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26話 次の温泉へ
しおりを挟む海から出発してやや時間が経った頃、僕は体が少しポカポカと温かくなってきた事に気がついた。
そういえば、少し前から雪も降らなくなってきたし、暖かくなってきたのかな?
僕はルカに頼んでバスタオルを取ってもらった。
「んー、もう大丈夫なの? まだちょっと寒いんじゃない?」
「厚着させて貰ってるからそんなに寒さは感じてないかな、なんならちょっと暑くなってきたぐらいだよ。」
「えぇー? 私まだちょっと寒いんだけど…………。」
寒いといいつつも特に防寒具などは着ずに元気に走り回っているルカが言うとあまり説得力は無いけれど、水風呂に入ってた時にはずっと辛そうにしていたし、ルカは寒がりなのだろう。
…………そう考えると僕だけ厚着させてもらってるのが申し訳なさすぎる。
僕は動けないから寒くなるって言うのは分かるけど、言ってしまえば僕はお荷物なんだから、もっと雑に扱ってくれてもいいんだけどな。
「…………。」
僕は無言でルカに擦り寄る。
「お、久しぶりの甘えん坊メグだ! えへへ、ヨシヨシしてあげるー!」
少し甘えたらルカはとても嬉しそうに僕に構ってくれる。
こうやったらルカは喜んでくれるから僕は定期的にルカに甘えているのだ。
…………というのは建前で、実際はただ僕が甘えたいだけである。
ただ、いつまでもこの優しさに甘えてばかりでは駄目なんだ、早く僕もみんなの役に立てる様にならなくては!
僕はそう決意するはいいものの、特に出来ることはなくただルカに甘えていることしか出来なかった。
それから更に時間が経つにつれ少しづつ暖かくなっていき、厚着もどんどんと暑くなってきた。
僕がその旨を伝えると、サナが僕の着ていた服を回収してくれた。
…………そしていつものように自分の服の中にしまった。
どうなってるのか分からないけど、絶対暑そうと思ったが、本人曰く全然暑くは無いらしい。
人体の謎だ。
「えっと、あの石がここにあるってことは…………うん、次の温泉はもうちょっとで着くみたいだよ!」
「本当!? やったぁ、楽しみー!」
さっきの流氷の所の位置が分かったことによって現在地がわかったらしく、やっと次の温泉に向かう事が出来ている。
ルカは目印になるような場所を巡って次の温泉まで向かっているらしい。
目印までの間隔は結構空いているから、そこを迷いなく進めるルカは本当に凄いと思う。
ルカと居るとなんだか僕も誇らしい気分になってくる。
「それで、次の温泉にはおかみさんは居るのか? あたしもちょっと入りたくなってきたから出来れば居て欲しいんだけど…………。」
「うぅん、見た感じ結構古い温泉みたいだから居ないかもしれないね…………。」
「ええっ、その近くに他の温泉は無いのか!?」
「うん、他の温泉はもうちょっと行かなかったら無いんだよね。」
「そんなぁ…………。」
アニは非常にガッカリした様子だった。
前回入ってから相当時間も経ってると思うし仕方が無いだろう。
そして、温泉が特別好きな訳じゃないアニですらこうなっているんだ。
もうお分かりだろう。
「っ!? め、メグ!? ちょ、なんか溶けてる!?」
「ぼ、僕もうダメかも…………。」
アニですらああなっているのに、温泉が大大大好きな僕が無事なはずがないだろう。
全身の力が抜け、ルカの手から零れ落ちてしまいそうな程僕は落ち込んでいた。
この前の特訓と急激な寒暖差により僕の疲労はかなり溜まっている。
だからこそもうすぐ温泉に入ってその疲れを一気に取ろうと思っていたのに…………。
「け、けどまだ入れないって決まった訳じゃないし、多分大丈夫だよ!」
「…………本当?」
「…………多分恐らくきっと?」
「うわぁん、それダメなやつ!」
今の言葉ほど信用のできないものは無いだろう。
確かにまだ入れないと決まった訳では無いけれど、さっきのルカの言い方だと恐らくその確率は高いのだろう。
僕はルカの腕の中で絶望に打ちひしがれた。
なんならもう一度前回入った温泉に戻ってそこに入りたいくらいだ。
まぁ、そんな僕の我がままを通す訳にもいかないため、僕はただしくしくと静かに涙を流していた。
「むっ!? メグが泣いてる…………ま、まさかルカが泣かしたのか!?」
「ちっ、違くないけど、違うよー!」
僕が泣いていたため何故かその容疑がルカの方に向いてしまっていたが、その疑惑を晴らす元気すら今の僕には残っていなかった。
そうやっていると、今回は珍しくサナが何かを見つけたみたいだ。
「ねー、あれって…………もしかして温泉宿かな?」
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