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懐誓月
第八十九話
第八十九話
緑鬼王・緑蚓師は、亡鬼の魂と人間界で捕らえた獣の魂を強引に融合させ、さまざまな“魔物”を創り出しては、意のままに操る鬼王だった。
この世界に魔物が自然に発生することはない。人工的に生み出された魔物を自らの領土に放ち、鬼たちと戦わせることで退屈を紛らわせる事が彼の楽しみであった。
緑蚓師の領土は、赤熹耀ほどの栄華こそないものの、鬼王としての城を成していた。領土全てが、鬼王の反転結界そのものである。それ故に鬼王の性質を色濃く反映する。岩山を削って造られた城の周囲には、濃緑の瘴気が煙のように漂い、虫とも獣とも判別し難い、巨大で異形の魔物たちが跋扈していた。鬼を喰らい、時折悲鳴や笑い声が響き渡るその地は、まさに混沌そのものだった。
そんな領域に虎渓が足を踏み入れると、突如として、巨大なムカデのような魔物が襲いかかってくる。その体には無数の鬼の手足が突き出し、硬質の甲羅に覆われた顔には、鋭い顎とハサミのような牙が光っていた。
虎渓は、迫る魔物の両牙を掴み、力任せに引き抜いた。牙を抜かれた魔物が絶叫し、巨体をくねらせる。その牙に、虎渓は自らの鬼気を纏わせた。生前に振るっていた双刀のように、手に馴染む。
この時、虎渓はすでに深鬼となっており、幾千幾万もの魂をその身に封じ込め、そのすべてを押さえ込んでいた。
それは、将として生きた魂の素質でもあったが、その反動で、彼の心は空虚だった。自我を奪われない為に、喜怒哀楽の感情ごと封じねばならなかった。ただ一つ、頭の中に残されていたのは、“秋霖を探すこと”“生き延びること”この二つだけだった。
手に入れた牙を振るい、虎渓はムカデの魔物を切り刻んだ。巨体が地に伏すと、地鳴りが領土全体に響きわたった。物陰に隠れていた雑鬼たちが姿を現し、虎渓に野次や歓声を飛ばす。だが虎渓は、冷めた目で彼らを一瞥した。
――いない。
その中に、探し続けていた姿はなかった。
秋霖はいない。だが、彼の魂を見れば、たとえ姿形が変わっていようとも一目でわかる。そんな確信があった。
虎渓は、倒した魔物の鬼魂に手を伸ばす。それは人の顔ほどもある、孔雀石を思わせる緑色の塊で、鈍い光を放っていた。
虎渓は口を開き、それを自らの牙で噛み砕く。味はない。ただ、喉を焼くような熱が奔流となって体内を駆け巡る。魔物の魂には自我など存在せず、本能の塊のような力が注ぎ込まれてくる。
「魔物の鬼魂まで喰らうとは、悪食な奴だ」
背後から何者かの声が響いた。
魔物の死骸に群がっていた雑鬼たちが一斉に散り散りになる。振り返った虎渓の前に立っていたのは、緑色の袈裟のような装束を纏った法師姿の鬼。
この領土の鬼王、緑蚓師である。
彼は目を細め、じっと虎渓を観察する。
白い肌に黒髪を振り乱し、八尺を超える巨体。長い手足、影のような黒衣を纏ったその姿は、かろうじて“人”の形をとどめていた。
倒された魔物は、緑蚓師が作り出した中でも特に手間をかけた個体であり、領土を守るための防衛役でもあった。それを打ち倒した鬼など、これまで存在しなかった。
「貴様の躰を元に魔物を作れば、さぞ趣き深い個体が出来上がりそうだな」
緑蚓師が吐き捨てるように言い、片手を上げる。それを合図に四方八方から現れたのは、大蜘蛛の魔物たちだった。糸を吐き出しながら、虎渓に一斉に襲いかかる。その糸が地面に触れれば、たちまち煙を上げて岩に穴が空く。この毒糸に捕まれば、肉体は溶け、鬼魂を奪われるだろう。
虎渓は蜘蛛の背を踏んで跳躍し、毒糸をかわしながら動き回る。蜘蛛たちは互いの毒には耐性があり、糸が絡み合っても問題ない。ならば、と虎渓は手にしたムカデの牙を振るい、群がる蜘蛛たちをまとめて斬り伏せていく。
鬼魂を貫き、喰らい、喰らい、喰らい尽くす。戦いながら、魔物の魂を喰らい続けた。その姿は、ただ貪欲に生き延びようとする獣そのものだった。
牙を振るうたびに、大蜘蛛たちは吹き飛ばされ、鬼魂は粉砕されていく。喰らい続けたことで、毒糸への耐性すら身につき、拘束は無意味となった。黒衣を纏った虎が、狂気のように蜘蛛たちを蹂躙してゆく。
「……!」
緑蚓師の目に、初めてわずかな驚きが宿った。顔色を変えた彼は、さらに魔物を呼び出す。これまで作り上げてきた傑作たちは、まだまだ控えている。
やがて彼は、その中でもひときわ巨大な緑の大蛇の背に乗った。それは緑蚓師の代名詞ともいえる魔物であり、領土の守護者でもある。
大蛇が口を開き、毒霧を撒き散らした。虎渓はそれを吸い込んだ瞬間、体内を焼かれるような激痛に顔を顰める。
「どうだ……!魂すら焼く腐敗の毒よ……!」
緑蚓師が嘲るように笑った。獲物を溶かす毒霧の中、多種多様な魔物たちが一斉に襲いかかる。虎渓は痛む身体を無理やり動かし、応戦した。
――秋霖も、こんな痛みを抱えて、苦しんだのだろうか。それなのに俺は。
封じ込めていたはずの感情が揺らぎ、灰色の鬼気が溢れ出す。腐敗していく肉体の内側から、穴を埋めるように新たな組織を作り出し、再生が始まる。
これまで飲み込んできた魂の力を削りながらも止まらぬ猛攻に、緑蚓師はとうとう苛立ちを露わにした。唸りを上げる彼の額には青筋が浮かび、戦況の不利を悟る。
「くッ……! 貴様など、もう要らぬわ……! 早く往ね……!」
戦いは十日か、二十日か、それ以上か、途方もなく長く続いた。虎渓は襲いくる魔物のすべてを喰らい尽くした。やがて最後に残ったのは、緑蚓師とその大蛇だけである。
「瞋! 陀囉陀囉悉利悉利!」
緑蚓師の呪音が響くと同時に、大蛇が尾を振り翳し虎渓に打ちつける。戦いの中で、虎渓の持っていたムカデの牙はすでに朽ち、折れていた。
虎渓は跳躍し、そのまま大蛇の口の中へ飛び込む。素手で毒牙を掴み、皮膚が焼け骨にまで痛みが染み渡る中、それを引き抜いた。牙を失った大蛇が悲鳴を上げて身をよじる。
虎渓はその隙に迷いなく、巨大な毒牙をそのまま上顎から脳へと突き立てた。緑色の血を撒き散らしながら、大蛇は地に崩れ落ちた。
手が焼け爛れていようと、虎渓は身の丈の半分もある二本の牙を両手に携え、肩で息をしながら緑蚓師を睨み据えた。
――こんなところで立ち止まるわけにはいかない。
秋霖は必ず、どこかにいる。もし生まれ変わり、すべてを忘れてしまっていたとしても、今度こそ守る。それが鬼となった自分の、唯一の役目だ。どんなに堕ちようとも、生にしがみつく。
「……おのれ!!」
緑蚓師は奥歯を噛み締め、わずかに後退った。数多の魔物の鬼魂を得た虎渓の内に渦巻く鬼気は、すでに鬼王の領域に達している。
己の半身とも呼べる大蛇を失い、純粋な力では勝ち目がないと悟った時にはすでに、毒牙を握った虎渓が目前に迫っていた。
緑の鬼気が盾となって立ち塞がるが、灰色の執念がそれを上回り、貫いた。牙が緑蚓師の鬼魂を容赦なく穿つ。喰らわれた魔物たちの魂が、命を弄ぶ者への復讐となって牙に宿っていた。
「おのれええッッッ!! 貴様の身体を奪ってやるぞッッ!!」
緑蚓師が吠え、虎渓の片腕を掴む。だが虎渓はその瞳を冷淡に細め、引き抜いた牙を手放さず、もう片方の手で鬼魂を鷲掴むと握り潰した。緑の鬼気が鮮血のように迸り、灰色の鬼気がそれを覆うように呑み込んでいく。
虎渓の体内で、力の奔流が巻き起こり、魂の争奪が始まった。だが彼は、渦巻く怨嗟を一喝した。
「黙れ!!!」
怒声が空気を裂き、鬼気が弾け飛ぶ。西の地を覆っていた緑の瘴気は瞬く間に霧散し、黒い大地と廃墟のような城が姿を現した。
「敗者無声……!生者は王に、死者は賊となる。この俺が王だ!!」
その宣言とともに、虎渓の魂に取り込まれた無数の蠢く声が一つに練り上げられ、まとめられていく。身体を覆っていた鬼気が静まる頃には、髪に白銀が混じり、鬼王としての容姿が定まっていった。
緑蚓師を倒し、虎渓が得たのは地獄の西方の領土と、鬼王としての力と知識である。その力の根幹には、魂が持つ因縁と性質が宿る。
復讐に燃え尽き、二度と熱を灯すことのない残り滓。それが己だと、虎渓は両手を握りしめた。
虎渓は領土に残っていた魔物を全て灰に変えた。灰色の鬼気に覆われたものは、一瞬にして灰燼と化す。そうして、あちこちに灰の山が出来上がる頃には、空から雪のような灰が降り始めた。新たな王の誕生を告げるように、彼の鬼気が領土を包んだのだ。
「……なるほど、灰燼の王か」
突如、虎渓の眼前に紅の焔が噴き上がった。炎の中から現れたのは赤熹耀だった。緑蚓師の記憶を引き継いだことで、虎渓は彼が赤鬼王であることをすでに知っていた。
虎渓は黙して構え、灰色の鬼気を身にまとう。赤熹耀が小手調べとばかりに鬼気を飛ばすと、爆発のような炎の波が起こり、虎渓を包んだ。
しかし、虎渓の周りは薄膜が張り巡らされ炎を防いでいた。空中に舞った灰の粉は、二度と炎を寄せ付けない。
「……ふん、やはり燃えぬか。つまらんやつだ」
赤熹耀は低く呟くように言い、炎を振り払うと、背を向けて歩き出した。
「吾の城に参れ。鬼王となった者は顔を突き合わせるのが礼儀だ。宴を開いてやろう」
緑鬼王・緑蚓師は、亡鬼の魂と人間界で捕らえた獣の魂を強引に融合させ、さまざまな“魔物”を創り出しては、意のままに操る鬼王だった。
この世界に魔物が自然に発生することはない。人工的に生み出された魔物を自らの領土に放ち、鬼たちと戦わせることで退屈を紛らわせる事が彼の楽しみであった。
緑蚓師の領土は、赤熹耀ほどの栄華こそないものの、鬼王としての城を成していた。領土全てが、鬼王の反転結界そのものである。それ故に鬼王の性質を色濃く反映する。岩山を削って造られた城の周囲には、濃緑の瘴気が煙のように漂い、虫とも獣とも判別し難い、巨大で異形の魔物たちが跋扈していた。鬼を喰らい、時折悲鳴や笑い声が響き渡るその地は、まさに混沌そのものだった。
そんな領域に虎渓が足を踏み入れると、突如として、巨大なムカデのような魔物が襲いかかってくる。その体には無数の鬼の手足が突き出し、硬質の甲羅に覆われた顔には、鋭い顎とハサミのような牙が光っていた。
虎渓は、迫る魔物の両牙を掴み、力任せに引き抜いた。牙を抜かれた魔物が絶叫し、巨体をくねらせる。その牙に、虎渓は自らの鬼気を纏わせた。生前に振るっていた双刀のように、手に馴染む。
この時、虎渓はすでに深鬼となっており、幾千幾万もの魂をその身に封じ込め、そのすべてを押さえ込んでいた。
それは、将として生きた魂の素質でもあったが、その反動で、彼の心は空虚だった。自我を奪われない為に、喜怒哀楽の感情ごと封じねばならなかった。ただ一つ、頭の中に残されていたのは、“秋霖を探すこと”“生き延びること”この二つだけだった。
手に入れた牙を振るい、虎渓はムカデの魔物を切り刻んだ。巨体が地に伏すと、地鳴りが領土全体に響きわたった。物陰に隠れていた雑鬼たちが姿を現し、虎渓に野次や歓声を飛ばす。だが虎渓は、冷めた目で彼らを一瞥した。
――いない。
その中に、探し続けていた姿はなかった。
秋霖はいない。だが、彼の魂を見れば、たとえ姿形が変わっていようとも一目でわかる。そんな確信があった。
虎渓は、倒した魔物の鬼魂に手を伸ばす。それは人の顔ほどもある、孔雀石を思わせる緑色の塊で、鈍い光を放っていた。
虎渓は口を開き、それを自らの牙で噛み砕く。味はない。ただ、喉を焼くような熱が奔流となって体内を駆け巡る。魔物の魂には自我など存在せず、本能の塊のような力が注ぎ込まれてくる。
「魔物の鬼魂まで喰らうとは、悪食な奴だ」
背後から何者かの声が響いた。
魔物の死骸に群がっていた雑鬼たちが一斉に散り散りになる。振り返った虎渓の前に立っていたのは、緑色の袈裟のような装束を纏った法師姿の鬼。
この領土の鬼王、緑蚓師である。
彼は目を細め、じっと虎渓を観察する。
白い肌に黒髪を振り乱し、八尺を超える巨体。長い手足、影のような黒衣を纏ったその姿は、かろうじて“人”の形をとどめていた。
倒された魔物は、緑蚓師が作り出した中でも特に手間をかけた個体であり、領土を守るための防衛役でもあった。それを打ち倒した鬼など、これまで存在しなかった。
「貴様の躰を元に魔物を作れば、さぞ趣き深い個体が出来上がりそうだな」
緑蚓師が吐き捨てるように言い、片手を上げる。それを合図に四方八方から現れたのは、大蜘蛛の魔物たちだった。糸を吐き出しながら、虎渓に一斉に襲いかかる。その糸が地面に触れれば、たちまち煙を上げて岩に穴が空く。この毒糸に捕まれば、肉体は溶け、鬼魂を奪われるだろう。
虎渓は蜘蛛の背を踏んで跳躍し、毒糸をかわしながら動き回る。蜘蛛たちは互いの毒には耐性があり、糸が絡み合っても問題ない。ならば、と虎渓は手にしたムカデの牙を振るい、群がる蜘蛛たちをまとめて斬り伏せていく。
鬼魂を貫き、喰らい、喰らい、喰らい尽くす。戦いながら、魔物の魂を喰らい続けた。その姿は、ただ貪欲に生き延びようとする獣そのものだった。
牙を振るうたびに、大蜘蛛たちは吹き飛ばされ、鬼魂は粉砕されていく。喰らい続けたことで、毒糸への耐性すら身につき、拘束は無意味となった。黒衣を纏った虎が、狂気のように蜘蛛たちを蹂躙してゆく。
「……!」
緑蚓師の目に、初めてわずかな驚きが宿った。顔色を変えた彼は、さらに魔物を呼び出す。これまで作り上げてきた傑作たちは、まだまだ控えている。
やがて彼は、その中でもひときわ巨大な緑の大蛇の背に乗った。それは緑蚓師の代名詞ともいえる魔物であり、領土の守護者でもある。
大蛇が口を開き、毒霧を撒き散らした。虎渓はそれを吸い込んだ瞬間、体内を焼かれるような激痛に顔を顰める。
「どうだ……!魂すら焼く腐敗の毒よ……!」
緑蚓師が嘲るように笑った。獲物を溶かす毒霧の中、多種多様な魔物たちが一斉に襲いかかる。虎渓は痛む身体を無理やり動かし、応戦した。
――秋霖も、こんな痛みを抱えて、苦しんだのだろうか。それなのに俺は。
封じ込めていたはずの感情が揺らぎ、灰色の鬼気が溢れ出す。腐敗していく肉体の内側から、穴を埋めるように新たな組織を作り出し、再生が始まる。
これまで飲み込んできた魂の力を削りながらも止まらぬ猛攻に、緑蚓師はとうとう苛立ちを露わにした。唸りを上げる彼の額には青筋が浮かび、戦況の不利を悟る。
「くッ……! 貴様など、もう要らぬわ……! 早く往ね……!」
戦いは十日か、二十日か、それ以上か、途方もなく長く続いた。虎渓は襲いくる魔物のすべてを喰らい尽くした。やがて最後に残ったのは、緑蚓師とその大蛇だけである。
「瞋! 陀囉陀囉悉利悉利!」
緑蚓師の呪音が響くと同時に、大蛇が尾を振り翳し虎渓に打ちつける。戦いの中で、虎渓の持っていたムカデの牙はすでに朽ち、折れていた。
虎渓は跳躍し、そのまま大蛇の口の中へ飛び込む。素手で毒牙を掴み、皮膚が焼け骨にまで痛みが染み渡る中、それを引き抜いた。牙を失った大蛇が悲鳴を上げて身をよじる。
虎渓はその隙に迷いなく、巨大な毒牙をそのまま上顎から脳へと突き立てた。緑色の血を撒き散らしながら、大蛇は地に崩れ落ちた。
手が焼け爛れていようと、虎渓は身の丈の半分もある二本の牙を両手に携え、肩で息をしながら緑蚓師を睨み据えた。
――こんなところで立ち止まるわけにはいかない。
秋霖は必ず、どこかにいる。もし生まれ変わり、すべてを忘れてしまっていたとしても、今度こそ守る。それが鬼となった自分の、唯一の役目だ。どんなに堕ちようとも、生にしがみつく。
「……おのれ!!」
緑蚓師は奥歯を噛み締め、わずかに後退った。数多の魔物の鬼魂を得た虎渓の内に渦巻く鬼気は、すでに鬼王の領域に達している。
己の半身とも呼べる大蛇を失い、純粋な力では勝ち目がないと悟った時にはすでに、毒牙を握った虎渓が目前に迫っていた。
緑の鬼気が盾となって立ち塞がるが、灰色の執念がそれを上回り、貫いた。牙が緑蚓師の鬼魂を容赦なく穿つ。喰らわれた魔物たちの魂が、命を弄ぶ者への復讐となって牙に宿っていた。
「おのれええッッッ!! 貴様の身体を奪ってやるぞッッ!!」
緑蚓師が吠え、虎渓の片腕を掴む。だが虎渓はその瞳を冷淡に細め、引き抜いた牙を手放さず、もう片方の手で鬼魂を鷲掴むと握り潰した。緑の鬼気が鮮血のように迸り、灰色の鬼気がそれを覆うように呑み込んでいく。
虎渓の体内で、力の奔流が巻き起こり、魂の争奪が始まった。だが彼は、渦巻く怨嗟を一喝した。
「黙れ!!!」
怒声が空気を裂き、鬼気が弾け飛ぶ。西の地を覆っていた緑の瘴気は瞬く間に霧散し、黒い大地と廃墟のような城が姿を現した。
「敗者無声……!生者は王に、死者は賊となる。この俺が王だ!!」
その宣言とともに、虎渓の魂に取り込まれた無数の蠢く声が一つに練り上げられ、まとめられていく。身体を覆っていた鬼気が静まる頃には、髪に白銀が混じり、鬼王としての容姿が定まっていった。
緑蚓師を倒し、虎渓が得たのは地獄の西方の領土と、鬼王としての力と知識である。その力の根幹には、魂が持つ因縁と性質が宿る。
復讐に燃え尽き、二度と熱を灯すことのない残り滓。それが己だと、虎渓は両手を握りしめた。
虎渓は領土に残っていた魔物を全て灰に変えた。灰色の鬼気に覆われたものは、一瞬にして灰燼と化す。そうして、あちこちに灰の山が出来上がる頃には、空から雪のような灰が降り始めた。新たな王の誕生を告げるように、彼の鬼気が領土を包んだのだ。
「……なるほど、灰燼の王か」
突如、虎渓の眼前に紅の焔が噴き上がった。炎の中から現れたのは赤熹耀だった。緑蚓師の記憶を引き継いだことで、虎渓は彼が赤鬼王であることをすでに知っていた。
虎渓は黙して構え、灰色の鬼気を身にまとう。赤熹耀が小手調べとばかりに鬼気を飛ばすと、爆発のような炎の波が起こり、虎渓を包んだ。
しかし、虎渓の周りは薄膜が張り巡らされ炎を防いでいた。空中に舞った灰の粉は、二度と炎を寄せ付けない。
「……ふん、やはり燃えぬか。つまらんやつだ」
赤熹耀は低く呟くように言い、炎を振り払うと、背を向けて歩き出した。
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