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第一章
⑤ヘレンの決意
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トムスは話し続けた。
「君が倒れる10日ほど前にローズが尋ねて来た」
「妊娠したから私と結婚して下さいってね」
「私はヘレンと結婚しているから無理だと言ったら、いいのですか?私がトムス王太子に妊娠させられましたと、国王陛下に申し出ても」
「私が、被害者は私の方だと言ったんだが、ローズは、男性が部屋に連れ込まれて女性に襲われましたなんて誰が信じますか?」
「申し開きをしたいならどうぞご勝手になさって下さい」
「そう言われて私は言い返せなかった。ローズの言っていることのほうが説得力があるからね」
「だけど一番堪えたのが、どのみち、私が妊娠した事がお姉様の耳に入れば離婚は免れませんけれどねと言うセリフだった」
「ローズが、あなたは何もしなくていいの。ただ私のすることを黙って見ていればいいの……」
「そうすれば何の問題もなく私たちは結婚できるんだからって」
「あなたには私と夫婦になるしか道はないのですよ?って」
「お腹を擦りながらそう言うんだ。もう私には頷く事しか出来なかった」
マリー(ヘレン)が口を挟む。
「トムス、その時あなたはローズと夫婦になる事を受け入れたのね?」
「ああ、もうどうにも私には出来なかった」
「そう、話しを続けてトムス」
「そして、君が毒薬を飲まされた日の事だが、夜、食事の用意が出来ましたと、メイドが私を呼びに来た」
「ああ、今行くよ」
「そう言って立ち上がったのだが、メイドが立ち去らないで、まだドアのところに立っていた」
「メイドが私に、どう?似合う?と聞いてきた」
「ローズだった」
「ローズは部屋に入って来るとドアを閉めて、今日は私が少しだけ給仕をします。ワインを注ぐのは私がします」
「お姉様に眠り薬を入れたワインを飲ませるから」
「今夜は、お姉様が眠っている側で私を抱いて下さいねと言ったんだ」
「私は、ヘレンはワインは飲まない。無理だ。そう言ったのだがローズは笑って」
「だからあなたがワインをお姉様に勧めて下さいなって」
マリー(ヘレン)は冷ややかな声でトムスに聞いた。
「勧めたのね?」
マリー(ヘレン)は少し怒気を含んだ声で問いただした。
「私がワインが嫌いなのを知っていたのに?」
「……」無言のまま頷くトムスが話を続ける。
「食堂へ行くとローズは廊下で立ち止まって、私はここで待っているから、ワインを飲むときになったらマリーに取りにこさせて」
「その時にマリーと交代するから。もうマリーにはお願いしてあるのよ」
「だけど君が入ってくればすぐにバレるぞ?」
「そしたらローズが仮面を取り出して、これをつければ大丈夫なのって」
「仮面?」
「ああ。その持っていた仮面をつけた途端……ローズは……変身したんだ」
「はあ?」
「本当なんだよ。本当にマリーに変身したんだ」
「あなた、頭が変に……」そこまで言って思い出すヘレン。
(あ……マリーも同じような事を言っていた)
「はあーっ、やっぱり信じてもらえないか……」
「それで?次はどうなったの?」
「食堂に入るともう君は席についていて……そのあとは和やかに食事が進んで……食べ終わったあと……」
マリー(ヘレン)が目を細めてトムスを睨む。
「私は渋々、君にワインを勧めた。それでマリーに、部屋の外に用意してあるから取って来るようにと、私は渋々命令した」
「マリーが部屋を出て行って、すぐにマリーがワゴンを押して戻って来たよ。ワインを乗せてね」
「それがローズだったのね?」
「ああ、ローズは、旦那様が頼まれていたワインが今届いたそうです」
「そう言って私をじーっと見ているんだ」
「私は仕方なくローズの言う通りにした。まあ、飲んでも眠り薬だから体には害はないだろうし、もちろん、その後ローズに迫られても拒否するつもりだったから……仕方なく君にワインを勧めた」
「このワインは飲みやすいから一口飲んでみないかと……。渋々勧めた」
「その後は悪夢のような光景だった」
「ヘレンが苦しみ始めて……」
「私は何が起きているのかわからなくて」
「眠り薬でこんなことに?」
「なぜだ?なぜこうなる?ただ呆然とヘレン、君を見ていた」
「その時メイドのルイーズが悲鳴をあげて、やっと私は我に返った」
「私は急いで医者を呼べと叫んだ」
「ローズ(マリー)が助けを求めながら部屋を出て行ったよ」
「私はぐったりとしている君を抱き上げ寝室へ運んだ」
「ベッドの上で寝かされているヘレンを見て……」
「ローズが眠り薬の量を間違えたのか?それとも薬の副作用か何かなのか?ローズの奴……なんてことを」
「そこへ駆けつけた医師がヘレンを診察して言ったんだ」
「ヘレン様は毒を盛られたようですとね」
❖
全てを話してぐったりとしているトムス。
「ねえ、トムス。事件の前の晩、あなた、私を抱いた後 、独り言を言ったでしょ?すまない 、ヘレンって?」
「うん……聞こえていたんだな 」
「あなたは翌日、私が毒を飲まされるのを知らなかったみたいで少しほっとしたわ。じゃあ、あの時の『すまない 、ヘレン』ってどう言う意味だったの?」
「それはローズと関係を持ってしまったことで、君を裏切ってしまったからだ 。罪悪感だよ。私だって悩んでいたんだ」
しばらくの間、二人は何も話さなかったが へレンが口を開いた。
「ねえ、あなた。明日の晩、ローズを呼んで下さい」
「え?構わないが……なんでわざわざローズを呼ぶんだ?」
マリー(ヘレン)は立ち上がると「最期の晩餐会を開きましょう。ね?トムス」
焦るトムス。
「何かするつもりなのか?何も……しないだろう?ヘレン」
マリー(ヘレン)は出口まで歩いてドアノブを握ると振り返って鋭い口調で言い放つ。
「どの口がそんな事を言うの?」
ヘレンの迫力に押されて返事をするトムス。
「わ、わかった、言うとおりにするから」
「今度は私の味方をして下さい。ね?トムス」
マリー(ヘレン)はトムスの返事を聞かずに部屋を出て行った。
「ヘレン……」
「君が倒れる10日ほど前にローズが尋ねて来た」
「妊娠したから私と結婚して下さいってね」
「私はヘレンと結婚しているから無理だと言ったら、いいのですか?私がトムス王太子に妊娠させられましたと、国王陛下に申し出ても」
「私が、被害者は私の方だと言ったんだが、ローズは、男性が部屋に連れ込まれて女性に襲われましたなんて誰が信じますか?」
「申し開きをしたいならどうぞご勝手になさって下さい」
「そう言われて私は言い返せなかった。ローズの言っていることのほうが説得力があるからね」
「だけど一番堪えたのが、どのみち、私が妊娠した事がお姉様の耳に入れば離婚は免れませんけれどねと言うセリフだった」
「ローズが、あなたは何もしなくていいの。ただ私のすることを黙って見ていればいいの……」
「そうすれば何の問題もなく私たちは結婚できるんだからって」
「あなたには私と夫婦になるしか道はないのですよ?って」
「お腹を擦りながらそう言うんだ。もう私には頷く事しか出来なかった」
マリー(ヘレン)が口を挟む。
「トムス、その時あなたはローズと夫婦になる事を受け入れたのね?」
「ああ、もうどうにも私には出来なかった」
「そう、話しを続けてトムス」
「そして、君が毒薬を飲まされた日の事だが、夜、食事の用意が出来ましたと、メイドが私を呼びに来た」
「ああ、今行くよ」
「そう言って立ち上がったのだが、メイドが立ち去らないで、まだドアのところに立っていた」
「メイドが私に、どう?似合う?と聞いてきた」
「ローズだった」
「ローズは部屋に入って来るとドアを閉めて、今日は私が少しだけ給仕をします。ワインを注ぐのは私がします」
「お姉様に眠り薬を入れたワインを飲ませるから」
「今夜は、お姉様が眠っている側で私を抱いて下さいねと言ったんだ」
「私は、ヘレンはワインは飲まない。無理だ。そう言ったのだがローズは笑って」
「だからあなたがワインをお姉様に勧めて下さいなって」
マリー(ヘレン)は冷ややかな声でトムスに聞いた。
「勧めたのね?」
マリー(ヘレン)は少し怒気を含んだ声で問いただした。
「私がワインが嫌いなのを知っていたのに?」
「……」無言のまま頷くトムスが話を続ける。
「食堂へ行くとローズは廊下で立ち止まって、私はここで待っているから、ワインを飲むときになったらマリーに取りにこさせて」
「その時にマリーと交代するから。もうマリーにはお願いしてあるのよ」
「だけど君が入ってくればすぐにバレるぞ?」
「そしたらローズが仮面を取り出して、これをつければ大丈夫なのって」
「仮面?」
「ああ。その持っていた仮面をつけた途端……ローズは……変身したんだ」
「はあ?」
「本当なんだよ。本当にマリーに変身したんだ」
「あなた、頭が変に……」そこまで言って思い出すヘレン。
(あ……マリーも同じような事を言っていた)
「はあーっ、やっぱり信じてもらえないか……」
「それで?次はどうなったの?」
「食堂に入るともう君は席についていて……そのあとは和やかに食事が進んで……食べ終わったあと……」
マリー(ヘレン)が目を細めてトムスを睨む。
「私は渋々、君にワインを勧めた。それでマリーに、部屋の外に用意してあるから取って来るようにと、私は渋々命令した」
「マリーが部屋を出て行って、すぐにマリーがワゴンを押して戻って来たよ。ワインを乗せてね」
「それがローズだったのね?」
「ああ、ローズは、旦那様が頼まれていたワインが今届いたそうです」
「そう言って私をじーっと見ているんだ」
「私は仕方なくローズの言う通りにした。まあ、飲んでも眠り薬だから体には害はないだろうし、もちろん、その後ローズに迫られても拒否するつもりだったから……仕方なく君にワインを勧めた」
「このワインは飲みやすいから一口飲んでみないかと……。渋々勧めた」
「その後は悪夢のような光景だった」
「ヘレンが苦しみ始めて……」
「私は何が起きているのかわからなくて」
「眠り薬でこんなことに?」
「なぜだ?なぜこうなる?ただ呆然とヘレン、君を見ていた」
「その時メイドのルイーズが悲鳴をあげて、やっと私は我に返った」
「私は急いで医者を呼べと叫んだ」
「ローズ(マリー)が助けを求めながら部屋を出て行ったよ」
「私はぐったりとしている君を抱き上げ寝室へ運んだ」
「ベッドの上で寝かされているヘレンを見て……」
「ローズが眠り薬の量を間違えたのか?それとも薬の副作用か何かなのか?ローズの奴……なんてことを」
「そこへ駆けつけた医師がヘレンを診察して言ったんだ」
「ヘレン様は毒を盛られたようですとね」
❖
全てを話してぐったりとしているトムス。
「ねえ、トムス。事件の前の晩、あなた、私を抱いた後 、独り言を言ったでしょ?すまない 、ヘレンって?」
「うん……聞こえていたんだな 」
「あなたは翌日、私が毒を飲まされるのを知らなかったみたいで少しほっとしたわ。じゃあ、あの時の『すまない 、ヘレン』ってどう言う意味だったの?」
「それはローズと関係を持ってしまったことで、君を裏切ってしまったからだ 。罪悪感だよ。私だって悩んでいたんだ」
しばらくの間、二人は何も話さなかったが へレンが口を開いた。
「ねえ、あなた。明日の晩、ローズを呼んで下さい」
「え?構わないが……なんでわざわざローズを呼ぶんだ?」
マリー(ヘレン)は立ち上がると「最期の晩餐会を開きましょう。ね?トムス」
焦るトムス。
「何かするつもりなのか?何も……しないだろう?ヘレン」
マリー(ヘレン)は出口まで歩いてドアノブを握ると振り返って鋭い口調で言い放つ。
「どの口がそんな事を言うの?」
ヘレンの迫力に押されて返事をするトムス。
「わ、わかった、言うとおりにするから」
「今度は私の味方をして下さい。ね?トムス」
マリー(ヘレン)はトムスの返事を聞かずに部屋を出て行った。
「ヘレン……」
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