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24話 流氷
しおりを挟む僕が出来るだけ遠くを見ると、僕の目にルカ達が僕に見せたがっていた景色が飛び込んできた。
僕はそれを見て言葉を失ってしまった。
上側を見ると、遮るものが何も無く、何処まで見ようとしても何も見えない空が永遠と続いている。
下側を見ると、一面に液体が満ちており、ゆっくりゆらゆらと揺れ動いている。
そして、その上にはとてつもなく大きい石のようなものがプカプカと浮かんでいる。
なんなんだ、この光景は。
水の上に石が浮かんでいるのもおかしいし、まずこの量の水があるって言うこと自体もおかしい。
…………だが、みんながこれを僕に見せたがっていた理由はなんだか分かる気がする。
僕の視界は多分普通のものとは違うものなのだろう。
当然普通の視界と比べたらものを綺麗に見ることも出来ない。
それなのに何故だろうか。
この光景は酷いくらいに美しかった。
僕はこの光景の感想を何とか言おうとするが、口からはただ一言、すごいとしか出てこなかった。
もっといい言葉があったかもしれないが、なんだかこれよりも詳しく言ってしまえばこの光景が、この瞬間の思いが安っぽいものになってしまう気がしてしまい、それは出来なかった。
「うーん、満足してくれたみたいだな! 意地張ってでも見させて良かった!」
「うん、そうだねー、まぁ、本当にちょっと危険な部分はあったから、次からはもっと慎重にねー?」
「うぅ、わかってるよ…………。」
アニはサナに少し説教されてしょんぼりしていたが、それでもその声音は明るいものだった。
本当にみんなには感謝してもしきれないな。
アニは僕にこの光景を見せようとしてくれた。
ルカは僕の事を心配してくれた。
そして、サナはその2つの意見を合わせた解決策を出してくれた。
皆の協力が無かったら、こんな綺麗な景色なんて見れなかったんだよね。
…………そうか、この光景を見れたのはみんなが協力してくれおかげだから、こんなに綺麗なのか…………。
「あれ、メグ凄いニヤけてるけど、そんなにこの景色が気に入ったの?」
「ううん、そうじゃなくて…………。」
「ええっ!? め、メグ、この景色気に入らなかったのか?」
「え、いやいやいや! そういう事じゃなくて! この景色は気に入ったんだけど、さっきにやけてた原因は違うって意味で…………。」
僕は必死に弁明しようとした。
しかし、次の瞬間、僕の頭に鋭い痛みが走る。
「いたっ…………。」
「メグっ!? 大丈夫!?」
「あー、ごめん、ちょっと使いすぎちゃったみたいだねー、こうなる前にセーブしようと思ってたんだけどねー。」
そっか、さっきまではエナドリの効果がある中で見てたから気が付かなかったけど、よく考えたらこの距離をこの時間見続けるのは厳しいよね…………。
「大丈夫かメグ…………よぉし、そうだ、原因はあたしにあるようなものだし、今回はこのあたしの胸の中で休んでもいいぞ! さぁ、ばっちこい!」
「いや、僕はルカが良いかな…………。」
「えっ…………。」
僕がその誘いを断るとアニは何が起こったのか分からないと言った感じでえっ、という言葉を繰り返し呟くようになってしまった。
「ふふふ、アニ、振られちゃったねー。」
「べ、別に振られたわけじゃないよ、ただルカの方が大きいからルカがいいって言っただけだって、ねぇメグ、そうでしょ!?」
「そう…………かな?」
特に理由など考えていなかったため、アニの意見に流されてしまった。
けど、本当になんで僕はルカが良いなんて言ったんだろ…………。
僕の言葉にアニはちょっと傷ついてるみたいだし…………。
「ふふ、私の勝ちだね、アニ。」
「ぐぬぬ…………。」
いや、これ勝ち負けとかあるの?
まぁ、とりあえず僕はルカの元へむかった。
「それで、これは何なの? すごい綺麗だったけど…………もしかしてこれも温泉? それにあの石はなんで浮いてるの?」
液体で満ちていたし、とてつもなく大きな温泉という可能性をまず先に僕は考えた。
「んー、まぁ、近いところはあるけど、あれは温泉じゃないんだよね、あれは海って言うんだよ。」
「海…………。」
「この島の周りを囲んでるすっごく大きい水溜まりみたいなやつだね、それで、浮かんでる石って言うのは流氷だね、あれは石じゃなくて氷なんだよ。」
「ほえー。」
海に流氷、なんだかいい名前だね。
正直名前が分かったところでという話ではあるけれど、記憶のない僕はそういう所から思い出していくのが良いんだと思う。
海と流氷を見ていて嫌な感じがしないってことはきっと記憶を無くす前の僕もこれに嫌な印象は持っていなかったってことだろう。
それが分かっただけでも十分だ。
「…………そーだ、メグが休み終わったらさ……あそこ、言ってみない?」
「…………あそこ?」
僕はもう遠くまで見る体力は無かったから近くにいるアニの指し示す場所は分からなかった。
が、アニの声音から何となく伝わってきた。
「…………ふっふー、そりぁもちろん、流氷の上に決まってるよね!」
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