世界にひとり。

杏寿

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花屋

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仕事の帰りによく通る道に小さな花屋がある

俺がその道を通る頃には22時に近いのにその花屋はまだ営業していた。

「お疲れ様です」

花屋の店員さんに声をかけられる。

「お疲れ様です。」

その店員さんはよく見かける女の人で会うたびに声をかけてくれる

普段はそのまま帰っているが、その日はなぜか花屋に寄りたくなった。

「花、見ていってもいいですか?」

「はい、ぜひ」

彼女は少し驚いた表情をして微笑んだ

店内に入ると花の匂いに包まれる

初めて入る店なのになぜか懐かしい気持ちになった。

店内を見渡すと、一つの花に目が留まった

「このガーベラを一つ」

「ガーベラですね。お好きなんですか?」

「いや、普段花とか買わないんですが、なぜか目に留まって」

「そうなんですね。お家で大切にしてあげてください。私の好きな花なんです」

そういって彼女は微笑みながらガーベラを包む

「わかりました」

「ありがとうございました。またお待ちしております」

誰に送るわけでもない花を抱えて歩く夜道は

いつもより少し明るかった
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