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4.思い出せぬ夢
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逃げなさい…はやく…はやく!!追いつかれる前に捕まる前に…自由を奪われる前に…!!
深い闇の中を一人の少女が走る。不安と恐怖に包まれた顔で、何度も何度も振り返りながら…はやく…はやく…声に追い立てられるように、少女は走り続ける。
しかし、その前に追手が立ちふさがる。少女は恐怖にかられ動けなくなる。少女を捕まえようと、上下あらゆる所から手が伸びてくる。少女は悲鳴をあげた。そのとき少女を何かが暖かい者が包み込み、それは光を放ち手は消し去られた。おそるおそる目をあけるとそこには、 顔の見えぬ誰かが立っていた。何故か体中に傷を負いながらも、少女の前に立ちふさがり、新たに迫り来る追手から彼女を守っている。そしてその人が振り返る。
大丈夫だよ。
安心させるように、優しく言いながら少女に笑いかける。 あなたは…誰?少女の問いに答えることなく、その人の放つ光は新たに迫る手を払いのけていく。そして、光はさらに膨れ上がり、その人を見ることができなくなった。待って…あなたは…あなたは…だれなの!?
*****************************
「ファリア様!!」
フレイユの声で、ファリアは目を覚ます。心配そうなフレイユの顔が目に飛び込んでくる。
「フレイユ…」
「大丈夫ですか?かなりうなされていましたが…」
うなされて…またあの訳のわからない夢を…見たんだわ…
しばらく横たわったまま動けなかったファリアは、目をつぶる。
…もう思い出せない…
いつものことだと思いながらも、ファリアは覚えていない夢に不安を募らせる。何か怖い夢だということはわかっている。だけどいつもすぐに忘れてしまう。そのことがいつも彼女を苦しめていた。だが、そばにいるフレイユをいつまでも心配させるわけにはいかない。 ファリアは、大丈夫だというように、彼女に笑いかける。
「ごめんね。」
いつもの彼女に戻った様子に、フレイユは胸をなで下ろす。
「魚たちも心配で、集まってきてますわ。」
ファリアが周りを見ると、湖中に住んでいると思われるの魚達が集まっていた。表情は読みとれないものの、ファリアを心配している 気配が伝わってくる。ファリアは、そばにいた魚を指でつつくと、その魚はいやがるように体をくねられた。その様子に安心したのか、次々と魚達は散っていった。その様子を見ながら、フレイユは上を見上げる。
「ファリア様、そろそろあの人間の子供が参ります時間ですわ…」
「あら。」
そんなに眠っていたのかと、自分でも 驚き照れたように笑う。
「行ってくるわ。」
すいと水面へ向かうファリアをフレイユは、微笑みながら見送った。そして、彼女の姿が湖から見えなくなると顔を曇らせる。
「…ファリア様にとってあの人間との出会いは、良いことなのだろうか…」
彼女がつぶやくと一匹の魚が寄ってくる。まるで彼女の話し相手をつとめるかのように。
「いえ…良いことになってほしい。…いつまでも一人でいることなど、よくないことだわ…私はいつまでもファリア様のそばにいてあげられない…一緒にいてあげられないもの…」
なぜなら、龍のファリアと魚の一族であるフレイユでは圧倒的に寿命の長さが違いすぎる。フレイユは確実に彼女より早くに逝ってしまう。どんなに願っても、思ってもそれは変えられない。
「銀の花嫁…」
そんなものでなければ、彼女は孤独になることはなかった。仲間と共に生きていくことができた。だけど…銀の花嫁として仲間のもとへいたならば、彼女に待っているものは… フレイユは体を振るわせる。寒くないのに体が何故か震えてくる。彼女の話相手をつとめていた魚が、心配そうによりそってくる。自分の考えに恐ろしさを感じながら、魚に笑いかける。
…そんなことはさせない。たとえ自分が先に逝ってしまうとしても、その間だけは彼女を守ってみせる。 たった一人でいきるという孤独から、たとえわずかの間だとしても守ってみせる。…たとえ相手が龍だとしても。強い決意を胸に秘め、フレイユはファリアの消え去った水面を見つめていた。
深い闇の中を一人の少女が走る。不安と恐怖に包まれた顔で、何度も何度も振り返りながら…はやく…はやく…声に追い立てられるように、少女は走り続ける。
しかし、その前に追手が立ちふさがる。少女は恐怖にかられ動けなくなる。少女を捕まえようと、上下あらゆる所から手が伸びてくる。少女は悲鳴をあげた。そのとき少女を何かが暖かい者が包み込み、それは光を放ち手は消し去られた。おそるおそる目をあけるとそこには、 顔の見えぬ誰かが立っていた。何故か体中に傷を負いながらも、少女の前に立ちふさがり、新たに迫り来る追手から彼女を守っている。そしてその人が振り返る。
大丈夫だよ。
安心させるように、優しく言いながら少女に笑いかける。 あなたは…誰?少女の問いに答えることなく、その人の放つ光は新たに迫る手を払いのけていく。そして、光はさらに膨れ上がり、その人を見ることができなくなった。待って…あなたは…あなたは…だれなの!?
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「ファリア様!!」
フレイユの声で、ファリアは目を覚ます。心配そうなフレイユの顔が目に飛び込んでくる。
「フレイユ…」
「大丈夫ですか?かなりうなされていましたが…」
うなされて…またあの訳のわからない夢を…見たんだわ…
しばらく横たわったまま動けなかったファリアは、目をつぶる。
…もう思い出せない…
いつものことだと思いながらも、ファリアは覚えていない夢に不安を募らせる。何か怖い夢だということはわかっている。だけどいつもすぐに忘れてしまう。そのことがいつも彼女を苦しめていた。だが、そばにいるフレイユをいつまでも心配させるわけにはいかない。 ファリアは、大丈夫だというように、彼女に笑いかける。
「ごめんね。」
いつもの彼女に戻った様子に、フレイユは胸をなで下ろす。
「魚たちも心配で、集まってきてますわ。」
ファリアが周りを見ると、湖中に住んでいると思われるの魚達が集まっていた。表情は読みとれないものの、ファリアを心配している 気配が伝わってくる。ファリアは、そばにいた魚を指でつつくと、その魚はいやがるように体をくねられた。その様子に安心したのか、次々と魚達は散っていった。その様子を見ながら、フレイユは上を見上げる。
「ファリア様、そろそろあの人間の子供が参ります時間ですわ…」
「あら。」
そんなに眠っていたのかと、自分でも 驚き照れたように笑う。
「行ってくるわ。」
すいと水面へ向かうファリアをフレイユは、微笑みながら見送った。そして、彼女の姿が湖から見えなくなると顔を曇らせる。
「…ファリア様にとってあの人間との出会いは、良いことなのだろうか…」
彼女がつぶやくと一匹の魚が寄ってくる。まるで彼女の話し相手をつとめるかのように。
「いえ…良いことになってほしい。…いつまでも一人でいることなど、よくないことだわ…私はいつまでもファリア様のそばにいてあげられない…一緒にいてあげられないもの…」
なぜなら、龍のファリアと魚の一族であるフレイユでは圧倒的に寿命の長さが違いすぎる。フレイユは確実に彼女より早くに逝ってしまう。どんなに願っても、思ってもそれは変えられない。
「銀の花嫁…」
そんなものでなければ、彼女は孤独になることはなかった。仲間と共に生きていくことができた。だけど…銀の花嫁として仲間のもとへいたならば、彼女に待っているものは… フレイユは体を振るわせる。寒くないのに体が何故か震えてくる。彼女の話相手をつとめていた魚が、心配そうによりそってくる。自分の考えに恐ろしさを感じながら、魚に笑いかける。
…そんなことはさせない。たとえ自分が先に逝ってしまうとしても、その間だけは彼女を守ってみせる。 たった一人でいきるという孤独から、たとえわずかの間だとしても守ってみせる。…たとえ相手が龍だとしても。強い決意を胸に秘め、フレイユはファリアの消え去った水面を見つめていた。
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