おんせんめぐり!

黒飛清兎

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2話 ルカ

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「よぉし、ここまで来たらもう大丈夫!」


  ルカがそう言うと走る音は止まり、僕の体を襲う冷たい風も止んだ。


「大丈夫? 立てそう?」

「…………ちょっと無理そう……かな?」


  まだ辺りは暗いままだし、地面すらまともに認識出来ない様な状態じゃどうやっても上手く立てっこない。

  …………というか、ルカはどうやって走っていたんだろう。


「うーん、体の様子も確認したいし、とりあえず降ろしたいんだけど…………。」

「えっと、さっきお湯に入っていた時は普通に座れてたから、多分普通に座れはするんじゃないかな?」

「…………そっかぁ!」


  …………ルカって天然さんなのかな?

  僕の言葉を聞いてルカはそぉっと僕を何かに座らせた。

  背もたれもあったため、倒れたりもせずに無事に座る事が出来た。


「じゃあ、ちょっとだけじっとしててね!」


  ルカはそう言うと僕の体をぺたぺたと触り始めた。


「ちょ、ちょっと、くすぐったいよ!」

「あはは、ごめんごめん、もうちょっとで終わるから我慢しててね。」


  どこを触られるのか暗くて見えないからか、凄くくすぐったい。

  けど、これも僕を想っての事なんだろうし、我慢しなくちゃ!

  僕はくすぐったいのに耐えながら、数分間我慢し続けた。


「うん、体に大きな異常は無さそうだね。 ちょっとだけあおたんが出来ちゃってたけど…………この位ならすぐ治るし、大丈夫!」

「ふぇ、もう終わったの?」


  数分間のくすぐったさに耐えた僕はもうヘロヘロだった。

  僕はこのくすぐり地獄から抜け出せた事に安堵した。


「ルカ…………もうちょっと手加減して欲しかったなぁ…………。」

「あはは、ごめんごめん、それにしてもメグはちょっと驚きすぎじゃない? 私がメグの顔を見ている時ちょっと触っただけで飛び跳ねそうになってたもん。」

「しょうがないよ、だって何も見えてないんだもん、いきなり触られたらびっくりするに決まってるよ!」

「…………え?」


  話の途中、いきなりルカは黙り込んでしまった。

  そして、次の瞬間、私の頭を掴み目のあたりを触り始めた。


「ちょ、いきなり何!?」

「そんなまさか…………目を瞑っていたから気付かなかった…………。」


  ルカは深刻そうな声音でブツブツと何かを呟いている。


「何かあったの?」

「ねぇ…………今私の顔って見える?」

「え? こんなに暗いんだから見えるわけないよ…………。」


  ルカはこの暗い中でも走れるみたいだし、相当夜目が利くんだろうけど、僕はそんな凄い力を持っているわけじゃないし、どう頑張ったってルカの顔は見えない。

   僕がキョトンとしながらそう返すと、ルカは悲しそうな声で僕に語りかけた。


「えっとね、今は日陰だから気付かないかも知れないけど、一応天気は快晴なんだ…………。」


  快晴?

  そんなはずは無い。

  僕の目の前に広がるのは真っ暗闇だ。

  ただ、ルカが言っていることが正しいとしたら僕は…………。


「僕は…………目が見えてない……?」

「…………多分、そうだと思う。」


  僕は一気にパニックに陥ってしまった。

  それじゃあ、さっきから僕が上手く立てないのも近くに何があるか分からないのも全て周りが暗かったせいじゃなくなってしまう。

  そうしたら、僕はもう、一生何も出来ない子になってしまうじゃないか。


「…………悲しくないの?」


  ルカは不思議そうに僕に聞いた。

  何故そう問われたかと言えば、僕が思ったよりも動揺していないからだろう。

  悲しくない訳じゃない。

  驚いていない訳じゃない。

  ずっとこのまま生きていくなんて考えるだけで不安になってくるし、生き残れるかすら分からない。

  ただ、何故か分からないけど、の声を聞いてると大丈夫な気がしてくるんだ。


「うん、そんなに……ね。」

「…………そっか、メグは強いんだね。」


  そう言うとルカはただ黙って僕のの横に座り、肩をくっ付けてきた。

  何故だかそれだけで僕の心はスっと軽くなっていく。

  この時間がなんとも愛おしく、かけがえのないものに感じる。


「ねぇ、ルカはどうしてこんなところにいたの?」

「…………旅をしてたんだ。それがどうしたの?」


  旅か…………何だか素敵だ。

  僕は記憶も無いし、多分1人なら生きていくことは出来ない。

  ならいっそ…………。


「じゃあさ、その度に僕も連れて行ってくれないかな?」


  こんな何も出来ない人間、お荷物になってしまうのは分かっている。

  それでも、僕はルカに着いていきたい。

  そう心から思った。

  断られる事も考えていたが、それはいい意味で裏切られる事になった。
  

「もちろん! こんな状態のメグを置いていくわけないでしょ!」


  ルカは先程までと変わらない声音で僕にそう言ってくれた。

  僕はその言葉に安堵し、少し涙が零れそうになるが、グッと堪えて満面の笑みを浮かべた。


「ありがとう!」


  僕は横にいるルカに抱きついた。
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