《完結》運命の人と気づかずに通り過ぎる人もいれば、すぐに気づく人もいる。でも大概は後で気づく。

ぜらちん黒糖

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第一章

②後悔

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翌日の夜、龍蔵の元に衝撃の知らせが届く。

会社の重役室で寛いでいるとスマホの着信音が鳴った。

机の上のスマホを手に取ると、田中健太郎と名前が表示されている。

「チッ、健の奴、用件はメールにしろってあれほど言っておいたのに……」

渋々出る龍蔵。スピーカーにすると健太郎の声が響く。

「おい龍ちゃん!」

「なんだよ」

「大変なことが起きたんだ!」

「はあ?大変なこと?」

「翔子さんが死んだ!」

一瞬龍蔵の時間が止まる。

「え?」

「車に撥ねられて死んだんだよ!」

龍蔵は自分のかがせた薬品の後遺症で事故に巻き込まれてしまったのかと想像した。

「事故だったのか?」

「どうやら自殺らしい」

「自殺?」

「新一も一緒にいたらしくて別れ話のもつれで発作的に道路に飛び出したんじゃないかって」

龍蔵は電話を切った。

「なんで……俺は…翔子に…何もしていないぞ?なぜ……死んだ……」

龍蔵の目から涙がこぼれ落ちた。


二日後、本田翔子の通夜があり、その翌日告別式が執り行われた。

龍蔵も告別式に出席する。

線香の匂いが龍蔵の気持ちを重くさせた。そして龍蔵の番が来て、翔子のご両親にお悔やみの挨拶をして遺影の前に出る。

線香に火をつけ手で仰ぎ火を消し灰に立てる。

棺の小窓は閉められたままになっていた。龍蔵は遺影を見て両手を合わせ拝む。

(俺のせいで……翔子は…亡くなったのか…俺のせいで)

龍蔵は自分をあざ笑うかのように自虐的に笑った。

最後にもう一度翔子の遺影を見て、その場を立ち去ろうと後ろを振り向いた瞬間、お腹に重たい衝撃が走った。

ナイフが刺さっていた。

龍蔵の目の前には八木新一の顔があった。恨みのこもった表情をしていた。

睨み合う二人。

仕返しに来たのかと思った。

腹を力一杯殴ったのかと……

しかし龍蔵は立っていられなくなりしゃがみ込み……

意識がだんだんと薄くなっていく中、龍蔵の目に走り去る八木新一の後ろ姿が映っていた。

龍蔵はすぐに近くの総合病院へ運ばれ集中治療室に入れられた。

5日後個室に移されベッドに寝かされていると刑事が事情聴取を取りにきた。

なぜ八木新一に刺されたのか覚えはあるかと何度も聞かれたが「知らない」と返事をした。

前夜のラブホテルのことも聞かれたが「翔子が酔っ払っていたのでホテルの部屋に寝かせて自分は直ぐに帰った」と答えた。ホテルの受付の証言もありなんとか逃げ切った。刑事は信じてはいなさそうだったが……

逮捕された八木新一は翔子の名前は出すが、翔子が何をされたのか口を閉じているらしい。

(恐らく翔子も八木も勘違いをしている。俺が翔子を乱暴したと……)

「俺が紛らわしいことをしたのが発端なのは違いないが……」

龍蔵は運転手に声をかける。

「会社に戻ってくれ」

「承知しました」

車は静かに発進した。
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