27 / 81
四話 公爵の島
05
しおりを挟む船に戻ればデリットは自分が油断した責任とし最後までスクードを支え医師であるオウガの元まで運べば
彼はスクードを座らせた後に背中を見ては息を吐いた
「 縫う必要があるの、スクード....安静にするんじゃ 」
「 ....むっ 」
少しだけムスッとした様子のスクードのデリットはポンッとバンダナをしてない短い短髪の頭へと触れ撫でる
「 さっさと怪我を治せよ?オウガ、スクードを頼む。俺は他のやつを見てくる 」
「 御前さんの怪我は? 」
「 ......こんなの擦り傷だ 」
あちこちに斬り傷があるデリットは其を見た後に眉を寄せ荒く扉を閉め出ていった
其を見たオウガは溜め息を吐けば交代のようにウィンドは入ってきた
『 スクード、平気か? 』
「 丁度いいウィンド、彼を縫うから抑えといてくれ 」
『 え?あ、はい 』
この時代の縫い方に有効な麻酔など無い
ベットに俯せになればスクードは布を噛み両手に額をつければウィンドは両肩を抑える
注射器は真鍮製 の物を使用する縫うことが始まればスクードは痛みに布を噛み身体にはじんわりと汗が浮かび上がる
それでも声を上げないのは海賊としてのプライドが有るのだろ
「 スクード、なにを見たんだ 」
手を拭き包帯を巻き終えたオウガは問い掛ければ水を呑んだスクードは僅かに視線を外した後に服を着直しながら告げる
「 同じ....顔。中将に....負けた 」
『 !! 』
スクードの言葉にウィンドは驚いた8年後のあの日から他の場所にいた彼には会うことがもう無かった為に中将になっていたのかと
『 スクード、そいつがなんか言ったのか? 』
彼は言葉を考えるように一つ告げた
「 落ちぶれたね、か....ったく意味わかんねぇ.... 」
ベットに仰向けになるデリットは溜め息を吐き天井に向けていた視線を静かに外し目を閉じる
剣を重ねた時に感じた手の平の違和感と初めて会った気が何一つしなかったのだ
「 同じ顔は三人いるんだっけか....なら不思議ではないか.... 」
気を落ち着かせる為に寝てしまおうかと思ったデリットだが余りにもあの中将の事が気になり徹夜の思考は落ちること無く晴れていくばかり
向ける場所の無い苛立ちを吐き出し壁際へと背を向ける
コンコンとノックの聞こえた音の答える気もなく寝たフリをしていれば幾分かし扉は開く
『 コックさんがなにか食べてって言ったから此所に置いときますね 』
声からしてウィンドと分かれば彼はテーブルの上にトレーを乗せる
スクードからな言葉を聞けばプライドの高い彼が寝てるのはふて寝だと分かるウィンドはその横へといけばベットに腰を掛け座る
『 ふて寝ですか?あ、そうそう成果は無しじゃありませんよ。ジャックと入った部屋に絵やら宝石があったので其は持ち帰りました....報告は以上です 』
言ったウィンドは立ち上がろうとすればデリットは呟いた
「 もう少し、其処にいろ.... 」
『 !ふふっ、子守唄でも唄いましょうか?得意なんですよ 』
好きにしろとばかりにそれ以上は言わなかったデリットに彼は透き通る歌声で子守唄を歌う
デリットにとって何処か聞いたことのある優しげであり安心する声に次第に靄は薄れ眠気が誘い眠り始まる
遠くで聞いていたクルーは声のする方に耳を傾ければ笑顔をこぼす
「 おっと、船にセイレーンでも居るんだろうか 」
「 ははっ、沈まなければいいねぇ~ 」
「 ウィンドにこんな特技があったとは 」
「 でも、歌詞はちょっとだけ....寂しいね 」
其々に笑いながら休憩をするように酒を呑み交わし
まるで海賊船にセイレーンが現れたように響く透き通る歌声に疲れたクルーは落ち着くその声を聞いていた
暗く冷たい海の底に沈む身体
地上の愛しい光に手を伸ばし
今か今かと心待つ愛しき思い人
この舌の無い声は届くことはない
この思いは永久に届くことはない
豪華なお城の舞踏会
脚の無い者は会いに行くことは
叶わない 叶えれない
貴方の隣に立つ美しい人
自分はとても醜い姿
この姿見せることすら
叶えれない 叶わない
暗く冷たい石に座る人魚
夜空の美しい光に手を伸ばし
今か今かと心待つ想い人
この心無い声は届くことはない
この想いは届くことをただ願う
0
あなたにおすすめの小説
ふたなり治験棟
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる