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第九章
84.バンダーの気持ち
サリーはオリビアの店にやってきてもう二ヶ月が経った。
彼女のおかげで店は前よりも繁盛している。バンダーも相変わらず贔屓にしてくれている。
だがオリビアにはバンダーの視線がサリーの顔に向いていることが多くなっていることに気づいていた。
バンダーが店に来てもオリビアの鼻歌は出なくなっていた。
オリビアはバンダーがサリーのことを好きになっているのかもしれないと不安に思い始める。
( 確かめたい。でも……怖い )
オリビアは次にバンダーが店に来た時に、それとなく確かめることにした。
❖
チャンスは意外に早くやってきた。翌日の夜バンダーが店に来たからだ。
バンダーは空いていた一番左の席、出入り口のそばの座席に座る。すぐにサリーがバンダーに注文を取りに行く。
「いらっしゃいバンダー、いつものでいい?」
「あぁ、いつもので」
サリーがバンダーの前に玉子焼きと野菜の漬物、そしてお酒のお湯割りを差し出す。
「ありがとう」
「ふふ、いいえ」
サリーはバンダーから離れて一番右側の奥の席のお客さんの相手に向かった。
オリビアはカウンター内で洗い物をしながら二人を見ていたが、サリーがバンダーから離れたその瞬間を見逃さなかった。
自然に見えるように、オリビアはバンダーの前に立った。
バンダーがオリビアに声をかける。
「オリビア、腰でも痛めたのか?」
「え?」
「歩き方がなんとなくぎこちないぞ」
どうやら緊張のあまり体に余計な力が入ってしまったようだ。
「え、ええ、少し、でも大丈夫。私まだ若いから」
「そうか」
オリビアは洗ったばかりのグラスを布巾で拭きながら棚に戻す。そしてバンダーにだけ聞こえるような小さな声で話しかける。
「ねぇ……バンダー、あなたサリーのことが好きなの?」
バンダーは突然のオリビアの質問にうろたえることもなく平然と返事をした。
「どうなんだろうな……俺にも分からない」
「分からないってどういう意味よ」
「誰を好きかと尋ねられたら、俺が好きなのはオリビア、君だ」
思わずグラスを落としそうになるオリビア。喜びに心が震えるがまだ何かバンダーの言葉に引っかかるものがあった。それを確かめるオリビア。
「もう一度聞くけどサリーのことは好きなの?好きじゃないの?どっち?」
バンダーは両手で頭を抱えたままテーブルに肘をつく。
「どこかで彼女と出会っているような気がするんだが……思い出せないんだ」
オリビアがふと思い浮かんだことを聞いてみる。
「バンダー、あなた出身はどこなの?」
「え?俺の出身国はカイレン。俺はもともとカイレン国で傭兵をしていたんだ」
カイレンという言葉でサリーとバンダーが繋がっているとオリビアは思った。
オリビアは白黒はっきりさせたい気持ちが勝りバンダーに提案する。
「バンダー、閉店後あなたとサリースと私で話がしたいの。時間とれないかしら?」
バンダーはお酒を口にして頷くと返事をした。
「わかった」
バンダーはまたサリーをチラ見していた。
彼女のおかげで店は前よりも繁盛している。バンダーも相変わらず贔屓にしてくれている。
だがオリビアにはバンダーの視線がサリーの顔に向いていることが多くなっていることに気づいていた。
バンダーが店に来てもオリビアの鼻歌は出なくなっていた。
オリビアはバンダーがサリーのことを好きになっているのかもしれないと不安に思い始める。
( 確かめたい。でも……怖い )
オリビアは次にバンダーが店に来た時に、それとなく確かめることにした。
❖
チャンスは意外に早くやってきた。翌日の夜バンダーが店に来たからだ。
バンダーは空いていた一番左の席、出入り口のそばの座席に座る。すぐにサリーがバンダーに注文を取りに行く。
「いらっしゃいバンダー、いつものでいい?」
「あぁ、いつもので」
サリーがバンダーの前に玉子焼きと野菜の漬物、そしてお酒のお湯割りを差し出す。
「ありがとう」
「ふふ、いいえ」
サリーはバンダーから離れて一番右側の奥の席のお客さんの相手に向かった。
オリビアはカウンター内で洗い物をしながら二人を見ていたが、サリーがバンダーから離れたその瞬間を見逃さなかった。
自然に見えるように、オリビアはバンダーの前に立った。
バンダーがオリビアに声をかける。
「オリビア、腰でも痛めたのか?」
「え?」
「歩き方がなんとなくぎこちないぞ」
どうやら緊張のあまり体に余計な力が入ってしまったようだ。
「え、ええ、少し、でも大丈夫。私まだ若いから」
「そうか」
オリビアは洗ったばかりのグラスを布巾で拭きながら棚に戻す。そしてバンダーにだけ聞こえるような小さな声で話しかける。
「ねぇ……バンダー、あなたサリーのことが好きなの?」
バンダーは突然のオリビアの質問にうろたえることもなく平然と返事をした。
「どうなんだろうな……俺にも分からない」
「分からないってどういう意味よ」
「誰を好きかと尋ねられたら、俺が好きなのはオリビア、君だ」
思わずグラスを落としそうになるオリビア。喜びに心が震えるがまだ何かバンダーの言葉に引っかかるものがあった。それを確かめるオリビア。
「もう一度聞くけどサリーのことは好きなの?好きじゃないの?どっち?」
バンダーは両手で頭を抱えたままテーブルに肘をつく。
「どこかで彼女と出会っているような気がするんだが……思い出せないんだ」
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「バンダー、あなた出身はどこなの?」
「え?俺の出身国はカイレン。俺はもともとカイレン国で傭兵をしていたんだ」
カイレンという言葉でサリーとバンダーが繋がっているとオリビアは思った。
オリビアは白黒はっきりさせたい気持ちが勝りバンダーに提案する。
「バンダー、閉店後あなたとサリースと私で話がしたいの。時間とれないかしら?」
バンダーはお酒を口にして頷くと返事をした。
「わかった」
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