《完結》悪役令嬢の侍女に転生しました。

ぜらちん黒糖

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⑯カタリンの休日

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「さてと出かけるとするか」

今日は侍女の仕事が休みで、カタリンは外でユランズとアヴィスと待ち合わせしている。

屋敷を出ようと玄関に行くとマーガレットが待っていた。

「出かけるの?」

「はい、たまには外で何か食べようかなって」

「はいこれ」

そう言うとマーガレットはカタリンにお小遣いを手渡した。

「え?」

「これでたまには美味しい物を食べて来なさい」

「あ、ありがとうございます。マーガレット様」

「行ってらっしゃい」

「行って来ます」

玄関を出て通りに出る前に屋敷を振り返ると二階の窓からソジャコッドが手を振っていた。

カタリンも手を振りながら呟く。

「あいつに何か美味しいもの買って帰ろうかな、ふふ」


待ち合わせの中央公園へ行くとユランズとアヴィスはもう来ていた。

「よお、待った?」

「いや今来たところッス」

「俺も」

二人はベンチから立ち上がるとユランズがカタリンに

「まずは静かな場所へ行きましょうよ」

「そうだな、どこかいい場所知ってるか?」

アヴィスが答える。

「喫茶店に行きましょうよ」

「え?喫茶店なんてあるの?こっちにも」

カタリンが驚くとユランズも

「アヴィス、お前こっちの世界に馴染むの早いなあ」

「そうかな?」

アヴィスに連れて行かれたのはメイド喫茶だった。

「お、おい・・・」

思わず後ずさりするカタリンとユランズ。だがもう遅かった。アヴィスがドアを開けていた・・・。

「お帰りなさいませ御主人様」

可愛らしいメイドが出迎えてくれた。


最初はどうなることかと思ったが、一応食事を持って来たときにメイドたちのセリフを我慢して聞いていれば良いだけで後はなにもしなかった。

「安心したぞ。ずっと客に張り付いているのかと思ったぞ」

カタリンが言うとテーブルの上に置いてあるオムライスを見つめて

「なにが美味しくなーれ、美味しくなーれだ、馬鹿らしい」

「まあまあカタリン、抑えて抑えて」

ユランズが声をかける。しかし、ユランズもアヴィスも顔がニヤけている。

「お前ら女に騙されるタイプだな、きっと」

三人はオムライスを食べ終えて、コーヒーを飲んでいた。

「ところでお前たちはいつ前世の記憶が戻ったんだ?」

ユランズが言うには

「俺はアヴィスと喧嘩をしているときにカタリンが声をかけて来たときなんだ」

「え?俺もだ」

アヴィスがビックリして答える。

「じゃあ、記憶が戻ったキッカケは私だったのか?」

頷く二人。

「あ、そうだ。マーガレット様がもしかすると今度朗読会をするかもしれんぞ」

「朗読会?なんだか嫌な予感がするんですけど?」

アヴィスが言うとカタリンが

「良くわかったな。その通りだ」

ユランズが顔を引きつらせながら

「まさか朗読用の本を俺達に書けって言うんじゃないでしょうね?」

「まだ決まったっ訳じゃないけどそうなるかもしれない」とカタリンが答える。

しかし溜め息をつきながらも二人はなんだか楽しそうに笑っている。

「なんだよお前たち、それほど嫌じゃないのか?」

ユランズが「だってカタリン」

そう言うとどこを見るともなく店の中を見回して

「俺はこっちの世界に来てから、なんか、こう、・・そうだ、今を生きているって感じがするんだよ」

アヴィスも

「俺も、こっちの世界のほうがなんか楽しく感じる」

「そうかもな、スマホもネットもないけど。まあ、私の場合は命がかかっているから必死だけどね」

カタリンだけが神妙な顔をしている。

「でもさ、もう未来は変わっているんだから大丈夫でしょ?」

と言うユランズにカタリンは

「まだわからないよ。一番怖いのは運命の奴が最後のゴールだけを変えないようにマーガレット様とソジャコッド、そして私をそこへ向かわせようとする時だ」

「運命の奴って誰のこと?」アヴィスが尋ねる。

「神だよ」

「カミって、神様のこと?」

ユランズがカタリンに尋ねた。  

「私達に前世があるってことは生まれ変わったってことだろ?つまりこの世には魂があるんだよ。魂があるなら、幽霊もいるし、きっと天国も地獄もあるよ。そしたら当然神様だっているに決まっているさ」

「ふーん、そんなもんなんですかねえ」と男二人は関心なさそうにして

アヴィスが真剣な声で話し始める。

「ところでカタリン」

「ん?」

「第二王子だったスミデル様が王太子になったでしょ?」

「うん」

「そのスミデル王太子が今度社交パーティーを開くんですが」

「・・・」

「その中から選ぶそうですよ、将来の王太子妃を」

「ふーん」

「その中にマーガレット様も含まれています」

「へ?だってスミデル王太子はマーガレット様より年下だぞ?」

ユランズがアヴィスに尋ねる。

「それは本当なのか?」

「ああ、我がボーセン男爵家の情報網だから信用出来る」

ユランズが少し暗い顔になっていることに気がついたカタリンは

「ユランズ、お前もしかしてマーガレット様の事が好きなのか?」

「うん。この前、一緒に芝居をしただろう?そのときにちょっと・・・惚れたかもしれない」

「お前、護衛騎士の役だったもんな。あ、じゃあアヴィスお前はマーガレット様の事をどう思っているんだ?」

「俺は別になんとも」

「あ、そうだ、私、ソジャコッドにアヴィスがお前のことを美人だって言ってたぞって、言っちゃったよ。サービスで」

「え?」

顔を赤くしてカタリンに尋ねるアヴィス。

「それでその時ソジャコッドはなんて?」

「顔を赤くしてた・・・ん?なんでそんな事を聞くんだ?あ、お前ソジャコッドのことが好きなのか?」

頷くアヴィス。

「そっか、まあ頑張れ。お前とソジャコッドなら同じ男爵家だし、可能性あるぞ?」

「そ、そうかな」

その時カタリンたちが座るテーブル席の側に一人のメイドが立っていた。

「なに?呼んでないけど?」

そう言うカタリンにそのメイドがメモを差し出した。

そのメモにはこう書いてあった。

『あなたは片山凛子ですか?』

と・・日本語で書いてあった。



    
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