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パンツ八枚目 黒のボクサー

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“ しょーたは私と離れても平気なんだろうけど、私は、しょーたと離れるの平気じゃない!! “

“ っ!! “

“ しょーたなんてだいっきらいだ!!好きなところ、行けばいい!!私はドイツにかえる!!! “

“ えっ、待って....待っ、シルキー!! “

学園祭も終わって、やっと落ち着いて期末テストの勉強が始まった頃

教師の言葉を聞いてか、それとも俺の事で感に触ったのかクラスメート全員がいるまで声を張り教室を飛び出した

“ だいっきらいだ “

そう言われて俺は追い掛けることが出来なくて、立ち止まって一瞬何を言われたのか理解できなくて硬直してた

「 ドイツに帰る?えっ....てか、大嫌いって....どういうこと!? 」 

「 しょーた、彼女に進路言わなかったんだ? 」
 
硬直してから一時してからやっと、思考が回転し始めた俺は裕一の元の方へと目線を向ければ彼は呆れたように溜め息を吐いた

「 えっ、だって大学は別々になったところで後1年は一緒に居られるよね? 」

「 クラスが変われば、一緒にいられると思うか? 」

シルキーは泣いていた
喧嘩にも強いしかみなりさけ怯える程度なのに、俺の言動で泣かせてしまった
その事にモヤモヤして頭を抱えれば、裕一の言葉に考えてから思った

この学園は3年になってから尚更細かく教室が分けられ変わる
それは本格的に希望する就職や大学へと行く為なのだが、俺が選んだのはビジネスと料理専攻だった....

「 居られない....そうだ、席が近い訳じゃないんだ.... 」

大学のように学科を受けていくスタンプラリーみたいになる
必要な分の学科を受けて、残りはレポートやらで単位を維持する
高校3年生でありながら、大学生のような勉強をする場所だからこそ
“ クラス “が変われば話すタイミングも、受ける学科すら都合に合わせて行けば変わる

それだけ3年から専門的な勉強時間の方が増えることを俺は忘れていた

大学は違えど、3年まで一緒に居れたらいいなんて考えだったがそうじゃないんだ

「 はぁ、やらかした.... 」 

机に座り直して伏せれば、裕一は呆れたように言葉を返す

「 それもあるけど告白したら?もう冬だし後1ヶ月で12月は終わって次は年度が変わった1月、そしたらもう3年の事でてわやんや。3年からは忙しいんだからチャンス逃すよ? 」

告白....と言う選択肢は俺には無かった
と言うか考えてはいなかった 

「 俺は....そんな資格はないよ。彼女は社長の娘さん。可愛いし....俺は一般人で、それも貧乏だ....釣り合うわけないよ 」

バイト費が無ければ遊ぶことも出来ない
上手く行けるか分からない、確率の低い料理人になりたいなんて、言ったらきっと彼女のお父さんに辞めろと言われると思う

寧ろ、言うのも烏滸がましいぐらい俺はシルキーが美味しいと言ってくれるその一言が好きで仕方ない

「 はぁ....今は貧乏だろうが、働けば違うだろ?なんでそう悲観するんだ 」

「 ....俺は、臆病だから。告白してフラれるのが怖い.... 」

「「( いや、御前がフラれたら天と地が引っくり返るだろ )」」

シルキーにはもっと弁護士とか、国会議員になりそうな相手が向いている

金も容姿もいい人が向いてると思うからこそ、俺は学園祭でのカップルみたいな雰囲気が好きだった

「 っ....俺だって、離れるの辛いもん.... 」

「「( あの鬼嶽が泣いた!!? )」」

頬を伝う涙に情けなくべそをかくように泣いてしまった

シルキーとは釣り合わないと知ってるから寂しいんだと実感する

それでも将来を夢みたことが有るのに、望んでも届かないと知るから....

俺は自分の道を選ぼうとした、其処に彼女が居ないことにどれだけ寂しいか....

「 うわぁぁあん....好きなのにぃ.... 」

「「( 知ってるから、さっさと付き合えバカップル )」」

こいつは馬鹿だなと、ばかりに冷たい視線を浴びたことは俺は知らなかった

その日からシルキーは学校に来なかった

風邪だと教師は言うけれど、誰もがあの日の事を知ってるから俺に視線が向けられる

「 しょーた、先にお父さんに土下座でもしてきてシルキー連れてこい 」

「 ....殺される覚悟で逝ってきます 」

「「 逝ってこい( ついでに嫁に貰ってこい ) 」」

絶対にシルキーを泣かせたことに怒ってるだろうなって思って、いらないと言われそうな手土産を持って行くことにした

シルキーの好きなオレンジマフィンとクッキーを....作っていく....
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