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2話 初任務と昇格試験をしてみた
しおりを挟む″ シムリグの卵は銀貨二百枚だ ″
果たしてそれがどの値段か分からなくて、魂が抜けるような感覚をしたまま
商人の店から立ち去った
やっぱり値段だけ知りたくて入ったのはいいものの、一つ一つの金額が果てし無く高い気がする
「 低級シムリグだからあの値段だったが、戦闘が出来たりする獣の卵は、金貨三百枚とかだった…。えっ、なにそれ…金銭感覚狂ってる? 」
「 普通だろ。家畜化…と言っても卵は野生種から盗み取ってるんだ。刷り込み効果で扱えるだけだ 」
盗み取ってると言ったリクが不機嫌そうなのは、彼が前に言っていた密猟者とかに関係してそうだ
てっきり、鶏みたいに完全な家畜化して卵を売ってるのかと思ったけど
この世界では、全てが採取した物で賄っているらしい
「 だから、成長した獣は無理矢理従わせるしか無いってのが…そうなんだ? 」
「 嗚呼、だから…尚更、猛獣使いは重視される 」
無理矢理従わせる必要がないからこそ、猛獣使いは便利なのか
便利って言い方は何となく気に入らないけどね
「 何となく分かってきた。とりあえず…掲示板だっけ?それを見て、簡単そうなのを受けてから…晩御飯にしたい 」
「 そうだな。掲示板か…こっちだ 」
よく町を知ってると思う
通り掛かった時に私と出会ったはずなのに、なんでこんなにも町に詳しいのか、それが気になるけど…答える気はなかった
きっと教えていい事は、今まで通り言わなくとも答えてくれると思うから
掲示板に立っている人達に並んで、何となく見れば
板に画鋲みたいなので貼り付けられたチラシのような紙は、随分と古典的だと思う
簡単な内容、難しさのランク、依頼人の名前、そして報酬の金額やらアイテムが書いてあった
まるでゲームの世界みたいだと内心思うも、リクが真剣に見てるのを見て、言えなくなった
私にとって夢やらゲームみたいな感じだけど、彼等には生きてる世界なんだ
「 服を買うのと、晩飯代なら…Bぐらいかいいか。AやSはまだランクが高い気が… 」
服を買うのも視野に入れてるなんて、本当に獣だろうか?
いや、獣だから真名を知ったんだから獣に違いないと思うけど
傍から見たら、ベテラン冒険者みたいな雰囲気あるんだけど
着てる服装がそう見えるのか分からないけど、どちらかと言えば身長と体格っぽい
横目でリクを見ていれば、やって来た男は鼻で笑った
「 ひょろっとしたお嬢ちゃんだなぁ?任務なんてこなせんかよ 」
「 ……なに? 」
お嬢ちゃん…という年齢では無いけれど、明らかに私に言ってきたような声と雰囲気に視線を向ければ
そこにはリクよりも横も縦もでかい大柄の男が二人立っていた
見上げるほどの高さに呆気に取られて入れば、髭を蓄えた男は斧を担いだまま笑った
「 見たところ初心者らしいが、この辺りは初心者が来るところじゃねぇんだぜ? 」
「 そうそう、初心者に優しい町はずっと西にあるんだよ。こっち側はBランク以上の任務しかねぇの 」
嗚呼、よくゲームでありそうな
初心者が最初に行く町、そこから任務やらクエストをしたり、ストーリーを進んで他の町やら国を見つけていくってアレね?
孤児院でたまにTVゲームが一台だけ支給されて、それを他の男の子がやってたことがあるから見たことがある
レベルが足りず勝てなかったら、前の町の周辺でレベリングするしかないとか…
そんなの、この世界でも似たようなことがあるんだ
つまり私は、Eランク(初級)から飛んで、Bランク(中級)辺りのこの辺に来たってことね
だから、リクがBランクの中でも良さそうなを選んでる理由が分かった
なるほど、と一人でに納得していれば男はニヤリと笑った
「 お嬢ちゃんは一人じゃ危ねぇから、俺達と一緒に任務すりゃいい。割り勘して同じ宿に泊まれば直ぐに金も溜まって装備も買えるぜ?そんな薄い服じゃなくてなぁ? 」
嗚呼、どの世界も結局
そういった輩が現れるんだ
ちょっと残念というか、放っからそんな雰囲気だったから落ち込むことも無く見上げたまま口角を上げる
「 誘いには嬉しいけど、生憎…私には優秀な助っ人がいるから大丈夫ですよ? 」
「 助っ人……っ!!? 」
彼等より恐ろしく怖い雰囲気を放ってるのが、さっきから背後にいるからそっちの方が気になる
ブツブツと触れたら殺す、みたいな言葉を呪文の如く呟いてるリクに後は任せようかと思えば、彼は私の身体へと腕を回し抱き締めた
「 その誘い、俺も一緒なら行ってやるが? 」
「 っ…高ランクの男連れかよ……。そんな奴に手を出すわけねぇ 」
「 そ、そうだ!勝手にやってろ 」
まるで犬が尻尾を丸めて逃げて行った雰囲気に、呆れるも
思った以上に引いたことに疑問になる
なんで彼等は高ランクだと知ったのだろうか?
「 チッ、クソ豚が俺の主に手出そうなんぞ…百万年早い 」
「 ねぇ、リク。なんで彼等は高ランクって分かったの?猛獣の姿でも無いのに 」
意外に口が悪いと思いつつ、目線を上げて問えば彼は抱き着いていた腕を動かし手首を見せてきた
そこには、いつから着けてたのか分からないけど、金の石が嵌め込まれたブレスレットがあった
「 冒険者はランクアップの任務に合格すれば、それに見合った宝石が与えられるんだ。金は最高ランクのSランクを表しているんだ。Aランクは紫、Bランクは青、Cランクは赤。とかな…。長生きしてると暇を持て余すから…その時に昇格しといた 」
あれ…私が気にしなかっただけで、リクって実は凄い獣だったりするんじゃない?
それって動き辛いとか言ってた人間の姿で色んな任務をこなしてたってことになるよね?
「 えっ…沢山任務したんだ? 」
「 いや、俺がしたのは其々の昇格試験だけだ。雑務のような任務なんてするか 」
「 ですよね……うん 」
獣の姿で経験を積んでるから、人の姿でも経験する気は無いよね
昇格試験というか、そういった任務だけをやったという事は
少なからず4回ぐらいしか受けてないのか…
それは、ある意味…伝説になりそうなんだけど、大丈夫なの?
「 宝石は見える場所ならどこに付けようが構わない。ネックレス、ブレスレット、ピアスとかな 」
「 そういえば、私…金のピアスをこっちからしてるけど、なんでかわかる? 」
着けた記憶が無いほど、突然と痛み着いたピアスを何気無く横髪を耳に掛けて見せれば
リクは背後から離れた
何となく向き合うように見れば、リクもまた顔を傾け耳を向ける
そこには同じ、金色のピアスが嵌められていた
「 猛獣使いは、使役した猛獣のランクとなる石を自動的に身に着ける。俺はSランクの猛獣…つまり金だ。とある伝説的な猛獣使いの勇者は…全身、装飾品だらけだったとか… 」
「 ……サラッと勇者の話をしたけど、つまり使役の数が増えればピアスだらけになったり、アクセサリーだらけになるの? 」
「 嗚呼、そうだな 」
「 それはなんだか、嫌だ 」
一匹ずつにピアスホールが増えていくの?
そんなの嫌だ!!
鳥が可愛いから、飼いたいなーとか思ってたけどピアスじゃらじゃらで、耳に足りず鼻とかに自然と着けられるなら嫌に決まってる
「 下手に…使役増やさないようにしよう…… 」
「 俺がいるんだから必要ないだろ 」
ピアスの理由が知れたのは嬉しいけど、下手にお仲間を増やしたらじゃらじゃらになるなんて、嫌だと思い首を振っていれば
リクは一つ溜息を吐いてから、話を戻した
「 それで、任務はなのにするんだ?Bランクを受けてからじゃないとAランク昇格試験は受けれないが? 」
「 えっ、もしかしてSランクにさせようとしてる? 」
「 当たり前だろ?俺がいるんだからなっていても損はない。報酬金も上がるしな 」
ポカーンと口を開き、そんな話は聞いてないと逃げようとしてもガシっと手首を掴まれた事で、優しいのか酷いのか分からない、コイツのせいで
Bランク任務を無事に終えた前提で、Aランク昇格試験の資格を得る為に、先にBランクを経験することになった
「 ……依頼人のリチャードさんですか?この任務を聞きたくて 」
町にいる依頼人の元にチラシを持って向かう必要があるらしく
彼のいるところまでくれば、町の商人らしい彼は頷いた
古びた服を着て、如何にも商人って思うぐらいの大荷物を背負ってる、リチャードという男性の姿は…小人ぐらいのサイズだった
下手に考えるのは止めて、話を聞くことに集中する
「 そうなんだ!任務を受けてくれるだね!? 」
「 はい、私でよければ 」
「 それは嬉しい!!シルバーウルフから銀の毛皮を取ってきて欲しい。貴族に頼まれてるが中々、私では取れなくて…。45個ほど頼むね! 」
「 分かりました。毛皮を45個ほど取ってきます 」
シルバーウルフって名前からして狼じゃない?
それも結構な数を頼まれて、どれだけ毛皮を毟り取ればいいのか分からないし、
内容によってはこんな任務を決めたリクを恨みそうだと思いながら、シルバーウルフの生息する地図を渡された為に、それを頼りに向かう
走る気はなく歩いていれば、リクは痺れを切らして背中に乗せて走り出した
「 ねぇ、リク……。まさかとは思えけど…狼を殺さないよね?そんなのは嫌だよ? 」
「 俺がすると思うか?そんなのさせるわけ無いだろ。もっといい方法がある 」
「 ……いい方法? 」
行けば分かると言われ、聞くのをやめて任せる事にした
猛獣使いが、獣をバンバン殺すなんて思いたくないし
私も、毛皮の為に殺すなんてしたくない
どんな任務か検討がつかないまま、シルバーウルフの生息する崖のある岩場にやってくれば
リクはグリフォンの姿のまま、歩いていく
「 ウォォォオオ!! 」
遠吠えする声が聞こえ、岩陰に隠れてチラッと見れば唖然となった
「 デカ…… 」
「 Aランクのハンターウルフより小さい 」
「 いや、あんな狼から…どうやって毛皮取るの!? 」
「 これだ 」
明らかにライオンぐらいの大きさはありそうなぐらい、デカイ狼が彷徨いてるのを見て
よくこんな近距離に来れたね!って思うぐらい驚く
あんな狼の中に行くなんて無理!と思っていれば、リクが取り出したのはクシだった
「 えっ、舐めてんの? 」
「 なわけあるか。言う事を聞かせ、ウルフをブラッシングして抜け毛を取る。それを加工屋に持っていって毛皮を作ればいいんだ 」
「 なるほど…間に他の店を挟むことで目的の物が手に入るんだ…って、どうやって言う事を聞かせるの? 」
「 彼処に、リーダー格がいる。頑張ってこい 」
「 えっ…… 」
いや、そこは俺も協力するぜ!なんて言うと思ったのに人間が使うようなブラシタイプのクシを持たされてポンって肩を叩かれる程度だった
他のシルバーウルフより一回りはデカい、リーダー格は明らかにその雰囲気があるぐらい、片目に傷が入ったやつだ
「 一つ忠告するなら。真名を口で発しないようにな、使役することになるぞ 」
「 知っても言わなければいいんだね? 」
「 嗚呼、言霊にしなければ問題ない。危険と判断したら助ける…だから安心して、俺を手懐けたようにやればいい 」
やればいいと言われ親指を立てられたけど、無理な気がしてならない
そんな、手懐けた時の事なんて余り覚えてないし
食べて欲しいって言ってただけだと思う
そんな事を話して、シルバーウルフと仲良く出来るだろうか?
全く持って出来ないと思う!
不安で仕方ないが、晩御飯のため…
新しい服の為だと思いクシを握り締めて
シルバーウルフの群れの中に行くことにした
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