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守護精編
53
しおりを挟む深くて青い、透明度の高いガラス細工のような木。
この世界で一番の大樹だ。
レレノアは空を見上げる。
リィン、と木が鳴った。
世界が青一色に包まれる中、息を吸う。
優雅に足を滑らせ、踊りだす。
青い大地と足が接触する毎に大地に光の輪ができる。
そしてレレノアはゆっくりと命の木と融合してゆく。
光の奔流へ溶け、奥へ、底へ、地の果てへ行き、そして天へ登る。
リィン、と共鳴するように木々が鳴った。
神秘の森全体が美しく鳴り響き、淡く光り出す。光は徐々に増してゆき、天へ一筋の光を解き放つ――。
✯✯✯
各地にいる守護精が天へ視線を向けた。
呼ばれているような、声がする。
自身の体が奥からじんわり温まり、力が増大してゆくのを感じると同時に、ゆっくりと体が光の奔流へ溶けてゆく。
そして。
守護精全員が、繋がった。
✯✯✯
空が明るい。
どうやら進化が始まったようだ。
ウィンテールは自分の手を見下ろした。
自身の手は煤けたような色をしている。
その手を軽く握る。
少しの葛藤を握りつぶすように。
目を瞑り、
「悪いのう……」
誰かへの謝罪を口にする。
バチィィン、と何かが破裂するような音と共に、ウィンテールの姿がその場から消えた。
✯✯✯
世界が、光に包まれた。
リィン、と大地から音が響き、風が地面を駆けてゆく。
木々が揺れて、鳥がさえずる。
光が霧散する様に駆け巡り、小さな生命力が踊りだす。
空も、大地も、海も、せわしなく呼吸するように荒れてゆく。
途端、ドン、と地鳴りのように地面が響いた。
光の破片が消え、何もかもが鎮まるように世界は静けさを取り戻す。
何も起きなかったかのように、精霊たちはゆっくりと息をした。
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