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中央都市編
9
しおりを挟むぬらり、と瓦礫から這い出て来たスカルに、サラは剣を向ける。
「いいか、あんたは遠方から援護射撃に徹しろ。接近戦は私がやる」
「わかりました」
リリナの声がはっきりと聞こえる。
今まで聞いた声の中で一番芯のある、何かから吹っ切れた声だ。
サラは今のリリナなら大丈夫だと思った。
だったら、スカルに集中するだけ。
目の前でぴたりと止まったスカル。
いや、止まったのは一瞬。
猛スピードで地面すれすれを飛翔してきた。
刀に力をため込み、スカルの体がぼんやりと黒く包まれる。
一撃で決めるつもりなのだろうか。
そろそろスカルの体力も底をつくのかもしれない。
こちらも悠長に戦っている暇などない。
街中に蠢くスカルを一掃しなければならないのだ。
だから、これ以上傷を負うわけにはいかない。
こちらも強打を打ち込む必要がある。
サラとリリナは即座に跳躍してスカルの動線上から退いた。
そのまま背後の建物へ衝突するのかと思いきや、スカルはギリギリでぶつかるのを回避し、サラの方へ突進。
空中じゃ身動きが取れないな……。
刀を振り下ろして斬り付けようとする寸前で、サラは背後にある建物の壁に着地し、そこからスカルを越えるように垂直に飛ぶ。
と同時にリリナがスカルに発砲。
「金糸雀の宝玉!!」
拳銃から生み出されたまばゆい光を放つ金糸雀が、スカルに向かって美しい曲線を描く。
空を自由に飛ぶ金糸雀を避けきれるはずもなく。
スカルにぶつかってぱあん、と弾けた。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
空気と共にスカルの体が痺れるが、それも一時的。
けれどリリナはその隙を逃さず、銃口を向けたまま風のごとく駆け抜け、撃鉄を叩き続ける。
下へ、横へ、背後へ、地を蹴って、壁を蹴って。
まるでウサギのように跳ねて移動しながら、あらゆる角度からスカルを狙う。
サラは彼女の見違えるような動きに感心し、見事過ぎて、もはや別人ではないのかと思った。
でも、いつまでも感心ばかりしていてはいけない。
弾丸が撃ち込まれ続けるため、スカルの体が衝撃で空中に滞在している、この瞬間を狙う。
足へ一閃、続けざまに胴へ二閃、勢いそのままになめらかな円を描く剣閃が煌めけば、頭から足へ一直線に斬撃が入る。
さらに目に追えぬ速さでスカルに攻撃を与えるが、ダメージはいまいちのようだ。
光の力を使わないと駄目か……?
通常攻撃ではなく、特殊攻撃を使えば、確かに強烈な一撃を与えることができるだろう。けれど、それは体に負担がかかり、体力が大幅に削られる。
この一体だけならまだしも、他にも複数と闘わなければならないので、あまり使いたくないのだが。
仕方ない。
サラは剣に神経を集中させ、動きが一瞬止まったスカルの胴へ上から剣を叩き込んだ。
「月光の刃!!」
鎧など構わず。
サラは力の限り薙ぎ払う。
目を差すような光が斬撃となってスカルを襲う。
スカルは地面へゴオオッ、と風の音が聞こえるほどのスピードで真っ逆さまに落ちてゆき。
ドゴオオン、と地面に激突した。
むわっと粉塵が巻き上がると共に、スカルはさらさら、と砂のように跡形もなく消えてゆく。
サラはスタッと地面に着地した。
「はあ、はあ……。やったな」
「先輩……!」
リリナがタタッと駆けてくる。
「あんた、やればできるじゃないか」
「え、あ、ありがとうございます! 先輩のおかげで、やっと前を向けます。本当にありがとうございました……!」
「いや、私は何もしてない……。それより、傷はもうだいぶいいのか?」
「血は止まっています。痛みはありますが、戦闘には支障ないです。ラルクが必死に私の治癒能力を上げてくれていますから」
「そうか」
「先輩は……?」
「私も問題ない。よし、他のスカルを倒しに行くぞ」
「はいっ!」
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