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187話 月曜の現人神

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「お前が月曜の現人神だな?」


 俺はドーム状の建物の上に浮かんでいる人間にそう問う。


「いかにも、貴様が日曜の現人神が言っていたものか?」

「…………多分?」


 やっぱりここまで日曜の現人神は来ていたようだな。


「それで、日曜の現人神はどこにいるんだ? 日曜の現人神じゃなくても、教会のみんなの居場所とかでも知らないか?」


 日曜の現人神が教会のみんなを連れ去ったからそいつを探せばどこにいるのか分かると思ったんだ。

 月曜の現人神が知ってるなら案内してもらおうかと思ったが、どうやらそんな様子ではなかった。


「はぁ、貴様も知ってると思うが、我とあのクソ野郎は犬猿の仲だ、そんなの知るわけもないだろう?」

「え? けどあいつから話は聞いてるんだろ?」

「あぁ、あいつは魔法で手紙を送ってきたんだ、それにお前のことが書いてあった。」

「そうだったのか。」


 まぁ、現人神とも言われているものだ、それくらいできたとしてもおかしくないか。

 それはそうとして、月曜の現人神は杖のようなものを俺に向け続けている。


「あー、お前も俺と争う気なのか? こちらとしては穏便に魔力だけ奪うだけにしようと思ってたんだが…………。」


 本当はその後魔法を使ってここら一帯を消し去ろうとはしていたけどな。

 その考えを知ってか、月曜の現人神は俺に警戒を続ける。


「お前が日曜の現人神の地を消し飛ばしたのは知っている。あのレベルの魔法を我の土地に使われても困るからな…………ここで死んでもらおうか。」

「ははっ! やってみろよ!」


 俺は月曜の現人神の魔力を奪うべく地面を蹴り上げ月曜の現人神に接近する。

 月曜の現人神もそれに気づき、更に空へと飛び上がる。

 俺だって空ぐらい飛べる。

 しかし、月曜の現人神は俺とは比べ物にならない速さで空へと飛び上がった。

 俺も負けじと飛び上がるが、差は一向に縮まらない。

 月曜の現人神は杖に魔力を構えて何かを唱えだした。


月閃光サテライトキャノン


 月曜の現人神の杖から眩い光が放たれる。

 俺はその魔力を殺そうとするが、あまりの威力に殺しきることが出来ない。

 俺は攻撃をもろに食らう。

 俺は体を何とか治していく。

 治癒魔法は魔法の中でも最上位に位置する魔法だ。

 そのため難易度も馬鹿にならないほど高い。

 素人の俺が使うには難しすぎるので、素の再生能力とスキルによる再生能力をフルに活用して体を治す。

 正直あんな攻撃を撃ってくるとは思わなかった。

 流石現人神だ。

 魔法に含まれる魔力は体外魔力なので俺自身が強化される事は無い。

 だが、体外魔力を貯めれば俺だって魔法を使える。

 俺は経験不足からスキルは持っていても強い魔法を使うことは出来ない。

 あの魔核融合魔法は初歩的な魔法に魔力をアホみたいに込め、更に魔法どうしの衝突による魔法の増幅反応を利用することによってとんでもない威力を出すというものだ。

 この魔法は対人戦で使うには威力は出せるものの、速度が出せないため、当たることは無いだろう。

 故に今俺は初歩魔法だけであのアホみたいに強い魔法を対処しなくてはいけないというわけだ。


微風ウィンド


 俺は貯めに貯めた魔力を使い体を押し月曜の現人神へと接近する速度をあげる。

 俺が月曜の現人神に勝てると言えば夢殺だけだろう。

 夢殺さえ使えれば形勢逆転。

 俺に力が流れるため経験不足だろうがなんだろうが単純な威力が増し、逆に月曜の現人神の魔法の威力は落ちるため勝つ事が出来そうだ。

 俺は速度をぐんぐんとあげていく。

 月曜の現人神は尋常じゃないほど取り乱して月閃光サテライトキャノンを連射する。

 サテライトキャノンは俺に当たれば重傷となる。

 治しながらだが、痛みは普通に感じる。

 はっきりいって滅茶苦茶痛い。

 食らったところは焼けて無くなってしまうため、感覚が無くなったかのように感じるが、その周りがそこにあったはずの肉体を主張すべく痛みを発している。

 あぁ、きつい、これも全て日曜の現人神のせいだ。

 月曜の現人神はいくら連射しても魔力が尽きない。

 流石に体外魔力を溜め込んでいるのだろう。

 月曜の現人神も日曜の現人神と同じくずっとずっと前から居る存在だ。

 遥か昔から魔力を貯め続けているとしたら無尽蔵な魔力を持っていたとしてもおかしくない。

 が、その魔力を俺は吸収していっている。

 痛みは伴うが、俺の速度はその度に早くなっていく。

 そして、遂に月曜の現人神の体の一端に触れる事に成功した。


夢殺ばく


 俺は嬉々としてそのスキルを使う。

 莫大な量の体外魔力と体内魔力が流れ込んでくるが、コンマ数秒たっただけで引き剥がされてしまう。


「はぁ、はぁ、これがあいつが言っていた能力か…………厄介だな……………。」


 月曜の現人神も俺も満身創痍だったが、今の所戦況は俺に傾いた。

 俺の体からは様々な力が滾っている。

 俺はすぐさま月曜の現人神に再び迫る。

 膨大な魔力も手に入った事もあり、速度は更に増している。

 それに対して月曜の現人神の速度は少し落ちている。


夢殺ばく


 俺は何度もそのスキルを使う。

 その度に月曜の現人神は力を失っていき、最終的に月曜の現人神は飛ぶ能力を失い、地面へと落ちていった。
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