月が綺麗ですね~無銘の海賊と声無き人魚~

獅月 クロ

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一話 泳げないキャプテン

06

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目を覚ました時にはデリットの姿はない
遅く起きてしまったか、其とも幻滅して放置されたかと心に槍が刺さったかのような気持ちになるウィンドは痛む尻を擦りながら起き上がる
服を整え、部屋を出て廊下を歩けば甲板へと脚を向ければ一面に広がるずらっと並んだ服の数々と晴天に息を飲む

『 なんて、いい洗濯日和なんだ 』

使用人の頃の記憶が思い出せば腕を広げ深呼吸をする
青い空と身体をすり抜ける心地好さに嵐の後とは思えない程に気持ちがよく
先程のどんよりとした心も全て洗い流してくれるようなそんな感覚に浸っていれば背後に気付かず痛めてる尻をどかりと蹴られた

『 っ!なっ!? 』

誰だと膝をつき転けるように座り込んだウィンド
その姿に"ださっ"と呟く声の相手は表情一つ変えず自身を負かしたスクードの姿、そして蹴られた為に背後を見ようとすれば其処にはスキンヘッドが今日もキラリと輝くようなジャックが眉を寄せ睨み立っていた 

「 何時まで寝てやがる!何時だと思ってんだ!!! 」

『 あ、すみません.... 』

「 すみませんって謝りゃいいってもんじゃねぇんだよ。新人部屋に行っても居ねぇから探したんだからな! 」

逆を言えば昨日の事があったから心配した、とでも聞こえそうな言葉を聞いていれば其処からグタグタとジャックの説教が始まり彼は視線を外しながら辺りを見ていれば
先程呟いたスクードの姿がなく何気無く探せば手摺に凭れていたデリットの隣に立って話してる様子に胸はまた痛み帯びる

『 っ.... 』

「 おい、聞いてんのか。ウィンド! 」

そうだ、デリットはウィンドと言う今の名前すら俺の事を知らないのかと呼ばれた言葉に反応しながら思えばゆっくりと立ち上がり普段の冷たい言葉をいい放つ

『 俺に説教する暇があれば働いたらどうだ?また鮫の餌になりかけても知らんぞ 』

「 なっ、テメェ俺が親切に!! 」

此所に居れば視野の中に入ると歩き出したウィンドは洗濯物へと視線を向け少しだけ触れればまだ湿ってる事にどのぐらい干し始めたか推測できる

顔を赤くし怒る様子のジャックを放置し何か出来ることは無いかと辺りを見ていれば突然と目の前に剣が飛んできた

『 っ!? 』

今度は何事だとその剣が反対の手摺に刺さった後、視線を投げた方へと向ければ其処にはデリットと話をしていたスクードの姿が

「 まだ....反省、時間。 」

『 律儀だな 』

其を取って構えろとでも言いたいのか、剣を回し握り直すスクードを見た後に突き刺さった剣を引き抜き構える

「 ....命令、...絶対。 」

『 その"絶対"を守らないやつはどうなるんだ 』

「 その首....刎ねる。 」

自分より幼い少年、恐らく16歳前後の者にそう何度も負けたたまるかと剣を振り上げ向ける彼に避けながら答えるスクードは自身からも攻撃を仕掛ける
身長差と身軽さはウィンドより上でありロープを掴み背後に周り背中を蹴り飛ばす

『 っ、ちょこまかと.... 』

よろけたウィンドは遊ばれてる事に気付くもそのまま剣を向け互いにカンカンと金属音を立ち鳴らせ両者見えない火花を燃やす

恐らく二人の考えてる事は同じだ

「『( キャプテンのガードは自分の役目 )』」

恋敵は見ればわかるとこの事で、其を知らないのは見物し始めたクルーのみ
実力を見ているデリットは僅かに欠伸をしながら見ていれば不意に二人は互いの首筋へと剣を当てた

「 そこまでだ 」

「 はい。 」

告げたデリットにスクードは頭を下げ剣を鞘に戻せばウィンドは何処か肩で息をする
其に比べ彼は何一つ呼吸を乱してないことに実力の差が分かる

『 デリット..... 』

剣を持ちかけスクードから渡された鞘を受け取り直しながら見ていたのかと視線を向けるウィンドだが彼は背を向け声を出す

「 休憩は終わりだ。御前等、遊びは程々にしねぇと全員鮫の餌にしてやる 」

そう告げ立ち去ったウィンドに周りの者は動き始め疲れた彼は手摺に凭れていればやって来たジャックは軽く笑う

「 あのスクードとやり合えるのはすげぇな! 」

『 いや、手加減されていた。今回も俺の敗けだ.... 』

軽く首を降りながらスクードがデリットの後を追ったのに気づいた彼は身体を海へと向け手摺から腕を出す

『 そう言えば、あの鮫の餌にすると言ってたが本当にするのか? 』

「 そりゃしたことあるぜ!なんせ、人魚を捕まえた時はバラして餌にしてるほどな 」

『 ......は? 』

「 おっと、島が見えてきたぜ!!久々の港だ!!! 」

ウィンドは聞き捨てならない言葉に目を見開くも見えてきた島に息を詰める
何故か嫌な感じがすると

それと同時にデリットが人魚狩りをしているのか気になったのだ
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