愛する人と結婚するだけが愛じゃない

ぜらちん黒糖

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第七章

68.すきま風

マリアは今とっても幸せだった。数年ぶりにジェームズと結ばれてから三ヶ月経ったがジェームズのマリアに対する行動は変わっていなかった。酒に酔うこともなくシラフの時でも彼はマリアを求めてきた。

「私はジェームズに愛されている」そう強く思うマリアだった。

ジェームズの非番の日、マリアとジェームズとエリアは街中に買い物に出かけた。

食料品や日用品の荷物をジェームズが両手で持ってくれる。マリアはエリアの手を引くだけでよかった。そんな時、誰かがマリアたちに話しかけてきた。

三人が振り向くと目の前には飲み屋の女将、ローナが立っていた。

気まずい雰囲気のジェームズ。きょとんとしているエリア。そしてローナの顔を見て表情が強張るマリア。

ローナは全く気にせず、ジェームスに話しかける。

「こんにちはジェームズ」

困惑の表情をするジェームズがとりあえず返事をした。

「ああ、こんにちは」

マリアがすぐにジェームズに声をかける。

「ねえ、この人どなた?」

ジェームスはできるだけそっけなく答えた。

「飲み屋の女将さんだよ、もう行ってないけど……」

女将は屈託なく笑う。

「何よジェームズ、そっけないわね」

女将は3人を見て尋ねる。

「奥様と娘さん?」

「あ、ああ」

ジェームズは焦り気味にマリアとエリアを急かせるように声をかける。

「さっ、もう行こう」

ジェームズはローナに軽くお辞儀をするとマリアとエリアの背中を押してその場を離れようとした。

その時背中から声がかかる。

「たまにはまた来てね、ジェームズ」

ジェームズは振り向きもせずそのままマリアとエリアを押して姿を消した。

真ん中にエリアを挟んで右にジェームズ、左にマリアが立って歩いていた。マリアがジェームズに声をかける。

「ねえジェームズ」

「ん?」

「さっきの女の人……オリビア先輩に似ていたわね」

一瞬言葉に詰まるジェームズだったがすぐに返事をする。

「そうかなぁ……」

マリアはジェームズが何かをごまかしていると思った。

(さっきの彼女は誰がどう見たってオリビア先輩にそっくりだったわ)

マリアの視線に気がついたジェームズが声をかける。

「どうかしたのかマリア」

首を振って「ううん、何でもないわ」と言ったマリアの心は穏やかではなかった。

(似ているのに……オリビア先輩に似ているのに、どうして似ているって言わないのかしら?ジェームズは……)

街中に買い出しに来ていたがマリアの元気がだんだんとなくなってきたので、三人は買い物を切り上げ家に帰ることにした。

夕食も終えて後片付けも終わり、エリアを寝かしつけのんびりと食卓でお茶を飲んでいるマリアとジェームズ。

「マリアそろそろ寝ようか」

「ええ、そうね」

マリアが思い出したようにジェームズにお礼を言う。

「今日はあなたの非番の日だったのに、買い物に付き合ってくれてありがとう、ジェームズ」

「気にするなよ。いつでも言ってくれ、君のためならいつでも荷物持ちをするから」

そう言って笑うジェームズの顔を少し冷めた目でマリアは見つめていた。




    

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