《完結》初夜に異世界へ飛ばされた二人は、囚人と牢番になっていた。

ぜらちん黒糖

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⑮初夜に戻る二人

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事件解決後、アンジェリカとギブソンはなかなかいい雰囲気になり、恋に落ちるかと思われたが実らなかった。

原因は、ギブソンがまだアンジェリカがロミン王太子妃を毒殺しようとしたと思いこんでいた頃に言い放った言葉を、アンジェリカが思い出したからだ。

『はぁ?俺の名前はギブソンだ。教えただろう?この雌豚が!しっかりしろ!』

このセリフを言ったとき、アンジェリカの体にはすでにエリザベスが入っていた。しかし魂は二つでもこの体の脳は一つである。

アンジェリカの脳が全てを記憶していたのであった。確かにギブソンには優しい面もあった。だが、公爵令嬢のアンジェリカに対して「雌豚」は禁句だった。

その後アンジェリカは意外な人物と恋をして結婚した。相手は牢番のクリスであった。

クリスは元貴族(男爵家)の平民である。しかしグラット王太子のはからいによりクリスに空いていたスプリット伯爵家の爵位を与えクリス・スプリット伯爵となった。

ギブソンはまだ牢番をやっていた。
そしてロミン元王太子妃は一年間の投獄の末、断首刑に処された。





新婚初夜に気を失って互いに気絶していたエリザベスとウィル。

最初に気がついたのはエリザベスだった。ベッド下の床に横たわっていた。

「う……う~ん」

ハッとして自分の首を確かめるエリザベス。

「よかった~。つながってた」

起き上がりベッドの上で仰向けになって眠っているウィルを見て名前を叫ぶ。

「ウィル!」ベッドに飛び乗りウィルを揺さぶる。

「ウィル。起きてよ。ねぇウィル」

その時、ウィルが目を覚ます。
「う~、ん?」
目の前にエリザベスの顔があった。起き上がりすぐに抱きしめるウィル。
「エリザベス!無事だったのか!」

エリザベスが冷静に声をかける。
「ウィル、私たち、戻って来れたみたいよ」

二人はあれが現実か夢なのか分からなかったが、とにかく生きている今を喜んだ。

そして、二人は今が新婚初夜だと思い出す。

「エリザベス、私たちは酷い目に遭ったがこれも新しい人生の試練と考えて頑張って生きて行こう」

「ええ……でもギブソンって優しくていい人だったわ」

「私は一度もアンジェリカに会っていないんだ。少しだけ淋しいな」

「ふふふ、でも今回のことで分かった事があるわ」

「なんだい?それは」

「私たち二人は絶対に気を失っちゃ駄目だってこと」

二人は長い夢から覚めたように自然と抱きしめ合い一つになった。

とても新婚初夜とは思えないほど濃密な夜を過ごした二人だった。
    
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