な人を紹介したいって言いましたけど」
平然とした顔で言ってのける板垣。
何か間違えたこと言いましたか⁉︎とでもいいだけのドヤ顔でこっちを見ている。こういう時の千弥は、いつだって大物だと思うよ。
「だって、本当のことなので。楽さんのこと紹介のついでに、父さんのことは聞ければいいかなくらいに思っていますから」
俺のことなんかどうでもいいんだよ。と口に出してしまいそうだったが、思いとどまる。そんなことを言えば千弥が悲しむだろうと思ったから。その言葉を発したら好きになってくれた千弥に失礼だ。
「そう言ってくれるのはすごい嬉しいけど、俺は千弥のことすげえ大事だから。お父さんのこと、ずっと気になってたことだろ。ついでになんて言うな。聞きづらかったら俺から……」
と言いかけたところで、
「それ以上は…、十分に楽さんの気持ちは伝わっています。……大丈夫です。今日ここに一緒に着いてきてくれただけで、……嬉しいですから」
ソファに置いた岩倉の手に、そっと板垣の手が被せられた。
―――ドキっ。
一瞬にして鼓動が跳ねた。
岩倉の顔はみるみる内に熟れた苺のように真っ赤になった。
ここは俺の家でもなく、千弥の家でもない。千弥の実家だ。キッチンにはお茶の用意をしている千弥の母親もいる。
壁を隔てたキッチンからは見えてないだろう。もちろん、会話も聞こえないはずだ…。ただ、この空間に千弥以外の人間がいると思うと変に意識してしまう。
「俺、すぐ顔に出るから…。ここにいる間はこういうことはなしで、頼む…」
「あっ、すいません。つい」
「いや…、わるい」
「確かに、その顔は僕以外に見てほしくないかも…」
「んっ⁉︎」
「いえ、こっちのはなしです。では、家に帰るまでは、何もしませんから。安心してください」
逃げるつもりではないが、念の為岩倉は確認する。
「お前、今日は実家に泊まっていかなくていいのか?」
実家の距離がある程度近いことはわかった。でも、久々に帰ってきたというのに日帰りで帰ってしまうなんてもったいないだろう。
俺は一人で帰ってもいいわけだし…。
「いいんです。今日は、……帰ります」
そう言った板垣の表情を見るに、板垣の心中、複雑な感情があちらこちらでひしめき合っているのだろうと思った。
テーブルにはコーヒーと手作りのクッキーが並べられ、二人がけのソファー側に千弥の母親が腰を下ろした。
「さっきは名前だけの紹介になったけど、岩倉さんが僕の大事な人」
少しぶっきらぼうな口調だけれど、芯の強さから心に響く板垣の声は、とても説得力があった。
「……千弥を、よろしくお願いしますね」
「は、はい。音楽でも私生活でも至らない点が多いですが、千弥くんへの思いは誰にも負けませんので、……あっあの、よ、よろしくお願いします!」
俺は一体なにを言っているんだ。恥ずかしいにも程があるぞ。母親に向かって告げる言葉ではなかったと反省する。
「まっすぐな方で、……ふふっ、千弥は幸せね」
少し控えめな笑い方。岩倉の言葉に少しほっとした表情を見せる千弥の母親だが、時折顔に影が落ち、不安の種が見え隠れする時がある。
それは、千弥のコンクールの時に話をした時にも思ったことだった。
「あのさ、父さんのことでちょっと聞きたいことがあるんだけど…。いいかな…」
「ええ、なんでも聞いてちょうだい」
「父さんはさ……、好きな人ができて……家を出て行ったの?」
少しの沈黙でもあったら話が途絶えてしまうと思ったのだろう。板垣は聞きたいと思っていたことを率直に母親に聞いた。
「そうね。翔吾さんとも、そろそろ千弥とちゃんと話をしないとって言っていたのよ」
千弥の母親はコーヒーで口を潤す程度一口飲み、話を続けた。
「私たちはお見合いで結婚をしたの。お母さんの家はそこまでではなかったのだけど、翔吾さんの家はかなり厳しい家庭でね。決まった縁談を望む家だったわ」
話をする千弥の母親の顔をじっと見つめながら、真剣に話を聞く板垣は真顔そのものだった。頷くわけでも、相槌を打つわけでもなく、ただまっすぐに聞く姿勢をとっている。
「お見合いだったからね、結婚前に何度か食事に行ったりしたわ。その時に翔吾さんから打ち明けられたことがあるの。『僕はきっと、君を愛することができないかもしれません。それは君が嫌いとかではなく、恋愛対象が男の人だからです。だから、この縁談は僕の方から断らせていただきます。本当にすみません』それを聞いた時は本当にびっくりしたわ。翔吾さんはこの事をご両親には隠しているとも言っていたし。でも、私はその姿に惚れちゃったのね。それでもいいです。私と結婚してくださいって、私からプロポーズしちゃったのよ。そのまま私の押しに負けてね、結婚したの」
聞かされている情報量が多過ぎて、二人してキョトンとした顔になってしまった。
「でもね……結婚して十五年目の時、不意に思ったの。翔吾さんの幸せを私が潰してしまっているんじゃないかって。二人でたくさん話し合ったわ。千弥がいるから、翔吾さんは離婚することには反対だって言っていたけれど、翔吾さんのご両親も五年前に他界されていたし、翔吾さんのしがらみはもうないと思ったの。私は翔吾さんからたくさん幸せをもらった。千弥もいるし、こうして岩倉さんにも出会えてね。だから翔吾さんにも幸せになってもらいたいと思った。でも結果的に、あなたには辛い思いをさせてしまったわね。本当にごめんなさい」
「あ、いや……僕の方こそ、……なんか、ごめん」
「思春期だったあなたに、どう説明したらいいかわからなくて、私も翔吾さんも戸惑ってしまった部分があったわ。結果として、あなたを不安な気持ちにさせてしまった。今日、あなたがうちに来ることは翔吾さんにも伝えたの。なんとなく、千弥はこのことを聞いてくるんじゃないかと思ってね。だから今日のことは翔吾さんも伝えているわ」
俺でも今聞いた真実に動揺している。千弥は、……千弥は大丈夫なのだろうか。隣を向くと何かを堪える千弥の顔があった。
それは涙なのか、言葉なのか、わからないけれど、岩倉はそっと板垣の背中をさすった。
時間にしたらそこまでではなかったはずだが、今ここに流れる沈黙が至極長く感じた。
しばらくして、板垣が話し始めた。
「正直、……頭が追いついてない。うまく言葉にできない。けど、…父さんが嫌いになったわけじゃなくて、よかった。…かな」
「落ち着いたらでいいわ。今度、翔吾さんとご飯にでも行きましょう。岩倉さんもぜひ……ね。きっと喜ぶわ」
岩倉は小さく「はい」と返事をした。
「せっかくだから、家のピアノ弾いていっていいかな?」
「もちろんよ」
「隣の部屋です。楽さんも……」
板垣は立ち上がり、部屋を出た。岩倉もそれに着いて行く。
千弥はあの部屋にいるのが少し辛かったのかもしれない。
ちょうど今いた部屋の真向かいがピアノの置かれた部屋だった。
扉を開けると、西洋調の素敵な洋室が現れた。ペイズリー柄の壁紙に、小ぶりであるが立派なシャンデリアが天井に輝いていている。そして部屋の中央には重厚な絨毯の上に漆黒のグランドピアノが置かれていた。
「このピアノは祖母から受け継いだものです。祖母が中学生の時、両親が買ってくれたと言っていました。当時を考えるととても高価なものだったと思います」
ピアノの蓋を開け、立ったまま指を鍵盤へ滑らせる。
部屋に滑らかな音階がこだました。
「調律している。今は誰も使っていないのに…」
大学のピアノに触れる板垣の姿とはまったく表情が違った。ずっとこのピアノを弾いて育ってきたのだ。思い入れも、人一倍深いはずだ。
板垣の背中を眺める岩倉は、板垣の心が心配だった。
「千弥、大丈夫か?」
岩倉の問いかけには応えずに、「とりあえず、こちらへどうぞ」と岩倉の手を取り、部屋の壁に並ぶ椅子へ案内した。
案内された椅子は壁の模様に合わせた、蔦とペイズリー柄を織り交ぜた明らかに高価なものだ。
「聞いてください」
いつの間にかピアノに戻っていた板垣の合図とともに、しっとりとしたメロディーが始まった。
ピアノ曲に疎い岩倉には、板垣が弾いている曲が全くわからなかった。それでも、心に入り込んでくるようなメロディーに、心臓がドクドクと脈打っている。
演奏している時間は五分もなかったと思う。最後の和音が奏でられた。
ペダルを離す音がして音が止んだ。
「シューベルトのセレナーデ。セレナーデは夜に歌う愛の囁きという意味です。イタリア語ではセレナータですね。まだ夕方ですけど…」
板垣は窓の方を見ながら話し始めた。
岩倉は演奏の余韻が消えず、まだ胸の鼓動がおさまらない。へぇ、そうなのかと相槌を打つので精一杯だった。
「僕は結構独占欲が強い方だと思うんですよ。愛のうたを彼氏の前で弾くくらいには。なので、これからも覚悟してください」
板垣はピアノ椅子から立ち上がり、岩倉の座る椅子の前までやって来た。
両手で岩倉の頬を包み込み、少しだけ上を向かせた。
「返事は?」
上から見下ろされる視線に、さらに鼓動が高鳴った。
「は…い…」
軽く触れるだけのキスが降ってきた。
「顔に出るから、これくらいでやめときますね。そろそろ帰りましょう。暗くなってきちゃいます」
ピアノを弾いたからだろう。千弥の気持ちは少し落ち着いたようで、演奏が終わると元の千弥に戻っていた。
おかげさまで俺の鼓動は高まる一方。大きく深呼吸をしながら、もと居た部屋までゆっくりと戻るはめになった。
「本当に送っていかなくていいの?」
「大丈夫。まだ、そんなに遅くないし電車もあるから」
玄関に腰掛けながら靴紐を結ぶ板垣は、下を向いたまま返事をした。
「そう、気をつけて帰るのよ。ついたら連絡ちょうだいね。岩倉さんも、またいらしてくださいね」
「はい、ありがとうございます。お邪魔しました」
靴を履き終え、今度は母親を正面から見据え「また来るから」と告げ板垣と岩倉は実家を後にした。
歩き始めてからまもなく、冬の空はあっという間に暗くなっていった。
「今日はありがとうございました」
礼の言葉をかける板垣の顔は、少しスッキリしたように感じる。この数年間のモヤモヤが晴れたのだ。まだ気持ちの整理がつかないこともあるだろうが、一歩前進はできたのかもしれない。
「俺はなにもしてないよ。ただ付いてきただけだ」
千弥は「そんなことないです」と言ってくれるが、実際のところ本当に付いてきただけに過ぎない。
そりゃ、大事な人だと紹介はされはしたけれど…。千弥の母親に向けて放った言葉を一瞬思い出し、また、恥ずかしい気持ちになった。一旦忘れろよ、…自分。
「千弥の力になれるなら、なんでもする。俺にできることならな。まぁ、限られているけどさ」
「僕だって、……楽さんの力になれることなら、なんでもしますよ」
二人とも本心から言っているのだと。
「じゃあさ、一個だけ俺のお願い聞いてくれるか?」
ここ最近ずっと考えていた。年が明けるまでには板垣に伝えたいと思っていたことだ。
食い気味で「一個と言わず、何個でもいいですけど」と板垣はいうけれど、とりあえず一個だけなと板垣の気持ちを鎮め、岩倉が話し始める。
「俺は、ずっとなんとなく音楽してきたんだよ。音大にまで入ってトランペットを続けてるけど夢もなくて、楽しいからとりあえずやってるみたいなところがあってさ。でも、千弥と出会えて、千弥と音楽をして、もっと、……もっと、音楽を心の底から楽しみたいと思った」
「そういってもらえると、めちゃくちゃ嬉しいです。僕も楽さんと音楽するのは楽しいので」
千弥を見上げると笑った顔がそこにあった。俺はこの笑った顔の千弥が大好きだ。その笑みにつられて俺も自然と笑顔になる。
「ハハハっ。俺も楽しいよ! でな、夢って大層なものじゃないけど、やりたいことができた」
「なんですか?」
「教員を目指そうと思ってる」
驚いた表情を見せる千弥は、「教員ですか⁉︎」と俺の言葉を鸚鵡返しした。
まさか岩倉の口から、教員という言葉が出てくるとは思わなかったのだろう。でも、驚いていたのは最初だけで、なぜ教員を目指そうと思ったのか、岩倉の熱弁を聞いているうちに納得したようだ。
「で、……俺のお願いだけどさ。知っていると思うけど、俺はピアノがからっきしダメなんだよ。だから、千弥先生に教わりたいなと思っているんですけど、ピアノ教えてもらえますかね?」
「僕のレッスンはスパルタですけど耐えられますか?」
「そこは、お手柔らかにお願いします」
岩倉は歩いていた足を止め、板垣に向かって軽く頭を下げた。
頭を下げた岩倉の目線の先には、板垣の靴が段々と近づいてくるのが見えた。岩倉の顔のちょうど真下あたりでその足は止まり、そっと頭を包み込むようにして板垣の手がのせられた。
それと同時に、おでこの辺りにふわっと温かなものが触れた気がした。
「楽さんのお願い、承りました」
触れたものは唇。
ただ、ここは公共の場だということ。咄嗟に、「おい! 千弥っ」と声を荒らげてしまった。
そんな俺のことなどお構いなしに、「早く帰りましょう」と急かす千弥は、俺の手をとり走り出す。颯爽と駆け出す板垣に岩倉は必死に着いていく。
いつもこうやって俺のことを引っ張ってくれる存在。
それが千弥だ。
恋にも音楽にも奥手な岩倉。
なかなか声に出して伝えられないけれど、……今伝えなくて、いつ伝えるんだ。
俺専属の伴奏者兼相棒、そして、世界一かっこいい恋人。
「千弥! ちょっとストップ」
岩倉が繋いでいた手を思いっきり引いた。その反動で板垣がこちらに振り返る。
「一瞬だからな」
岩倉は板垣の両肩に手を添え、背伸びをした。板垣と目線が重なる。
岩倉は板垣の右頬にほんの一瞬、触れただけのキスをする。
「大好きだ」
「僕も、大好きです」
板垣からお返しのキスはもちろん、唇に。
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誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
【完結】エデンの住処
社菘
BL
親の再婚で義兄弟になった弟と、ある日二人で過ちを犯した。
それ以来逃げるように実家を出た椿由利は実家や弟との接触を避けて8年が経ち、モデルとして自立した道を進んでいた。
ある雑誌の専属モデルに抜擢された由利は今をときめく若手の売れっ子カメラマン・YURIと出会い、最悪な過去が蘇る。
『彼』と出会ったことで由利の楽園は脅かされ、地獄へと変わると思ったのだが……。
「兄さん、僕のオメガになって」
由利とYURI、義兄と義弟。
重すぎる義弟の愛に振り回される由利の運命の行く末は――
執着系義弟α×不憫系義兄α
義弟の愛は、楽園にも似た俺の住処になるのだろうか?
◎表紙は装丁cafe様より︎︎𓂃⟡.·
【R18+BL】空に月が輝く時
hosimure
BL
仕事が終わり、アパートへ戻ると、部屋の扉の前に誰かがいた。
そこにいたのは8年前、俺を最悪な形でフッた兄貴の親友だった。
告白した俺に、「大キライだ」と言っておいて、今更何の用なんだか…。
★BL小説&R18です。
エスポワールに行かないで
茉莉花 香乃
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あの人が好きだった。でも、俺は自分を守るためにあの人から離れた。でも、会いたい。
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ハッピーエンド
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経理部の美人チーフは、イケメン新人営業に口説かれています――「凛さん、俺だけに甘くないですか?」年下の猛攻にツンデレ先輩が陥落寸前!
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社内一の“整いすぎた男”、阿波座凛(あわざりん)は経理部のチーフ。
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狙って懐くイケメン新人営業×こじらせツンデレ美人経理チーフ
業務上のやりとりから始まる、じわじわ甘くてときどき切ない“再計算不能”なオフィスラブ!
まさか「好き」とは思うまい
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仕事に忙殺され思考を停止した俺の心は何故かコンビニ店員の悪態に癒やされてしまった。彼が接客してくれる一時のおかげで激務を乗り切ることもできて、なんだかんだと気づけばお付き合いすることになり……
態度の悪いコンビニ店員大学生(ツンギレ)×お人好しのリーマン(マイペース)の牛歩な恋の物語
*2023/11/01 本編(全44話)完結しました。以降は番外編を投稿予定です。